最高裁初判断 ヤミ金業者に対し元本まで全額賠償命令

2008 年 6 月 23 日
最高裁初判断
ヤミ金業者に対し元本まで全額賠償命令
平成 20 年 6 月 10 日,最高裁が初の大きな判断を下しました。「ヤミ金の帝王」と呼ば
れ,指定暴力団山口組系旧五菱会の会長側近であった梶山進受刑者に対して行われた損害
賠償請求訴訟にて「利息分だけでなく元本も含む全額を賠償すべき」と言い渡したのです。
「元本も返還する必要なし。」最高裁は,
長年続いた争いに終止符を打ちました。
これまで,ヤミ金業者から違法な金利
で借入をしていた被害者の過払い金返還
の裁判では,ヤミ金に支払った分から最
初に借りた元本を引いたものが返還の対
象となるのか,それとも元本も無視して
ヤミ金に支払った分全額が返還の対象と
なるのかが争われ,下級審の判断は別れ
ていました。
最高裁は,被害者が受け取った金額(元
本)は返還すべき金額から引かれるべき
ではなく,被害者がヤミ金に支払った金
額のすべてが返還対象になることを明ら
かにしました。最高裁は,
「不法の原因の
ために給付をした者は,その給付したも
のの返還を請求することができない(民
法708条)
」とし,ヤミ金が被害者に金
を貸したとしても,被害者はヤミ金に金
を支払う義務は一切ないとしたのです。
被害者が受け取った金額が返還すべき金
額から引くことは「同条の趣旨に反する
ものとして許されない」との判断を下し
ました。
今回の最高裁の判断は,ヤミ金被害の
実態からも妥当な判決といえます。ヤミ
金の被害者は,他に借りるところがない
ため,ヤミ金の執拗な勧誘に負けて仕方
なく金を借りてしまうことが大半です。
ヤミ金の被害者の返還金を減らすことは,
犯罪被害者の救済を疎かにし,ヤミ金を
利するものであり,到底許されるもので
はありません。
本件は,その組織規模の大きさと,被
告が海外の銀行に隠蔽していた94億円
ともいわれる暴利で得た多額の収益の行
方が話題にもなりました。
当時,山口組は,組員・準構成員が約
4万人ともいわれ,旧五菱会の傘下にあ
るヤミ金店舗は60を超えるといわれて
いました。被害者は全国で数万人ともい
われ,逮捕時は巨大な組織犯罪としてメ
ディアでも大きく取り上げられました。
ヤミ金被害の最前線で強く感じること
は,ヤミ金被害に対する警察の腰の重さ
です。告発状の提出を露骨な態度で受理
しないケースが未だ多くみられる上,中
には,返済の義務はないにもかかわらず
「借りたものは返しなさい」と警察にい
われたという依頼者もいました。
今回の最高裁の判断は,確かに今後の
実務に大きな影響を与えるものです。各
省庁・行政・警察等の団体がこれをきっ
かけにヤミ金被害救済に向けて積極的に
行動することを切に願います。
物価の上昇・医療費問題・格差社会・
年金問題と生活を直撃する問題が山積み
の中で,ヤミ金業者とわかっていても借
りなければ生活できない人々が全国に大
勢いるのも事実なのです。
「自殺かヤミ金
か」という選択をしなければならない
人々がいる現状をもっと真剣に捉え,早
急に具体的な対策を打ち出すことが必要
なのではないでしょうか。
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