獣医繁殖学教室 ~動物を増やす・生殖器の病気を診断・治療する~ 獣医繁殖学では、①動物の繁殖のしくみ、②人工授精、受精卵移植、体外受 精などの動物を繁殖させる技術、③動物の繁殖をさまたげる生殖器の病気の 診断・治療法などを学びます。 対象となる動物は、獣医が頻繁に扱う飼育動物、すなわち、牛、馬、豚、山羊 、犬、猫などです。 獣医繁殖学の講義では、上記の①~③の理論について学び、獣医繁殖学の 実習では、実際に牛、山羊、マウスなどを用いて、生殖器病の診断・治療法、人 工授精、受精卵移植、体外受精、妊娠診断法などの実技を学びます。 当教室の主な研究課題 当教室の大学院生および学部学生(5年・6年生)は 教員の指導のもと、これらの研究課題に取り組んで います。 牛の排卵同期化・定時人工授精法の開発と改良 兵庫県の但馬牛 現在の牛の繁殖は、そのほとんどが、凍結精液を用いる人工授精により行われています。人工授精では、人が雌 牛の発情を見つける必要があり、多数の牛を飼育している農家では、その作業が大きな負担になっています。そこで、 ホルモン剤を用いて排卵を定刻に起こす技術を用いることで、発情を見つけることなく、一定の日時に人工授精を行 う方法(定時人工授精法)が、近年、普及しつつあります。当教室では、黄体ホルモンの腟内留置剤を用いる排卵同 期化法を開発し、黒毛和種牛(但馬牛)やホルスタイン種乳用牛の繁殖に応用する研究を実施しています。 但馬牛の受胎成績 牛の腟内に留置する CIDRを用いる排卵同期化法 80 GnRH (100μg) 60 従来法 PGF2α (500μg) GnRH(100μg) 人工授精 20h CIDR併用法 受胎率(%) 黄体ホルモン腟内留置剤(CIDR) CIDR 70 (28/40) 40 45 (18/40) 20 20h 0日目 実験用の小型ヤギ 7日目 9日目 10日目 0 従来法 CIDR併用法 犬の人工授精 ヤギの胎子超音波画像 妊娠22日の 山羊胎子 頭尾長 約5 mm 生殖器病と性ホルモン 卵巣・子宮や精巣などの生殖器の病気は卵胞ホルモン、黄体ホルモン、精巣ホルモンなどの性ホルモンと密接に かかわっています。当教室では、犬に多発する子宮蓄膿症、潜在精巣、前立腺肥大、ならびに、牛の卵巣嚢腫など の生殖器病と性ホルモンの関係を解明し、診断・治療・予防法を開発するための研究を行っています。また、発情の 時期や生殖器病の状態を診断するために、様々な性ホルモンの簡便で迅速な測定法の開発にも取り組んでいます。 主な研究課題: ①犬の子宮蓄膿症における子宮の細菌感染防御因子や成長因子と性ホルモンの関係 ②犬の潜在精巣や前立腺肥大の精巣内分泌機能や成長因子 ③着床や妊娠維持における性ホルモンや成長因子の役割 犬の子宮蓄膿症発生のしくみ ④牛の卵巣疾患の診断・治療法の開発 発情期:エストロジェン優勢 発情休止期10日ごろ ⑤性ホルモンの迅速測定法の開発 犬の潜在精巣 精巣下降のしくみ 免疫反応の増強 犬の子宮蓄膿症 :プロジェステロン優勢 ラクトフェリンによる殺菌 細菌 免疫反応の低下 × サイトカインの産生など ムチン1 活性化T細胞 細菌による 刺激 T細胞 細菌のレセプター ムチン1による 細菌付着の阻止 細菌の付着、増殖 子宮蓄膿症 発症 高感度測定用 時間分解蛍光測定装置 リアルタイム 遺伝子発現解析装置
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