“ 不動産投資に役立つ基礎を学ぶ ” 「不動産に投資する場合、 その判断はどのようにすればよいのですか?」という お客様からの声が私共によく寄せられます。 今回「リアルプランニュース」では、不動産投資における環境変化と、 その分析手法について探ってみたいと思います。 【不動産投資環境の変化】 私達が長らく経験した地価の恒常的な値上がり…。不動産投資に投資家が期待する利益 は、値上がり益(キャピタルゲイン) と不動産が生み出す収益(インカムゲイン) がありますが、以 前は値上がり益を期待できたため、不動産の賃貸収益にはさほど注意を払う必要はありませ んでした。 しかし、市場環境は一変し、 デフレ傾向の定着から土地価格の値上がりは当分望め ないのが現状です。 このため現在では、投資を判断する場合は賃貸収入に基づくキャッシュ フローが重視されるようになりました。国内の市場金利がほぼ限界まで下落している中、投資 対象として不動産の利回りが相対的に高く、注目されています。 一方、従来馴染みのなかった外資系投資家や国内機関投資家等が市場に参入し、特にア メリカの投資家達は自国の好況を受け、積極的に投資対象を求めています。 これらの新しい 投資家層の判断基準は、 日本従来の経験重視型ではなく、投資対象それぞれの収益性(リタ ーン) と危険性(リスク) を分析し、相互の相関性を踏まえた上で、様々な対象に分散投資をす る考え方です。そのベースとなる分析手法の中でも代表的なものをいくつか見ていきましょう。 【代表的な投資判断指標】 ①資本の回収指標、②企業会計上の指標、③単年度利回り 生する回収額を現在価値に割り戻した金額の合計額である」という 指標、④融資側から見た安全性の指標の他、⑤投資期間全体 考え方で、オフィスビル、店舗ビル、住宅地の賃貸アパートなどの収益 用不動産に対して適用される欧米で最も一般的な収益還元法です。 を考慮した収益の指標等が代表的です。 まず、 収益用不動産から計上される投資予定期間中の各年度の 純収益を予測し、 これらを現在価値に割り戻した金額を合計すること 投資からもたらされる各期の償却前純営業収益 (NOI:net operat で、 将来の賃貸収入から得られる純収益による価値を求めます。 ion income) または、 キャッシュフローの合計が、 総投資額または自己 次に、 投資予定期間が終了し不動産を売却した時に予測される 資本投資額と等しくなるために必要な期間。将来の収益を現在価 入金額も、 現在価値に割り戻した価格として求めます。 この合計した 値に割引かず、 単純に加算するため、 後述のDCF法とは大きく異な 金額が、 DCF法による収益価格となります。 ります。 不動産の価値=保有期間中の各年度収入金額の現在価値合計 ②損益に関する企業会計上の指標[ 黒字転換・累積赤字解消時期 ] 金額+売却予想価格の現在価値 不動産投資は、 資金を借入れで調達する場合が数多くあります。 したがって、 不動産に対する投資額が妥当かを判断するには、 将来 したがって当初数年間は赤字になることが多く、 事業の安全性をチ 期待される毎年の純収益と投資終了時における売却益を予測して、 ェックする際に重要となります。従来から投資の安全性をみる場合に その合計額と初期投資額との関係をみれば良いことになります。そ 使用されてきた指標です。 の際、 主に純現在価値(NPV:正味現在価値ともいう) と投資収益 ③単年度利回り指標 率 (IRR:内部収益率ともいう) が大事な指標になります。 総合還元利回り (R、 キャップレイ ト) ●純現在価値NPV(net present value) NPVは、不動産への投資額と将来の入金額の現在価値の合計額とを比較して、 =初年度の純営業収益 (NOI) /投資額 投資を判断する指標です。 キャッシュ・オン・キャッシュ (CC) [ 純現在価値NPV=将来の入金額の現在価値合計−投資額 ] =初年度のキャッシュフロー (NOI−借入金元利払額)/自己資 ※NPVがプラスになれば、投資家が希望している投資採算が得られることになります。 本投資額 ●投資収益率IRR(internal rate of return) 保証金を考慮した利回り 投資収益率IRRとは、投資物件の純現在価値NPVをゼロにする割引率、すなわ =初年度のNOI/ (総投資額−保証金等の一時金) ち投資物件が生み出す全ての収益(投資期間満了時の収益を含む)を割引いた 損益計算書の営業利益に着目した利回り 額と初期初期投資額とちょうど等しくするような割引率のことをいいます。 ※IRRが投資家の期待する利回りより大きければ、投資家が希望している投資採算が得られるこ = (償却後の営業利益+保証金等の運用益) /総投資額 とになります。 このうち、 a・bは欧米で使われている一般的な利回りで、 aの「総合 還元利回り」は投資対象全体の利回りで、 bの「キャッシュ・オン・キャ ⑥リスク分析 ッシュ」は自己資本の利回りを求めるものです。c・dは、 日本で使わ 2つの商業ビルがあり現在同等の賃貸収入が確保されていても、入っ れてきた利回りで、 借入金を考慮せずに保証金等の一時金を考慮 ているテナントが違えば将来の見込みも違ってきます。 また、予定外の時期 する点に特色があります。 にテナントが退去したのでは、当然、投資採算性は変動します。 ①資本回収指標[ 回収期間 ] ④融資側から見た安全性に関する指標[ 純営業収益・借入金償還割合 ] 借入金の返済能力をみる指標で、 DCR(debt coverage ratio) =純営業収益(NOI)/借入金償還額 となり、 DCRが1を超えると、 借入金の元利返済額を純営業収益から 賄うことができます。 これは投資家ばかりではなく、 融資する側にとっ ても重要な指標です。 ⑤投資期間全体を考慮した収益指標[ DCF法/NPV・IRR ] DCF (discounted cash flow) 法は、 「不動産の価値は、 その不動 産から毎年計上されると期待できる純収益と、 将来売却する時に発 リスク分析とは、従来は比較的軽視されて来た部分であり、賃料収入等 による純収益が将来どの程度の確率で確保されるかということを、過去の 数多くの運用データ・サンプルなどを元に統計的な分析を試みるものです。 このように、代表的な投資分析手法を見てきましたが、DCF法にて求 めたIRRにしてもリスク分析にしても、多くの想定要素から算出される ため、決して万能ではありません。現在では金融工学的アプローチによ る高度な数理分析を駆使した分析モデルもありますが、実際の不動産投 資には、様々な要素が複雑に絡みます。確実な分析はもちろんですが、 専門家による的確なアドバイスを受けることをお勧めいたします。
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