694 心タンポナーデが発見の契機となった心臓原発悪性リンパ腫の一例 ◎野本 直義 1)、扇 光正 1)、元岡 智宏 1) 社会医療法人財団 池友会 新行橋病院 1) 【はじめに】心臓腫瘍のなかで心臓原発の悪性腫瘍の頻度 同様に右房~左房にかけて 4×2cm の腫瘤像を認めたが、 は約 25%と言われており、そのうち悪性リンパ腫は約 2 % 本人希望によりそれ以上の精査及び加療をせず退院、放置 と非常に稀な疾患である。今回、心タンポナーデが発見の となった。半年後、呼吸苦出現のため救急外来受診となっ 契機となった心臓原発悪性リンパ腫を経験したので報告す た。来院時の心電図にて完全房室ブロックを認め、その後 る。【症例】79 歳 女性 【既往歴】糖尿病 高脂血症 の検査にて腫瘍の増大・圧迫による症状と診断され一時ペ 【主訴】前日より下肢のむくみが出現し、労作時に呼吸苦 ーシング施行となった。入院後、胸腔鏡下にて腫瘍直下の が出現したため近医受診。心不全の診断にて当院へ紹介受 心膜を切開し腫瘍と心膜を剥離した後、腫瘍の一部を生検 診となった。【身体所見】血圧 142/80mmHg, 体温 37.0℃, し、びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫と診断された。 SPO2=93~94%(room air), 【まとめ】心嚢液貯留の原因として、大動脈解離,心破裂,悪 pitting edema(+), 頸静脈怒張 (+)【心電図】HR105/min 洞性頻脈【来院時経胸壁心エコー 所見】LVSTd10mm, LVPWd7mm, LVDd51mm, LVDs33mm, 性腫瘍の心膜への浸潤・転移,感染症による心膜炎,心不全な EF65% 全周性に大量の心嚢液貯留を認め、右房,右室,左室 断される例は少なくない。本症例は、心タンポナーデが発 の虚脱と振り子様運動を呈していた。IVC は 18mm と拡張 見の契機となった心臓原発悪性リンパ腫の症例であった。 し呼吸変動消失、心タンポナーデが示唆された。【経過】 腫瘍による血行動態の異常、房室弁や心室流出路の閉塞が 来院後、心嚢ドレナージ施行。心嚢液は血性であったがリ なかったこともあり、来院時に腫瘤像に気付けなかったの ンパ球が見られただけで、異型細胞は認められなかった。 が反省点である。心嚢液貯留の症例では、心機能評価とあ 経胸壁心エコーで経過観察中に右房~左房にかけて低~等 わせて心腔内及び心膜の状態を慎重に観察することも必要 エコーの腫瘤像を認めたため、後日経食道エコーを施行、 であると考えられた。 連絡先:0930-24-8899 どがあげられる。心臓超音波検査が発達、普及した現在診
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