ワンピースの魅力ー関係への希求 主要登場人物のネットワーク 2011年1月12日 安田雪・板東純一・松永友貴・廣 瀬 (関西大学) 1 ワンピースの構造 • 主要登場人物 1~60巻 166人 ※登場人物の選定基準:誰か一人とだけではなく、複数の登場人物との 関係を継続的に築いているか • コアメンバー(主人公と仲間) 9人 • 主要場面ごとのネットワーク 1. 2. 3. 4. 5. 6. グランドラインまで 1~12巻 29人 冬島・アラバスタ 13~23巻 39人 空島 24~32巻 38人 ウォーターセブン 33~45巻 48人 スリラーバーク 46~50巻 21人 新世界へ向けて 51~60巻 93人 ※各場面ごとの登場人物数なので、合計は166人にはならない 2 物語を貫く「仲間のつながり」 • 主人公と仲間のつながり – 最終的意志決定は主人公が担うが、基本的に対等な役割分担 – 個々の弱さと欠点を仲間が補い、強さと長所を互いに分けあう – 時間、場所、苦難、別離を超越して持続する絶対的な信頼 – しかしながら、集団としての同調圧力がない – 異質な他者(非日常的・非現実的な能力や身体特徴)の肯定と共 存 – 能力差の受容 – 共依存でもない – 一緒にいること自体が自己目的化していない 3 • 物語を進める「つながりの危 機」 仲間つながりを脅かす悪意・暴力・困難 • 他者の関係を操作をする「悪意」の存在 • 脅威が大きいほど、状況が困難なほど、仲間への思いと行 動が輝く • 脅威の克服が、仲間との関係を強化 • 脅威に敗北して生じた喪失と絶望は、現在あるつながりの 価値の再確認を促す • 喪失(死別)した者との関係は、仲間への絶対的な信頼と 忠誠の源泉(後述) ★魅力 悪意は(それでもまだある希少な)関係への介入 4 物語がうたう「力」 • 物語の進展につれて、主人公は関係を形成・拡大・強化し ながら、圧倒的な力(自由)の獲得へ • 前段階の敵が味方に変化も ※ ミクロ事例のサブネットを抽出・描画中。後日送付します • 物語の進展とともに敵が増加・強力化するが、仲間(+ α=味方になる存在)も増加、仲間内の関係も強化・成熟 • 魅力:主人公の「その場にいる人を、味方にしていく」能 力 5 • 解釈と予測:それを共有する仲間との絶対的なつながりの おまけ:組織論的に語れば • 主人公は組織作りの天才、類まれなリーダ ーの資質を持つ • 仲間は、組織の三要素「共通目的、コミュニ ケーション、貢献意欲」とを兼ね備えた集団 • メンバーは外的環境の変化に柔軟に対応した 行動と判断力をもつ • 主人公を頂点とし、徹底した役割の分担構造 ができている • 企業経営者に好まれるのも理解できる 6 全体像(166人) 7 全体像(グループ別) 8 複雑そうに見えるが、、、 9 基本は、9人 主人公が、冒険をしながら一人ずつ仲間(8人)を獲得 この仲間の関係が成長 10 最初は主人公+数人・・・ 11 最初の航海 グランドラインまで 味方関係は実線、敵対関係は点線 あみかけはコアメンバー ルフィからはじまり、 仲間が5人に 敵が登場、 コ ア 12 ここから発して、 13 冬島・アラバスタ 仲間7人 敵も増加し、敵の体制・つながりが少しずつ判明 14 冬島・アラバスタ ドラ ム 王国 国王軍 コ ア バロ ック ワーク ス 海軍 冒険が進むにつれて 17 空島 仲間8人 敵のグループが増大、複雑化 伝説の海賊王とのつながりも 18 猿山 連合軍 七武海 アッパ ー ヤード コア 黒ひげ 海賊団 仲間は増加、手強い敵も増加 21 ウォーターセブン 登場人物が急増、 敵味方関係が複雑化 22 ガレーラ カンパニ ー 海軍 オハ ラ CP9 白ひげ 海賊団 コ ア 巨兵 海賊団 新しい仲間も加わるが、 25 スリラーバーク 仲間9人が確定 登場人物少なく、 関係構造はシンプル 26 スリラーバーク 仲間9人確定 登場人物少なく、 関係構造はシンプル 27 スリラーバーク 仲間9人確定 登場人物少なく、 関係構造はシンプル 怪人 ゾンビ コ ア 七武海 28 コア ルンバ ー 海賊団 スリラ ー バーク 敵味方の大戦争が勃発し 31 新世界へ 仲間は固定9人 敵、味方がともに増大、関係が複雑化 仲間以外の重要人物が死亡し、ストーリーは新秩序前の混沌へ 32 世界 貴族 海軍 白ひげ 海賊団 大将 黒ひげ 海賊団 七武海 九蛇 ルーキ ー 海賊王 看守 脱獄囚 コアメンバ ー 革命軍 新たな秩序にむけての混沌で、 関係も混沌へ 35 一見、チャラく見える連中が、 ・・・なぜ、これほどの強い 仲間力をもてるのか? 36 「信頼の源泉」の存在 • コアメンバー(仲間9人)は、仲間とは別に、それぞれが絶対的な信頼をお く他者をもった経験がある 伝説の海賊王 コ ア これが、仲間との絶対的なつながり をもつ基盤になっている なお、この他者は生死を問わ ず、異世代が多い 37 備忘録 • 新世界編は不確定要素が多すぎるので、 分類予測が不能 • 進展とともに確実に仲間(+α)のネット ワークが、拡大・強化。弱さと異質性を 強さに転換(ソーシャルキャピタル論的 な海賊組織作り) • 政府(権力、体制、制度、正統性) VS 根拠なく不可視ながらも絶対的な仲間と の関係との対決構造 38
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