特別講演2 廣岡会長と共に歩んだ循環調節研究

特別講演2
廣岡会長と共に歩んだ循環調節研究
いまいずみつとむ
今 泉 勉
国際医療福祉大学福岡山王病院
九州大学循環器内科で廣岡会長と一緒に研究した結果を中心に発表する。我々は実験
器具、道具はほとんど全て手作りをした。動物実験用の器具は、例えば脳刺激用の電極、
腎神経記録用の電極などである。神経調節の臨床研究をすることとなった。やはり殆ど
は手作りした。例えば、/RZHU%RG\6XFWLRQ%R[(下半身吸引箱)や前腕血流量測定用
のプレチスモグラフィー、静脈のコンプライアンス測定用の装置、1HFN6XFWLRQ 箱など
すべてである。自分たちで作成できないものは近くの電気店で買った。たとえば /RZHU
%RG\6XFWLRQ 用大型の掃除機など、とにかく何でも自前で揃えた。%R[内が陰圧になる
ので、陰圧用の圧測定器は気象観測用のものを、%R[内を陰圧にした時、入口を塞いで
空気が漏れないようにする為の厚手のビニールは、農業ハウス用のものを探し出した。
試行錯誤の毎日であった。今はお金さえあれば何でもある。何にもなかったけど、 人
(竹下彰先生、私、廣岡会長)で研究室を築き上げてゆく大きな楽しみがあった。本特
別講演ではこれらを用いて廣岡会長と行った末梢循環調節研究(血管内皮研究を中心に)、
圧反射調節研究、交感神経調節研究を中心に話をする。例えば、ANPは降圧に伴う心
拍数増加作用が無い、心臓に優しい降圧剤として広く用いられている。廣岡会長はAN
Pがニトログリセリンと異なり、降圧による大動脈径の収縮をきたさないこと、その結
果降圧に伴う反射性の交感神経活性が無いことを明らかにした。また、現在RAS阻害
薬は内皮機能改善作用を持つことが知られているが、それを臨床的に最初に報告したの
も廣岡会長であった。今では廣岡会長は名実ともに循環調節研究の第一人者となってい
る。益々の発展を祈念しています。
24
教育講演2
大動脈ステント手術の周術期管理
きんのぶひで
金 信 秀
新東京病院麻酔科
腹部大動脈瘤に対する血管内治療((9$5:HQGRYDVFXODUDRUWLFUHSDLU)が 年に、
胸部大動脈病変に対する血管内治療(7(9$5WKRUDFLFHQGRYDVFXODUDRUWLFUHSDLU)
が、 年に発表され、以後デバイス・手技が発展し続けている。外科手術と比較して
リスクの高い患者にも施行でき、一般的に周術期死亡率や合併症発生率が低い。
(9$5 は、デバイスが発達し、術中の高度低血圧もしくは一時的な心停止のような循環動
態コントロールが不必要になった。それとともに、全身麻酔よりも、硬膜外麻酔併用脊
椎麻酔あるいは局所麻酔(+神経ブロック)下で施行される傾向がある。特にリスクの
高い患者では、全身麻酔以外の麻酔方法の方が術後合併症も少ないという研究結果も出
始めている。開腹によるグラフト置換術後同様、(9$5 後も腎障害の発生率が高く、充分
な輸液投与以外の有効な予防法を見つけるための研究が盛んである。
7(9$5 は、日本でも、 年 月に企業製造の胸部大動脈用ステントグラフトが薬事承
認されて以降急速に普及しつつある。もともとハイリスク患者の下行大動脈瘤に対する
手技であったが、弓部大動脈瘤(弓部分枝への非解剖学的バイパス術を併用したハイブ
リッド使用)、胸腹部大動脈瘤、外傷性大動脈損傷、合併症を有する急性 % 型解離などに
も適用されている。7(9$5 の基本的な手技は、大腿あるいは腸骨動脈からアクセスし、
自動膨張式のデバイスを挿入して胸部大動脈内の適切な位置に留置することだが、当然
人工心肺下の開胸手術に比べて手術侵襲が小さく、大量の輸血が必要となる可能性も低
い。麻酔は、今のところほとんどのケースで全身麻酔である。ステントグラフト留置時
や、留置後大動脈との接合を強化するためバルーンなどで後拡張する時には、下大静脈
内に留置しておいたバルーンを拡張させ、静脈還流を一時的に低下させて血圧を下げる
方法がとられることが多く、短時間とはいえ血圧が大きく低下する。経食道心エコーは
禁忌がない限り使用する。7(9$5 後の脊髄神経障害発生率は外科手術後と比較すると低
いと考えられていることもあり、脳脊髄液ドレナージや運動誘発電位モニタリングが行
われることは少ない。
(9$5、7(9$5 をめぐる最近の話題と、麻酔管理について概観する。
26
S3-1
重症心不全とデバイス治療
きぬがわこういちろう
絹 川 弘 一 郎
東京大学大学院医学系研究科重症心不全治療開発講座
現存する薬物治療・非薬物治療を集学的に行って重症心不全の治療を最適化することは本講座に課
せられた使命と心得ているが,そのような最適化された治療の下でもなお改善しない心不全をステー
ジ ' と呼ぶ.このステージ ' 心不全においては心臓移植が患者の 42/ と生命予後を根本的に改善する
唯一の方法である.我が国においては1997年に臓器移植法が制定され心臓移植への道が開かれた
ものの年間の心臓移植施行件数は10例程度にとどまり,2010年の改正法施行後もいまだ40件
に満たない状況が続いている.このようにきわめて少ないドナーの下でわれわれはステージ ' 心不全
患者の治療にあたる必要があり,次善の策として補助人工心臓治療を積極的に推進している.現在の
補助人工心臓は年々デバイスとしての進化が進み,42/ も予後も飛躍的に改善する.そのような状況
の下現在は移植へのブリッジ使用と定められている適応を今後は移植を目標としない長期在宅治療に
対して保険的適応を取得すべく活動中である.この移植を目標としない補助人工心臓による長期在宅
治療は欧米で GHVWLQDWLRQWKHUDS\ と呼ばれているものであり,すでに 42/ や予後を有意に改善する
ことが確立しており,我が国においても早期の導入が望まれる.本講座においては我が国特有に状況
に鑑み日本発の様々な重症心不全治療に関する研究を集積してきており,本シンポジウムにおいてそ
れをご紹介するとともに今後の方向性も合わせてお示ししたい.
45
S3-2
重症心不全の %ULGJHWR&DQGLGDF\(%7&)
(OLNHO\)
やなせまさのぶ
なかじませいこ
さとうたくま
すなみはるき
せぐちおさむ
つぼいしほ
ほりゆみこ
はたひろき
ふじたともゆき
簗瀬正伸、中島誠子、佐藤琢真、角南春樹、瀬 口 理、坪井志穂、堀由美子、秦 広樹、藤田知之、
こばやしじゅんじろう
なかたにたけし
小 林 順 二 郎、中谷武嗣
国立循環器病研究センター
植込型 /9$'植込型連続流 /9$':FI/9$'実施認定施設は全国に 施設となり、FI/9$' は慢性重
症心不全患者に対する積極的な治療法として定着しつつある。1&9& では 年 FI/9$' が心臓移植
へのブリッジに対して保険償還された後は、心臓移植適応判定が行えた症例に対しては FI/9$' を適
応することとした。しかし、進行性の循環不全のため適応検討を充分に行えない ,17(50$&6SURILOH・
の症例もしばしば経験する。これらの症例では、多職種による院内臓器移植医学的適応症例検討会
にて EULGJHWRFDQGLGDF\(%7&)
(OLNHO\)と判断した症例は、積極的に 1LSUR72<2%2/9$6QW/9$'
の装着を行い、循環動態の安定後心臓移植適応と判定し体格等からも妥当な症例では FI/9$' への変
更を行なってきた。 年 月より 年 月までに 1&9& にて %7&(OLNHO\)と判断し QW/9$' を
行った症例は 例あり、離脱 例と死亡 例を除いた 例では心臓移植登録が行われ、 例は FI/9$'
に変更した。%7&OLNHO\で QW/9$' を装着した症例の 年生存率は %であり、1&9& における
FI/9$' の成績( 年生存率 %)と統計的有意差を認めなかった(S )
。デバイスに関連する
感染を合併する頻度は FI/9$' では QW/9$' に比べて低い可能性が示唆された。患者の身体的負担を
軽減することからも今後 %7&OLNHO\には積極的な FI/9$' の使用が期待される。本シンポジウムで
は、1&9& の経験から重症心不全の %7&OLNHO\について考察したい。
46
S3-3
重症心不全に対する補助人工心臓治療の現況
お
の みのる
な わ た かん
きのしたおさむ
き む ら みつとし
は
た
の まさる
いまむら てるひこ
こ む ろ いっせい
小野 稔 、縄田 寛 、木下 修 、木村 光利 、波多野 将 、今村 輝彦 、小室 一成 きぬがわ こういちろう
絹川 弘一郎 東京大学大学院医学系研究科心臓外科
東京大学大学院医学系研究科循環器内科
東京大学大学院医学系研究科重症心不全治療開発講座
【目的】 年 月に植込み型補助人工心臓(L9$')が保険適用されて以来、 機種の
L9$' が承認されてきた。植込み実施施設は 施設まで増え、年間 L9$' 植込み数が 例を超えるようになった。植込み適応は心臓移植への橋渡しに限定されているが、移植
までの補助期間も 年に迫りつつある。L9$' 治療の現況を自施設の経験に基づいて解析
した。
【対象と方法】 年 月から 年 月までに 例の 9$' 治療を経験した。L9$'
例、S9$'(体外設置型) 例であった。年齢 歳( ヶ月~ 歳)であった。原
疾患は '&0 が 例と最も多く、急性心筋梗塞 例、虚血性心筋症 例、劇症型心筋炎
例、拡張相肥大型心筋症 例などであった。全例が追跡可能で、装着後観察期間は ヶ月(~ ヶ月)であった。.DSODQ0HLHU 法で生存率を算出し、デバイスや術前重
症度によってサブ解析を行った。保険償還後の L9$' 例(観察期間 日)の合併症
回避率や再入院回避率を検討した。
【結果】補助期間は 日で、L9$' 日(~)
、S9$' 日(~)であ
った。心臓移植 例、9$' 離脱 例、L9$' への FRQYHUVLRQ 例、補助継続 例(L9$'
例、S9$' 例)
、補助中死亡 例であった。全体の生存率は 年で で、L9$' で有意に生存率が優れていた(YV
)
。これは装着前の重症度の相違によるためであるが、,17(50$&6SURILOH 以下
では SURILOH より著しく生存率が高かった(YV
)
。L9$' 装着後 例は退院後 日()を病院外で過ごすことが可能であった。
デバイス関連感染回避率は ヶ月、 年で 、脳血管障害回避率は 、再入院回避率は であった。
【結論】
心不全重症化前の紹介は L9$' 装着を可能とし、遠隔成績の向上に寄与していた。
また、L9$' は病院外で長期補助を可能とし、重症心不全治療の 42/ を大きく改善した。
しかし、デバイス関連合併症(特にドライブライン感染)と脳血管障害は依然多く、再
入院も少なくない。今後のデバイスと装着後管理の集学的検討による合併症の軽減が期
待される。
47
S3-4
植込み型補助人工心臓治療の成績と今後の展望
とだこういち
みやがわしげる
なかむらてるや
よしかわやすし
ふくしまさつき
よしおかだいすけ
かわむらまさし
さいとうてつや
戸田宏一 、宮 川 繁 、仲村輝也 、吉川泰司 、福 嶌 五 月 、吉 岡 大 輔 、川 村 匡 、齋藤哲也 、
どうまえけいたろう
かしやまのりゆき
うえのたかよし
くらたにとおる
さ わよしき
堂前圭太郎 、樫 山 紀 幸 、上野高義 、 倉 谷 徹 、澤芳樹 大阪大学大学院医学系研究科外科学講座心臓血管外科学
【目的】本邦でも植込み型左心補助人工心臓/9$'が保険認可され3年が経過し、
症例以上の植込み手術が行われ良好な成績と共に多くの重症心不全患者の在宅管理が可
能となっている。一方で長期 /9$' 管理に伴う感染症等の合併症も経験され、これらに対
する 9$' チームによる PXOWLGLVFLSOLQDU\DSSURDFK の重要性が指摘されている。今回
我々は当院での植込み型 9$' の治療成績及び、9$' チームによる適応患者選択、術前患
者の最適化、術後慢性期管理、合併症対策を紹介し、今後の更なる長期補助人工心臓治
療の展望について議論を深めたい。
【対象・方法】対象は 年以降に手術施行した連続流植込み型 /9$'83症例。内 例は術前ショック状態で先ず体外式 /9$' を装着し、その後全身状態が改善、安定化して
から植込み型 /9$' に交換した%ULGJHWR%ULGJH%7%。
【成績】一期的に植込み型 /9$' 手術出来た 例については、術後 日以内の早期死亡
は認めなかった。一方体外式からの %7% 症例においては、術後 か月以内の死亡を 例
に認めたが、遠隔期成績には有意差を認めなかった( 年生存率:YV)。
外部バッテリーと植込まれた /9$' をつなぐドライブラインの感染回避率は 年で %
であった。またこのうちポンプポケット・/9$' 感染にまで及んだのは 例で 例は大網
充填後に心移植に到達、 例は心機能回復しており離脱、 例はポンプ交換手術を要した。
【結論】多職種からなる 9$' チームによる術前・術後患者管理により、術前ショック症
例においても良好な植込み型 /9$' の成績が得られるようになった。しかしながらドライ
ブライン感染は、依然として問題であり、植込み手技、術後管理、在宅になってからの
患者教育等に今後とも工夫を要すると考えられた。
48
S3-5
九州大学病院ハートセンターにおける補助人工心臓の現状と課題
たのうえよしひさ
ひ ご た い き
すながわけんじ
とみながりゅうじ
田ノ上禎久 、 肥後太基 、 砂川賢二 、 富永隆治
E A
AE
E A
AE
E A
AE
E
九州大学病院 VAD チーム、九州大学病院心臓移植小委員会
九州大学病院ハートセンター
九州大学病院ハートセンターにおいて,重症心不全 48 症例に対し 52 例の補助人工心臓
を装着した.男性 39 例,女性 9 例で,年齢は 9 歳から 61 歳,体重は 24.0-100kg,BSA
は 0.99-2.15m2 であった.原心疾患は拡張型心筋症 28 例,虚血性心筋症 7 例,拡張相肥
大型心筋症 3 例,心サルコイドーシス 3 例,その他 7 例.左心補助が 49 例,両心補助が
2 例であった.
空気駆動式体外設置型のニプロ東洋紡 25 例,
旧型の植込型 Novacor 2 例,
短期補助用体外設置型の BVS5000 8 例,そして,2011 年春より順次保険償還された植込
型左心補助人工心臓は 16 例を経験した.その内訳は EVAHEART 10 例,DuraHeart 2 例,
HeartMateII 4 例,Jarvik2000 1 例であった.10 例が心臓移植を終了し(渡航移植 1 例),
5 例が離脱,13 例が移植待機中で(全例,新型の植込型補助人工心臓),20 例が死亡した.
新型の植込型補助人工心臓装着後の死亡例はないが,4 例に脳合併症を併発した.ほぼ
全例が装着後に退院でき,在宅医療に移行できている.しかしながら,介助者の問題か
らくる職場の受け入れ困難,自動車の運転ができないための行動範囲の制限等の数々の
問題が解決しておらず就労率は低い.3 年以上の心臓移植待機期間に伴う在宅医療の長
期化から,患者,介助者の自己管理が緩慢になる例を認め,再教育,精神的ケアーが必
要となっている.本センターでの移植を希望し,九州の他施設で植込型補助人工心臓を
装着された患者は 3 症例となり,九州内の植込型補助人工心臓実施施設増加に伴い,地
域連携の強化が重要となっている.これらの様々な問題に対応すべく,多職種メンバー
からなる VAD チームを設立し,補助人工心臓装着患者,装着予定患者の情報交換と共有
とスタッフ間の連携を深めている.また,患者,介助者の情報交換の場として「VAD 患
者さんの集い」を企画している.本センターにおける補助人工心臓の現状と課題を
報告する.
49
CR1-1
植込型補助人工心臓装着後安定期に急性左心不全を発症した拡張相肥大型心筋症
の一例
さかもとたかふみ
AE
ひ ご た い き
ひあさけんいち
い で と も み
すながわけんじ
坂本隆史 、肥後太基 、日浅謙一 、井手友美 、砂川賢二
EA
AE
AE
AE
AE
AE
AE
AE
E
九州大学病院循環器内科
【背景】本邦において植込型左室補助人工心臓(LVAD)は難治性心不全に対する BTT として急
速に普及している。しかし心拍出量曲線と静脈還流平面からなる循環平衡に対する LVAD の影
響はあまり検討されていない。LVAD 装着後安定期に感染を契機に急性左心不全を発症した拡
張相肥大型心筋症の一例を報告し、LVAD の循環平衡に対する効果を左室圧容積関係および心
室-動脈カップリングを用いて定量的に記述することで考察する。
【症例】56 歳男性、拡張相肥大型心筋症による重症心不全であり、当院心臓血管外科にて
LVAD(EVAHEART)植え込み術を施行された。術後経過良好であり、術後 50 日で自宅退院となっ
た。退院 3 か月後に急性上気道炎を発症、呼吸苦が出現し増悪するため緊急受診した。SpO2
84%(O2 15L/分)と酸素化不良、肺うっ血および胸水を認め、うっ血性心不全と診断した。咳
嗽のため NPPV に同期できず、挿管下に心不全治療を行った。一時的に EVAHEART の回転数を
1750→2000 回転へ変更し、これにより利尿が得られ、呼吸状態が改善したため第 3 病日には
抜管した。第 7 病日に血行動態評価目的に右心カテを施行した。1700 回転にて右房圧 4 mmHg、
肺動脈楔入圧 6 mmHg、心係数 2.9 L/分/m2 であり生食 500 ml 負荷にて右房圧 6 mmHg、肺動
脈楔入圧 9 mmHg、心係数 3.4 L/分/m2 と容量負荷に対して心房圧が上昇しやすいことを示唆
した。
【考察】LVAD は左室の前負荷を軽減し、後負荷を上昇させることで循環に影響する。左室圧
容積関係および心室-動脈カップリングの観点から、左房圧-自己心および LVAD から血流量関
係(心拍出量曲線)は LVAD により自己心の心拍出量曲線を上方に平行にシフトさせることが解
析的にわかる。これは不全心に対して LVAD 導入しても容量負荷に対して左房圧が上昇しやす
いことを意味する。本症例でもこの機序が左心不全発症の原因の一つと考えられた。LVAD 導
入後も volume control が重要であることが示唆された。
85
CR1-2
経カテーテル的大動脈置換(7$9,)術直後に経食道心エコーにて偶然発見された
急性 % 型大動脈解離合併の一例
よ だ まさ た か
たかぎけんとく
な か おた つ や
ふじさきひろゆき
あ き たま さ し
いなむらじゅんじ
かわいだたいき
依田真隆1、高木健督2、中尾達也1、藤 崎 浩 行 1、秋田雅史1、稲 村 順 二 1、川井田大樹1
もちづきだいすけ
望 月 大 輔 1
新東京病院心臓血管外科
新東京病院心臓内科
+LJKULVN 患者に対する 6DSLHQ;7((GZDUGV)による 7$9, が保険償還され、全国で200例
を超える植え込みが施行された。死亡例はないものの合併症の報告は散見される。今回我々
は 7$9, 術後に経食道心エコーにて偶然発見された急性 % 型大動脈解離の合併症例を経験した
ので報告する。
症例は 歳女性。大動脈弁口面積 FP、圧格差は PP+J(XURVFRUH676
VFRUHの重症 $6 に対し 7$9, を施行した。左大腿動脈を &XWGRZQ し )U( シースを挿
入し PP%DOORRQ にて %$9 を施行。6DSLHQ;7YDOYHPP を植え込み経食道心エコー上、
大動脈弁閉鎖不全症、心嚢液貯留などがないことを確認。さらに大動脈造影にて腹部大動脈
以下に血管損傷を認めないことを確認後、( シースを抜去し大腿動脈を吻合し、手術を終了
した。手術終了時に経食道心エコーにて大動脈弁、上行大動脈、下行大動脈を最終確認する
と、左鎖骨下動脈遠位側の下行大動脈に全長6FP に渡り急性大動脈解離を認めた。手術室で
は抜管をせずに、緊急造影 &7 施行すると下行大動脈に一部血栓閉塞を伴った限局解離を認め
た。急性大動脈解離治療ガイドラインに準じ、血圧 PP+J 以下の降圧管理を行い術後 日
目に抜管した。術後1週目、2週目に施行した造影 &7 では解離腔は血栓閉塞し大動脈の拡大
も認めなかった。術中、6\VWHP を通過させる際には全く抵抗がなかったため今回、大動脈解
離の原因として考えられるものは、6\WHP 抜去時に ([WUDVWLII- ガイドワイヤーをカテー
テルを用いずに直接回収したことで大動脈損傷を引き起こした可能性が考えられた。
7$9, 術中の急性大動脈解離の合併症はいままで報告されておらず非常にまれであるが、7$9,
を施行する対象は高齢で非常に虚弱な患者であるため、組織も非常に脆弱であることを念頭
に置いて、丁寧な手技を心がける必要がある。
また術中経食道心エコー検査は大動脈弁、心嚢のみならず、下行大動脈を観察することで合
併症の早期発見につながり非常に有用である。
86
CR1-3
7$9, により術中から劇的に血行動態が改善した重症大動脈弁狭窄症の一例
そのだひろみち
まつながしょうご
じんざいゆうき
もとまつゆうま
か ん お めいくん
おおいしやすひさ
たてわきひでき
園田拓道、松 永 章 吾 、神西優樹、元松祐馬、神尾 明 君 、大 石 恭 久 、帯刀英樹
た の う えよ し ひ さ
にしだたかひろ
しおかわゆういち
とみながりゅうじ
田ノ上禎久、西田誉浩、塩 川 祐 一 、富 永 隆 治 おおいけいじ
すなかわけんじ
大井啓司、砂川賢二
よこやまたく
ありたたけし
おだしろけいた
横 山 拓 、有田武史、小田代敬太
九州大学病院心臓血管外科
九州大学病院循環器内科
九州大学病院血液・腫瘍内科
【症例】 歳女性。
【主訴】呼吸困難感。
【既往歴】重症筋無力症に対して胸腺腫摘出術の既往があり、現在はステロイドおよびプ
ログラフの内服加療中である。またパーキンソン病に対しても内服治療中である。
【現病歴】 年 月に肺炎に合併した急性心不全のため他院にて入院治療が行われ精
査にて重症大動脈弁狭窄症$6を指摘された。心エコー検査での最大血流速度PV、
最大圧較差は PP+J、平均圧較差はPP+J、弁口面積は FP と高度であり、/9() は
であった。)UDLOW\ が高度で、免疫抑制剤内服中の高度 $6 症例であったことから、外
科的 $95 はきわめてハイリスクと判断され、当院ハートセンターにて 7$9, を実施すること
となった。心不全治療のためドブタミンが投与されていたが待機中の離脱は困難であった。
【手術所見】7$9, に先立ち全身麻酔を導入したところ /26 兆候が出現し血圧 PP+J の低
血圧が持続した。補液やノルアドレナリンなどカテコラミンの増量を行うも血圧の維持は
困難であったが、予定通り WUDQVIHPRUDODSSURDFK にて (GZDUGV6$3,(1;7PPを留
置した。その直後から血圧の上昇→PP+J、心係数の上昇→ℓ分P、混
合静脈血酸素飽和度の上昇→などの各種パラメーターの劇的な改善を認めた。その
後も安定した血行動態を維持したまま手術を終了した。手術時間は 時間 分、透視時間
は 分であった。
術後の心エコー検査では、最大血流速度PV、最大圧較差は PP+J、平均圧較差は
PP+J、弁口面積は FP と弁機能は良好であった。
【考察と結語】通常の大動脈弁置換術では開胸が必要で、人工心肺を使用し心停止下に人
工弁置換を行うため、術後早期には心臓には相当のダメージが加わり一時的に心不全は増
悪する。一方、7$9, では上記操作が必要なく、経カテーテル的に自己弁を開大し、人工弁
を留置する手法であることから、留置直後から血行動態の改善が認められることが多い。
本症例はその典型例であったため提示する。
87
CR1-4
重症心不全症例に対する左心補助としての *\URSXPS 使用経験
お か だ しゅういち
かねこ たつお
え ず れ まさひこ
は せ が わ ゆたか
きむら ち え り
お こ の ぎ しゅういち
たきはら ひとみ
岡田 修 一 、金子 達夫 、江連 雅 彦 、長谷川 豊 、木村 知恵里 、小此木 修 一 、滝 原 瞳
ないとうのりつぐ
内 藤 敬 嗣
群馬県立心臓血管センター心臓血管外科
症例 歳男性。'&0 に対して 1,352/9$' 装着術と $95 を施行、植込み後 年 カ月後
に解離性大動脈瘤に対して胸腹部人工血管置換術を施行、植込み後 年 カ月後に小脳出
血を合併し、保存的加療で出血は軽減したが、抗凝固減弱のため、SXPS 内浮遊血栓による
小梗塞、梗塞後出血を繰り返し、頻回に SXPS 交換を必要とした。脳出血後 日目に *\UR
SXPS に交換、,15 は 弱にコントロールした。脳出血は改善し *\URSXPS を 日間施行後
に 1,352SXPS に交換した。しかし、植込み後 年 カ月後に広範な大脳出血を合併、意識
レベルは -&6Ⅲ で挿管となった。056$ 血流感染があるため、穿頭術は施行しなかっ
た。第 病日に意識レベルが回復し、第 病日に *\URSXPS に交換、抜管でき、脳出血
も改善、再度 1,352SXPS に交換した。症例 歳男性。呼吸困難を主訴に前医に緊急搬
送された。意識もうろう状態、()の重症心不全で挿管後に 3&36 を装着したが、離脱困難
で第 病日に当院に緊急搬送となった。多臓器不全や意識レベルの問題を考慮し、まずは
*\URSXPS を装着した。
32' に覚醒を確認でき、32' に 1,352/9$'SXPS に交換した。32'
に側腹部痛を訴えがあり、造影 &7 遅延像で大網周囲に血腫と同部位付近に造影剤の血管外
漏出、腹腔内に血性腹水を多量に認め、大網血管の破綻による大網出血と診断した。カテ
ーテル治療や開腹手術も考慮されたが、まずは止血剤投与と輸血を行い、*\URSXPS へ交
換した。&7 で造影剤の漏出を認めず、血腫も縮小した。*\URSXPS 交換から1か月目に 1,352
SXPS に交換した。(まとめ)*\URSXPS は重症心不全症例の GHFLVLRQPDNLQJ や 1,352SXPS
の出血性合併症に対して非常に有用な手段になり得ると思われた。
88
CR2-1
下腹部腹腔鏡手術中に VSLNHDQGGRPH 型の動脈圧波形を認めた +2&0 の 例
たにがわよしのり
こうろぎまさよ
たかまつちひろ
さかぐちよしろう
谷 川 義 則 、興梠雅代、高松千洋、坂 口 嘉 郎 佐賀大学医学部附属病院手術部
佐賀大学医学部附属病院麻酔科蘇生科
佐賀大学医学部麻酔・蘇生学講座 【背景】下腹部腹腔鏡手術では極端な頭低位や制限輸液での管理を要求されるが、心疾患
合併症例における循環への影響については十分に解明されていない。
【症例】 歳男性、身長 FP、体重 NJ。直腸癌に対して腹腔鏡補助下低位前方切除術
を施行した。術前評価で +2&0 と診断された。77( 所見では、,963:PP、/9()、
9DOVDOYD 負荷で左室流出路血流速度 PVHF と 6$0 を認めたが、日常生活は 1<+$Ⅰ度で
あった。手術開始後(°頭低位・PP+J の気腹)の動脈圧波形化を図に示す。術中の
動脈圧値、心拍数は著変なかったが、)ORWUDF70 による動脈圧心拍出量は低下した。術直後
7(( で /9272 を認めたため、術後 日目まで ,&8 管理とした。以降は心合併症を認めず、
術後 日目に退院となった。
【考察】本症例における VSLNHDQGGRPH 型波形は、収縮中期左室流出路血流の高度障害を
示している。長時間の気腹や頭低位、輸液制限を伴う下腹部腹腔鏡手術では前・後負荷な
らびに左室容量の急激な変化を生じるため、+2&0 合併症例では血行動態が破綻せずとも
/9272 の発生に憂慮しなければならない。
89
CR2-2
/L'&2 を用いて周術期管理した心臓姑息術の乳児 症例
そえだ ゆうじ
よ し の じゅん
ふじむら なお ゆき
添田祐冶1、吉野 淳 1、藤村直幸1
聖マリア病院麻酔科
/L'&2 は観血血圧情報が入力されている生体情報モニタからアナログ出力された圧波形情
報を解析、血液量に変換し、 拍毎に血行動態パラメータを表示する装置である。
【症例1】 か月の男児。身長 ㎝体重 ㎏。在胎 週 日、$SJDU、J、帝王
切開で出生。心室中隔欠損症あり、心不全症状あり、肺動脈絞扼術の方針となった。左室
駆出率 %、心室中隔欠損孔は PP で左右シャントだった。麻酔導入・維持は空気、セ
ボフルラン、フェンタニル、ロクロニウムで行った。肺動脈絞扼により体血圧は PP+J
から PP+J に上昇、肺動脈圧は PP+J から PP+J に低下、肺体血流比は から に低下、/L'&2 上の心係数は /PLQP²から /PLQP²に上昇した。
【症例2】 生日の女児。身長 ㎝体重 ㎏。在胎 週 日、$SJDU、J、経
膣分娩で出生。 生日より動脈管開存を認め、動脈管結紮術の方針となった。左室駆出率
%、動脈管は PP、心房中隔欠損孔は PP で左右シャントだった。麻酔導入・維持
は空気、セボフルラン、フェンタニル、ロクロニウムで行った。動脈管結紮により、体血
圧は PP+J から PP+J に上昇、/L'&2 上の心係数は /PLQP²から /PLQP
²に低下した。
【考察】/L'&2 は、急激な循環動態の変動に対するモニタリングとして有用な可能性があ
る。
【肺動脈絞扼時の心係数の変化】
【動脈管結紮時の心係数の変化】
90
CR2-3
整形外科手術中に高カリウム血症が原因で心室頻拍が発生した症例
あべしんたろう
安部伸太郎
福岡大学医学部麻酔科
症例は 歳の男性、足関節骨折に対して関節形成術が予定された。片腎による腎機能障
害(%81PJGO、&UPJGO、.PPROO)と心電図異常(67 上昇LQⅡ、Ⅲ、D9I)が
認められたが心臓超音波検査では左室壁運動異常はなかった。
入室時の血圧は PP+J、心拍数は 回分、心電図はⅡ誘導で洞調律であった。麻
酔は全身麻酔と伝達麻酔を行った。手術開始 分後に突然 67 が上昇し、心室性期外収縮が
散発した。血圧は PP+J、心拍数は 回分、632 は であった。67 は 分後に
平坦化し、心室性期外収縮は消失した。67 平坦後の 分後に突然心室頻拍が発生した(血
圧 PP+J、
心拍数 回分)
ため、直ちにリドカイン(PJ)、
ニトログリセリン
(PJ)
投与し、その後ニトログリセンリンの持続投与(μJNJPLQ)を開始した。心室頻拍発
生から 分後の心電図では 67 上昇していたが、 分後洞調律となり、67 は平坦化した。血
液検査で . が PPROO であったため *, 療法(グルコース J とインスリン 単位)を開
始した。 誘導心電図で 67 上昇は認めず、以後は洞調律で経過したが血圧の維持にはド
パミン μJNJPLQ、ノルアドレナリン μJNJPLQ を要した。手術時間は 時間 分、麻酔時間は 時間 分であった。
術後は集中治療室で *, 療法を継続し . は PPROO で推移した。心電図は洞調律で
経過し、翌日に抜管し術後に冠動脈 &7 を行い有意狭窄は認めなかった。術後に改めて病歴
を聴取したところ異型狭心症を疑わせる病歴があったことが判明した。
術中に発症した心室頻拍の原因は術前には診断できていなかった異型狭心症と高カリウ
ム血症が原因と考えられた。
91
CR2-4
心膜解除が脳組織混合血酸素飽和度を著明に改善した一症
かみざわせいいち
きのしたよしかず
おばた ゆ り え
まつきゆうか
しげ み け ん じ
神 澤 聖 一 、木 下 義 和 、小畑友里江、松木悠佳、重 見研司
福井大学医学部附属病院麻酔科蘇生科
収縮性心膜炎切除の術中管理に関する報告は多いが、術中の脳組織混合血酸素飽和度(以
下 U62)の変化に関する報告は少ない。今回我々は心膜切除範囲の広がりに伴い、U62 の
著明な上昇を得られた症例を経験したので、若干の文献的考察と合わせて報告する。
症例: 歳 男性 身長 FP 体重 NJ。予定手術:拍動下体外循環による心膜切除術
【現病歴】慢性心不全、腎不全で近医受診中に心膜肥厚を認め収縮性心膜炎と診断、外科
的治療が必要と診断された
【既往歴】 歳脳梗塞。 歳ペースメーカー(''')挿入。 歳頃より腎機能障害、甲
状腺機能低下
【胸部レントゲン】&75、右下肺浸潤影、両側胸水、左前胸部にペースメーカー
【心エコー検査】/$'PP、($、,9&PP
【心カテーテル検査】3$PP+J、3&:3PP+J、&2、&,、GLS3ODWHDX、
呼気時の心室内圧低下あり
【血液検査所見】3OW✕、37 活性 %、37,15、%13、&U、H*)5、
7%LO、$67$/7、&K(、γ*7
【麻酔経過】麻酔導入前に脳波モニタ(%,6 モニタ)
、U62 モニタ(,1926 モニタ)を前額
部に貼付し、観血的動脈圧用カテーテルを挿入した。導入はミダゾラム、フェンタニル、
プロポフォールによる血行動態を考慮し緩徐導入で行った。麻酔維持はプロポフォールと
フェンタニルで行った。U62 は麻酔前値は と低かったが、導入後は吸入酸素濃度が高
かったため一時的に まで上昇を得た。手術開始からは 前後で推移し、大腿動静脈か
らのカニュレーションによる部分体外循環開始後も U62 は低下すること無く安定していた。
心膜を切開、切除中に濃厚赤血球液 単位の輸血を行ったが、切除範囲が広がるに伴い U62
は上昇し、心膜切除、体外循環終了時には左右差なく 程度まで上昇、閉胸時にも低下し
なかった。その間中心静脈圧は漸次低下していった。経食道心エコーでは拡張障害の改善
が見られた。
【考察】麻酔中の脳酸素消費量は変化が少なく、U62 の増加は脳の還流量増加、若しくは
輸血による組織酸素供給量の増加を反映する。今回の U62 の変化は大量輸血、人工心肺流
量の上昇、人工心肺後も低下が見られないことから、心膜解除に伴ううっ血の改善による
ものと考えられた。
92
第35回日本
P1
TAK-085 は食塩感受性高血圧ラットにおいて EPA 単独群よりも降圧効果に優れる
す え た だいすけ
くさかひろあき
お が わ ひ さ お
みつやましょうけい
末田 大輔 1,2、日下裕章 1、小川久雄 2、光山勝慶 1
AE
AE
1
2
AE
AE
AE
AE
AE
AE
EA
熊本大学大学院生体機能薬理学
熊本大学大学院循環器内科学
【目的】ω3 多価不飽和脂肪酸は脂質異常の治療薬として知られているが、降圧効果や血圧
変動性に対する作用については不明である。TAK-085(ドコサヘキサエン酸(DHA)+エイコサペ
ンタエン酸(EPA))と EPA 単独療法における降圧効果の違いについて食塩感受性高血圧モデル
ラットを用いて検討した。
【方法】雄性ダール食塩感受性モデルラットに慢性テレメトリー持続計測システムを用いて
動脈血圧を持続的に測定し、
6 週令より 8%食塩負荷とし、8 週令より(1)ビークル群(2)TAK-085
3000mg/kg/day(TAK-085 群)(3)EPA1500mg/kg/day(EPA 群)に分け、それぞれ 20 時に 6 週間ず
つ経口投与し降圧効果を調べた。さらに動脈圧スペクトラム解析を行い、自律神経に対する
影響を調べた。同時に投薬前後に代謝ケージにて 24 時間ずつ採尿したのちに解剖し、血圧制
御に関わる因子について詳細に検討した。
【結果】EPA 群の活動期(暗期)と非活動期(明期)の降圧効果に有意差はなかった。興味深い
ことに、TAK-085 群は EPA 群と比べ、相乗的に食塩感受性高血圧を改善した。また、TAK-085
群は EPA 群と比べ、血圧変動性を改善した。
TAK-085 群は EPA 群と比べ、尿中カテコラミンを減少させ、尿中ナトリウム排泄を増加させ
た。さらにまた動脈圧スペクトラム解析において、TAK-085 群は EPA 群と比べ収縮期血圧変
動の低周波数変動量(LF of sBP)を低下させ、動脈圧受容器反射感受性(sBRG)を上昇させた。
【結論】TAK-085 投与は、EPA 単独投与と比べ、相乗的に食塩感受性高血圧ならびに血圧変動
性を改善する。この相乗的な改善には自律神経機能の改善やナトリウム利尿が関与している
と考えられる。EPA と DHA の併用療法は、食塩感受性高血圧において、有用な治療戦略とな
りうる可能性がある。
95
P2
慢性腎臓病合併高血圧への腎除神経は視床下部で抑制性アミノ酸を増強し降圧
効果を示す
にしはらまさあき
ひろおかよしたか
西 原 正 章 、廣 岡 良 隆 九州大学大学院医学研究院循環器内科学
九州大学大学院医学研究院先端循環制御学講座
【目的】慢性腎臓病&.'を伴う高血圧への腎除神経5'1は降圧効果を示すが詳細な機序
は不明である。高血圧の交感神経活動亢進の機序に視床下部室傍核391へのγアミノ酪
酸*$%$性の抑制減弱が知られ、今回&.'を伴う高血圧への5'1が391への*$%$性の抑制へ与
える影響を検証した。
【対象と方法】雄性,&5マウスを6KDP6、腎摘出1[、続く週後の5'15施行の有無
で群に分け661[61[5、収縮期血圧V%3をWDLOFXII法で、尿中ノルエピネフリ
ンX1(、ナトリウムX1D排泄量を測定した。麻酔下に391へ*$%$$受容体拮抗薬%LFを
投与し、血圧0$3、腰部交感神経活動/61$の変化を観察した。
【結果】1[群で週後にV%3X1(は上昇したYV66V%3±YV±PP+JQ SX1(K±YV±QJQ S。5'1週後でV%3は低下するも
X1(は変化なく、週後でX1(は低下したYV1[6V%3±YV±PP+JQ SYV1[6X1(±YV±QJQ S。5'1週後でX1Dは増
加したYV1[6±YV±PPROKQ S。391への%LF投与
で血圧、/61$は増加し、5'1週後に反応性が増加したYV1[6∆0$3EDVHOLQH0$3±
YV±%, p<0.05; ∆/61$±YV±SQ 。
【結論】&.'を伴う高血圧への5'1は短期的にナトリウム排泄を増加し、長期的に391への
*$%$性の抑制を増強し降圧効果を有する。
96
P3
血小板減少を伴う巨大右房粘液腫に対する一治験例
さいとうまさひと
あさのなおき
にいみかずほ
おおたかずふみ
いのうえたかし
たなかこうゆう
ごんしげよし
いのうえゆうほう
齊 藤 政 仁 、朝野直城、新美一帆、太田和文、 井 上 尚 、田中恒有、権 重 好 、井 上 有 方 ふかいりゅうた
おおはたとしひろ
深井隆太、大 畑 俊 裕 獨協医科大学越谷病院心臓血管外科・呼吸器外科
【目的】心臓粘液腫は、心臓腫瘍のうち最も頻度が高く、様々な臨床像を呈する。今回、
原因不明の血小板減少症を精査中に右房内巨大腫瘍を指摘され腫瘍摘出術を施行し、血小
板減少症が治癒した症例を経験した。希ではあるが血小板減少の鑑別診断として心臓粘液
腫を念頭におくことを啓蒙する貴重な一症例であるため報告する。
【対象と方法】症例は 才男性。高血圧、高脂血症管理目的に近医通院していたが、採血
上、持続する血小板減少を認め、精査目的に施行した &7 にて右房内腫瘍を認め、心臓超音
波検査を施行した。拡張期に三尖弁に嵌頓する巨大右房内 PRELOHWXPRU を認めた。腫瘍摘
出術の適応と診断した。 年 月 日右房腫瘍摘出術を施行した。
【結果】手術時間 時間 分大動脈遮断時間 分であった。右房内には8FP×6FP×6
FP の右房内の大部分を占拠する巨大腫瘍を認めた。腫瘍表面は表面不正、淡黄色、弾性硬
であった。,9& よりの右房自由壁に2FP×2FP の腫瘍付着部を認め HQEORFN に腫瘍を摘出
した。三尖弁は腫瘍圧排により重度変性しており著明な弁輪拡大を認めた。0&PP にて
7$3 を施行した。手術当日、人工呼吸器離脱、術後経過は順調であり第14病日独歩で退
院した。退院時血小板数は ×4XO と改善、手術により血小板減少症は改善された。
【結論】心臓腫瘍のうち心臓粘液腫は最多であり日常臨床で時に遭遇する疾患である。無
症状で偶発的に見つかる症例から心腔内狭窄症状、不定愁訴、塞栓症状まで多彩な臨床所
見を呈するが本症例のように粘液腫による続発性血小板減少症として発症することは極め
て希である。また、心臓粘液腫の多くは左房に発生し右房発生率は ~%程度と報告さ
れ比較的希である。慢性的な三尖弁圧排により三尖弁の変性を来している点も特筆に値す
る。発生部位、臨床経過、隣接する房室弁の変性を認める非常に希少な症例を経験した。
外科治療により循環制御、治療し得た症例であった。
97
P4
睡眠呼吸障害患者における血管内皮機能障害は、睡眠中の低酸素の蓄積に依存する
さわたりひろゆき
AE
ちしゃきあきこ
にしざかまり
とくのうともたけ
よしむらちから
おおくさともこ
あんどうしんいち
澤渡浩之 1、樗木晶子 1、西坂麻里 2,3、 得能智武 2、 吉 村 力 3、大草知子 3,4、 安藤真一
EA
AE
AE
AE
AE
AE
EA
A E
E
A
AE
AE
AE
3
EA
1
九州大学大学院医学研究院保健学部門
九州大学大学院医学研究院循環器内科学
3
九州大学病院睡眠時無呼吸センター
4
九州大学病院きらめきプロジェクトキャリアー支援センター
2
【目的】睡眠呼吸障害(SDB)による低酸素血症は、フリーラジカルや NF-κB の発現によって血
管内皮の機能を低下させることが知られている。血管内皮機能障害は、高血圧症や動脈硬化症、
心不全患者においては生命予後に関与する因子として臨床的にも重要である。一方、心不全患
者の SDB による悪影響はその重症度ではなく SDB の有無に関連していることが報告されており、
心血管イベントとの関連においては従来の SDB の指標による評価には疑問が残る。本研究は、
睡眠中の低酸素血症指標を加えて従来の SDB の指標と血管内皮機能との関連を検討した。
【対象と方法】SDB 疑いの外来患者に対して、終夜睡眠ポリソムノグラフィー(PSG)と血管内
皮機能を反映する血流依存性血管拡張反応(%FMD)を計測した。また、新しい睡眠中の低酸素
蓄積の指標として、低酸素の時間積分値(TDS, 計算方法: TDS=[100% - 睡眠中の平均 SpO2]x
実睡眠時間)を考案し、算出した。
【結果】対象者 50 名(年齢 58±13 歳, 男性 43 名)の SDB の重症度は、軽度から重症で(無
呼吸低呼吸指数 [AHI]: 44.6±22.5 回/時, 最低 SpO2: 74.9±9.6%)
、%FMD の平均は 4.2±2.3%
と低値であった。AHI、酸素飽和度低下指数 (3%ODI)、最低 SpO2 と%FMD との有意な関連は無か
った(AHI: β=0.06, 3%ODI: β=-0.13, 最低 SpO2: β=0.10)。一方、TDS のみ%FMD と有意な
負の関連を示し(β=0.47, p=0.001)、交絡因子で補正してもその関連はそのままであった(β
=-0.38, p=0.007)。
【結論】今回、簡便な低酸素の蓄積指標として TDS を考案した。睡眠中の低酸素の蓄積の程度
は、SDB 患者における血管内皮機能傷害と関連することが示された。TDS は、循環器疾患発症の
リスクを評価する有用な指標と考えられる。
98
P5
下肢加温療法は、睡眠呼吸障害を合併した慢性心不全患者の心機能を改善する
さわたりひろゆき
ほそかわかずや
みやぞのまみ
にしざかまり
あんどうしんいち
たけもとまさお
いのうえしゅうじろう
澤渡浩之 1、細川和也 2、宮園真美 1、西坂麻里 2,3、 安藤真一 3、竹本真生 4、 井上修二朗
AE
EA
AE
AE
AE
AE
AE
さかもとたかふみ
AE
AE
はしぐちのぶこ
EA
ちしゃきひろあき
AE
AE
AE
おおくさともこ
2
E A
すなかわけんじ
坂本隆史 2、アニタ・ラハマワティ 2、橋口暢子 1、 樗木浩朗 5、大草知子 3,6、砂川賢二 2
AE
EA
AE
AE
AE
EA
AE
AE
AE
AE
ちしゃきあきこ
樗木晶子 1
AE
AE
1
九州大学大学院医学研究院保健学部門,
九州大学大学院医学研究院循環器内科学
3
九州大学病院睡眠時無呼吸センター
4
宗像水光会総合病院 循環器内科
5
保健医療経営大学
6
九州大学病院きらめきプロジェクトキャリアー支援センター
2
【目的】我々は、これまで慢性心不全(CHF)患者において遠赤外線で下肢のみを温める下肢加
温療法(LTT)は睡眠を改善することを報告してきた。深い睡眠中は、交感神経活動が低下して
いることから CHF 患者において睡眠の援助をすることは心機能の改善に寄与することが考え
られる。我々は、終夜睡眠ポリグラフィー(PSG)の気流と血中酸素飽和度から自動的に心機能
を推定する方法を開発した。本研究は、この方法を用い CHF 患者において LTT の心機能への
効果を検討した。
【対象と方法】17 名の安定した心不全患者(年齢 54±13 歳, 男性 13 名)に対して、LTT(45℃
15 分の加温と 30 分の保温)を 3 晩連続して行った。PSG は介入の前後で計測した。心機能を
評価するために、睡眠時無呼吸後の呼吸再開から血中酸素飽和度が上昇するまでの時間を心
臓で駆出された酸素化された血液が指先まで届く時間(Lag time)として自動的に算出した。
この指標は、左室駆出率(EF)と心係数と強く相関することを確認している。
【結果】3 晩の LTT によって、最も浅い睡眠期 Stage1 が有意に減少し(21.3±11.5 vs 16.9
±10.0%, p=0.02)、睡眠期 Stage2 が増加した。これは、睡眠の改善を意味する。また、Lag
Time>35 秒の重度に心機能が低下(EF<35%相当)している群では有意に Lag Time は短縮した
(44±7 vs 38±4 秒, p=0.03)。
また、Lag Time の短縮と睡眠期 Stage1 の減少及び睡眠期 Stage2
の増加は相関した(Stage1: r=0.48, p=0.05; S1tage2: r=-0.51, p=0.04)。
【結論】CHF 患者において睡眠を改善することは心機能の改善に寄与することが示唆された。
CHF 患者における LTT は、簡便で有用な代替療法の1つとなり得る。今後長期効果を検討す
る必要がある。
99
P6
$NW過剰発現による骨格筋肥大は腎臓病モデルマウスの腎障害を軽減する
はなたにしんすけ
いずみややすひろ
あ ら き さとし
き む ら ゆういち
おのうえよしろう
お が わ ひさ お
花 谷 信 介 、泉 家 康 宏 、荒木 智 、木村 優 一 、尾 上 喜 郎 、小川 久 雄
熊本大学循環器内科学
㻌
【目的】骨格筋萎縮は腎臓病患者の予後悪化因子であると報告されているが、骨格筋量の
増加それ自体が腎疾患へどのように影響するかは明らかにされていない。本研究の目的は、
骨格筋の肥大が腎障害に対しどのような影響を及ぼすかを検討することである。
【対象と方法】7HWRQ システムにより任意の時期に骨格筋特異的に $NW を過剰発現するこ
とが可能なマウス$NW7* マウスを用い、骨格筋での $NW 過剰発現 週間後に $NW7*
マウス、野生型マウスの両群に片側尿管結紮882を施行した。術 日後に閉塞腎および対
側腎を採取し、組織学的検討、遺伝子発現や細胞内シグナルの比較検討を行った。
【結果】骨格筋での $NW 過剰発現誘導により、野生型マウスと比較して $NW7* マウス骨
格筋重量の有意な増加が認められた。882 日後の腎の組織学的評価を行ったところ、野生
型マウスの閉塞腎では対側腎と比較し著明な尿細管障害、間質線維化の増加を認めたが、
これらは $NW7* マウスにおいて有意に減弱していた。また、882 によって野生型マウスの
閉塞腎で増加した炎症関連、線維化関連因子の遺伝子発現は $NW7* マウスで有意に抑制
されていた。882 日後の腎組織を用いたウエスタンブロットにて、閉塞腎での H126 リン酸
化が野生型マウスと比較し $NW7* マウスで有意に増加していることが明らかとなった。
126 阻害剤である /1$0( の投与により、$NW7* マウスで見られた腎保護効果はキャンセ
ルされた。
【結論】$NW 過剰発現による骨格筋肥大は、882 による腎間質の線維化や炎症を減弱させ
た。この腎保護効果は 126 を介していることが示唆された。今回の結果は、慢性腎臓病患
者において抵抗運動のような骨格筋量を維持するもしくは増加させる運動療法が、臨床上
有用な治療戦略と成り得ることを示唆する所見と考えられた。
100
P7
メタボリック症候群モデルマウスにおける食塩感受性高血圧は
脳内上皮性 1D チャネル活性化を介している
たか ね ざわむつみ
い とうこう じ
ひろおかよしたか
すながわけん じ
髙 根 澤 睦 、伊 藤 浩 司、廣 岡 良 隆 、砂 川 賢 二
九州大学大学院医学研究院循環器内科学
九州大学大学院医学研究院先端循環制御学講座
【目的】メタボリック症候群0HW6では食塩感受性高血圧を呈し、心血管イベント発症
増加につながることが示唆されている。遺伝的食塩感受性高血圧の脳内機序として脳内 1D
チャネル(1D&活性化による交感神経活性化が知られているが、0HW6 におけるこの機序
の関与は明らかでない。従って、
本研究では 0HW6 の食塩感受性獲得の脳内機序を検討した。
【方法】雄性 &%/- に 週齢から高脂肪食を与え、0HWV モデル',2を作成した。対
照群&17には通常食を与えた。 週齢より、通常水投与群(56)と 食塩水投与群+6
に分け 週間観察( 週齢)した。 週齢より WDLOFXII 法を用いて血圧測定を行い、交
感神経活性の指標として尿中ノルエピネフリン排泄量X1(を測定した。脳内 (1D& 活性の
影響を評価するため、',2+6 に、(1D& 阻害剤ベンザミル%HQの脳室内投与を行った。
【結果】 週齢より ',2+6 で血圧上昇を認め',2+6±YV',256±PP+J、
Q S、 週齢までその血圧差が維持された。',2+6 の X1( は食塩負荷前と比
較して上昇を認めた 週齢±QJGD\YV 週齢±QJGD\Q 3。
これら食塩負荷による変化は、',2+6%HQ では認めなかった食塩負荷 週目、',2+6
±YV',2+6%HQ±PP+J、Q S。また、&17 では、食塩負荷による交感神
経活性化や血圧上昇は認めなかった。
【結論】0HW6 モデルにおいて食塩負荷により交感神経活性化を伴う血圧上昇を認めた。
(1D& 阻害薬の脳室内投与が食塩負荷後の血圧上昇を抑制したことから、0HW6 の食塩感受性
高血圧には脳内 (1D& の活性化が関与していることが示唆された。
101
P8
間歇的低酸素負荷が %LR 心筋症ハムスターの心筋組織病変に与える影響
せん よ う こ
のむらあつお
か と う りゅうじ
やすだ ゆ き
ふじわら ゆ う じ
まついみか
むろやみさき
銭 瑶子、野村篤生、加藤 隆 児 、安田侑紀、藤 原 祐治、松井美佳、室谷美咲
かわかみじゅん
いじりよしお
やまぐちたけひろ
いずみやすかつ
よしやまみのる
さかもと あ い じ
た な か かずひこ
川 上 淳 、井尻好雄、山 口 雄 大 、 泉 康 雄 、葭 山 稔 、阪 本 英二、田中 一 彦 はやし て つ や
林 哲也
大阪薬科大学循環病態治療学研究室
大阪市立大学分子病態薬理学
大阪市立大学循環器病態内科学
国立循環器病研究センター血管機能研究室
【目的】重症心不全患者において睡眠時無呼吸に伴う間歇的低酸素負荷の有無は患者の予
後を左右する。これまでに我々は正常マウスやラットに対し、間歇的低酸素負荷が左室心
筋における活性酸素種の産生や、心筋細胞の肥厚および変性に関与することを報告した。
今回、心筋症ハムスターを用いて間歇的低酸素負荷による心筋細胞変性の影響と水素ガス
吸入の効果を検討した。
【対象と方法】雄性 1RUPDO6\ULDQ ハムスターQ および %LR 心筋症ハムスター
Q 約 週齢を間歇的低酸素下%酸素濃度 分、
%酸素濃度 分の反復を日中
時間および通常酸素下で 日間飼育した。また、間歇的低酸素負荷時に水素ガス
吸入を行った。麻酔下にて心機能測定後、心臓を摘出して、光顕・電顕および免
疫組織学的検索を行った。
【結果】心筋症ハムスターでの間歇的低酸素負荷にて、左室収縮機能駆出率 が低
下し、心筋細胞横径μm)および間質線維化率が増加した。FRQWUDFWLRQ
EDQGQHFURVLV や = 帯の変性などが認められた。さらに、酸化ストレス指標とな る
K\GUR[\QRQHQDO+1(タンパクおよび 6XSHUR[LGH 産生量が増大した。水素ガス吸
入により酸化ストレスは軽減し、組織微細構造は保護された。
【結論】心筋症ハムスターにおける間歇的低酸素負荷により心筋細胞変性が促進され、そ
の原因に酸化ストレス増大の関与が示唆された。また、水素ガス吸入は酸化ストレスを軽
減し、心筋細胞変性の抑制に効果的であると考えられた。
102
P9
経皮的冠動脈形成術により冠動脈微小循環機能は直ちに回復する
ふ け そういちろう
かしはら ゆ う や
な ん ば ゆうすけ
た な か まさみち
ゆ も と あきひさ
さいとうひろのり
さとうてつや
福家 聡 一 郎 、柏 原 悠也、難波 悠 介 、田中 正 道 、湯本 晃 久 、齋 藤 博 則 、佐藤哲也
岡山赤十字病院循環器内科
【目的】経皮的冠動脈形成術3&,は冠循環において、拡張期冠動脈圧流量関係を変化さ
せるが、その機序については十分検討されていない。
【対象と方法】狭心症の診断で左前下行枝に対し 3&, を施行した 名に対し、狭窄末梢に
おいて圧流速センサ付ガイドワイヤーにて 3&, 前後で計測した。アデノシン三リン酸の
μJNJ分の持続投与による最大充血下において、サンプリング周波数 +] で圧と流
速を同時記録し、冠血流予備量比))5と冠血流速予備能&)95を計測した。圧と流速は
秒間のアンサンブル平均を算出し、以降の解析に使用した。冠動脈圧流量関係におい
て、LQVWDQWDQHRXVK\SHUHPLFGLDVWROLFYHORFLW\SUHVVXUHVORSHLQGH[,+'936冠動
脈コンダクタンス指標と圧軸切片3]Iを計算した。また、ZDYHLQWHQVLW\DQDO\VLV を
用いて 種の波図を同定した。
【結果】))5 は ± 0.161 から 0.898 ± 0.065 (P < 0.001)へと改善した。3]I は ±PP+J から ±PP+J3 へと、,+'936 は ±FPVPP+J
から ±FPVPP+J3 へと変化した。:DYHLQWHQVLW\DQDO\VLV では、
IRUZDUGWUDYHOLQJZDYH と EDFNZDUGWUDYHOLQJVXFWLRQZDYH が増大していた表。
【結論】狭心症では 3]I は低下し、,+'936 は増大している。3&, により、狭窄解除による
IRUZDUGWUDYHOLQJZDYH の増大とともに EDFNZDUGWUDYHOLQJVXFWLRQZDYH が増大してい
る。3&, により冠動脈微小循環の特に吸引機能は直ちに回復する。
103
P10
術中異常低血圧をきたした脊椎手術症例
のぶくにけいこ
みやざきりょうへい
ひがしみどりこ
ほかすみお
信國桂子、宮 崎 良 平 、東みどり子、外須美夫
国立病院機構九州医療センター麻酔科
九州大学病院手術部
九州大学医学部麻酔蘇生学講座
【背景】周術期には出血や麻酔薬による循環抑制など、様々な原因で血圧低下が生じる。今回我々は
脊椎手術中に高度低血圧をきたして循環管理に難渋した症例を経験したので、報告する。
【症例】 歳女性、身長 FP、体重 NJ。既往歴なし。手術 か月前より生じた両下肢脱力により
急速に歩行困難となった。第 胸椎の転移性(甲状腺癌)脊椎腫瘍の診断で、後方除圧固定術が緊急
手術として申し込まれた。
麻酔計画】プロポフォール、レミフェンタニルを用いた全静脈麻酔で麻酔維持。大量出血に備えて橈
骨動脈より観血的動脈圧をモニターする方針とした。
【経過】麻酔導入から手術開始までは予定通り進行した。腫瘍の切除に伴う出血により血圧の低下が
生じたため、細胞外液補充液や膠質液の輸液、ドパミン持続静注、フェニレフリン投与などで対応し
ていた。出血量が PO をこえた時点で赤血球濃厚液を開始し、その後出血量の増加にともなって新
鮮凍結血漿を投与した。さらなる血圧の低下に対してノルアドレナリンの投与を開始したがほとんど
昇圧は不可能であった。この頃、顔面と上肢の著明な紅潮が認められたため、輸血関連アナフィラキ
シーを強く疑い、凍結血漿を中止してアドレナリンとステロイド、抗ヒスタミン薬の投与を開始した
ところ、血圧は速やかに改善した。この間、気道の閉塞は軽度であった。手術時間 分、術中出血
量 PO であったが、循環動態不安定のため挿管管理下に ,&8 入室となった。
【考察】本症例では大量出血に加えて輸血関連アナフィラキシーが併発し、高度低血圧を引き起こし
たと考えられる。脊椎手術時は腹臥位での麻酔管理を余儀なくされるため、皮膚紅潮の所見に気づく
のが困難である。本症例でも出血による血圧低下との鑑別が困難であり、診断に時間を要した。輸血
関連アナフィラキシーは稀ではあるが生命を脅かす合併症であり、速やかな診断と治療が必要である。
104
P11
肺動脈バルーン拡張術で肺高血圧が改善した慢性血栓塞栓性肺高血圧症の1例
さかもとかずお
あべこうたろう
まとばてつや
おおいけいじ
むかいやすし
ひろおかよしたか
すなかわけんじ
坂本和生 1、阿部弘太郎 2、的場哲哉 1、大井啓司 1、向井靖 1、 廣岡良隆 2、砂川賢二 1
AE
AE
1
2
AE
AE
AE
AE
AE
AE
AE
E A
AE
EA
AE
AE
九州大学大学院医学研究院循環器内科
九州大学大学院医学研究院先端循環制御学講座
53 歳女性。50 歳時に急性肺血栓塞栓症を発症した。52 歳時より安静時呼吸苦が出現し、前
医にて慢性血栓塞栓性肺高血圧症と診断された。当院でのカテーテル検査では肺動脈圧
(PAP):85/26/46mmHg と高く、肺動脈造影で両側肺動脈分枝に多数の band と web を認め肺動
脈バルーン拡張術(BPA)の方針とした。初回 BPA にて心係数(CI)は 2.4 から 3.1L/min/m2 へ増
加、肺血管抵抗(PVR)は 460 から 420dynes・sec/cm へ低下した。その後、約 2 か月毎に計 6
回の BPA を行い、PAP:52/18/31mmHg、CI:3.1L/min/m2、PVR:278dynes・sec/cm まで改善
し、6 分間歩行距離は 450m まで延長し WHO 機能分類はⅣからⅡへ劇的に改善した。
105
P12
洞不全症候群と房室ブロック患者における右室ペーシングと血管内皮機能の関連
あ
べ いちたろう
ゆ
ふ くにお
やな い ようすけ
むろぞのゆうきち
いちのせ ま さ し
たかくらたけし
た か は し なおひこ
安部 一太郎 1、油 布 邦夫 1、栁 井 陽 介 2、室 園 祐 吉 2、一瀬 正志 2、高倉 健 2、髙 橋 尚彦 1
AE
1
2
AE
AE
AE
AE
AE
AE
AE
AE
AE
AE
AE
AE
AE
AE
AE
AE
AE
AE
AE
AE E
E
A
AE
AE
AE
AE
大分大学医学部循環器内科・臨床検査診断学講座
南海医療センター
【目的】多くの研究により、右室ペーシングが心血管イベントに悪影響を与えることが報告さ
れているが、その根本的な原因は明らかとはいえない。本研究では、右室ペーシングが血管内
皮機能に及ぼす影響を検討する。
【対象と方法】Dual-chamber DDD ペースメーカ植え込み患者 65 例(女性 39 名、男性 26 名、
平均年齢 79.1±6.7 歳)を対象とした。原疾患は洞不全症候群グループ(SSS-G)が 24 名(平均
年齢 79.8±1.4 歳)
、
房室ブロックグループ(AVB-G)が 41 名(平均年齢 78.8±1.1 歳)であった。
直近 3 ヵ月間のペーシング率を測定し、血管内皮機能は EndoPAT2000®を用いて、reactive
hyperemia peripheral arterial tonometry index (RHI)にて評価した。
【結果】
SSS-G と AVB-G の 2 群で年齢、性別などに差は認めなかった。右室ペーシング率は AVB-G
で 82.6±5.3%と SSS-G の 22.0±7.0%と比して有意に高かった。
SSS-G では RHI と右室ペーシング率に有意な負の相関を認めた(r=-0.52, p=0.0088)。重回帰分
析では右室ペーシング率が RHI の独立した予測因子であった(F=6.149)。しかし、AVB-G では RHI
と右室ペーシング率に有意な相関は認めなかった。
【結論】本研究では、洞不全症候群患者において右室ペーシング率と血管内皮機能の関連を認
めた。右室ペーシングが心血管イベントに悪影響を与える一因として、血管内皮機能の低下が
関連していることが示唆された。
106
P13
エキシマレーザーを用いた心内リード抜去術の当院における麻酔方法の実際
か わ べ さとし
もりさき は る き
おかむら み さ
よしむらはやし
河邉 聡 、森 嵜 晴喜、岡 村 美砂、吉 村 速 済生会福岡総合病院麻酔科
【目的】植込み型ペースメーカ(30,や植込み型除細動器(,&'等のペーシングデバイス
使用例の増加に伴い、感染やリード機能不全を理由にこれら心内リードの抜去を必要とす
る症例が増えている。しかし癒着等によるリード抜去困難症例では、開胸手術に準じたリ
ード抜去術を行わねばならず、リスクが高い。
6SHFWUDQHWLFV 社製リード抜去エキシマレーザシステムは、リード周囲の組織をレーザ焼灼
により凝固し低侵襲でリード抜去が可能な新しいシステムであり、平成 年 月以来運
用を開始した当院での麻酔方法と実際の症例を報告する。
【麻酔方法】本術式の重篤な合併症として、術前からの高度致死的不整脈、及び周囲組織
の損傷による血胸・心タンポナーデがあり、麻酔管理の特徴として①導入時より経皮的・
経静脈的ペーシングデバイスの準備が必要②リード抜去前後の心嚢液の急激な増加をモニ
ターするため経食道心エコー(7((が必須③タンポナーデ発症時、開胸心臓手術に移行で
きる全身麻酔管理が必要、の 点があり、緊急時に備えて心臓外科医、臨床工学技士が終
了まで待機する点も特徴的である。
【症例】 歳男性。30, 感染症のためリード抜去術が予定された。経皮的除細動パッドを
貼付し動脈ラインを確保後、プロポフォール、フェンタニル、ロクロニウムで導入、挿管、
レミフェンタニルとセボフルランで維持し、中心静脈ライン、7(( を留置した。執刀後、大
腿動静脈のシースから術者により一時ペーシングを留置した。心室・心房リードを抜去す
る際、7(( にて心嚢液の貯留を確認したが、心タンポナーデを疑わせる所見は見られなかっ
た。問題なく手術は終了し、速やかに覚醒、抜管、,&8 帰棟となった。
【考察】当院では現在まで 症例を重篤な合併症なしに施行できているが、致死的合併症
に備えた麻酔医の負担と人的・物的リソースの待機が、今後の解決すべき課題である。
107
P14
病的心臓のメカノエナジェティクスにおける 6(5&$D 過剰発現の影響
おばた こう じ
みつやましんいち
たけしただいすけ
もりたひろのぶ
たかぎみやこ
小畑孝二、光 山 晋 一、竹 下 大 輔、森田啓之、高 木 都
奈良県立医科大学医学部第二生理学
岐阜大学大学院医学系研究科生理学
【目的】病的心臓において筋小胞体のカルシウムポンプ6(5&$発現量の減少はよく知られている
本研究では6(5&$D 過剰発現ラット(7*)を用いてイソプロテレノール,62長期投与による肥大心
および不全心の左心室の力学的エネルギー学的性質(メカノエナジェティクス)について検討した
【対象と方法】7* および野生型ラット:7に生理的食塩水または ,62PJNJGD\をミニ浸透圧
ポンプで 週間投与した 群:7&7:7,62Z:7,62Z7*&77*,62Z7*,62Zの左心
室メカノエナジェティクスを摘出心臓の血液交叉灌流実験系を用いて調べたESP ペーシング下
で左心室容積を変化させて左心室圧と心筋酸素消費をリアルタイム計測し 心拍毎の総機械的エネル
ギー(39$)と心筋酸素消費量(92)の関係を求めた
【結果】心エコーによる形態的変化は,62Z から Z 投与によって心肥大から心不全への特徴を示し
たが:7 と 7* で有意な違いは認められなかった左心室の収縮期末圧容積関係((6395)は:7,62Z
で明らかに下方移動し心機能低下を示した一方9239$ 直線関係は 群間で違いはなかったしか
し収縮性の酸素コストは 7*,62Z において他群と比べて有意に小さくより少ない酸素消費量で同
じ収縮性を発揮できることを示している7*3群の心臓では6(5&$ の P51$ 発現量は有意に増加して
いたがタンパク発現量は減少し,62Zでは:7&7と同程度まで減少していた一方ミトコンドリアに
おける $73 産生酵素の転写因子である 7)$0 発現量は増加していた
【結論】以上の結果により病的心臓における 6(5&$D の長期的な過剰発現の有用性が示された
108
P15
Thrombospondin-2 は, 慢性心不全患者の予後予測の有用な新規バイオマーカー
である
き む ら ゆういち
AE
いずみややすひろ
はなたにしんすけ
AE
AE
お が わ ひさ お
木村 優一 、泉家 康宏 、花谷 信介 、小川 久 雄
AE
AE
AE
AE
AE
AE
AE
AE
AE
E
熊本大学大学院医学教育部循環器内科学
【目的】Thrombospondin-2(TSP-2)は細胞-細胞マトリックス間の相互作用に関与するマトリ
セルラー蛋白の一種である。動物実験において TSP-2 ノックアウトマウスは心収縮力の低下
や圧負荷による心破裂が多いことが報告されている。
今回、我々は TSP-2 の血中濃度が,慢性心不全患者において有用なバイオマーカーと成りう
るかを検討した。
【対象と方法】左室収縮能が低下した心不全患者(HFrEF)患者 101 名と control 群 17 名を対
象に ELISA 法を用いて血清 TSP-2 を測定した。同様に左室収縮能が保持された心不全(HFpEF)
患者 150 人も対象として測定を行った。HFpEF の定義は, 左室駆出率 50%以上, かつ血漿 BNP
値 100pg/mL 以上もしくは E/e’15 以上とした。
【結果】血清 TSP-2 値は control 群に比して HFrEF 群で有意に高値であった。HFrEF 群にお
いて TSP-2 の中央値(17.8ng/ml)で 2 群に分類したところ平均の NYHA 分類は TSP-2 高値群で
有意に高値であった(p=0.032)。カプランマイヤー曲線では,TSP-2 高値群で低値群と比べ有
意に無事故生存率が低いことが示された(ログランク検定:p=0.03)。ステップワイズ法による
Cox 比例ハザード解析ではヘモグロビン値(ハザード比:0.66 [95%信頼区間:0.53-0.82],
p<0.0001)と血清 TSP-2 高値(3.35 [1.03-10.91], p=0.044)が, 独立した予後予測因子である
ことが証明された。
HFpEF 患者では、HFrEF 患者と同様に血清 TSP-2 値は NYHA 分類と有意に相関していた
(p<0.001)。TSP-2 高値群では血漿 BNP 値, 血清高感度トロポニン T 濃度, および右心カテー
テル検査による肺動脈楔入圧が低値群に比べ有意に高値であった(149.7 [75.2-250.4] vs.
50.2 [26.5-146.8] pg/mL, p<0.001; 0.015 [0.009-0.029] vs. 0.009 [0.005-0.016] ng/mL,
p=0.003; 13.2±5.9 vs. 9.9±3.9, p=0.004)。カプランマイヤー曲線では TSP-2 高値群で
低値群と比べ有意に無事故生存率が低いことが示された(ログランク検定:p=0.006)。ステッ
プ ワ イ ズ 法 に よ る 多 変 量 解 析 に て , 血 漿 BNP 高 値 ( ハ ザ ー ド 比 :1.98 [95% 信 頼 区
間:1.26-3.10], p=0.003)と血清 TSP-2 高値(2.59 [1.09-6.14], p=0.031)が, 独立した予後
予測因子であることが証明された。
【結論】
血中 TSP-2 値が慢性心不全患者の疾患重症度や予後不良と関連することが示された。
TSP-2 の測定は, 慢性心不全患者の診療に有用である可能性が示唆された。
109
P16
末梢化学受容器切除は交感神経活動抑制を介して心筋梗塞ラットの慢性期の心不全を
改善する
にしざきあきこ
さくけいた
きしたくや
いでともみ
すなかわけんじ
西崎晶子、朔啓太、岸拓弥、井手友美、砂川賢二
九州大学大学院医学研究院循環器内科
九州大学大学院医学研究院先端心血管治療学
【目的】心不全患者における頸動脈化学受容器の過剰応答による交感神経活性化は病態増悪の一因で
あり、予後との関連も報告されている。本研究において我々は、頚動脈化学受容器切除&%'が交感
神経過活動を抑制し、心筋梗塞後心不全を改善すると仮説をたて実験を行った。
【対象と方法】 週齢の 6SUDJXH'DZOH\ ラットに心筋梗塞0,を作成した。 週齢で両側頸動脈分
岐部の神経組織を切除し&%'を行った。
ラットを1RUPDO群0,&%'1 &+)群0,&%'1 &%' 群0,&%'1 に割り付け、 週齢における心不全指標の評価を行った。
【結果】&%' 群は &+) 群と比較し平均心拍数の著明な低下を認めた&+)±YV&%'±ESP
S。&%' 群では、両心室重量±YV±JNJSおよび左室拡張末期圧の
低下±YV±PP+JS、
/9PD[GSGW の増加±YV±PP+JV、
肺重量は著明に低下±YV±JNJSし、心機能の改善、心室リモデリング
抑制、肺鬱血の低下が示された。血中ノルエピネフリンは &%' 日後から低下傾向を示し、 週間後で
は有意な低下を認めた±YV±SJP/S。
【結論】0, 後心不全に対しての &%' は交感神経抑制を介して心リモデリングおよび肺うっ血を著明に
改善する。&%' は心不全治療における新たな神経調節性治療となり得る。
110
P17
心不全患者個別化 3 次元心臓モデルと肺循環・体循環を連結させた
心機能シミュレーション技術の開発
あきたとしあき
秋田利明
E
金沢医科大学心臓血管外科
【目的】コンピュータ編み機を用いて心不全患者毎に最適化されたテイラーメイド方式の
臓リモデリング防止心臓サポートネットを設計するために、個別化された有限要素法 3 次
元心臓モデルと肺循環・体循環を連結させた心機能シミュレーション技術を開発すること
【対象と方法】1.心不全患者の心臓 MRI cine mode 画像から拡張末期と収縮末期の心臓表
面、
両心室内腔面をトレースし、3 次元形状モデルを作成した。2.
メッシュ分割ソフト Simlab
を用いて心臓 3 次元形状モデルを約 40,000 個の 6 面体ボクセルメッシュに分割した。3.
Windkessel モデルと有限要素法構造解析ソフトウエア ANSYS を用い、心臓サポートネット
装着前後の拡張期の心臓壁応力、心室壁変位量および心臓表面着圧および両心室圧容量の
変化をシミュレートした。
【結果】有限要素法による解析では、1.左室乳頭筋付着部周囲の拡張期壁応力は高かった。
2.心臓サイズの 10%減のネット装着により壁応力は均一化され、乳頭筋周囲の壁応力も低
下した。3.条件下では左室圧容量関係は、一回拍出量を低下させること無く Emax を左上
方にシフトさせて左室収縮能の改善が得られた。
【結論】心不全患者の MRI 画像から個別化された心臓 3 次元モデルでの有限要素法心機能
ミュレーション技術を開発し、テイラーメイド方式心臓サポートネット設計に応用した。
本手法は左室形成手術や CRT 治療における術前後の心機能予測にも応用可能であり今後臨
床例での検証を行う予定である。
111
P18
心臓型アデニル酸シクラーゼの選択的阻害剤ビダラビンによる心房細動抑制
すいた けん じ
ふじた たかゆき
さいぶんせん
きんえいれい
おくむらさとし
いしかわよしひろ
吹田憲治、藤田孝 之、蔡 文 倩、金 慧 玲、奥 村 敏 、石 川 義 弘
横浜市立大学大学院医学研究科循環制御医学講座
鶴見大学歯学部生理学講座
【目的】アデニル酸シクラーゼ($&)は交感神経βアドレナリン受容体(β$5)シグナル経路の主要
な構成因子であり、各サブタイプの発現は高い臓器特異性を示す。β$5 遮断薬(β遮断薬)は心房
細動($))の治療において交感神経依存型 $) への使用が推奨されているが、導入時の心機能低下や呼
吸機能抑制が問題となる。心臓型 $& の遺伝子欠損マウスは、定常時の心機能は野生型と変わらないが、
過剰なカテコラミンストレスに対して抵抗性を示す。近年、我々は抗ヘルペス薬として知られるビダ
ラビンを心臓型 $& の選択的阻害剤として見出した。今回、我々はビダラビンによる心臓型 $& の選択
的抑制が $) 治療に有用であるかを検討した。
【対象と方法】本研究では、以下の実験によりビダラビンの効果を解析した。まず、野生型マウスの
各臓器から精製した膜タンパク質を用いて $& アッセイを行った。次に経食道バーストペーシングによ
りマウスに一過性 $) を誘発し、その持続時間を測定した。本実験系を用い、ノルエピネフリン(1()
投与による交感神経刺激下における $) 持続時間を調べた。また、心エコーによりマウスの左室駆出率
を調べた。さらに、マウスの心房筋細胞の &D動態を解析した。
【結果】ビダラビンは心臓組織の $& 活性を肺、腎臓、肝臓、膀胱および大脳皮質よりも強く抑制した。
一方、マウスに誘発した $) の持続時間は 1( 投与により著明に延長した。ビダラビンおよびβ遮断薬
メトプロロールは、1( 投与/非投与いずれの条件下でも $) 持続時間を有意に抑制した。メトプロロ
ール投与群で見られた左室駆出率の低下は、ビダラビン投与群では認められなかった。心房筋細胞に
おいて、
ビダラビンはイソプロテレノールによる &Dリークおよび自発的 &D放出頻度の増加を有意に
抑制した。
【結論】ビダラビンが心機能低下を起こすことなく $) を抑制する可能性が示唆された。
112
P19
慢性心不全患者での睡眠呼吸障害指標と心機能指標の関連についての検討
なかしまただみつ
おおくさ と も こ
な お ともこ
はらだのりこ
わ だ やすあき
うえやまたけし
中 島 唯 光 1、大 草 知子2、名尾朋子1、原田典子1、和田 靖 明 3、上 山 剛
い け だ やすひろ
さわたりひろゆき
ちしゃ き あ き こ
あんどうしんいち
こばやし し げ き
1
、小 林 茂樹1
や の まさふみ
池田 安 宏 4、澤 渡 浩 之 5、 樗 木晶子5、安 藤 真 一 6、矢野 雅 文 1
1
山口大学大学院医学系研究科器官病態内科学
九州大学病院きらめきプロジェクトキャリア支援センター
3
山口大学医学部附属病院検査部
4
山口県総合医療センター循環器内科
2
5
6
九州大学大学院医学研究院保健学部門
九州大学病院睡眠時無呼吸センター
【目的】慢性心不全&+)患者では高率に睡眠呼吸障害6'%が合併する。一般に 6'% の重
症度指標には $SQHD+\SRSQHD,QGH[($+,)が用いられているが、6'% を有する &+) 患者
では $+, と予後の関連性は弱いと報告されている。我々は、&+) 患者の心機能諸指標と、
6'% 重症度指標としての $+,、2[\JHQ'HVDWXUDWLRQ,QGH[2',、酸素飽和度低下の積
算値である $YHUDJHG7LPH'HVDWXUDWLRQ6XPPDWLRQ,QGH[7'6,の各指標の関連性を検
討した。
【対象と方法】対象は十分な薬物療法により安定した &+' 患者 名。退院直前にエプワー
ス眠気尺度テスト(66および脳波を含む睡眠ポリグラフ検査を施行した。7'6,=総睡眠時
間 [(-平均酸素飽和度として求めた。
【結果】患者 名の平均年齢は ± 歳、男性 名であった。1<+$ 分類および左
室駆出率(())の平均はそれぞれ ±、±%であった。(66 の平均は 点と
低値を呈した。$+, と同時測定 2',(U )、$+,と 7'6,(U )、7'6, と 2',
(U )には有意正相関があった。各指標と心機能指標(%13、()、肺動脈圧、'F7、((’)
には有意相関はなかった。()の低心機能患者 名のみの解析にても同様の結果であっ
た。中枢性睡眠時無呼吸 名では、$+, と 2', には有意正相関があったが、他の指標間
には相関はなく、各指標と心機能指標との有意相関もなかった。
【結論】循環器疾患患者には低酸素暴露が強い影響を与えるが、安定した &+) 患者では、
6'% の回数($+,)
、低酸素の回数(2',)、低酸素の積算(7'6,)と心機能指標との有意
な関連はなかった。以上より、これらの指標は心機能や心不全の短期的予後を反映する指
標としては不十分で、病態を的確に反映する新たな指標の開発の必要があると思われる。
113
P20
赤血球輸血用カリウム吸着フィルター使用中に高度低血圧を呈した一例
さいとう ま り な
おおば ゆ う ご
きむらまさみ
か ん だ ばしただし
ほか す み お
齋 藤 麻理奈、大庭由宇吾、木村真実、神田 橋 忠 、外 須美夫
九州大学病院麻酔科蘇生科 、 同手術部 、同メディカルインフォメーションセンター
【症例】68歳女性。身長 FP 体重 NJ。左内頸動脈瘤クリッピング術後再発に対して、
脳動脈瘤ネッククリッピング及び左外頸動脈中大脳動脈バイパス術を予定された。既往歴
に高血圧・多発性嚢胞腎による腎機能障害があり、+E9JGO の腎性貧血を認めていた。麻
酔導入は観血的動脈圧モニター下にフェンタニル、プロポフォール、ロクロニウム、麻酔
維持はレミフェンタニル、プロポフォールで行い大きな循環動態の変化はなかった。手術
開始4時間後、出血量は少量であったが +E6.2JGO と貧血の進行を認めたためカリウム
吸着フィルターを使用し 0$3 加赤血球濃厚液(5&&)の輸血を開始した。輸血開始約40分
後、急激に収縮期血圧50PP+J 台の低血圧を呈した。フェニレフリンの投与は効果なくノ
ルアドレナリン投与により血圧は回復した。このとき術野での出血は多くなく、高度低血
圧を呈したため手術操作は一時中断した。アナフィラキシーを疑う皮膚所見や気道内圧上
昇、聴診上の異常所見を認めなかった。低血圧の原因は不明であったが循環動態は安定し
たため手術を再開した。手術開始8時間40分後再度カリウム吸着フィルターを用いて新
たな製剤を用いて 5&& 輸血を開始した。輸血開始25分後、再び収縮期血圧50PP+J 台の
低血圧を来たした。ノルアドレナリン投与で速やかに血圧は回復した。輸血開始後に再度
低血圧を来した経過から輸血との関連性が最も考えられ、異なる製剤を用いていたことか
らカリウム吸着フィルターとの関連が最も疑われた。フィルターの使用を中止して同じ製
剤で輸血を再開したところ循環動態の変化を来さず、以降循環動態は安定したまま、予定
通り手術終了した。
【考察】カリウム吸着フィルターは腎障害患者や高カリウム血症患者などに対する輸血に
おいて有用である一方、使用中に高度の低血圧を来した症例が数例報告されている。低血
圧発症の機序は明らかになっておらず、今後更なる検討が望まれる。
114
P21
術前未診断の冠攣縮性狭心症により術中高度徐脈を呈した一症例
たなかまりこ
まつおかともか
いしばしただゆき
ふじもとあゆみ
やまだようへい
もりかわけいこ
田中万里子、松岡友香、石 橋 忠 幸、藤本鮎美、山田洋平、森川敬子
福岡市民病院麻酔科
聖マリア病院麻酔科
【症例】 歳男性。過去 回の腰椎手術歴があり、今回 / 除圧術を予定された。既往に内服加療中
の糖尿病と高血圧があり、生活歴として 日数本の喫煙歴があった。術前検査では採血上 +E$F が である以外異常は認められなかった。
【麻酔経過】全身麻酔導入は問題なく、腹臥位とし、レミフェンタニル μJNJPLQ、デスフルラ
ン を投与しながら手術開始となった。開始 分後に収縮期血圧 PP+J に低下し、その 分後に ,,
度房室ブロックのため心拍数 ESP、さらに 分後には ESP に低下し、アトロピンが無効であったた
め、外科医に手術の中止を要請した。 分後にアドレナリン PJ を 回静注し、仰臥位になると同
時に心拍数 ESP、血圧 PP+J となった。モニターを再確認するとイベント発生 分前に心電
図上 ,, 誘導の 67 上昇を認め、手術終了後の 誘導心電図で ,、D9/、99 誘導の 67 低下を認めたた
め、$&6 を疑い経胸壁心臓超音波検査77(を施行した。77( では前壁中隔の壁運動低下を認め、ニコ
ランジル持続静注下に側臥位にて創処置を行い、麻酔を覚醒させた。覚醒良好であったが、モニター
心電図上 ,,、9、9 誘導にて 67 の上昇を認めたため、ニトログリセリンを静注し、速やかに正常化し
た。帰棟後施行した十二誘導心電図では異常を認めなかった。手術 日後に施行した心臓カテーテル
検査では有意狭窄は認めず、エルゴノビン負荷にて右冠動脈に の狭窄を認め、冠攣縮性狭心症の診
断となった。カルシウム拮抗薬の内服を開始し、 ヶ月後に再手術となった。再手術時は硝酸イソソル
ビドの持続静注を行いながら十分な麻酔深度を保ち、67 変化なく終了した。
【結論】冠危険因子を有する患者では、心イベントの発生を常に念頭に置いて適切な麻酔深度を保ち、
麻酔管理する必要性があると考えられた。
115
P22
外科的抜去を要したデバイスリードによる心穿孔の 例
は せ が わ ゆたか
お か だ しゅういち
え づ れ まさひこ
きむら ち え り
お こ の ぎ しゅういち
たきはらひとみ
ないとうのりつぐ
長谷川 豊 、岡田 修 一 、江連 雅 彦 、木村知恵里、小此木 修 一 、滝 原 瞳 、内 藤 敬 嗣 かねこたつお
金子達夫
群馬県立心臓血管センター心臓血管外科
【症例 】 歳男性.%UXJDGD 症候群で ,&' 植込みを施行された.植込み か月後にリー
ドの閾値が上昇した.心エコーで心嚢液の貯留を認め,リードの右室穿孔を疑い,手術と
なった.左第 肋間前方切開で開胸,心膜を切開.血性心嚢液を認め,右室前面に穿孔部
位と思われる血腫を認めた.左鎖骨下を切開し JHQHUDWRU とリードを露出し,同部からリ
ードを牽引抜去した.術後 日目に軽快退院した.
【症例 】 歳男性. か月前に心肺停止から蘇生後に &$%* と ,&' 植込みを施行された.
植込み か月後にリード閾値が上昇し, か月後には SDFLQJIDLOXUH となった.心エコー
と &7 でリードの右室穿孔を認めた.左第5肋間前方切開で開胸,心膜を切開.血性心嚢液
あり,リードは右室から心膜を穿孔して肋間筋に達していた.心外に突出したリードを切
断し摘出,穿孔部を閉鎖し,鎖骨下から遺残リードを牽引抜去した.術後 日目に軽快退
院した.
【症例 】 歳男性.''' ペースメーカー植込み後 日目に左気胸を発症し,胸腔ドレー
ンを留置した.気胸が改善しないため 日目に &7 を施行,リードの右室穿孔と左肺損傷と
診断され,緊急搬送された.手術は胸骨正中切開でアプローチした.心嚢液貯留はわずか
で,リードは右室流出路前面を穿孔,さらに心膜を貫き左肺舌区に穿通していた.心外の
リードを切断・摘出し損傷部を修復,鎖骨下から遺残リードを牽引抜去した.術後 日目
に新たに心室リードを経静脈的に留置し,術後 日目に軽快退院した.
【まとめ】
デバイスリードによる心穿孔は稀であるが,時には致命的となる合併症である.
リード閾値の上昇は本症を疑う1つの所見であり,診断には心エコーや &7 が有用である.
経静脈的な単純牽引抜去でも心タンポナーデなどの合併症を認めず,軽快している報告も
あるが,外科的アプローチは開胸という侵襲を伴うものの,直視下に穿孔部の閉鎖・止血
が可能であり,確実で有用な方法と考えられる.
116
P23
腎動 脈 狭 窄 症 に 対す る経 皮 的 腎動 脈形 成術 後 の 腎機 能 改善の予 測 因子 に
ついての検討
きたがわ
AE
つ だ ゆ き
たかみひろのり
かしやまくにのぶ
むらおかよしたか
あらきすぐる
そのだしんじょう
おつじゆたか
北川 めぐみ、津田有輝 、高見浩仁 、樫山国宣 、村岡秀崇 、荒木優 、園田信成 、尾辻豊
AE
AE
AE
AE
AE
AE
EA
AE
EA
AE
E A
AE
EA
AE
E
産業医科大学第 2 内科学
【背景】経皮的腎動脈形成術(PTRA)は腎動脈狭窄症(RAS)に対して現在広く行われてい
る治療法であるが、その有効性については様々な議論がなされている。有効性が不十分で
あった理由の一つに、対象となる腎動脈狭窄の程度が血管造影上 50%以上と、軽度から中
等度の病変が含まれていた点が考察されている。
今回我々は重症 RAS に対する PTRA 後の効
果ならびに腎機能改善不良の予測因子について検討した。
【対象と方法】高血圧を合併する RAS(狭窄度 75%以上)に対して IVUS ガイド下に PTRA
を施行した連続 24 例(平均年齢 66 歳、男性 63%)を対象とした。治療後平均観察期間は
15 ヶ月であり、血行動態、腎動脈エコー、血液データの変化について調査した。
【結果】22 例がステント、2 例がバルーン拡張のみで治療を行い、手技成功率は 100%で
あった。狭窄度は術前 89%(内腔狭窄率 79%)から術後 3%(内腔狭窄率 35%)まで改善
した。PTRA 後、血圧は 159/87mmHg から 125/68mmHg まで有意に降下し、血清レニン、アル
ドステロン値も有意に低下した。蛋白尿の頻度は 67%から 50%へ有意に低下したが、全体
でみると PTRA 後の腎機能(BUN、Cre、eGFR)の改善は認められなかった。しかしながら、
PTRA 後 eGFR が改善した群(R 群:ΔeGFR>0, N=14)と改善しなかった群(Non-R 群:Δ
eGFR≦0, N=10)の 2 群に分けて検討したところ、両群で血圧の低下には差が認められなか
ったが、Non-R 群では有意に糖尿病と蛋白尿の頻度が多かった。多変量解析の結果、糖尿
病のみが Non-R 群の予測因子となった(P<0.05)
。
【結論】PTRA は重症 RAS に対して、血圧を有意に低下させ、血清レニン、血清アルドステ
ロン濃度も有意に低下させた。PTRA 後の腎機能改善不良の予測因子として糖尿病の存在が
考えられた。
117
P24
炎症細胞線維芽細胞間におけるω 脂肪酸代謝物を介した心臓リモデリング
抑制機構
えんどうじん
さのもとあき
あらいひろゆき
ふくだけいいち
ありたまこと
遠 藤 仁 、佐野元昭、新井洋由、福田恵一、有 田 誠 慶應義塾大学医学部循環器内科
東京大学大学院薬学系研究科衛生化学教室
【目的】ω 脂肪酸は、多くの疫学調査、大規模臨床試験がおこなわれ、症候性慢性心不
全の予後改善や心筋梗塞の二次予防効果を有することが示されているが、
その機構について
は依然不明な点が多い。遺伝学的に体内の脂肪酸環境をω 脂肪酸優位に制御できるω
脂肪酸合成酵素 IDW の遺伝子改変マウス(IDWマウス)を用いて、脂肪酸環境の変化が
個体のどの細胞に影響を及ぼし、どのような機構を介して心保護効果を示すのか研究を行な
った。
【方法と結果】IDW マウスを用い、大動脈縮窄心肥大・心不全モデル(7$&)における組
織および機能的解析を経時的に行なった。心肥大について IDW マウスと野生型では有意
な差を認めなかったが、心機能について圧負荷後 週以降で IDW マウスは野生型に比べ
心機能が維持されており、間質の線維化およびマクロファージ浸潤が抑制されていた。ω
脂肪酸の心保護作用がどの細胞を介しているかを明らかにするため、IDW マウスの骨
髄移植キメラを作成した。IDW 由来の骨髄を移植したキメラマウスは、IDW マウスと同
様に圧負荷に対する抵抗性を示した。IDW 由来マクロファージの培養上清で心臓線維芽細
胞を刺激すると、野生型のマクロファージの上清と比べ線維芽細胞の炎症反応が抑制され
た。/&0606 を用いたリピドーム解析により脂肪酸酸化物の網羅的定量をおこなったとこ
ろ、(3$ 代謝物の一つ、+(3( が IDW 由来マクロファージで顕著に増加していた。‐
+(3( は高純化 (3$ 製剤を内服したヒトの血中でも上昇していた。圧負荷心不全マウスに
‐+(3(を投与したところ、抗炎症および抗線維化効果を示し心臓リモデリングを抑制す
ることで心機能の改善を認めた。
【結論】我々は、IDW マウスを用いて、ω 脂肪酸の心保護効果にマクロファージが中心
的役割を担い、それらが産生する (3$ 代謝物 +(3( が、心臓リモデリングの背景にある慢
性炎症および線維化を積極的に抑制し心機能を改善していることを明らかにした。
118
P25
患者特異的iPS細胞を用いた肥大型心筋症の疾患モデリングと新規発症メカニズム
の解明
たなかあつし
ゆあさしんすけ
のでこういち
ふくだけいいち
田中敦史1,2、湯浅慎介1、野出孝一2、福田恵一1
AE
AE
AE
AE
1
慶應義塾大学医学部循環器内科
2
佐賀大学医学部循環器内科
AE
AE
AE
【目的】肥大型心筋症 (HCM) の病因が心筋収縮関連蛋白の遺伝子変異であることは周知の通り
である。その一方で、それらの原因遺伝子ならびに実臨床における患者背景は多岐に渡り、HCM
の発病には遺伝的要因に加えて環境要因の関与が示唆されるものの、両者の相互作用による発
病のメカニズムは未だ十分に解明されていない。そこで、患者の遺伝情報を引き継ぐ患者特異
的iPS細胞をHCM患者から作製し、ヒトでのHCM疾患モデルの構築と、発病メカニズムの解明を目
的とした。
【対象と方法】それぞれに独立したHCM患者3例と健常人3例から特異的iPS細胞を樹立し、各iPS
細胞から心筋細胞を分化誘導した。病態発現に関与する候補因子同定の為、それらの心筋細胞
に複数の肥大促進・成長因子による刺激を行い、免疫染色法を用いて細胞面積や細胞内の筋フ
ィラメント構造など細胞レベルでの形態学的解析を行った。次に、可動成分の速度・方向を視
覚定量化できる高速カメラを用いて、自律拍動するiPS細胞由来心筋細胞の細胞内構造が拍動様
式へ及ぼす影響について生理学的解析を行った。
【結果】複数の候補因子の中で、エンドセリン-1 (ET-1) がHCM患者特異的iPS細胞由来の心筋
細胞において、細胞肥大や細胞内錯綜配列などの疾患表現型を最も強く促進することが判明し
た。この作用はET-1の濃度依存的に認められ、細胞肥大シグナルの重要な経路の一つである
Calcineuin-NFAT経路の高度な活性化も併せて確認された。さらに高速カメラによる生理学的解
析において、ET-1で刺激した誘導心筋細胞では拍動形態の不均一性が増大しており、錯綜配列
に起因する現象である可能性が推察された。以上のET-1の作用は、エンドセリンA型受容体拮抗
剤による阻害効果が確認された。
【結論】患者の具有する遺伝的背景に加え、環境因子としての『ET-1 – エンドセリンA型受容
体axis』がHCMの基礎的な病態発現に重要な経路である可能性が示唆された。
119
P26
アゼルニジピンが高血圧症患者の交感神経活動に与える影響―アムロジピンと
の比較
いのまたじゅんいちろう
むらいひさよし
すぎやまゆう
たかたしげお
うすいそういちろう
ふるしょうひろし
猪 俣 純 一 郎 1、村井久純1、杉 山 有 2、高田重男2、薄井荘一郎1、古 荘 浩 司 1
かねこしゅういち
たかむらまさゆき
金 子 周 一 1、高 村 雅 之 1
1
2
金沢大学恒常性制御学講座
金沢市立病院内科
【目的】カルシウム拮抗薬は、降圧薬として頻用されているが、圧受容器反射を介する頻脈
や交感神経活動の亢進といった副作用をもつことが知られている。近年、開発された第3世
代カルシウム拮抗薬であるアゼルニジピンは、降圧作用の他に心拍数減少作用を持つといわ
れている。その機序のひとつとして、動物実験により交感神経活動の抑制作用をもつことが
報告されている。しかしながら、実際の高血圧症患者において、アゼルニジピンの交感神経
活動への効果は未だ不明である。今回、アゼルニジピンの交感神経活動に対する影響を、高
血圧症患者においてアムロジピンと比較し、検証する。
【方法】十分にコントロールされていない高血圧症の患者人.1±1歳を対象とし、
無作為オープンラベルクロスオーバー法を用いた。重篤な基礎疾患のある患者、すでにカル
シウム拮抗薬、β遮断薬を内服中の患者は除外した。対象患者は各薬剤の開始前、投与週間
後に血圧、心拍数、また交感神経活動はマイクロニューログラフィー法を用い筋交感神経活
動にて評価した。
【結果】アムロジピン、アゼルニジピンの内服により、収縮期血圧、拡張期血圧とも有意に
低 下 し た が 、 両 群 間 に 差 は み ら れ な か っ た ±± YV±±PP+J
UHVSHFWLYHO\,S>。心拍数は内服後、アムロジピン群と比べ、アゼルニジピン群で有
意に低下していた±YV±PLQ。アムロジピン群の筋交感神経活動は
±EXUVWVPLQ、アゼルニジピン群の筋交感神経活動は±8EXUVWVPLQであり、
アムロジピン群と比較し、アゼルニジピン群では有意に筋交感神経活動の低下がみられた。
圧受容器感受性の測定、心エコー図による心機能の評価も行ったが、両群間で有意差は認め
なかった。
【総括】高血圧症患者においてアゼルニジピンは、アムロジピンと比べ、降圧作用の他に圧
受容器感受性に影響を与えずに交感神経活動を低下させ、心拍数を減少させる作用がある可
能性が示された。
120
P27
高齢者の早朝高血圧症に対するロサルタン/ヒドロクロロチアジド配合剤と高用量
ロサルタンの比較—MAPPY 研究サブ解析の結果より
うちわひろき
打和大幹
AE
E
久留米大学病院心臓・血管内科
【背景と目的】超高齢化社会における高齢者高血圧患者、特に 75 歳以上の高血圧患者に対してどのよ
うに治療戦略をたてるべきかが問題となっている。高齢者高血圧の特徴として収縮期血圧の増大と脈
圧の開大、早朝高血圧例の増加、過降圧や血圧変動に伴う臓器血流の低下、アドヒアランス不良等が
あげられる。このような高齢者高血圧特有の診療に対するエビデンスは未だ十分とは言えないのが現
状である。我々は、MAPPY(Morning Hypertension and Angiotensin Receptor
Blocker/Hydrochlothiazide Combination Therapy Study)研究においてロサルタン 50mgとヒドロク
ロロチアジド 12.5mg の配合剤を毎朝 1 錠投与する群(ロサルタン/ヒドロクロロチアジド配合剤投与
群)がロサルタン100mgを毎朝1錠投与する群(高用量ロサルタン投与群)と比較して降圧幅が大きいこ
とを報告した。今回 MAPPY 研究登録症例のうち 75 歳以上の高齢者高血圧患者を用いてサブ解析を行っ
た結果を若干の考察を交えて報告する。
【対象と方法】対象は MAPPY 研究登録症例 216 名のうち、75 歳以上の症例 69 名。MAPPY 研究のプロト
ールについては降圧薬を処方されている外来患者のうち早朝高血圧(早朝家庭血圧が 135/85mmHg 以
上)を呈する患者において、ロサルタン/ヒドロクロロチアジド配合剤投与群と高用量ロサルタン投与
群の 2 群に無作為に割り付け、3 ヶ月間追跡した。
【結果】両群においてベースラインの早朝家庭血圧に差は見られなかった。早朝高血圧において、本
解析においては配合剤群及び高用量群いずれも 3 ヶ月に有意な血圧低下が認められていたが、75 歳以
上の検討では配合剤群では有意な血圧低下が認められるが、高用量群では 3 ヶ月の有意な血圧低下が
認められなかった。
【結論】75 歳以上の早朝高血圧を呈する高齢者高血圧者においてはロサルタン単剤使用では高用量を
使用しても十分な降圧が得られない可能性があることが示唆された。一方でロサルタン/ヒドロクロロ
チアジド配合剤は高齢者高血圧患者においても安全で、有意な血圧低下作用を有しており有用である。
121
P28
低酸素負荷における 2*OF1$F 化タンパク質のオートファジーとアポトーシス
への影響
わたなべあきら
さ さ き みず ほ
ふるかわゆういち
のむらあつお
うえはし わ か
か と う りゅうじ
渡 辺 明 、佐々木 泉 帆、古 川 裕 一 、野村篤生、上 橋 和佳、加藤 隆 児 いじりよしお
なかがわたかとし
やまぐちたけひろ
いずみやすかつ
よしやまみのる
あさひみち お
はやし て つ や
井尻好雄、中 川 孝 俊 、山 口 雄 大 、 泉 康 雄 、葭 山 稔 、朝日通雄、 林 哲也
大阪薬科大学循環病態治療学研究室
大阪医科大学薬理学教室
大阪市立大学分子病態薬理学
大阪市立大学循環器病態内科学
【目的】睡眠時無呼吸症候群6OHHSDSQHDV\QGURPH6$6に関連する間歇的な低酸素は
脂質異常症や高血圧といった疾患の一因になるだけでなく、特に心不全患者の予後を左右
することが知られている。今回、リン酸化の調節、細胞内シグナル伝達、細胞増殖あるい
は核内での転写の制御に重要な役割を担っている 2*OF1$F 化タンパク質の役割について
検討を行った。
【対象と方法】雄性 GEGE マウス 週齢、2*OF1$FWUDQVIHUDVH2*7WUDQVJHQLF
マウスと雄性 週齢 &%/ マウス(Q )を用い、間歇的低酸素負荷2₂を1分、
2₂を 分、日中 時間を行い、 日後に心臓を摘出した。摘出心から可溶化分画を抽出
して心臓サンプルとし、:HVWHUQEORWDVVD\ により、2*OF1$F 化タンパク質、1)κ%、
%HFOLQ、/& の発現量を測定した。細胞は +XPDQHPEU\RQLFNLGQH\+(. 細胞とマ
ウス由来線維芽細胞である 1,+7 細胞を用い、低酸素負荷2₂を 時間を行
った。
【結果】糖尿病マウスにおいて、2*OF1$F の増加や心筋の錯綜配列と間質の線維化が確認
され、低酸素負荷にて増悪した。また、2*OF1$FDVH 阻害薬は低酸素負荷における +(. 細
胞と線維芽細胞の増殖を抑制したが、2*77J において酸化ストレス、アポトーシスが増加
した。一方で、
オートファジーの指標である %HFOLQ や /& は低酸素負荷によって増加し、
電子顕微鏡所見にてオートファゴソームが確認された。
【結論】糖尿病病態において、酸化ストレスとアポトーシスの増加ならびに心筋細胞の変
性所見が増加した。細胞において 2*OF1$F の増加が間歇的低酸素に伴う線維化細胞の増殖
を抑制したことから、心臓に対して保護的に働くことが示唆されたが、2*77J ではオート
ファジーの増加と同時に、間歇的低酸素負荷による心筋細胞の変性も増加した。このこと
から、2*OF1$F が増加した心筋ではオートファジーによる細胞保護と、アポトーシスによ
る細胞死が共に亢進している可能性が示唆され、これらのバランスによって、心筋に及ぼ
す影響が異なってくる。よって、タンパク質の 2*OF1$F 化によるアポトーシスとオートフ
ァジー起動の詳細な理解は、各種病態における心保護を目指した治療戦略を考える上で極
めて重要である。
122
P29
セボフルランによるラットの種々動脈におけるノルアドレナリン反応性
変化の検討
し も こういち
A E
たかくら こ う
しげ
み
け ん じ
下 弘一 、 高倉 康 、 重 見 研司
E A A E
E A
A E
E A A E
E A
A E
E A A E
E A A E
E
福井大学医学部器官制御医学講座麻酔・蘇生学領域
【目的】セボフルランは大動脈でのノルアドレナリンによる収縮反応に影響を及ぼ
さないが、他の部位の血管でも同様かどうかは知られていない。今回我々はラット
から摘出したいろいろな部位の動脈においてセボフルラン投与時のノルアドレナリ
ンの血管収縮反応を比較検討した。
【対象と方法】雄ウィスターラット 8 匹から摘出した胸部大動脈、頸動脈、腸間膜
動脈、腎動脈を使用した。二酸化炭素 5%含有酸素で通気したクレブス液(37℃、
pH7.4)中に動脈内皮付きリング状標本(5mm)をそれぞれ静止張力 1g(胸部大動脈
のみ 2g)で 1 時間牽引した。その後、ノルアドレナリン(10 - 9 ~10 - 4 M)を累積投与
し、その収縮反応を等尺性張力変化の測定により評価した。次に通気ガス中にセボ
フルラン(2%、4%)を 30 分間加え、同様の実験を行った(各 n=8)。張力は同一標
本における KCL(60mM)の張力を 100%としその割合で示した。統計学的差の検定
は Kruskal-Wallis 検定・Scheffe 多重比較で行い、0.05 未満を有意とした。
【結果】各部位の血管はノルアドレナリンにより濃度依存性に収縮した。その収縮
は血管により有意な差が認められた。しかし、それらの収縮反応はセボフルラン投
与の有無や濃度による有意な変化は認められなかった。
【結論】ノルアドレナリンの収縮反応は血管部位により違いがあるものの、4%以下
のセボフルランによる影響を受けないことがわかった。
123
P30
&$%* と上行大動脈–両側大腿動脈バイパス術後の遠隔期合併症
お か だ しゅういち
かねこたつお
おおしましげる
え づ れ まさひこ
かわぐちれん
は せ が わ ゆたか
きむら ち え り
岡田 修 一 、金子達夫、大 島 茂 、江連 雅 彦 、河 口 廉 、長谷川 豊 、木村知恵里
お こ の ぎ しゅういち
たきはらひとみ
ないとうのりつぐ
小此木 修 一 、滝 原 瞳 、内 藤 敬 嗣 群馬県立心臓血管センター心臓血管外科
群馬県立心臓血管センター循環器内科
歳時に狭心症と /HULFKH 症候群に対して &$%*/,7$–'–/$'と上行大動脈–両側大
腿動脈バイパス術を施行された。術後 年目の 歳時に狭心症で 3&,20→&\SKHU
*PP→を施行された。この時 &$%* の E\SDVVJUDIW と上行大動脈–両側大腿動脈バ
イパスの人工血管は開存していた。術後 年目の 歳時に間欠性跛行が出現し、$%, は
右 、左 に低下した。冠動脈造影と大動脈造影検査で上行大動脈–両側大腿動脈
バイパスの人工血管分岐部中枢側に 狭窄を認めた。&$%* の JUDIW と 20 の VWHQW 留置部
位は SDWHQW であったが、5&$ に 狭窄を認めた。37$JUDIW→([SUHVV/'*PP
→を施行され、 日後に 3&,–→1RERUL*PP→が施行された。
間欠性跛行は改善し軽快退院となった。しかし、37$ から 年後の大動脈造影検査で人工
血管の VWHQW 留置部が に狭窄、間欠性跛行も進行し、外科的治療の方針となった。人
工血管*RUH–7H[ULQJ 付 PPは腹直筋の腹側を走行しており、右傍腹直筋切開を行い、
人工血管に到達した。人工血管狭窄部を新たな *RUH–7H[ULQJ 付 PP 人工血管に置換し
た。6HURPD 合併予防のためフィブリン糊は充分に貼付した。手術時間 分、出血量 PO
であった。術後 &7 で手術部位は開存しており、$%, は右 、左 に改善し独歩軽快
退院となった。(まとめ)当院では過去 例に上行大動脈–両側大腿動脈バイパス術を施
行し、追跡期間 ± ヶ月で人工血管の開存率は で長期開存率は良好であった。自
験例は術後 年目の人工血管狭窄に対して、狭窄部位の再置換を施行し良好な術後経過を
得ることができた。
124
P31
経静脈的迷走神経刺激による急性期虚血再灌流治療が 1 か月後の心機能低下を
抑制させた
ありむらた か ひ ろ
さくけい
AE
AE
AE
AE
AE
お お が やすひろ
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た
かき
の たかもり
あ か し た く や
む ら や まよ し の り
たけはら た か こ
にしざき あ き こ
有村 貴 博 1、朔 啓 太 1、柿 野 貴 盛 1、赤司 卓也 1、村山 佳範 1、竹原 孝子 1、西崎 晶子 1 、
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ふ じ い
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な
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い け だ まさたか
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きしたく
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で とも
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すながわけ ん
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大賀 泰 寛 1、藤井 香 菜 1、池田 昌 隆 1、岸 拓 弥 2、井手 友 美 1、砂川 賢 二 1
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九州大学大学院医学研究院
九州大学大学院医学研究院
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循環器内科学
先端心血管治療学
【目的】急性心筋梗塞患者は再灌流療法の発達にも関わらず慢性期心機能低下を起こす。迷
走神経の直接電気刺激による急性心筋梗塞の梗塞サイズ減少が示される中、臨床現場での再
灌流療法との併用を念頭に経静脈的迷走神経刺激 (intravenous-VNS; i-VNS)の確立とその
効果を検討する。
【対象と方法】雑種犬を、麻酔後に人工呼吸管理下で左側胸部開胸を行った。開胸のみ行っ
た sham 群 (n=3)、左冠動脈前下行枝結紮 3 時間虚血後に再灌流した I/R 群 (n=7)、3 時間虚
血再灌流の虚血開始時から再灌流後 30 分まで i-VNS を併用した i-VNS 群 (n=6)の 3 群に分け
た。i-VNS は右内頚静脈から上大静脈内に電極カテーテルを留置し上大静脈背側の迷走神経
を刺激した。1 か月後に心エコーと血行動態指標 (EF, Miller カテーテルと sonomicrometry
による左室圧容積関係解析)、血漿 NT-pro BNP 及び梗塞面積を計測し各群で比較した。
【結果】i-VNS 併用群では非併用群と比較し心筋虚血中の心拍数を約 28%減少させた (163±
3.7 vs 107±20 bpm, P<0.05)。i-VNS 群は I/R 群と比較して術後 1 か月の EF (48.9±8.2 vs
58.7±3.1%, P<0.05)、左室拡張末期圧 (4.1±1.7 vs. 18.9±8.7mmHg, p<0.05)、左室収縮
末期エラスタンス(16.0±6.2 vs 6.5±3.4mmHg/ml, P<0.05)、NT pro BNP (1282±492 vs 3667
±1637pg/ml, P<0.05)は改善し、梗塞サイズは 80%以上縮小 (P<0.05)した。
【結論】i-VNS は安定した迷走神経刺激が可能で、3 時間心筋虚血再灌流 1 か月後の心機能低
下を抑制した。i-VNS は急性心筋梗塞に対する有効な治療法となりうる。
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P32
肺動脈塞栓症にて心停止に至り、蘇生・開胸術後の右心不全管理に難渋した一例
む ら た まい
かとうともこ
い な ば ひろたか
く わ き けん じ
やまもとたいら
し ま だ あき え
よこやま や す た か
村田 舞 1、加藤 倫子 1、稲葉 博 隆 1、桑木 賢 次 1、山本 平 1、嶋田 晶 江 1、横山 泰 孝 1
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えんどうだいすけ
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あ ま の あつし
遠藤 大介 1、天野 篤
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順天堂大学医学部附属順天堂医院心臓血管外科
【目的】急性広範型肺血栓塞栓症では、急性期の死亡率が高い。著明な右心機能障害発生前
に外科的介入を行い速やかに血行動態が改善される症例がある一方で、急激な圧負荷で右心
機能が著しく障害され心不全からの離脱が困難となる症例も散見される。 今回、急性広範型
肺血栓塞栓症にて心肺停止に至り、経皮的心肺補助下(PCPS)に外科的血栓除去術を施行、術
後も重篤な右心不全が残存したが、長期間の強心剤や血管拡張剤に加え、β遮断薬投与で右
室収縮機能が改善し独歩退院を得た一例を経験したので報告する。
【対象と方法】生来健康な 31 歳男性。沖縄渡航後より左下肢疼痛が出現し近医受診するも改
善なく、さらに半月後呼吸困難感の出現も認め再度近医を受診した。その際 shock vital で
かつ D-dimer 高値、また心電図で右心負荷所見も認めたため造影 CT を施行し肺動脈血栓塞栓
症と診断された。カテーテルにより血栓溶解・破砕・吸引を行うも血行動態の破綻・多臓器
不全状態に陥り、PCPS や CHDF が必要な状態となったため、心臓血管外科にて血栓除去術を
施行した。
【結果】術後も右心不全は遷延し PCPS からの離脱に難渋した。強心剤投与下の心エコーで右
室内腔変化率(RVFAC)は 6%とほぼ無収縮、加えて左心不全も出現し一時は EF が 10%まで低
下、無尿状態へ陥った。しかし低容量強心剤で血圧を維持しながらの PDE-III 阻害薬投与に
より徐々に利尿を得、また少量からのβ遮断薬投与・漸増により右室・左室とも収縮能が改
善し独歩退院となった。退院時の左室 EF は 43%、RVFAC は 30%まで回復した。
【結論】
急性広範型肺血栓塞栓症後の両心不全に対し、PDE-III 阻害薬およびβ遮断薬が有効であっ
た症例を経験した。右室機能不全へのβ遮断薬効果は未だ確立されていないが、少量から投
与することで安全かつ効果的に右室収縮能を改善させることが可能であった。
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第35回日本
モーニングセミナー
脳梗塞の診断と治療
きたぞのたかなり
北 園 孝 成
九州大学大学院医学研究院病態機能内科学 脳卒中は我が国における死因の第3位、要介護疾患の第1位、寝たきりの最大の原因であり、社会
の高齢化に伴い患者数は増加している。脳卒中の中で最も多い脳梗塞は、ラクナ梗塞、アテローム血
栓性脳梗塞、心原性脳塞栓症、分類不能の各病型からなる疾患群であり、病型によって治療法や予後
が大きく異なることから、急性期における病型診断が極めて重要である。脳梗塞の超急性期には W3$
やウロキナーゼを用いた血栓溶解療法や種々のデバイスを用いた血栓回除去法が積極的に行われてお
り、また、急性期には病型に応じた抗血栓療法が行われる。一方、慢性期には積極的なリハビリテー
ションとともに、適切な抗血栓療法とリスク管理による再発予防が重要である。平成 年 月に新規
経口抗凝固薬(12$&)が認可され、脳梗塞再発予防としての抗凝固療法も新たな時代を迎えている。
今回の講演では脳梗塞の病態と治療について最近の知見をふまえて解説するとともに、平成 年 月
から我々が行っている脳卒中コホート研究 )XNXRND6WURNH5HJLVWU\()65)の知見についてもご紹介
したい。
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ランチョンセミナー3
肺高血圧症の診断と最近の治療について
く ぼ た か よ こ
窪田佳代子
鹿児島大学大学院心臓血管・高血圧内科学講座
肺高血圧症は希少疾患であり、十数年前までほとんど有効な治療法がなかったが、近年
エポプロステノールの持続点滴に加え、次々に新しい内服薬や治療法が登場し、それらを
用いることで生命予後の改善がみられている。肺高血圧症は様々な原因でおきるため、原
因を的確に鑑別した上で適切な治療法を選択することが非常に重要となる。しかし、実際
の日常臨床では、肺高血圧症の要因が複数混在する症例に遭遇することも多く、症例によ
っては治療法の選択に苦慮することもある。併存疾患など症例毎の背景を十分に検討し治
療方針を決定することが大切である。今回当院で経験した具体的な症例をまじえながら、
肺高血圧症の鑑別を含む診断方法や最近の治療法について報告したい。
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