ファイナンス 問題1

ファイナンス
問題1
以下は、将来のキャッシュフロー流列から、プロジェクトの優劣を判断する方法について
考えたものである。
下線部には計算の結果を記載、[
]の適切な語句を選択し(語句の頭のア~コに○入れ
て下さい)、最後の理由説明は文章で記述して下さい。
2つのプロジェクトは、次の様なキャッシュフローを生み出すと予想されている。
単位は百万円
プロジェクトA
プロジェクトB
YEAR 0
YEAR 1
YEAR 2
YEAR 3
YEAR 4
YEAR 5
-100
32
41
56
40
33
-200
55
65
76
76
76
このプロジェクトの NPV と IRR を考えてみましょう。
NPV の意義については、e-ラーニングで十分勉強しましたね。
【エクセルでの NPV の計算方法】についても
「e-ラーニング2章3節エクセルでの NPV の計算方法」で勉強しました。
「2章プロジェクト評価1節現在価値ネットプレゼントバリューの計算方法」の最後に出
てきた IRR(Internal Rate of Return、内部収益率)ですが、これは NPV をゼロとする様な
割引率のことです。従って、割引率と同じ資金調達コストでプロジェクトを進めると NPV
はゼロとなり、このプロジェクトはイーブンということになります。
【エクセルでの IRR の計算方法】については e-ラーニングでは説明していませんでした
挿入→関数→「関数の分類」で「財務」を選択→「関数名」で IRR を選択→OK をクリッ
ク→「範囲」で該当の範囲をドラッグ(NPV の時と異なり、YEAR0を含め全ての範囲をド
ラッグ)→OK をクリック
*添付資料も参照にして下さい。(エクセルのマニュアル本をコピーしたものを添付しま
す)
調達コストを 10%としたときの NPV エクセルを求めてみましょう。
プロジェクトⅠの NPV は
プロジェクトⅡの NPV は
次に
1
プロジェクトⅠの IRR は
プロジェクトⅡの IRR は
この結果から
調達コストが 10%のときは
①NPV は、[ア;プロジェクト A、イ;プロジェクト B]の方が大きいので、[ウ;プロジェ
クト A の方が優れている、エ;プロジェクト B の方が優れている、オ;どちらとも言えな
い]
②次に、IRR は、[カ;プロジェクト A、キ;プロジェクト B]の方が大きいので、[ク;プ
ロジェクト A の方が優れている、ケ;プロジェクト B の方が優れている、コ;どちらとも
言えない]
次に上記①②の結論の理由について、以下のグラフ(少し粗いグラフです)とその解説を参考
に記述して下さい。
【参考】調達コストと NPV の関係および IRR の位置付け
200.0
NPV
単位百万円
150.0
148.0
100.0
102.0
99.1
IRR
74.8
プロジェクトⅠ
59.9
52.9
50.0
43.7
12.42%
0.0
0.0%
5.0%
10.0%
-50.0
12.4%
プロジェクトⅡ
18.9
0.0
20.5%
0.0
-11.6
28.6%
35.0%
-32.8
調達コスト
単位%
-52.9
IRR
-100.0
グラフの解説
調達コストが上がると、当然に NPV は小さくなって行きます。
一方 IRR は NPV がゼロになる調達コストの値で、それが早く訪れるプロジェクトⅡは
プロジェクトとして劣っている様にも見えますが、例えば調達コスト 5%の時はプロジェク
トⅡが明らかに優れています。12.42%以上を超えるとプロジェクトⅠが優位になります。
2
ⅠⅡの理由の説明
問題2
ある投資には、4つのパフォーマンスのパターンがあり、それぞれが起こる確率は以下の
通りである。この投資のリターン、分散、標準偏差を求めなさい。それぞれ計算式とその
結果を記載して下さい。
リターン –8%、これが起こる確率 0.20
リターン 0% これが起こる確率 0.25
リターン 11% これが起こる確率 0.3
リターン 22% これが起こる確率 0.25
リターン
分散
標準偏差
3
問題3
KLM オランダ航空は、エアバス A380 の導入を決定したが、その償却方法について検討し
ている。即時に費用として計上するか、残存価値 0 で 10 年償却するかであるが、関心事は
その節税効果である。A380 は1機 2 億 6400 万ドルで、実効税率は 40%である。以下は、
WACC(調達コスト)を 10%としたとき、どちらの節税効果が高いかについて検討している。
償却法は定額償却とする。
下線部に計算の結果の数字を記載しなさい。
[減価償却の節税効果について]
減価償却は、各年度に費用として計上されるので、課税対象額である税引き前純利益が下
がる。その分、課税額も下がることになる。
簡単な例で見てみよう。
減価償却を考慮しない税引き前利益を 100 百万円、実効税率を 40%とすると、100×0.4=40
百万だけ税金を支払わなければならない。
ここで減価償却が 10 百万あるとすると、減価償却は費用として計上されるので、利益は
100-10=90 百万 税金 90×0.4=36 百万となる
節税効果は 40-36=4百万ということになる。
つまり、つまり減価償却の額(10 百万円)に実効税率(0.4)を乗じたものが節税効果である。
一般化すると減価償却×実効税率だけ節税効果がある、ということになる。
本問題の場合
まず 10 年定額償却を考えると
1年度から 10 年度までの各年度の減価償却は
各年度のその節税効果は
なので
である。
この節税効果が 10 年続くので
これを 10 年間のマイナスのキャッシュフローと考えると
その節税効果は、これらキャッシュフローの PV(現在価値)
となる。
次に即時費用化の場合
0年度に
を費用として計上し、その節税効果は
である。
以上から両社を比較すると
節税効果の差は、
で、
の節税効果が高いことが判る。
4
問題4
問題4
東京急行は、観光用バスの最後の選択に迷っている。一つの候補はスウェーデン製で、価
格が 700 万、使用可能期間3年で、売却可能価格(salvage value)は 240 万とする。減価償
却を除く年間費用は3年間一律 200 万である。もう一つはドイツ製で、価格は 970 万、4
年間使用可能で、売却可能価格(salvage value)は 460 万とする。減価償却を除く年間費用
は最初の2年間が 200 万、続く2年間が 220 万である。
例えば、スウェーデン製の場合、700 万で買って、3年後(年度末)に 240 万で売却。4年目
(年度初日)に再度同じ価格で買って、買った後3年後に売却。同じサイクルをずっと続ける
ことになる。
減価償却は定額法(スウェーデン製:3年定額で償却後の book value=0、ドイツ製:4 年の
定額で償却後の book value=0)、実効税率 40%とする。両車両とも、集客効果は同じ、キャ
パシティーも同じで、コストだけが関心の焦点になっている。
以下はどちらの車両を選択すべきかについて検討したものである。(WACC は、10%と 5%
の両方で検討している)
下線部に計算の結果を記載し、結論については文章で説明しなさい。
[考え方のポイント]
バスの購買、使用(減価償却)、売却にまつわるキャッシュフローの NPV を求め検討する。
ただ、3年と4年と期間が異なるので単純に NPV を比較しても優劣を決することはできな
い。ここで思い出して頂きたいのが annuity である。(e-ラーニング、2章プロジェクト評
価2節演習、プロジェクト評価演習Ⅳ) Annuity は一定期間、同額の CF が続く場合、そ
の NPV を求める公式であった。逆に現在価値が分かっている場合、これを n 年の annuity
にすることも出来る。そこで、NPV の期間が異なっていても、それを annuity として表現
すれば、annuity の比較で優劣を決することができる。
Annuity factor の公式 PV=c{1/r-1/r(1+r)t}であった。コストの NPV を annuity 化した
ときの annuity は equivalent annual cost、EAC と呼ばれている。EAC= PV{r(1+r)t}/{(1+r)t
-1}となる。
これをもう少し具体的に表現に見てみよう。Annuity について復習すると、c、c、c・・・
とキャッシュフローがt年続く場合の現在価値が PV=c{1/r-1/r(1+r)t
5
逆に現在価値が PV のとき t 年間の同じ額のキャッシュフローとしてはどう表現できるか。
Annuity を求める公式として変形すると、c=PV{r(1+r)t}/{(1+r)t -1}と表現できる。
そして、この c として表現されたマイナスのキャッシュフローが小さい方を選択することに
なる。
Ⅰ最初に SWEDEN 製のバスの購入、使用、売却にまつわる
製のバスの購入、使用、売却にまつわる CF の変遷を検討する。
① バスの購入、使用、売却にともなうキャッシュフローの検討
0年度
投資による CF= –700
1、2年度
減価償却を除く費用が 200 万
700 万円を3年間で償却、残存価値(book vlue)0 で計算するので
1年あたりの償却額は 700÷3≒233 万
トータルの費用は 433 万(-443 万)となる。
このマイナスは 433×0.4≒173 の節税効果をもたらす
従って、税引き後のコストは結局 433-173=260 となる
この最終コストからマイナスのキャッシュフローを求めるには、減価償却のマイナスを差
し戻す必要がある
e-ラーニング「1章ファイナンスの基礎知識4節キャッシュフロー(BS、PL からキャッシ
ュフローを導く公式)」
従って、CF=-260+233=-27
これが1、2年度のマイナスのキャッシュフロー
3年度
中古バスを 240 万円で売却したので、売上を計上することが出来、会計上のコストは 240
-200-233=-193 となる。
節税効果は 193×0.4≒77 なので、税引き後のコストは-116 となる。
キャッシュフローを求めるにはこれに減価償却 233 を差し戻し
-116+233=117 となる。
結局0年度から3年度の CF は
-700、-27、-27、117 となる
②NPV 検討
[-700(0年度)、-27(1年度)、-27(2年度)、117(3年度)]
10%で割り引くと NPV = -658.13
5%で割り引くと NPV = -648.23
6
③EAC の検討
10%のとき
EAC=PV{r(1+r)t}/{(1+r)t -1}
=-658.13×{0.1×(1+0.1)3}÷ {(1+0.1)3-1}=-264.64
5%のとき
EAC=--238.03
Ⅱ同様に、ドイツ製のバスの購入、使用、売却にまつわる CF の変遷を検討する
0年度
投資による CF=
1~2 年度
税引き後純利益(コストのみ)
。これに減価償却 243 を差し戻すと、CF=
3年度
税引き後純利益(コストのみ)
。これに減価償却 243 を差し戻すと、CF=
4年度
税引き後純利益(460 の売上分だけ赤字圧縮)
。これに減価償却 243 を差し戻すと、
となり
CF=
結局0年度から4年度の CF は
、
、
、
となる
②NPV 検討
10%で割り引くと NPV =
5%で割り引くと NPV =
③EAC の検討
10%のとき
5%のとき
結論
7
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