P5 プラナリアにおける プラナリアにおける糖鎖 における糖鎖の 糖鎖の機能解析 ○和田 拓也, 小滝 藍, 佐藤 武史, 古川 清 長岡技術科学大学・工学部・糖鎖生命工学 プラナリアの生体内には、neoblast と呼ばれる未分化細胞が散在している。生体を 切断するとこれらの細胞は切断部位に集まり再生芽を形成し、喪失部位を再生し、完 全な個体となる。プラナリアにおいて糖タンパク質糖鎖の意義を解明するため、プラ ナリア (ナミウズムシ:Dugesia japonica) を切断し、tunicamycin 溶液中 (1 µg/ml) で 飼育し、N-型糖鎖の合成を阻害した。その結果、無処理の個体群は切断後 4 日目まで に再生芽を形成するのに対して、処理個体群では再生芽の形成が抑制された。このこ とから、N-型糖鎖はプラナリアの再生において重要な因子であると考えられた。 そこでプラナリアの凍結切片を作製し、種々の蛍光標識をしたレクチンで染色する と、表皮や腸管、間充織など個体全体が Con A で強く染色され、また間充織細胞が 特異的に RCA-I で弱く染色された。レクチンの糖結合特異性から、プラナリアには 高マンノース型糖鎖やガラクトース様の糖をもつ複合型/混成型の糖鎖が発現してい ると考えられた。特に発現が多いと思われる高マンノース型糖鎖の機能を解析するた め、プラナリアにマンノース結合タンパク質が存在するかどうかを解析した。体長約 2 cm のプラナリア 500 個体をホモゲナイズし、遠心 (6,800 x g, 20 min) して得られ る上清画分を Man-agarose カラムに充填し、20 mM ラクトースを含む緩衝液でカラ ムを洗浄後、カラムに結合したタンパク質を 0.2 M α-メチルマンノシドと 15 mM EDTA を含む緩衝液で溶出した。この結合画分のタンパク質を SDS-PAGE 後、ゲルを CBB で染色すると、分子量 61 K のタンパク質が検出された。このタンパク質をゲル から PVDF 膜に転写し切り出し、N-末端アミノ酸配列を解析した。その結果 21 アミ ノ酸残基の配列が得られ、相同性検索を行うと、この配列はアメリカナミウズムシ (Girardia tigrina) で見いだされた C-タイプレクチン様ドメインを持つ lectin 2 と高い 相同性をもつことが判明した。従って、このタンパク質はマンノース結合タンパク質 であると考えられた。 以上の結果より、プラナリアには高マンノース型糖鎖とこれと結合するマンノース 結合タンパク質が存在することが判明し、両分子の相互作用は再生を含めた個体形成 や個体の維持に何らかの役割を果たしているものと考えられる。今後は両分子の相互 作用で引き起こされる生物現象を特定することが、糖鎖の機能を解明する上で重要で ある。 31
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