「NZ円投資シミュレーション」

2004 年 11 月 4 日(木)―2004 年 11 月 5 日(金)
総括 「今月のテーマは海外企業のリパトリ」
需給「日本人の習性」
テクニカル 「データ通りの動きだが早すぎる怖さ」
当局 「再び財務省 破局のシナリオのリマインド」
ID為替「NZ円投資シミュレーション」(利食いも損切りも淡々と)
横浜湘南便り 「個人投資家は無知ではない。」
(横浜湘南地域便りに代えて)
ドル円 105-108
ユーロ円 134-137
FX湘南IG (FSIG) 代表 野村雅道
(事務所 田園、ベイサイド、伊豆稲取) 中京大学講師
日経インデックス(2000 年=100) 11 月 2 日東京引け 前回 10 月 29 日からの
変化 円 96.1 若干弱し ドル 92.1 同 ユーロ 123.9 若干弱し ドルインデックス IN
NYBOT 84.68 若干弱し CRB 282.54 弱し 日経平均ドルベース 11 月 2 日東京
引け 102.16 IMM円投機筋 10 月 26 日 27636(前週比+19071)
1.今週の予定
1(月)
2(火)
3(水)
4(木)
5(金)
日銀展望リポート全文、 米 ISM製造業指数、建設支出、個人所得
米 大統領選挙、 日マネタリーベース、日 国会日銀展望リポート質疑
文化の日 米製造業受注、ISM非製造業指数、独失業率
ユーロ圏失業率、ECB理事会
日 景気動向指数、米 雇用統計 ユーロ圏 小売売上高
(来週の予定)
8(月)
9(火)マネーサプライ、景気ウオチャー調査、独ZEW景況指数
10(水)日 国際収支、独 貿易収支、米貿易収支、米失業保険申請者数、FOMC
11(木)日 企業物価指数、機械受注 豪失業率、独 3QGDP、ECB月報
12(金)日 3QGDP 米 小売売上高、ミシガン大消費者信頼感指数
2.総括 「今月のテーマは海外企業のリパトリ」
もともと選挙結果やファンダメンタルズ発表後の相場推移については短期間での勝
負としてしか利用していない。もし相場がその結果通りに動き続けるなら、相場でやら
れる人などいなくなってしまう。100%の材料を確かめてから動くのは為替市場では勝
てない。金利市場では勝てる。
ディーラーとしては終わった選挙は忘れ、今月のポイントである欧米企業のリパトリ
に注意したい。
やはり先を見てポジションを取り、指標などの発表前か直後にポジションをクローズ
するのがテクニックだ。逆にポジションがない時は静かに指をくわえているのではなく、
いかにも良いポジションを持っていたかのように利食っている振りをするのも良い。指
標を確かめて 100%の材料でしか行動しない臆病な人がすぐに損切ってくるのでそれ
で新規の逆張りポジションを閉じればよい。
6 割くらいの見込みで怖いがポジションを張りたい。(損切りのルールは自分で決め
て)。100%以上の材料を確認して勝負するのは巨人が他チームで活躍した老年プレ
ーヤーを高値で採用するようなものだ。相場と同じように若手(若い相場)を発掘した
いものだ。
さて米国大統領選挙後では米国雇用統計と日本の景気先行指標を注目したい。
雇用統計の非農業者部門雇用者の増加が 17 万人台とまた発射台が高く予想され
ているだけに心配だ。
日本の景気動向指数も先行、一致ともに 50 を割る予想となっておりやや不安な見
通しだ。
中国株は先週の利上げの影響をそれほど受けなかった。もちろん初日こそインデッ
クスは下落したが、生保株などは投資収益の増加が見込まれ 3%程度も上昇した。2
日目以降は既にインデックスも持ち直している。金融引き締め、投資抑制、利上げ、ま
た人民元切り上げの思惑にも中国株は抵抗力がついてきた。日本の昭和 30 年台と同
じだ。障害があろうと紆余曲折しながらたくましく上昇してきた。中国もまだまだ上昇す
る余地がある。
3.需給 「日本人の習性」
ドル円は 105 円台で 11 月 1 日(月曜日)はスタートしたが、その後戻した。
東京市場の、いや日本人の性質として当面の新値は叩かない。105 円台は 4 月 13
日以来だ。ニューヨークでいくらドル売りセンチメントが高まろうとドルが下がるのはシド
ニー市場で終わりだ。
新値をたたく進取の精神はない。社内会議を続け、その値段を売るまで(社内レー
トを変える承認が下りるまで)に時間がかかる。輸出が売らねば、仲値へ向けた輸入で
当然戻る。いくら銀行のディーラーが小さい金額を売っても意味がない。戻れば彼らも
買い戻す。最初の当面の新値はセンチメントに反するが、東京市場ではドル買いが成
功する。
そら見たことかと社内会議での安売りにはOKが出ない。そして戻りの売りという結
論が出る。今のところそれは 107 円 50 銭程度なのだろう。
進取の、野獣のニューヨーク市場ではこのようなのんきなことをやっているとドンドン
下がってしまうが、東京ではそうではなく、こののんびりオーダーが上手くいくのだ。郷
に入っては郷に従え。需給と日本人の慎重さのなせるワザだ。
4 テクニカル 「データ通りの動きだが早すぎる怖さ」
基本的には 2002 年 1 月 135 円からの月足ドル下げトレンドの中での動きであり、
何度トライしてもこの抵抗線は抜けない。
もちろん常にドル円が下がっているのではなく月のばらつきはある。今月はデータ
的にドル円では上昇、また円は他通貨に対しても円安のデータがある。それにしては
月初早々からそのデータ通りに動くのは気持ちが悪い。月半ばくらいからその傾向を
示し始め後は押し切る形がいいのだがあまり早く傾向を出すとマラソンの先行ランナ
ーのように息切れしてしまおう。
私のようにデータを調べてテレビで選挙後はドル高が多いと言う人がいたが、そうで
はなく選挙がなくても 11 月はドルが上がりやすい(総じて円安ということ。)選挙のない
年も調べたのだろうか。短期から長期まで移動平均線は下向きであったが、11 月初か
らの戻しで 5 日線の下げがゆるやかになってきた。 本格的なドル反騰は 21 日線の上
昇への転換を待てば良いだろうが一つのドル下落への警戒サインが出た。
一目均衡表の雲の下限からもやや乖離しすぎている。ボリンジャーバンドの下限か
らも漸くローソク足の陽線が出始めた。バンドの中間の 109 円程度の戻りも頭の隅に
置きたい。
IMMの円ショートポジションは 2 万 7 千枚程度だが 107 円 50 銭を超えると損切に
入ってくるだろう。
NZ円、ユーロ円はかろうじて雲の下へ落ちることは避けられた。豪ドル円、カナ
ダ円、スイス円は雲の上限にも接することなく浮遊している。(クロス円で雲の下はポン
ド円だけだ。)
5.リスク 「長引くイラク、パレスチナ、日中問題」
北朝鮮暴発(北朝鮮開国?)、テロ激化東京へ、イラン、地震、ビンラディン現る、
日本物格上げ、米国物格下げ、貿易戦争(FTA)
6.当局 「再び財務省 破局のシナリオのリマインド」
橋本内閣の時に財務省が作成した破局のシナリオは以下の表の通りであった。
財政赤字や国民負担の増大はシナリオ以上のペースで進んでいるが経常黒字の減
少さらに赤字への転換はどちらかと言えば逆に進んでいる。
当時は私もまた債券ディーラーもこの破局のシナリオで金利上昇、円売りをもくろん
でポジションを張ったが、金利は財政赤字増大にもかかわらず低下、円も売られること
なく一旦は 135 円までいったが総じて円高推移しているのが現実だ。最近もこのシナリ
オで円安見通しにした人がいたが、そうはならないのはやはりキャッシュフローの問題
で日本は個人の膨大な金融資産で間接的に国債を買うこととなり、まだ破局の相場に
はならない。
しかし常にこのシナリオは頭の隅には起きたい。(円が下がればこの破局のシナリオ、
円が上がれば米国の経常赤字と長短期の区別をせずに相場観は変えてはいけな
い。)いつか日本に頼らぬ人が多くなり国内資金を海外へ逃避させれば金利上昇、円
安は起きる。早耳で行動するのではなくそうなれば数字に表れるのでそれを見てから
行動したい。
財政健全化目
標
財政赤
字
赤字国債発
行
政府債務残
高
2003 年
GDP
3%
ゼロ
2025 年度
現在
経常収支
1994 年度
2025 年度予想
現在
6% 30 兆円超
GDP比
現在
-14.30% 2025 年予想
GDP比 153%
2025 年以前に底をつ
く
128%
国債及び借入
金
国民負担率
2.70% 1994 年
社会保障制度
39.20%
1996 年 12 月 344 兆円
70%
2002 年 12 月 643 兆円
2.70%
7.ID為替 「NZ円投資シミュレーション」(利食いも損切りも淡々と)
以下は為替マージン取引で金利差、為替益を狙ったNZ円投資のシミュレーショ
ンである。マージン 1 倍にして日本の外貨預金や外国債券をより有利な金利、為替レ
ートを狙う。マージンコールはない。
2 倍、3 倍、10 倍と想定元本を大きくすれば利回りは増大するが、為替が下落すれ
ばマージンコールは早々と発生する。時間が経って金利差益を貯めれば、マージンコ
ール発生は遅れ、最後には発生しなくなる。(表の緑の部分の年数が経てば以後マ
ージンコールは発生しない。)
リスクとしては表にあげたものや、1 円動けばどれだけ損益が発生するか、また過去
のNZ円の高値安値の知識は身につけてもらいたい。起こりうるリスクを認識していれ
ば右往左往しない。マージンの倍率が高ければ、銀行のインターバンクのデイトレード
のように相場の少しの動きにでも一喜一憂、右往左往しなければならない。それをす
るかどうかは個人の好みであるが、1 円変動でのリスクを考えながら健闘してもらいた
い。ただ 1 日中画面をにらみつけなくてはいけないので、精神力は必要だ。のんびり
したい人は倍率を低くすればよい。要は自分の懐具合次第である。すなわちマネーマ
ネージメントであり、常に淡々と利食い、淡々と損切ることが相場観より重要なテクニッ
クだ。損が膨らんで他人にその処理を相談するようではマネーマネージメントをしてい
るとは言えない。損切りの覚悟をして望んでもらいたい。過去のNZ円が 高値の 5 分
の 1 以下になっているので絶対安全とは言えないが、投資である以上、60%くらい見
込みがあればゴーサインを出すのも一つのやり方であろう。100%以上の安心を求め
ると、タイミングが遅すぎることもあろう。1 円もやられたくない人は他人に見つけられな
いタンス預金しかない。夢のような儲けのシミュレーションと同時にやられのシミュレー
ションも重要だ。
NZ円 6%の金利差
マージン 1 倍
2倍
3倍
10 倍
1 万NZ@74 円
想定ポジションNZ→
2 万NZ
3 万NZ
10 万NZ
必要資金 74 万円
円での想定ポジションの増加→
資金効率
1 円変動の損益
マージンコール発生
時
さらに 74
万
6%
さらに 666
さらに 148 万
12%
万
18%
60%
1 万円
2 万円
3 万円
10 万円
無
37 円
50 円
66 円
1 倍 6%
2 倍 12%
3 倍 18%
10 倍 60%
利息で想定元本カバ
ー
利息収入(円)
1年
4.4
8.8
13.2
44
2年
8.8
17.6
26.4
88
3年
13.2
26.4
39.6
132
4年
17.6
35.2
52.8
176
5年
22
44
66
220
6年
26.6
53.2
79.8
266
7年
30.8
61.6
92.4
308
8年
35.2
70.4
105.6
352
9年
40
80
120
400
10 年
44.4
88.8
133.2
444
11 年
48.8
97.6
146.4
488
12 年
53.2
106.4
159.6
532
13 年
57.6
115.2
172.8
576
14 年
62
124
186
620
15 年
66.4
132.8
199.2
664
16 年
70.8
141.6
212.4
708
17 年
75.2
150.4
225.6
752
18 年
79.6
159.2
238.8
796
19 年
84
168
252
840
20 年
88.8
177.6
266.4
888
その他の必要知識
過去最安値
2000 年 10 月 19 日 41.97 円
最高値
1973 年 3 月 345 円
11 月 2 日現在
72 円
(ドル円 266 円)
(ポンド円 660 円↑)
リスク
世界的金利上昇
NZ金利が円との金利差から乖
離
メリット
発行体リスク低い
金利、為替手数料低い
発行手数料なし(債
券)
解約の流動性
日経掲載原稿
http://www.nikkei-ad.com/kinyu/saizen/kawase/index.html
内需拡大−規制緩和−市場開放−小政府−財政均衡−自己責任−公明正大
50―超円高−100―円高−150−普通円−200―円安−250−超円安−
「世界一のデフレと物価高の共存が日本の弱点」「国を選ぶ時代」
FX湘南社是 「面白く正しく」
FSIG FX湘南投資グループ 代表 野村雅道 中京大学講師
(事務所 横浜田園、横浜ベイサイド、伊豆稲取)
(豪円 377
円)
「付録 *横浜湘南便り*」
「個人投資家は無知ではない。」
(横浜湘南地域便りに代えて)
上場証券会社 21 社 9 月中間決算で野村ホールディングスが大幅減益となるなど、
9 社が経常減益、1 社が赤字となったようだ。外国債券の販売が落ち込んだのを原因
としていて、相場が円高に振れ販売しにくいとあった。しかし 4−9 月は相場は安定し
ており円高を理由に販売不振はおかしい。そう言えば以前ほど外債の広告は見られ
なくなっている。
やはり為替マージン取引の台頭が影響しているのではないだろうか。5 年を超える
外国債券の金利より為替マージン取引の日々の円と外貨の金利差の方が高い。そう
なれば流動性のある為替マージン取引に向かうのが自然であろう。
債券販売時には金利手数料、為替手数料が取られる。また債券発行時には幹事
証券には幹事のコミッション、また販売証券には販売コミッションがあり、雑費も含め、
それらは最終購入者である個人投資家の負担になってしまう。
外債を買うなら、発行体のリスクのない為替マージン取引のマージン倍率を 1 とす
れば為替リスクも外債と同等となる。それ以上のリスクを負いたい人はマージンの倍率
を上げれば良い。
外債を買う魅力は証券会社が過度な手数料を取り続ける限り為替マージン取引の
誕生で全くといってよいほどなくなってしまった。もちろん円の金利が上昇し、金利差
がなくなったり、世界全体で金利が上昇し、円と外貨の金利差より外貨の金利がかなり
高くなった場合は外債に戻る可能性もあるが、今までのように為替のドル円で 50 銭か
ら 1 円、その他の通貨はそれ以上、また金利でも 1%以上抜くと、一生懸命、薄利で健
闘している為替マージン取引会社の商品には及ばない。個人もそれに気づいてきた
のであろう。個人投資家は無知ではない。