2.4 供給曲線のシフト

(1)他の条件一定の仮定
• 供給曲線は、その財(たとえばりんご)の価格以
外の要因はすべて一定として、その財の価格だ
けが変化したときに、その財の供給量がどのよう
に変化するかを示している。
• 一定と仮定した要因が変化したとき、財(たとえば
りんご)の供給がどのように変化するかを考える。
経済学
第2章 需要と供給(4)
2.4 供給曲線のシフト
中村学園大学
吉川卓也
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1 りんごの生産・出荷費用
図2.11 りんごの生産・出荷費用の変化とりんごの供給曲線のシフト
(1)生産・出荷にかかわる費用
• りんごの価格以外でりんごの供給に大きな影響を及ぼす
要因は、生産や出荷の費用である。
• 生産・集荷費用が低下すると、りんご価格が同じでも、り
んごを供給することから得られる利益は増加する。
• したがって、りんご生産農家は、収穫や集荷をする人を
増やしたり、作付け面積を拡大したりして、りんごの供給
量を増やそうとする。
(2)供給曲線のシフト
• この生産・出荷費用の低下による供給量の増加は、りん
ごの供給曲線の右へのシフトで表される。(図2.11)
りんごの価格
S1
生産・出荷費用の上昇
=生産要素価格の上昇・
労働生産性の低下
S0
生産・出荷費用の低下
=生産要素価格の低下・
労働生産性の上昇
S2
3
0
りんごの供給量
4
(4)生産性の上昇
• りんごの生産・出荷における生産性の上昇
(例)殺虫剤の効き目の向上
→同じ労働サービス投入量(労働時間、労働者数)
でもりんごの収穫量増加
=殺虫剤の性能向上による労働生産性の上昇
→より少ない労働サービス投入量で同じ量の供給
→労働サービス投入量の減少
→賃金が一定なら労働費用の低下
→りんごの生産費用の低下
→りんごの供給量の増加
• りんごの生産・出荷費用を引き下げる要因は、以
下のものが考えられる。
(3)生産要素価格の低下
• りんごの生産・出荷のために投入される生産要素
(肥料、噴霧器、殺虫剤、労働、土地など)の価格
の低下
→使用量の増加→収穫量の増加
→りんごの供給量増加
5
6
1
2 その他の供給に影響する要因
(1)天候の影響(図2.12)
• りんごのような農産物の供給量は天候に左右さ
れる。
• りんごの生育によい天候
→りんごの供給曲線の右シフト
• 台風などの悪天候
→りんごの供給曲線の左シフト
• りんごの生産・出荷費用の上昇
→同じりんごの価格でりんごを供給しても、利益は
減少
→りんごの供給量の減少
→りんごの供給曲線の左シフト
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(2)課税の影響
• 財の消費に税金が課せられると、その財の供給
曲線はシフトする。
(例)ビールなどのアルコール飲料、タバコなど
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• 図2.13の供給曲線S0は間接税が課せられる前の
ビールの供給曲線。
• ビール1単位(たとえば1本)当たり10円の税金が
課せられると、ビールの供給曲線はS1にシフトす
る。
←課税前に比べ10円分利益が減少するから、ビー
ル会社は供給量を減らそうとする。
=供給曲線の左シフト
(3)間接税
• 本来税金を支払う経済主体(上の例の場合は消
費者)に代わって他の経済主体(この場合小売店
など)が納税する税金を間接税という。
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図2.13 間接税と供給曲線のシフト
(4)ビール1単位当たりの間接税分、上にシフトする
• この供給曲線のシフトは以下のようにも考えられる。
①課税前のビールが1本200円で、供給量Q0だったとする。
②1本当たり10円の間接税が課税され、それが価格に
100%転嫁され1本210円になれば、ビール会社の利益
は課税前と同じになるので、供給量Q0が維持される。
• 以上から、間接税が課せられると、供給曲線は間接税額
だけ上にシフトする。
• 逆に間接税の軽減、廃止により、供給曲線は下にシフト
する。
価格
S1
210
10
税金
S0
200
0
Q1
Q0
ビールの供給量
11
12
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3 供給曲線に関するまとめ
表2.4 供給曲線のシフト(まとめ)
• 供給曲線は、財の価格と供給量の関係を示して
いる。
• 財の供給に影響を与えるその財の価格以外の要
因を一定として、その財の価格だけが変化したと
きに、その財の供給量がどのように変化するかを
示している。
• 供給曲線は、通常、右上がりである。
• 供給に影響するその財の価格以外の要因の変化は、供
給曲線の右(上)または左(下)へのシフトとして示される。
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要因
シフトの方向
生産要素価格の上昇
生産要素価格の低下
左
右
労働生産性の上昇
労働生産性の低下
右
左
間接税の増税
間接税の減税
左
右
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3