地方財政学:第 4 回 地方自治体の予算 2:予算の原理/財政民主主義と

Local Public Finance.Lec04
Reitaku-University
地方財政学:第 4 回 地方自治体の予算 2:予算の原理/財政民主主義と予算原則
清水千弘(Chihiro SHIMIZU)
本日の学習目標
・ 地方予算のコンセプトについての復習
・ 地方予算の決定手続きについて学習する
(http://www.city.kashiwa.chiba.jp/datakw/datakw.htm#zaisei)
前回の復習.地方予算のコンセプト
(1)財政のコントロールシステムとしての予算
予算とは,政府の経済活動である財政の運営をコントロールする制度のことを言う。
市場社会:経済活動は,私的領域で行われる
→生産要素市場・清算市場ともに,市場によって,需要と供給により価格と生産量が調
整される。
政府:公的領域で社会の統合を図るという政治活動を行う政治主体
→必要な財貨やサービスを市場から調達するための貨幣を入手する方法がない
→公的領域における政府の活動は国民の合意によって行われるべきである→国民の合
意に基づいて,国民から市場を通さずに必要な貨幣を市場から調達することができる。
予算とは?
公共活動のために,どのように貨幣を市場から調達するのかについて,国
民から合意を得る必要がある。そのための制度が予算である。
(2)地方財政の予算
国の予算:単一主体のシステム
国民の意思のもとに決定され,執行される制度がデザインされればよい
地方の予算:複数主体のシステムが存在
住民の意思だけでなく,中央政府の意志も介在する
現代のような社会は,家族や地域社会の機能が低下してきている。
その機能を市場システムや国がすべて肩代わりして供給することは困難。
家庭や地域社会が担ってきた機能を肩代わりするためには,より身近な政府である地方政府が引
き受けざるを得ない。
地方政府の役割の増加→大きな地方政府→財政赤字が蓄積
家族機能・地域社会機能を復活させることができるか?????
古くは,教育,医療,老後扶助,生活保護などは,家族で行っていた。
水利・街路・農道整備などは,地域社会で実施していた
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講義 2.地方予算の原理について理解する
予算原則
財政をコントロールするシステムとして,予算制度をどのようにデザインするかという基
準として,予算原則が唱えられてきた。
・ 予算の内容と形式という予算過程に関する原則
総計予算主義原則
歳入と歳出はすべて予算に計上しなければならない。予算に計上されれば,住民も議
会も監視することができる。コントロールすることができる。
単一予算主義原則
歳入と歳出を計上する予算は,ひとつでなければならない。
・ 予算の編成と執行という予算過程に関する原則
予算事前議決の原則
予算は会計年度が始まるまでに,議会によって議決されなければならない。
議会の議決なくして,予算の執行ができない。議会に十分な審議期間を設けることを
考慮し,予算の編成を完了することを要請している。
会計年度独立の原則
それぞれの年度の歳出は,その年度の歳入でまかなわなければならない。
予算公開の原則
予算に関する情報は,住民に公開されなければなせない。
→財政民主主義の基本
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本日の講義
・地方予算と中央との関係
地方政府のサービスには,「スピルオーバー効果(spil-over effect)」が発生する。
ある自治体で教育を受けたものが,他の自治体で働く→中央政府の介在が必要
中央政府が担わざるを得ない機能でも,地方が執行を行わざるを得ない。
地方政府が担わざるを得ない機能でも中央政府が制御する必要がある。
→地方政府の予算も,中央政府をビルトインさせた制度にならざるを得ない
講義 1.地方予算の実際の手続き
租税の徴収について,地方政府は,中央政府によって制限されている。
法定外普通税を課すためには,総務大臣の許可が必要。地方税については,標準税率・制限
税率が設定されている。地方債の発行には,地方自治法250条で総務大臣または知事の許可制
度が採られている。
予算の執行にあたる首長には,予算の編成権だけでなく,議会の審議権を制限する権限が与えら
れている。
一般拒否権:一般拒否権が行使されると,三分の二以上の多数をもって再議決しなければならな
い。
特別拒否権:①違法な議決,②収入または支出が執行不可能な議決,③義務費の削減または減
額する議決,④非常災害復旧費など削減または減額する議決が行われた場合に,首長が再議に
付さなければなせない義務的再議である。
→首長は,原案執行権を持つ。
義務費を削減または減額する議決を再議に付した場合に,再議決でもなお削減・議決した場
合に,首長は義務費を原案通りに戻すことができる。
→首長は,専決処分権を持っている。
議会が成立しなかったり,議会を召集する余裕がなかったり,議会が議決すべき事件を議決し
なかったりという場合には,予算を専決処分とすることができる。
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講義 2.予算制度について理解する
(1)予算の内容
決定と執行が分離されている政府では,予算は執行機関から決定機関への財政権限の許可
要請書であり,ひとたび決定されれば,決定機関から執行機関への財政権限の付与書とな
る。
地方自治法では,
① 歳入歳出予算
② 継続費
③ 繰越明許費
④ 債務負担行為
⑤ 地方債
⑥ 一時借入金
⑦ 歳出予算の各項の経費の金額の流用
と分類している。
(2)一般会計と特別会計
上記の7つの内容から構成される予算は,ひとつでなければならない→単一予算主義
地方自治法209条「普通公共団体の会計は,一般会計および特別会計とする」→単一予
算主義を放棄
特別会計:「特定の事業を行う場合」
「その他特定の歳入を持って特定の歳出にあて一般の歳
入歳出を区分して経理する必要がある場合」
地方政府における特別会計予算の設置→その設置に関して中央政府の介入がある
地方公営企業法の適用される事業の特別会計には,企業会計方式が採用される。
(3)補正予算・暫定予算・骨格予算
補正予算:
予算が決定されると,その決定に基づいて執行される。
会計年度途中でも修正が可能→補正予算
暫定予算:
予算事前議決の原則に対する救済として,暫定予算がある。
骨格予算:
地方予算では,中央政府の予算の影響が大きいため,当初予算は必要最低限のものだけを
計上する→骨格予算
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講義 3.予算の流れについて理解する
予算によって財政がコントロールされている動態過程
・ 各年度の財政計画を立て,議会によって決定される「編成・成立の過程」
・ 決定された予算に基づいて財政が運用される「執行過程」
・ 執行の結果をまとめ,執行責任を解除してもらう決算過程
→上記の3つの過程は,それぞれ1年間が費やされる。「予算循環(budget cycle)」
地方自治法では,予算編成ではなく,「予算調整」という言葉が使われる。
予算の編成手続き
・ 予算編成方針:首長がその政策を予算化する方針を示す
・ 事務過程 1.予算要求過程/事業担当部署がそれぞれの部署の見積書を作成し,財政担当
部署に提出する
・ 事務過程 2.予算調整・内査定過程/事業担当部署からの見積書を査定する
予算の執行と決算
予算執行方針
予算執行方針に基づいて,配当・支出負担行為・支出という手順にて執行される。
・ 予算の配当
首長が事業担当部署に対して,支出負担行為の内容と限度額を示す
・ 支出負担行為
支出の原因となる契約などの行為
・ 支出
首長が出納役に対して支出命令を発し,予算が合致していることが確認されたうえで支出
決算
会計年度が3/31 に終了→出納整理期間(5/31)→出納長・収入役は,それ以降3ヶ月以内に
決算を調整し,首長に提出→監査委員に審査を付した上で,議会に提出→議会の認定→公表
け都道府県知事・総務大臣への報告義務がある。
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