2010/12/12 病理検査研究班基礎講座 病理検査研究班基礎講座 藤田保健衛生大学病院病理部 平澤 浩 藤田保健衛生大学病院 はじめに 迅速標本作製は脂肪との戦い 迅速標本作製は脂肪との戦い 凍結切片作製法は術中迅速診断に必須の方法であり、 クリオスタットを用いた切片作製が行われる。 脂肪組織を含む検体は薄切が困難である。 → 脂肪は薄切温度で凍結しない。 → 包埋剤(コンパウンド)は超低温では薄切できない。 (切片にならずパウダー状に削れてしまう) クリオスタットを使用した通常の凍結切片作製法では、脂肪 を含む組織の切片作製は困難であるが、かろうじて得られた 切片で診断しているのが現実であろう。 藤田保健衛生大学病院 脂肪組織 乳腺穿刺で得られた脂肪組織 (パパニコロー染色) 藤田保健衛生大学病院 なぜ脂肪が切れないか? (1) リンパ節 脂肪組織 凍結したセンチネル リンパ節 藤田保健衛生大学病院 なぜ脂肪が切れないか? (2) 組織、脂肪がコンパンウドを介して連続性のある切片であることが条件 薄切 脂肪が凍結し、リンパ節と支持体(コンパウンド)と連続 して一体化していると切片となる。 藤田保健衛生大学病院 なぜ脂肪が切れないか? (3) 脂肪組織が切片とならないため、連続性のある切片とならない 薄切 脂肪は凍結できないため、リンパ節と支持体(コンパウ ンド)が一体化できず、1枚の切片とならない。 藤田保健衛生大学病院 脂肪を含む組織の薄切法 脂肪を含む組織の作製法は古くより多くの検討が行われて きたが、脂肪を除去する方法に主眼がおかれた検討が中心。 脂肪の除去法 脂肪の除去法 ・ 組織から脂肪を押し出して切片を作製する。 ・ コンパウンド中でモミモミして脂肪を押し出す。 ・ 界面活性剤、家庭用洗剤を通して脂肪を除去する。 ・ 超音波を利用して脂肪除去を促進する。 コンパウンドの脂肪組織への浸透法 コンパウンドの脂肪組織への浸透法 (置換法) ・ コンパウンドにグリセリン、生理食塩水を添加。 ・ アラビアゴムを添加したコンパウンドで薄切。 再現性のある良好な方法はないのが現状? 藤田保健衛生大学病院 クライオフイルムによる薄切法 クライオフイルム フイルムが支持体となって切片とすることができる。 薄切 薄切面にクライオフイルム(粘着テープ)を密着させて 薄切を行う。 藤田保健衛生大学病院 従来法とクライオフイルム法 従来法 脂肪が抜けている クライオ フイルム法 フイルム貼り付けと密着 脂肪組織も切片となる クライオフイルムによる凍結切片作製の実際 ① クライオフイルムの準備 → シート状のフイルムを使用サイズにカット ② 薄切・切片採取 → ブロックにフイルムを貼って薄切 ③ 切片を貼り付けたフイルムのプロセスカバーへの 取り付け ④ 染色 ⑤ 封入 → フイルムを封入 藤田保健衛生大学病院 クライオフイルムの準備 フイルムシートはA4サイズ 22mm幅でカット 切り分け 番号記入用シールの貼り付け 従来法による薄切 藤田保健衛生大学病院 クライオフイルムによる薄切 藤田保健衛生大学病院 バスケットを用いたクライオフイルムの染色 キングサイズカセットプロセスカバーに クリップでフイルムを留める 6枚程度まとめて染色可能 藤田保健衛生大学病院 染色 藤田保健衛生大学病院 封入 フイルムをスライドに 載せる フイルムの両端をカット 封入する 藤田保健衛生大学病院 従来法とクライオフイルム法の比較 従来法 センチネルリンパ節 クライオフイルム 藤田保健衛生大学病院 従来法とクライオフイルム法の比較 従来法 センチネルリンパ節 クライオフイルム 藤田保健衛生大学病院 従来法とクライオフイルム法の比較 従来法 センチネルリンパ節 クライオフイルム 藤田保健衛生大学病院 従来法とクライオフイルム法の比較 従来法 乳腺断端 クライオフイルム 藤田保健衛生大学病院 通常法とクライオフイルム法の比較 * :脂肪組織 * * * * 通常法 * * 通常法とクライオフイルム法の比較 * :脂肪組織 * * * * 通常法 * クライオフイルム法 SLN 微小転移例 藤田保健衛生大学病院 Post Frozen SLN転移例 SLN転移例 藤田保健衛生大学病院 従来法とクライオフイルム法 : 皮膚検体 従来法 クライオフイルム 藤田保健衛生大学病院 従来法とクライオフイルム法 : 皮膚検体 従来法 クライオフイルム 従来法とクライオフイルム法 : 皮膚検体 従来法 クライオフイルム クライオフイルム法でみられるアーチファクト クライオフイルム法による標本作製は通常の方法と 比較して特有のアーチファクトがみられる。 1) 核の膨化、核の不明瞭化。テープ貼り付け時の 融解・再凍結に由来するアーチファクトか? 2) 切片に著しい亀裂が生ずる。特にリンパ節に みられる。 3) 切片が厚めには薄切される傾向にある。 藤田保健衛生大学病院 従来法とクライオフイルム法 : 肺腺癌症例 クライオフイルム 従来法とクライオフイルム法 : 肺転移性腺癌症例(1) クライオフイルム 藤田保健衛生大学病院 従来法とクライオフイルム法 : 肺転移性腺癌症例(2) クライオフイルム 藤田保健衛生大学病院 クライオフイルム法でみられる切片の亀裂 クライオフイルム法でみられる切片の亀裂(2) アルコール中 キシレン中 クライオフイルムの使用経験から (1) ・ フイルムに貼り付けた切片を染色するため、染色 カゴを使用して複数枚の染色を行えないと現場での 活用は困難である。 ・ フイルムに検体氏名や枝番号を記入するシールを 貼っておくと封入の際に間違いを防止できる。 ・ フイルム幅が凍結ブロックの幅より広いと薄切時に 失敗しやすい。モルド3号を使用する場合、幅22mm が適当である。 ・ 脂肪だけでなく皮膚の表皮など、皺や折れ返りが生じ やすい検体の薄切にも有効である。 藤田保健衛生大学病院 クライオフイルムの使用経験から (2) ・ クライオフイルム標本には従来法と異なるアーチファ クトが経験された。 → 厚めに薄切されるが、やや厚めに切った方が 良好な切片が得られる。 → 核所見をはじめ全体的に鮮明さが低い標本と なる。フイルム貼り付け時の融解が原因かも しれない。 → 特にリンパ節標本にひび割れが生じやすい。 キシレン透徹時にフイルムが収縮することに 起因する。しかし転移の検索に問題はない。 藤田保健衛生大学病院 まとめ ・ クライオフイルムは従来作製が困難であった脂肪を 含む組織の凍結切片作製を可能とした。 ・ 乳腺センチネルリンパ節の検索において、微小転移 病変が診断されており、診断精度向上に有用である。 ・ 薄切と染色に関し、さらなる技術検討が必要であり、 知見の集積が望まれる。 ・ 今後、クライオフイルムによる切片作製は、乳癌検体 の迅速診断に必要な技術として普及してゆくことが 望まれる。 藤田保健衛生大学病院
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