フランス教育国際学習センターの訪問

フランス教育国際学習センターの訪問
静岡県 前田吉法
【フランスの教育】
フランス教育国際学習センターは、まさに城である。古き時代の建物の中に
近代的な物を配置したセンターとなっていた。その中にはフランス国内の教育
の中枢が詰まっている。そして、職員以外に教育実習生も勉強にくるのである。
フランスは国家が教職員を育成している。
そんなセンターの中でフランスの教育について語られた。
フランスの学校の設置、運営は市町村レベルで小学校を運営し、県レベルで
中学校、州レベルで高校、そして、国レベルで大学と地方分権を進めた結果、
このような学校の設置、運営となっている。
そして、フランスは小学校5年、中学校4年、高校3年で、最短18歳で高
校卒業資格を習得できる。その後、大学等高等教育機関へと進む。
大学等高等教育機関へ進むにはバカロレア(高校の卒業資格を与える国家的
な全国統一試験)によって自分がどの方向へ進んでいくか考えるのである。そ
の方向は一般バカロレア・技術バカロレア・職業バカロレアというように分か
れている。
【小学生の意識】
フランス教育国際学習センターにいく前に、フランスのインターナショナル
スクールに訪問した。そこで学習している日本人の子供たちは本当にびっくり
するくらい、こちらの質問に躊躇なく受け答えをする。
その子供たちを見て、フランス教育国際学習センターで質問を行った。
【作文教育について】
フランスで極めて大事なことは『自分を主張すること』そのためには文章を
書く力が大事である。
フランスの作文教育は11歳から行われ、それは試験に向けてのものである。
作文を書けなければ中学校へ入学できないのだ。そのために哲学的な文章を題
材として週に2時間続けての授業が組まれている。小学生に哲学的な文章に触
れさせ、それについて考え作文するのだから力がついて当然である。
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【フランスのいじめ問題と対処法】
今、日本では小学校や中学校でいじめが問題になっていますが、フランスで
はいじめがありますか。
という問いに対して、職員の方から驚くような答えが返ってきた。それは
「ありません」
これには、正直びっくりした。しかしそれなりの理由がある。それは、フラ
ンスの小学生、中学生には受験戦争がないのである。友達を競争相手としてみ
ていないということだ。競争相手としてみていなければいじめは起きないとい
うのである。そして、高校生になってくると違ってくるようだ。
このように、基本的な受験システムの違いが子供たちにとってよりよい環境
を作っているのだということを話していた。
【TOSSのすごさと国家のプライド】
フランス教育国際学習センターに訪問をし、自分自身の見識の狭さを再認識
した。そして、改めてTOSSのすごさを知った。TOSSの作文指導、いじ
め発見・処理のシステムはフランスの国家の基本方針よりも進んでいた。しか
し、日本全国で考えてみると、国家としての考えが明確なのはフランスである。
フランスは、きちんと自分の国の教育に対してプライドを持ち、フランスの
子ども達に何が必要で、どのような力をつけたいか、その為には何をしたらい
いか。
まさに、その場しのぎの教育ではなく、フランス人に取って必要な学力をつ
けようとしていた。
国家とは、プライドを持って自国の子ども達を教育していく必要があるとい
うことを強く感じることができた。
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