図 マイクロサテライト DNA データーから 遺伝距離を計算して得られたアジア在来ヤギ集団の系統樹、 樹上の数字は分枝の確からしさを示すブートストラップ値(%) アの家畜ヤギにはA∼Dの4グループの母系祖先が存 いが集団間の分化が低いという遺伝的構造は、古くか 在する。グループAは多くの集団に優占的に存在した。 一方グループBはインドネシア、フィリピンおよびバ ングラデシュに見られたが、その比率は南下するに従 ら行われている遊牧という飼養形態により絶えず集団 間の遺伝子流動が起こったこと、さらに近代的育種を 実施していないというモンゴルの歴史を反映した結果 い上昇し、インドネシアでは100パーセントを占めた。 グループCおよびDはモンゴルに極少数存在した。A、 であると考えられた。これらのことからモンゴル在来 ヤギのカシミヤは選抜を行なうことでさらに改良の余 C、Dの 地があることが強く示唆された。 グループ間のアミノ酸配列の進化速度や置 換のパターンに明確な違いは確認されず、頻度の違い は機会的遺伝浮動が主な要因となって生じた可能性が 高いと考えられた。 日本における乳用ヤギの育種改良 ヤギは牛に比較し小型で扱いやすく、今後は女性や 一方、グループBは興味深いことに分子構造の大き 高齢者による管理が容易な家畜として特に山間部農村 く異なるアミノ酸への置換や、哺乳類間で保存性が高 いCO2領域内のアミノ酸置換などの多くのアミノ酸置 で有力であると期待される。その乳は畜産先進国であ るヨーロッパでは嗜好性の高いチーズなどの加工品の 換を固定していた。すなわち、これらの置換は機能に 原材料としても珍重され、需要が高い。また最近では 影響しており、かつ東南アジアという環境に適応した 結果である可能性が示唆された。 食物アレルギーが問題となっており、牛乳に対してア モンゴル在来ヤギの育種戦略 モンゴルにおいて調査した8集団はごく最近、集団 ごとに毛色を単一にしてカシミヤ産業に利用され、モ ンゴルの輸出による収入の11%を占めるに至ってい る。 そこで実際に各集団のカシミヤを比較したところ、 集団間でカシミヤ繊維の太さと長さに有意差が生まれ ているという結果を得た。 同時に例えばザラージンストホワイト集団では太さ が15∼25マイクロメートル、長さが50∼100ミリメー トルと最小のものと最大のものの間に倍ほどの違いが あるなど、集団内のばらつきも大きいことが判明した。 前述したモンゴル在来ヤギ集団の、遺伝的多様性は高 4 新・実学ジャーナル 2009.9 シバヤギとザーネンの雑種第2世代♀、周年繁殖性とザーネン 並みの乳量を誇る
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