2014年11⽉17⽇ ⽇本株ファンドマネージャーの視点 ガソリン価格と⾷品スーパーが映す地⽅景気 ※このレポートでは、⽇本株ファンドマネージャーが注⽬しているトピックなどを毎週お届けします。 最近ガソリン価格が下がっています。私の家の近くのガソリンスタンドは⽉曜⽇に価格変更をします。メール会員に なると1リットルにつき2円の割引サービスがあり、⼤きな価格変更をする際は前週の⾦曜⽇に週末にガソリンを⼊ れるよう知らせてくれます。私の⾞は古い⾞なので市街地で1リットル7kmしか⾛らないため、ガソリンを満タン にせず、容量の50リットルの最⾼75%程度までしか⼊れないようにしています。燃費は⾞の重量に⽐例するので、 これで2%程度の燃費改善が⾒込めます。その代わりに週末しか乗らないにも関わらず頻繁に給油するので、東京の ⼀般的な⼈よりガソリン価格の変化を敏感に感じていると思います。私の給油しているガソリンスタンドの価格は最 近急激に下がりました。消費税増税前の3⽉は1リットル160円台前半でしたが、4⽉に消費税3%分が上乗せさ れ⼀気に値上がりし、ピーク時にはそこから5円以上上昇しました。7⽉前後には175円でしたが直近は急落して 160円を割れています。⽇本のガソリンは現在の価格だと原油コスト40%弱、税⾦40%強、精製やマージンで 20%強の価格構成となっています。⾜元の価格下落は円安による輸⼊価格上昇以上に、世界的な需要低迷で原油価 格が下がっていることが影響しています。 さて、⽇本の場合、ガソリン価格などの燃料コストの上昇に対する消費者の感応度が地⽅と都市圏で⼤きく異なりま す。東京に代表される都市圏の交通事情をみると、時間に正確で数分に1本到着する地下鉄や近距離電⾞などの利便 性は世界最⾼といえます。⼀⽅⾃家⽤⾞をみると、駐⾞場代や⾼速代を含んだ総コスト、混雑による遅延の可能性を 考えると、都市圏では⾃家⽤⾞と鉄道利⽤との相対的な効⽤の差は⼤きく、都市圏での⾃家⽤⾞の利⽤に積極性は⾒ 出しにくくなります。 ⼀⽅、典型的な地⽅エリアでは、鉄道があっても1時間に2-3本到着すれば良い⽅です。鉄道の駅から家までの利便 性も考えれば、⾃家⽤⾞を積極的に持たない理由はありません。このため地⽅エリアでの⾃家⽤⾞の利⽤⽐率は⾼く、 あまり⾞を使わない都市圏の⼈に⽐べガソリン価格の上昇は地⽅の⽇々の⽣活に⼤きく影響します。例えば、都⼼の 週末利⽤中⼼の⾃動⾞保有者が⽉40リットルガソリンを⼊れる場合と、地⽅で通勤に利⽤している⼈が⼊れる⽉2 00リットルの場合では、1リットル10円のガソリンの値上がりのインパクトは異なります。単純計算では⽉16 00円の違いですが、年間にすると2万円近くの可処分所得の実質減少となります。地⽅では1世帯で2台保有して いることもざらですので、そうなると4万円のインパクトがあることになります。 中⼩型株のファンドマネージャーを務める中で、この影響を敏感に感じるのは上場している地⽅⽴地の⾷品スーパー と都⼼⽴地の⾷品スーパーの既存店売上と業績の違いです。例えば東京近郊中⼼で都市部⽴地のマルエツの今年度の 既存店売上は10⽉までの累計で前年同期⽐+5%で、営業利益は50%以上の増益となりそうです。マルエツ株に 5年以上注⽬してきた私としては、これまでの売上不振などの苦境を考えると隔世の感があります。⼀⽅、多くの地 ⽅⽴地の⾷品スーパーの今年度の既存店売上は前年同期⽐4%程度減少しており、都⼼⽴地の⾷品スーパーとは対照 的です。景気の動向もありますが、ガソリン代の上昇インパクトが、普段⼀番良く⾏く⼩売店である⾷品スーパーに 影響している可能性が⾼いと思います。 そのガソリン価格ですが、9⽉から⽬⽴って下落しはじめ10⽉、11⽉は急落しています。それに合わせて不振で あった、地⽅スーパーの前年⽐の既存店売上⾼も10⽉は2%程度の減少に下げ幅を縮⼩しています。⼀般的に地⽅ は景気が悪いため、⼩売業の売上げが悪いといわれています。ただ毎⽉の賃⾦動向を⾒ると製造業の賃⾦は全産業の 中で有意に上昇しています。⼀般的に地⽅の⽅が製造業⽐率が多いと考えられるので、賃⾦⾯からみて地⽅の景気が 悪いと考えるのはやや違和感があります。実際、北海道の8⽉の毎⽉勤労統計調査を⾒ると、現⾦給与総額は規模5 ⼈以上の事業所で前年同⽉⽐+5.5%と極めて⾼い数字となっています。実質賃⾦も同+1.1%と増加しており、 地⽅の⼩売業の売上が悪いのは実はガソリンなどのエネルギーコストを除いた実質可処分所得の減少が⼤きく影響し ているのではないかと思います。 これまで堅調な業績に合わせて都⼼⽴地の⾷品スーパー株の株価は好調でしたが、これからは地⽅の⾷品スーパー株 の上昇が期待されます。株価が6か⽉先の状況を織り込むことを考えると、今後は前年度対⽐で実質可処分所得の回 復が都市圏対⽐で優位となる地⽅の消費関連銘柄に注⽬しています。 株式運⽤部 永⽥ 芳樹 ■当資料は情報提供を⽬的として⼤和住銀投信投資顧問が作成したものであ り、特定の投資信託・⽣命保険・株式・債券等の売買を推奨・勧誘するもの ではありません。■当資料は各種の信頼できると考えられる情報源から作成 しておりますが、その正確性・完全性を保証するものではありません。■当 資料に記載されている今後の⾒通し・コメントは、作成⽇現在のものであり、 事前の予告なしに将来変更される場合があります。■当資料内の運⽤実績等 に関するグラフ、数値等は過去のものであり、将来の運⽤成果等を約束する ものではありません。■当資料内のいかなる内容も、将来の市場環境の変動 等を保証するものではありません。 大和住銀投信投資顧問株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第353号 加入協会 一般社団法人投資信託協会 一般社団法人日本投資顧問業協会
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