精神政策医療ネットワークを用いた 臨床研究の基盤整備 診療研究情報の共有と利用 2002 年 4 月∼5 年 3 月 分担研究者 原井宏明 (所属 独立行政法人国立病院機構 菊池病院) 要約 この研究の課題は,政策医療を行うための基盤整備である。政策医療の課題の一つに臨床 研究がある。日本は英米と比べてこの分野で遅れているが,基盤が整っていないことが理由で あると考えられる。研究コーディネーターや倫理委員会,評価方法の訓練,生物統計専門家, データマネージメントセンター,実験的介入方法の品質管理についての整備が必要である。 「臨床研究支援センター」は独立行政法人国立病院機構の独自ネットワーク HOSPnet 上の イントラネットサイトである。2002 年から稼動を開始し,内容を充実させてきた。2004 年から国立 病院機構以外からも閲覧できるように,www.harai.org/crsc にミラーサイトを設置した。このサイ トは,非公開のサイトである。アクセスするためにはユーザー名とパスワードが必要である。ユ ーザー名は crsc である。この報告書は臨床研究支援センターが提供する資源について説明 している。 1. 1) はじめに この課題の契機 この研究課題に与えられた当初の目的は 旧国立・国立療養所の精神科を受診する患 者のデータベースを作成することであった。 1998 年 8 月 27 日に「国立病院等情報ネッ トワーク検討会」が「国立病院・療養所にお ける情報化基本構想」を取りまとめている。 そこでは,独立行政法人への移行に向け て、「積極的・主体的な経営効率化」と「政策 医療機能の強化」という基本理念のもと、情 報基盤を再構築する必要があること,再構 築にあたっては (1)施設における病院情報 システムの標準化、(2)構内型コンピュータネ ットワーク(イントラネット)によるネットワーク 機能の強化の2点が課題とされた。この構想 に従って旧国立・国立療養所をまとめたイン トラネット,HOSPnet が導入された。このハー ドウェアを利用した精神政策医療ネットワー クをつくることになった。筆者に当初,与えら れた課題は国立精神の退院患者の中で気 分障害の患者について退院サマリーを集積 し,データベース化することであった。 しかし,この課題には次のような問題点が あった。 (1) 国立病院精神科の現状の退院サマリー に記載されている情報は,信頼性・妥当 性が乏しい (2) 対象者の選択基準がない。入退院の判 断は担当医の判断,患者の希望,病床 の空き状況,病棟スタッフの状況に左右 されており,国立に入院した患者が気分 障害の患者の中のどのような群を代表し ているかは分からない。信頼性・妥当性 が分からない。 (3) 既存の診療情報を集積したデータで代 用できる部分がある。 そこで,筆者は臨床研究の基盤をつくるこ とにした。 2) 政策医療の課題と実現可能なネット ワーク a) 政策医療 そもそも今回の研究の目標は国が政策と して行う医療(政策医療)を国立のネットワー クを利用して行うことであった。 政策医療のテーマはそのときどきの時代 によって変わる。しかしテーマが何であって も,行われることは次のようなことにまとめるこ とができる。 ア) 特殊な医療サービスの提供 精神医療の特定の領域に専門化した医 療や高度な医療,実験的な医療を患者に提 供する。触法患者や難治性患者のような少 数の特殊な症例を対象とする。 イ) 多数を対象とした臨床研究 有病率が高い疾患に関する医療情報を 集め,行政や企業,専門家に提供する。研 究や調査,治験を行う。 ウ) 情報発信 医療情報を集め,わかりやすく整理し,一 般医療関係者や医療のユーザーに発信す る。ホームページをつくる,講演会や報告 会,研修会を開催する。 これらに共通することは,ア)患者や医療 関係の法律が医師に求めている業務ではな いこと,イ)医師免許は必ずしも必要ではな いこと,ウ)地方厚生局からの指示によって各 施設の事務や医師個人,研究班などのグル ープ,病院の中の私的なグループの中で既 に行われていること,である。の特殊な医療 サービスについては医師が行う必要がある が,これは誰もが認める標準ではなく,患者 を害する可能性がある実験的な医療である ことを認識する必要がある。場合によっては IRB(Institutional Review Board, 研究倫理 委員会)の承認を受ける必要がある。 34 ある国立の施設が同じように,これらの 課題を目標にすることは不合理である。病院 によっては地域精神医療の担い手であるこ とが目標になっている。療養所の中には精 神保健福祉法の規定を満たすことだけでも 精一杯の施設もある。こうした病院やそこに 勤務する医師にとっては眼前の一般患者に は役立たない,政策医療の業務には熱意が わかない。政策医療を可能にする仕組みが 必要である。 b) 政策医療業務のアウトソーシング 前記は研究という言葉でまとめることがで きる。従来は,これの目標は各医療機関に 努力目標として提示されている。それを実現 するまでの人的援助や実現している医療機 関がどのように行ってきたかというノウハウが 提示されることはなかった。資金と建物だけ では不十分だと考えられる。多くの業務は医 療技術以外の高度な技術が必要である。こ れは,治験の業務を考えるとよく分かる。 筆者は上記に関する人的援助,サポート を専門とする人を集めて訓練し,派遣する専 門の組織が必要であると考える。これをこれ から 臨床研究支援センター,Clinical Research Support Center; CRSC と呼ぶこと にする。 臨床研究を進めるためには,組織が必要 であるという認識は他にも共有されるようにな った。現在,CRSC と同様な動きがある。その ような例を以下にしめす。 ア) 臨床研究支援センター(Japan Clinical Research Assist Center, JCRAC) 設置主体:国立国際医療センター 運営者:運営協議会会長 国立国際医療セ ンター総長 データセンターの運営者:日本公定書協会 設立年:2002 年 平成 13 年度は 7 件の委託研究課題があ る。循環器や糖尿病,大腿部頸部骨折,睡 眠時無呼吸症候群などが国立病院や大学 の研究者によって行われた。 http://www.mhlw.go.jp/shingi/2002/07/s0710 -3a.html イ) 神戸医療産業都市の臨床研究支援事 業 設置主体:先端医療センター診療所(神戸 市立中央市民病院),財団法人先端医療振 興財団 神戸大学における治験を行っている。 http://www.sentan-iryo.or.jp/ ウ) NPO 法人日本臨床研究支援ユニット (J-CRSU) 設置主体:病院や大学,企業からは独立し た NPO 公益信託日本動脈硬化予防研究基金 (JAPF)事務局がある。血液疾患や糖尿病, 悪性腫瘍などについての研究が行われてい る。品質保証部門をもち,施設訪問監査を 行う。データ解析を製薬企業から受託して収 益を確保している。 http://www.crsu.org/ エ) UMIN インターネット医学研究データセ ンター 医学研究者が主導して学術研究として行な う医学研究を支援する目的で開設されまし た。循環器や眼科,血液,心臓血管外科, 脳神経外科における RCT や症例登録が行 われている。 http://www.umin.ac.jp/cdms/ 2. 臨床研究支援センターの課題 次のような課題を目的としている。 (1) 既存のデータベースを利用しやすくす る。 (2) 診療情報の信頼性・妥当性を高めるた めの工夫をする。 (3) 人を対象にした研究,すなわち臨床研 究の質が高められる工夫をする。 これらを一つにまとめた仕組みをつくるよう にした。この仕組みを「臨床研究支援センタ ー」と呼ぶことにした。実際には,HOSPnet 上のイントラネットサイトである。これは国立 病院が政策医療を行うための基盤整備とな る。 3. 臨床研究支援センター(CRSC)の機能 個々の研究者や研究組織に対して研究 デザインや研究の準備・組織の立ち上げ, 研究の遂行,データマネージメントについて 支援し,研究の成果を向上させることが目的 である。 臨床評価のサポート 評価者トレーニングを行う。介入研究の場 合に必要な割付に対してマスクされ,研究者 からは独立した評価者を提供する。 2) 研究事務のサポート 公的資金で研究した経験が少ない若手 研究者に対して,研究計画書や会計報告書 の記入をサポートする。一般の国立病院・療 養所の事務官は公的資金による研究に関す る規制には疎い。煩雑な消耗品や会計管理 業務を研究者自身に任せることは,種々の 規制法に違反する可能性も高く,また研究 者自身に余計な手間をかけさせることにな る。研究によっては研究補助者を雇用するこ とがあるが,適切な人材を見つけることがで きない施設が多い。こうした施設や研究者に 対して必要な経験のある人材を派遣する。 3) CRO 業務 薬品会社からの治験の依頼があり,適切 な症例もあるが,事務局体制がないために 断念している施設や,契約しているが症例 が登録できない施設に対して,CRO 業務を 行う。 4) 医師主導の介入研究の計画・遂行 データマネージメントを行うセンターを設 けることによってデータ収集が効率化され, データの質の向上も期待される。既登録患 者の割付状況を考慮した動的均衡法による 無作為割付(最小化法等)等の優れた割付 法の利用が可能になる。 また研究を世界的基準に合致していると 認めてもらうためには,人の善意や努力だけ に依存するやり方では駄目である。公正さを 客観的に第 3 者に保証するためにはいろい ろな方法があるが,その中でも,「センターを 利用して症例の中央登録(+割付)をする」 ことが最も重要とみなされる。明示的に論文 に記載することが必須である。 5) 国立内部の調査研究のデータベース 化 国立内部でさまざまな調査・研究がすで に行われている。国立職員が行った調査研 究について登録し,相互のデータの活用が できるようにしている。 4. CRSC の現状 現在,HOSPnet 上に国立病院関係者の みが閲覧できる内部ホームページを開設 し,維持している。 http://w3.hosp.go.jp/~crsc/ 2004 年から国立病院機構以外からも閲覧 1) できるように,www.harai.org/crsc にミラーサ イトを設置した。このサイトは,非公開のサイ トである。アクセスするためにはユーザー名 とパスワードが必要である。必要な方は原井 まで問い合わせしていただきたい。 ここにおいて,先にあげた業務の中の研 究のデータベース化,を行い,関係者に提 供している。評価方法が提供されている。 データの収集・管理はやホームページの 管理は労働集約的な作業であり,自動化が 困難である。研究に関する経験・知識が要 求され,パートや委託では行い得ない。担当 者は原井のみであり,マンパワー不足に悩ま されている。今後,サイト管理の人材を確保 し,内容を拡充し,国立病院での研究のニ ードに応じていくようにした。 1) 臨床評価のサポートについて 以下のスケールについて評価者トレーニ ングが可能である。 a) SIGH-D による HAM-D 評価, b) M.I.N.I. (Mini International Neuropsychiatric Interview) c) LSAS (Liebowitz Social Anxiety Scale) d) Y-BOCS (Yale Brown Obsessive Compulsive Scale), e) ADAS-J (Alzheimer s Disease Assessment Scale) f) CIBIC-plus (Clinician s Interview-Based Impression of Change plus), g) クリクトン介護者評価尺度 自記式の評価方法について,以下のもの をサイトにて提供している。 a) BDI (Beck Depression Inventory ベック によるうつ病の自記式スケール) b) CDI (Children Depression Inventory Kobacs の子ども用うつ病スケール c) DSRSC (Depression Self Rating Scale for Children, Birleson の子ども用うつ病 スケール) d) CES-D (Center for Epidemiological Study for Depression,うつ病の自記式ス ケール) e) SADS (Social Avoidance and Distress Scale 社会恐怖に対する自記式スケー ル) f) FNE (Fear of Negative Evaluation,社会 恐怖,社会不安における自己評価の恐 れに対するスケール) g) Mobility Inventory for Agoraphobia (広 場恐怖に対する自記式スケール) h) MOC (Maudslay Obsessive Compulsive Scale, モーズレイ強迫性障害スケール, 強迫性障害に対する自記式スケール) i) FQ (Fear Questionnaire,I Marks による 恐怖症に対する自記式スケール) j) FSS (Fear Survey Schedule,Wolpe によ る恐怖症に対する自記式スケール) k) GHQ (General Health Questionnaire,全 般性健康尺度) l) EAT26 EAT40 (Eating Attitude Test, 摂食障害に対する自記式スケール) m) RAS (Rathus Assertiveness Scale, ラー サスによる自己主張性の自記式スケー ル) n) SAS-SR (Social Adjustment Scale Self Report, 社会適応に関する自記式スケ ール) o) W-SAST(Women’s Sexual Addiction Screening Test, セックスアディクションに 関する自記式スケール,女性用) p) KAST 久里浜式アルコール依存スクリー ニングテスト 実際の利用にあたっては非営利目的につ いては複写が自由に行えるものと,非営利 目的の使用に対しても使用料金が設定され ているものがある。 2) コミュニケーショントレーニング 医療面接,コミュニケーションスキルのトレ ーニングを行っている。動機付け面接 (Motivational Interview)について,トレーナ ーのトレーニングを正式に受けたトレーナー がいる。Motivational Interviewing Network of Trainers に所属している。 3) 海外の治療ガイドラインの紹介・翻 訳 米国薬物依存研究所(NIDA)が発行して いる治療ガイドラインシリーズ(TIP)を翻訳 し,サイトに掲載している。現在,TIP33 動機 付け面接, TIP35 覚醒剤使用障害の治療, が翻訳され閲覧が可能である。 4) データの共有化 菊池病院にて行なわれた臨床研究の結果 を登録された共同研究員に対して公開し, データの解析を共同して行なうようにしてい る。 現在もっとも大きな資料は,感情障害長期 経過追跡多施設共同研究(GLADS,Group of Longitudinal Affective Disorder Study)で ある。これに関する資料は別に添付してい る。他に,厚生科学研究補助金 医薬安全 総合研究事業「薬物依存・中毒者のアフタ ーケアに関する研究」,病院を受診した薬物 依存患者に対する実態調査,難治性気分 障害の治療の標準化活動の実態に関する 研究,社会恐怖患者に対する認知行動療 法プログラム,薬物依存専門病棟のあり方に 関するアンケート調査,などについて研究プ ロトコールをみることができる。 5. CRSC の現状 臨床研究のインフラは利用者がいなけれ ば育たない。いままでに研究について問い 合わせがあったのは, 静岡市立清水病院歯科 常滑市民病院手術室 数箇所の大学心理学教室 大阪市立大学精神科 名古屋市立大学精神科 などである。 現在も HP を維持しながら,必要なコンテン ツの追加を行っている。 6. 研究成果のリスト 慢性の経過をとる患者に対する精神医学的 マネージメント パニック障害治療のストラ テジー,先端医学社, 2002.5 パニック障害臨床研究の最前線 ベンゾジ アゼピン系薬物の漸減・中止 依存に対す る認知行動療法と動機付け,ストレス科学 18 巻 4, 2004.03 向精神薬療法の限界 向精神薬療法をとり まく問題 転帰と治療 今すぐ癒されるか, 二年後の回復か こころの科学 116 号 2004.7 これだけは知っておきたい 診療・相談記録 の書き方 様々な治療法における診療・相 談記録の書き方 行動療法 行動アセスメ ントと記録の仕方,そして POS 精神科臨 床サービス, 2 巻 2 号, 2002.5 国立療養所菊池病院での受託研究におけ る患者満足度調査, 医療 57 巻, 2003.11 菊池病院での治療実施状況報告 アンケー ト及び聞き取り調査より, 九州神経精神医 学, 48 巻, 2002.12 パニック関連障害 −PDSS,自記式尺度−, ストレス疾患ナビゲーター,メジカルレビュ ー社,2003.7 GLADS の資料 付録 1 プロトコール 2 評価表 付録 1 厚 生 省 精 神 ・ 神 経 疾 患 研 究 委 託 費 感 情 障 害 班 多 施 設 共 同 長 期 転 帰 調 査 方 法 厚生省精神・神経疾患研究委託費感情障害第1班(高橋三郎班)および第2班(高橋清久班) の長期共同作業として3種類の研究計画を立てる。参加各施設は、通常の分担研究課題を行 うことに加えて、参加できる共同プランを選択し、事前にこれを班長に申告する(複数のプラン を取るも可)。また、班研究に属さない病院、診療所、大学等の施設にも共同研究参加を呼び 掛ける。 遡及的多数例研究 集中追跡研究 多数例追跡研究 形態 遡及 追跡 追跡 方法 カルテ 症例 症例 対照 あり なし あり N 多数 少数 多数 調査 簡易 詳細 簡易 遡及的多数例研究 extensive retrospective study(ERS)[手法]多数例の外来病歴簿の調査 [対象]1982 年 1 月 1 日より同年 12 月 31 日までの1年間の初診患者(再発例可)全員のう ち、直前の3ヶ月間抗うつ薬(定義はPISA参照)および抗精神病薬が無投薬で、かつ本研究 班で決めた感情症状を呈する症例全例。同数の精神病性障害患者および同数の神経症性 障害患者を対照(コントロール)群[除外基準]初診時18歳未満の者。精神薄弱や難聴など、 情報収集に困難を来すと思われる状態[1施設当り年間希望症例数]感情障害 25 名、対照(コ ントロール)群 50(25X2)名[方法]初診患者全員からエントリー用記入用紙により該当者を選 択。対象者にはエントリー時点の各種調査項目。過去 10 年間の病歴簿を調査して、経過を評 価。さらに 1992 年時点での現在症を直接評価する。受診していない患者(これが大部分であ ろう)については書状による同意を得た上で電話調査。扱う調査項目数は最小必要限度に押 さえるが、すべてIPSに含まれるものとする。 集中追跡研究 intensive prospective study(IPS)[手法]小数例の継時的集中追跡研究[対 象]研究年度の初診患者(再発例可)全員のうち、直前の3ヶ 月間抗うつ薬および抗精神病薬が無投薬で、かつ感情症状を呈する症例(「抗うつ薬」、「抗 精神病薬」、「感情症状」の定義についてはPISA参照)[除外基準]18歳未満の者。精神薄 弱や難聴など、情報収集に困難を来すと思われる状態[1施設当り年間希望症例数]5例(CO ALA−E1とE2を終了した症例のみ実際に同意をいただきエントリーしたと扱う)[方法]研究 担当医または施設の初診患者全員をスクリーニングの対象とする。マンパワーその他の事情 で全員を対象とできない場合は、あらかじめ定めた一定の規則にのっとり、例えば毎週一定曜 日の初診患者全員のみ、あるいは毎週一定曜日の第1初診患者のみをスクリーニングの対象 とすることも可。これらの対象に「外来患者アンケート」と題した自記式調査票を施行し、PISA と題したエントリー用面接票を施行する(いずれが先でも可)。そしてPISAに定めた包含基準 と除外基準にのっとり該当者を選択し、同意を得る。発症時期によるバイアスを排除し、可及的 に無作為抽出に近付けるために、Y年M月から本研究を開始したとするならば、M月及びM +1月にスクリーニングした者のうち最初の該当患者1名をエントリーさせる。以後2ヵ月ごとに 同様。こうすれば該当患者がない月も考慮して1年に5∼6名をエントリーできるものと思われ る。逆に施設によっては希望があれば毎月1例をエントリーすることも可。エントリーが得られた あともあらかじめ定められたスクリ−ニング対象者には「外来患者アンケート」とPISAは継続す る。エントリーした症例についてはCOALA−E1、E2によるエントリー調査後(E1は初診から 1週間以内に行う。E2は多少ずれてもいいが、2∼3週間以内に行う)、月に1回COALA−F 1とCES−Dによる評価を、6ヵ月に1回COALA−F2とCES−D、SAS−SRによる評価を 治療中止(または中断)まで繰り返す。以降1年に2回の頻度でおよその臨床状態と経過をCO ALA−F2の該当項目とCES−D、SAS−SRで電話および郵送により評価。治療中止後の 調査は、「最後のCOALA−F1から6ヵ月ごと」ではなく「エントリーから6ヵ月、12ヵ月,18ヵ 月,,,」という意味である。再発、再燃した場合や極性が変わった場合は、COALA−RとCE S−D、SAS−SRを施行する。 多数例追跡研究 extensive prospective study(EPS)[手法]多数例の継時的追跡研究[対象] 研究年度の初診患者(再発例可)全員のうち、直前の3ヶ月間抗うつ薬および抗精神病薬が 無投薬で、うち感情症状を呈する症例。同数の精神病性症候群および同数の神経症性症候 群を対照(コントロール)群とする。(「抗うつ薬」、「抗精神病薬」、「感情症状」、「精神病性症候 群」、「神経症性症候群」の定義についてはPISA参照)[除外基準]18歳未満の者。精神薄 弱や難聴など、情報収集に困難を来すと思われる状態[1施設当り年間希望症例数]感情症 候群15例(COALA−XEを終了した症例にのみ実際に同意 をいただきエントリーしたと扱う)、対照群として精神病性症候群15例、神経症性症候群15例 (対照群はエントリーしない)[方法]研究担当医の初診患者全員または施設の初診患者全員 をスクリーニングの対象とする。マンパワーその他の事情で全員を対象とできない場合は、あら かじめ定めた一定の規則にのっとり、例えば毎週一定曜日の初診患者全員のみ、あるいは毎 週一定曜日の第1初診患者のみをスクリーニングの対象とすることも可。これらの対象に「外来 患者アンケート」と題した自記式調査票を施行し、PISAと題したエントリー用面接票を施行す る(いずれが先でも可)。そしてPISAに定めた包含基準と除外基準にのっとり該当者(感情症 候群)を選択し、書面による同意を得る。発症時期によるバイアスを排除し、可及的に無作為 抽出に近付けるため、Y年M月から本研究を開始したとするならば、M月及びM+1月にスク リーニングした者のうち最初の該当患者3名をエントリーさせる。以後2カ月ごとに同様。こうす れば該当患者がない月も考慮して1年に15∼18名をエントリーできるものと思われる。逆に施 設によっては希望があれば毎月2例をエントリーすることも可。エントリーが得られたあとも、あら かじめ定められたスクリーニング用調査として「外来患者アンケート」とPISAは継続する。エン トリーした症例についてはCOALA−XEによるエントリー調査(初診から1週間以内に行う) 後、月に1回COALA−XF1とCES−Dによる評価を、6カ月に1回COALA−XF2とCES −D、SAS−SRによる評価を治療中止(または中断)まで繰り返す。治療中止(または中断) 以降、1年に2回の頻度でおよその臨床状態と経過をCOALA−XF2の該当項目とCES− D、SAS−SRで電話および郵送により評価。治療中止後の調査は、「最後のCOALA−XF 1から6カ月ごと」ではなく「エントリーから6カ月、12カ月、18カ月・・・」という意味である。再 発、再燃した場合や極性が変わった場合は、COALA−XRとCES−D、SAS−SRを施行 する。対象群については、PISAにより同定しておき2年後に転帰調査を施行する。(PISAに より同定された時点で転帰調査について口頭同意を得ておくことが望ましい。なくても可。転帰 調査の時点であらためて書状による同意を得ることとする) 研究倫理 ERS、IPS、EPSのすべてについて、国立精神・神経センターの倫理委員会に計画書を提出 し、事前の承諾を得る。研究に参加する施設は、協力するプランについて当該施設の倫理委 員会の事前の審査を受け、承諾を得る。IPSおよびEPSにおいては、初診(再初診)患者全員 にスクリ−ニング用自記式調査票を配布・記入させ、さらにこれら全例にエントリ−用面接票を 施行し、その最後で、研究の目的と内容を説明し、書面による同意を得る。受診していない患 者の 追跡調査を行う際は、書状による同意を得た上で電話調査を行う。 データの管理と発表 ERS、IPS、EPSのすべてのデータは国立精神・神経センターにて管理する。記入用紙はす べての患者番号で扱う。各参加施設は、自己の施設で集めたデータについては独自の解析と 発表について、すべての権限を有する。全データの解析・発表については班の解析発表委員 会の承諾を得た上で行うことができる。 項目 遡及的多数例研究 集中追跡研究 多数例追跡研究 方法 病歴簿調査 (10年前) 症例調査 症例調査 {スクリ−ニング調査項目} 選択源 初診患者全員 全例調査 施行せず 初診患者全員 初診患者全員 自記式 自記式 (「外来患者アンケート」) (「外来患者アンケート」) 症状 CES−D(自記式 1) CES−D(自記式 1) 社会適応 SASSR(自記式 2) SASSR(自記式 2) ソウシャルサポート SSQ(自記式 3) SSQ(自記式 3) スクリーニング PISA PISA PISA 対象 感情症候群+対照 感情症候群 感情症候群+対照 希望例数 25+50 5 15+30 所要時間 5分 20分 20分 {エントリー調査項目} 診断 DSM/JCM 症状評価 COALA-HE 人口統計 COALA-HE 既往歴 COALA-HE 社会適応 GAS 家族歴 FH−RDC 誘因 Ⅳ軸 対処行動 − 所要時間 15分 {各月追跡調査項目} 調査時点 施行せず 症状評価 − 自己症状 − 出来事 − 対処行動 − 性格傾向等 − DSM/JCM DSM/JCM COALA-E1 COALA-XE COALA-E1 COALA-XE COALA-E2 COALA-XE GAS GAS FH−RDC FH−RDC Ⅳ軸/COALA-E2 − COALA-E2 − 60分×2回 30分 1回/月 COALA-F1 CES−D COALA-F1 COALA-F1 EPQ(軽快時) 1回/月 COALA-XF1 CES−D − − EPQ(軽快時) SPAQ SPAQ (ふだんの習慣についてのアンケート) (ふだんの習慣に ついてのアンケート) 所要時間 − {6か月追跡調査項目} 調査時点 10年後(現在) 症状評価 COALA-HF 出来事 − 対処行動 − 30分 2回/年 COALA-F2 COALA-F2 COALA-F2 10分 2回/年 COALA-XF2 − − 自己症状 社会適応 転帰 経過 治療内容 所要時間 − − Tsuang 尺度 COALA-HF − 15分 {再燃・再発調査項目} 診断 施行せず 症状評価 − 自己症状 − 社会適応 − 誘因 − 対処行動 − 所要時間 − CES−D CES−D GAS/SASSR GAS/SASSR Tsuang 尺度 Tsuang 尺度 COALA-F2 COALA-XF2 特別尺度 特別尺度 30分 15分 DSM/JCM DSM/JCM COALA-R COALA-XR CES−D CES−D GAS/SASSR GAS/SASSR Ⅳ軸/COALA-R COALA-R 60分 30分 網かけは自己記入式調査票 CES-D Center for Epidemiologic Studies Depression Scale COALA Comprehensive Assessment List for Affective Disorders COALA-E1 Comprehensive Assessment List for Affective Disorders: Entry Version Part 1 COALA-E2 Comprehensive Assessment List for Affective Disorders: Entry Version Part 2 COALA-F1 Comprehensive Assessment List for Affective Disorders: Every Month Follow Up Version COALA-F2 Comprehensive Assessment List for Affective Disorders: Half -Year Follow Up Version COALA-HE Comprehensive Assessment List for Affective Disorders: History Study Entry Version COALA-HF Comprehensive Assessment List for Affective Disorders: History Study Follow Up Version COALA-R Comprehensive Assessment List for Affective Disorders: Relapse Version COALA-XE Comprehensive Assessment List for Affective Disorders: Extensive Study Entry Version COALA-XF1 Comprehensive Assessment List for Affective Disorders: Extensive Study Every Month Follow Up Version COALA-XF2 Comprehensive Assessment List for Affective Disorders: Extensive Study Half-Year Follow Up Version COALA-XR Comprehensive Assessment List for Affective Disorders: Extensive Study Relapse Version DSM Diagnostic and Statistical Manual for Mental Disorders 3rd edition Revised EPQ Eysenck Personality Questionnaire GAS Global Assessment Scale FH-RDC Family History-Research Diagnostic Criteria JCM Japanese Clinical Modification of the ICD-10 PISA Psychiatric Initial Screening for Affective Disorders SAS-SR SSQ Social Adjustment Scale-Self Report Social Support Questionnaire 説明 (1)対象は、直前の3ヶ月間抗うつ薬および抗精神病薬の投与のないもので、当該施設に初 めて外来受診(再初診)もしくは直接入院(再入院)したもの。ただし、今回挿話以前の同一の 精神疾患の既往あるいは治療歴は除外規定とはしない。対照群についても同様の規定を当 てる。 (2)スクリーニングに際しては、自記式調査票により、以下に例示するような各分科会委員の 希望の調査票を実施する。このことで、すべての精神疾患について自記式で集められる情報 を多数例収集し、各調査票の標準化をはかる。 CES-D EPQ SAS-SR SPAQ SSQ Center for Epidemiologic Studies Depression Scale Eysenck Personality Questionnaire Social Adjustment Scale-Self Report Seasonal Pattern Assessing Questionnaire Social Support Questionnaire (3)感情症候群のうち抑うつ症候群は、抑うつ気分もしくは興味の喪失を少なくとも4日間以上 持続し、かつエントリー時点においても認めるものとする。このことで、DSM−Ⅲ−R、JCM、 RDCの大うつ病、うつ病、定型うつ病の基準のすべておよび軽症うつ病の多くを含み、さらに brief reactive depression のような短期持続型の感情障害を含むことができる。この規 定で選択される症例の中には①抑うつ感情を伴う神経症②分裂感情障害③続発性うつ病(抑 うつ症状を伴う分裂病を含む)が入る。今回の調査目的である①感情障害の予後②軽症うつ 病の研究には、むしろ重大な1群をなすためあえてこれらを対象として含める。従って、対照 (コントロール)群はこの抑うつ症候群に該当しないものとする。躁症候群は、高揚気分、開放 気分、易怒的気分のいずれかが4日以上持続し、かつエントリー時点においても認めるものと する。このことで、DSM−Ⅲ−R、JCM、RDCの躁病の基準のすべてを含む。 (4)対照(コントロール)群は、陽性症状が4日間以上持続もしくは陰性症状が1年以上持続す る者、あるいは、不安、恐慌、強迫、恐怖、転換、解離、心気が4日間以上持続し、かつ上記の 感情障害の基準に該当しないものとする。従って、本調査での対照群は感情症状がまったく 見られないものとなる。これらはPISA面接にて確認する。 (5)診断は2段階で決定される。第1に、スクリーニング時点ですべての初診 患者について現在挿話と過去挿話について大項目診断が行なわれる。次に、エントリー時点 で、詳細な診断が主として COALA 情報からのアルゴリズムにて行なわれる。 (6)各月追跡調査項目の中にはハミルトンうつ病評価尺度が組み込まれている。ただしハミル トンうつ病評価尺度の総合点が5点以下になった時点でEPQを施行する。 (7)6か月追跡調査時点で受診していない者については、電話および郵送により調査する。す なわち、IPSでは電話で、COALA−F2の死亡情報、転帰、経過、(もし調査時点で抑うつ状 態にあるならば)不快気分への対処行動、持続様式、薬物療法の項目を調査、郵送では自記 式の1、2(CES−DとSAS−SR)を依頼する。EPSでは、電話で、COALA−XF2の死亡情 報、転帰、経過、(もし調査時点で抑うつ状態にあるなら)薬物療法の項目を調査。郵送で自 記式の1、2(CES−DとSAS−SR)を依頼する。具体的な手順はケースバイケースで主治医 が判断する。 厚 生 省 精 神 ・ 神 経 疾 患 研 究 委 託 費 感 情 障 害 班 多 施 設 共 同 長 期 転 帰 調 査 方 法 I P S 集中追跡研究 intensive prospective study(IPS) [手法]小数例の継時的集中追跡研究 [対象]研究年度の初診患者(再発例可)全員のうち、直前の3ヶ月間抗うつ薬および抗精神 病薬が無投薬で、かつ感情症状を呈する症例(「抗うつ薬」、「抗精神病薬」、「感情症状」の定 義についてはPISA参照) [除外基準]18歳未満の者。精神薄弱や難聴など、情報収集に困難を来すと思われる状態 [1施設当り年間希望症例数]5例(COALA−E1とE2を終了した症例のみ実際に同意をい ただきエントリーしたと扱う) [方法]研究担当医または施設の初診患者全員をスクリーニングの対象とする。マンパワーそ の他の事情で全員を対象とできない場合は、あらかじめ定めた一定の規則にのっとり、例えば 毎週一定曜日の初診患者全員のみ、あるいは毎週一定曜日の第1初診患者のみをスクリーニ ングの対象とすることも可。これらの対象に「外来患者アンケート」と題した自記式調査票を施 行し、PISAと題したエントリー用面接票を施行する(いずれが先でも可)。そしてPISAに定め た包含基準と除外基準にのっとり該当者を選択し、同意を得る。発症時期によるバイアスを排 除し、可及的に無作為抽出に近付けるために、Y年M月から本研究を開始したとするならば、 M月及びM+1月にスクリーニングした者のうち最初の該当患者1名をエントリーさせる。以後 2ヵ月ごとに同様。こうすれば該当患者がない月も考慮して1年に5∼6名をエントリーできるも のと思われる。逆に施設によっては希望があれば毎月1例をエントリーすることも可。エントリー が得ら れたあともあらかじめ定められた規則にのっとりスクリーニング対象者には「外来患者アンケー ト」とPISAは継続する。エントリーした症例についてはCOALA−E1、E2によるエントリー調 査後(E1は初診から1週間以内に行う。E2は多少ずれてもいいが、2∼3週間以内に行う)、 月に1回COALA−F1とCES−Dによる評価を、6ヵ月に1回COALA−F2とCES−D、SA S−SRによる評価を治療中止(または中断)まで繰り返す。治療中止(または中断)以降1年に 2回の頻度でおよその臨床状態と経過をCOALA−F2の該当項目とCES−D、SAS−SR で電話および郵送により評価。治療中止後の調査は、「最後のCOALA−F1から6ヵ月ごと」 ではなく「エントリーから6ヵ月、12ヵ月,18ヵ月,,,」という意味である。再発、再燃した場合や 極性が変わった場合は、COALA−RとCES−D、SAS−SRを施行する。 研究倫理 国立精神・神経センターの倫理委員会に計画書を提出し、事前の承諾を得る。研究に参加す る施設は、協力するプランについて当該施設の倫理委員会の事前の審査を受け、承諾を得 る。初診(再初診)患者全員にスクリ−ニング用自記式調査票を配布・記入させ、さらにこれら 全例にエントリ−用面接票を施行し、その最後で、研究の目的と内容を説明し、書面による同 意を得る。受診していない患者の追跡調査を行う際は、書状による同意を得た上で電話調査 を行う。 データの管理と発表 すべてのデータは国立精神・神経センターにて管理する。記入用紙はすべての患者番号で 扱う。各参加施設は、自己の施設で集めたデータについては独自の解析と発表について、す べての権限を有する。全データの解析・発表については班の解析発表委員会の承諾を得た 上で行うことができる。 方法 {スクリ−ニング調査項目} 選択源 全例調査 症状 社会適応 ソウシャルサポート スクリーニング 対象 エントリー希望例数 所要時間 {エントリー調査項目} 診断 症状評価 人口統計 既往歴 社会適応 家族歴 誘因 対処行動 所要時間 {各月追跡調査項目} 調査時点 症状評価 自己症状 出来事 対処行動 性格傾向など 症例調査 初診患者全員 自記式(「外来患者アンケート」) CES−D(自記式 1) SASSR(自記式 2) SSQ(自記式 3) PISA 感情症候群 5 20分 DSM/JCM COALA-E1 COALA-E1 COALA-E2 GAS FH−RDC Ⅳ軸/COALA-E2 COALA-E2 60分×2回 所要時間 1回/月 COALA-F1 CES−D COALA-F1 COALA-F1 EPQ(軽快時) SPAQ (「ふだんの習慣についてのアンケート」) 30分 {6か月追跡調査項目} 調査時点 2回/年 症状評価 出来事 対処行動 自己症状 社会適応 転帰 経過 治療内容 所要時間 COALA-F2 COALA-F2 COALA-F2 CES−D GAS/SASSR Tsuang 尺度 COALA-F2 特別尺度 30分 {再燃・再発調査項目} 診断 症状評価 自己症状 社会適応 誘因 対処行動 所要時間 DSM/JCM COALA-R CES−D GAS/SASSR Ⅳ軸/COALA-R COALA-R 60分 網かけは自己記入式調査票 COALA-E1 Comprehensive Assessment List for Affective Disorders: Entry Version Part 1 COALA-E2 Comprehensive Assessment List for Affective Disorders: Entry Version Part 2 COALA-F1 Comprehensive Assessment List for Affective Disorders: Every Month Follow Up Version COALA-F2 Comprehensive Assessment List for Affective Disorders: Half-Year Follow Up Version COALA-R Comprehensive Assessment List for Affective Disorders: Relapse Version DSM Diagnostic and Statistical Manual for Mental Disorders 3rd edition Revised GAS Global Assessment Scale FH-RDC Family History-Research Diagnostic Criteria JCM Japanese Clinical Modification of the ICD-10 PISA Psychiatric Initial Screening for Affective Disorders 説明 (1)対象は、直前の3ヶ月間抗うつ薬および抗精神病薬の投与のないもので、当該施設に初 めて外来受診(再初診)もしくは直接入院(再入院)したもの。ただし、今回挿話以前の同一の 精神疾患の既往あるいは治療歴は除外規定とはしない。対照群についても同様に規定を当 てる。 (2)スクリーニングに際しては、自記式調査票により、以下に例示するような各分科会委員の 希望の調査票を実施する。このことで、すべての精神疾患について自記式で集められる情報 を多数例収集し、各調査票の標準化をはかる。 CES-D EPQ SAS-SR SPAQ SSQ Center for Epidemiologic Studies Depression Scale Eysenck Personality Questionnaire Social Adjustment Scale-Self Report Seasonal Pattern Assessing Questionnaire Social Support Questionnaire (3)感情症候群のうち抑うつ症候群は、抑うつ気分もしくは興味の喪失を少なくとも4日間以上 持続し、かつエントリー時点においても認めるものとする。このことで、DSM−Ⅲ−R、JCM、 RDCの大うつ病、うつ病、定型うつ病の基準のすべておよび軽症うつ病の多くを含み、さらに brief reactive depression のような短期持続型の感情障害を含むことができる。この規 定で選択される症例の中には①抑うつ感情を伴う神経症②分裂感情障害③続発性うつ病(抑 うつ症状を伴う分裂病を含む)が入る。今回の調査目的である①感情障害の予後②軽症うつ 病の研究には、むしろ重大な1群をなすためあえてこれらを対象として含める。従って、対照 (コントロール)群はこの抑うつ症候群に該当しないものとする。躁症候群は、高揚気分、開放 気分、易怒的気分のいずれかが4日以上持続し、かつエントリー時点においても認めるものと する。このことで、DSM−Ⅲ−R、JCM、RDCの躁病の基準のすべてを含む。 (4)診断は2段階で決定される。第1に、スクリーニング時点ですべての初診患者について現 在挿話と過去挿話について大項目診断が行なわれる。次に、エントリー時点で、詳細な診断 が主として COALA 情報からのアルゴリズムにて行なわれる。 (5)各月追跡調査項目の中にはハミルトンうつ病評価尺度が組み込まれている。ただしハミル トンうつ病評価尺度の総合点が5点以下になった時点でEPQを施行する。 (6)6か月追跡調査時点で受診していない者については、電話および郵送により調査する。す なわち、電話では、COALA−F2の死亡情報、転帰、経過、(もし調査時点で抑うつ状態にあ るならば)不快気分への対処行動、持続様式、薬物療法の項目を調査、郵送では自記式の 1、2(CES−DとSAS−SR)を依頼する。具体的な手順はケースバイケースで主治医が判断 する。 付録 2 MOOD DIS 2/DESIGN/PISA P I S A Psychiatric Initial Screening for Affective Disorders 感 情 障 1 害 9 用 9 対 4 象 年 選 4 択 基 準 月 感情障害用対象選択基準 Psychiatric Initial Screening for Affective Disorders(PISA)は、厚 生省精神・神経疾患研究委託費による多施設共同の感情障害転帰調査での対象選択(スクリ ーニング)を目的として特別に編集した半構造化面接である。PISAは、遡及的多数例研究、 集中追跡研究、多数例追跡研究に共通して、調査期間中の初診(もしくは再初診)の患者全 員に適用する。外来初診(再初診)患者はすべてPISAの対象であり、外来を経由せず直接 病棟に入院した患者もPISAの対象となる。この手続きは、エントリーされた患者の母集団から の代表性を確認する上で不可欠の作業である。したがって、当初の予定の数の患者をエントリ ーした後も、PISAによる調査は年度末まで続行する。昏迷や興奮等の理由からPISAの評価 が行えない場合は、可能になってから実行する。 記入用紙の記載はすべてBの鉛筆で行う。記載の変更を行う場合は、すべて消しゴムで消し 新しく書き直す。文章による記述を求められている以外は、すべて適切な数値を各項目のマス に右につめて記入する。 調 査 状 況 施設:施設番号は別紙一覧表参照 施設名 施設番号 面接者: 面接者名 面接者番号(別紙一覧表参照) 患者番号:その評定者が研究面接にエントリーさせた患者すべてにつき、1から順に番号を振 る。 施設でのカルテ番号: 生年月日: 19 年 月 日 性別 1. 男性 2. 女性 調査時年齢(不明なら近似値を) 調査年月日: 19 歳 年 月 日 情報源:患者以外の情報源 情報提供者 1. なし 2. あり 以前の診療簿(カルテ) 1. なし 2. あり 他医からの紹介状 1. なし 2. あり その他 1. なし 2. あり その他の場合は内容を記載する。 人 口 統 計 結婚歴: 1. 現在単身。または現在異性と1年以上同棲していない。 2. 現在配偶者あり、または1年以上の同棲。 9. 不明 過去に結婚歴あるもののみ(現在配偶者ある者は以前の最も最近の結婚について) 1. 死別。 2. 別居。内縁関係の場合は一時的な別離(後に復す可能性あり) 3. 離婚。内縁関係の場合は永久的離別。 既婚(同棲)者および過去に結婚歴ある者のみ 最初の結婚(同棲)時の年齢 歳 教育歴:最終学歴を評価する。中退は扱わない。在学中の学生については卒業見込みでは なく、それまでに卒業(修了)した最高学歴を記載する。 1. 小学校中退以下 2. 小学校卒業 3. 中学校卒業 4. 高等学校卒業 5. 短期大学もしくは専門学校卒業 6. 大学卒業 7. 大学院修士課程卒業 8. 大学院博士課程卒業以上 9. 不明 現在の職業:パ−トを含む。主婦で他にも職業(パ−トを含む)のある女性は、家庭外の職業を 評価する。自営業の世帯で家族がパート的に店頭に立ったり、経理を見たりしている場合も、 その者の職業はパートとして扱う。 1. 無職 2. 事業主(店や工場やアパートを持っている人を含める) 3. 管理職(課長以上) 4. 事務職(セールス・駅員等を含める) 5. 農業・林業・漁業 6. 労務職(工員・土木作業など) 7. 自由業(医師・弁護士・公認会計士・著述業等) 8. サービス業(店員・アパートマンションの管理人を含める) 9. 主婦または家事専業 10. その他 11. 学生 99. 不明 就業期間:今回病態発症の6か月前までの3年間の職業(学業・主婦業を含む)の合計期間 1. まったく就業しなかった 2. 2∼3日から1ヵ月しか就業しなかった 3. 6ヵ月まで 4. 1年まで 5. 2年まで 6. ほとんど3年間 7. 全期間就業していた 9.不明 早期喪失体験: あなたのお父様は 1)健在 現在( )歳 2)死亡 →その時お父様は何歳でしたか( )歳 その時あなたは何歳でしたか( )歳 おなくなりになった原因は ①病気 ②事故 ③自殺 15歳以前にお父様と1か月以上離れて暮したことがありますか(死別以外)。もし複数 回の離別体験があれば、最も長期のものを評価する。 1)ない 2)ある →あなたがおいくつの時でしたか ( )歳から( )歳まで どのくらいの期間でしたか )か月 ( )年( どういう理由からですか(ひとつだけ○をして下さい) ①あなたの病気入院 ②お父様の病気入院 ③お父様の仕事 ④学校の寄宿舎・寮 ⑤養子・里子 ⑥御両親の別居 ⑦御両親の離婚 ⑧その他(記入して下さい) あなたのお母様は 1)健在 現在( )歳 2)死亡→ その時お母様は何歳でしたか( )歳 その時あなたは何歳でしたか( )歳 おなくなりになった原因は ①病気 ②事故 ③自殺 15歳以前にお母様と1か月以上離れて暮したことがありますか(死別以外)。もし複数回の離 別体験があれば、最も長期のものを評価する。 1)ない 2)ある→ あなたがおいくつの時でしたか ( )歳から( )歳まで どのくらいの期間でしたか ( )年( )か月 どういう理由からですか(ひとつだけ○をして下さい) ①あなたの病気入院 ②お母様の病気入院 ③お母様の仕事 ④学校の寄宿舎・寮 ⑤養子・里子 ⑥御両親の別居 ⑦御両親の離婚 ⑧その他(記入して下さい) 今 回 病 態 「病態」とは寛解(2ヶ月以上症状のない状態)と別の寛解に挟まれた精神医学的に障害を認 める期間、もしくはそれまで精神医学的に健康だったものがある時点から症状を示し始めた状 態の期間を指す。つまり「病態」は人生の中で何らかの精神医学的に病的な変化 を新しく呈する期間を意味する。生下時もしくは青年期から面接時までほぼ持続している障害 (例えば精神遅滞・人格障害等)(DSM−Ⅲに従えば第Ⅱ軸の障害)は病態とは考えない。た だし、躁病態とうつ病態が寛解を挟まずに繰り返す場合に限って、最も近いほうの病態のみを 今回病態とする。したがって、(今回病態との間に無症状の期間を挟まなくとも)、それ以前の 病態は過去の病態と見なす。 今回病態の発症年齢:今回の病態のうち何らかの精神症状のうち最も早く出現した症状につ いて、その発症年齢を記載する。発症年齢を明確に同定できない場合は、臨床的に最もそれ らしい整数で表示し、「?」や「不明」といった記載は避ける。 歳 今回病態発症の様式:何らかの精神症状のどちらかのうち最も早く出現した症状の出現(発 症)の急性・緩徐の程度を評価する。 1.発症を日の単位で同定できる(例、高校の入学式の日だった、 誕生日の前日だった等) 2.発症を週の単位もしくは月の上・中・下旬で同定できる 3.発症を月の単位で同定できる 4.発症を季節の単位で同定できる(例、1年前の夏) 5.発症を年の単位で同定できる(例、入社した年) 6.発症の同定が困難 今回病態の持続期間:今回の病態が出現してから本面接施行時点までの期間を、1カ月を越 えるなら月数で、1ケ月以下なら日数で表示する。1年を越える場合も持続期間を月数で表示 し、「3年4ケ月」や「3×12+4」といった記載は避ける。また最も近い月数を整数で表示し、 「1・5ケ月」や「3/2ケ月」といった少数や分数による記載は避ける。持続期間を明確に同定 できない場合は、臨床的に最もそれらしい整数で表示し、「?」や「不明」といった記載は避け る。 1か月を越える場合 ヶ月 1か月以下の場合 日 症 状 と 症 候 群 記入方法:各項目は「1.なし」「2.あり」と評価する。今回病態中に4日以上持続して認められ た症状を「あり」と判断する。ただし陰性症状のみ、1年以上の持続を必要と する。持続期間に関する誤解が生じそうなら、各設問に「4日以上続けて」を加える。面接時点 では認めなくとも、今回病態中のいずれかの時点で存在すれば「あり」とする。なお、各症状に 備えてある標準的設問に盲従する必要はなく、患者の教養、文化背景、方言等に応じて、表 現の変更を行うことが望ましい。さらに、必要なら他の質問を追加する。 抑うつ症候群 抑うつ気分:その個人にとっては明らかに異常であるほどの抑うつ気分 「4日以上続けて、滅入った(悲しくなった、ゆううつになった、ふさぎこんだ、落ち 空虚な)感じですか」 込んだ、 興味喪失:通常なら楽しい活動に対する関心または歓びの著明な喪失 「ふだん楽しんでいるもの、たとえば仕事や友人づきあいや、家庭生活や、夫婦(性) 生活 や、趣味のことや、テレビをみることや、仕事や、そういうものに興味を失ったと か、以前に比 較して楽しくないですか」 上記のいずれかが存在すれば抑うつ症候群とする。 躁症候群 高揚気分:その個人にとっては明らかに異常である高揚した気分が支配的に存在 「普段に比べてひどく気持ちが高ぶっていますか。気分が極端に良くて、調子が良くて、 調子が高くて、いつものあなた自身と明らかに違っていますか」 開放気分:その個人にとっては明らかに異常である開放的な気分が支配的に存在 「普段に比べてひどく自由になった気持ちがしますか」 易怒的気分:その個人にとっては明らかに異常である易怒的な気分が支配的に存在 「普段に比べてひどく気持ちがイライラしていますか」 上記のいずれかが存在すれば躁症候群とする。 陽性症候群 幻覚 「あなたの考えていることやしていること、いちいち批判したり非難したりする内容の 声が、 回りに人がいないにもかかわらず聞こえたことがありますか。2人とかそれ以上 の人が話し合 っている声が、回りに人がいないにもかかわらず聞こえたことがあります か。それ以外にも、 人の声が聞こえるのに、回りに人がいないとか、その声がなぜ聞こ えるのか説明のつかない ことがありましたか。そうした声はどこから聞こえてくるので すか。あなたの体の一部から聞こえて来ますか。声以外に物音や音楽などが聞こえます か」(幻聴) 「体の表面や内部に奇妙な感じや嫌な感じがして困ることがありますか。体の表面や直 ぐ 下やもっと内部に、ゴムやカラスや鉛の物が入って嫌だと感じることがありますか」 (体感幻 覚) 「自分の皮膚の上に何もないのに奇妙な感覚がありますか」(幻触) 「回りの人は臭わないというのにあなただけに何か臭うことがありますか」(幻臭) 「回りの人には見えないのにあなただけに何か見えることがありますか」(幻視) 自我障害: 「自分の考えが外から声になって聞こえる事がありますか」(考想化声) 「自分のものでない考えがあなたの頭の中にいれられたと感ずることがありますか」 吹入) (考想 「何か外的な力であなたから考えていることが持ち去られると感じることがありますか」 想奪取) (考 「あなたの考えが外に伝わっているので、他人があなたの考えていることを知っている だと感じることがありますか」(考想伝播) の 「外からの力であなたの行動や感情がコントロールされていると感じることがあります か。自 分の動きが自分の意志を離れて、まるでロボットやあやつり人形のように他人の 力で動かさ れているように感じることがありますか」(作為体験) 妄想: 「誰かが、あなたの生活をおびやかしたり、あなたを困難に引きこんだり、あなたを傷 つけ ようとか殺そうとねらっていると感じることがありますか。何かの特殊グループの 活動に巻きこ まれたと感じることがありますか。そうしたことに最初に気がついた時は いつでしたか。どうし てそういうことに気がついたのですか。何か証拠となるような出 来事があったのですか。具体 的にはどんな風でしたか」 思考形式の障害:滅裂もしくは連合弛緩 緊張病症状:興奮・昏迷・命令自動症・その他の緊張病症状のうちいずれか 上記のいずれかが存在すれば陽性症候群とする。 陰性症候群 陰性症状:感情の平板化・鈍麻、思考の貧困、意欲・発動性の欠如、快楽消失・非社交性のう ちいずれか 神経症症候群 不安発作:突発的に出現して少なくとも数分間持続する発作性不安。1回あれば「あり」とす る。 「突然ひどく恐ろしくなるような発作がありますか」 不安感:不安発作中のものを除く 「4日以上続けて、いつも不安で緊張した(イライラした、神経がピリピリした、落ち い、はりつめた)感じですか」 動悸:不安発作以外の不安時の動悸 「そういう時ははっきりした理由もないのに胸がドキドキしますか」 発汗:不安発作以外の不安時の発汗 「そういう時ははっきりした理由もないのに手やわきに汗をかいたりしますか」 着かな 四肢振戦:不安発作以外の不安時の四肢振戦 「そういう時ははっきりした理由もないのに手がふるえたり、全身がふるえたりします か」 口渇:不安発作以外の不安時の口渇 「そういう時ははっきりした理由もないのに喉が乾きますか」 恐怖感: 「特別の理由もないのに、特定の場所や状況や動物等が普通の人に比べて恐がることが ありますか。それはどんな場所や状況や動物ですか」 強迫観念:日常生活や社会的役割が著しく障害されている強迫観念 「何の意味もなさないことが分かっているのに、繰り返し心に浮かんで取り除くことの ない考えやイメージや音楽に煩わされることがありますか」 出来 強迫行為:日常生活や社会的役割が著しく障害されている強迫行為 「絶えず手を洗うとか、数をかぞえるとか、ガスや電気を点検するとか、自分では馬鹿 馬鹿しいと思ってもある行動を何回も繰り返すような確認癖がありますか」 健忘:通常の物忘れでは説明できないほど顕著に過去の出来事。周囲の人物・現在の年月日 等を思い出せない。 「昔のことやつい今までのことを思い出せないとか、回りの人が誰だか分からなくなる とか、 あるいは今日が何年の何月だか思い出せないとか、あなたの記憶力が急になくな ってしまっ たことがありますか」 遁走:基本的な生活行動(例えば、食事、入浴、見知らぬ人との簡単な付き合い、道を尋ね る、切符やガソリンを買うなど)を保ち、遁走中の健忘を認める。 「気が付いたら知らない土地にいたといった経験がありますか。その間にあなたが何を し ていたのか人から知らされましたか」 昏迷:随意運動や会話の欠如と外的刺激に対する反応性の欠如で、正常な筋緊張・静止姿 勢・呼吸・共同眼球運動の状態から意識障害は否定される。 「まるで金縛りにあったように一定の姿勢で動かなくなったことがありますか」 トランス・憑依:別人・妖精・神・霊力・動物霊などに変身したかのように振舞う。 「例えば狐や狸といったような動物や、神仏や、霊魂や、別人や何かに乗り移られたと そうしたものに変身したといった経験がありますか」 か、 運動痲痺:随意運動(発語も含む)における非器質性の制御の喪失。 「手や指や足の力が脱けて動かせなくなったことがありますか」 けいれん発作:意識喪失を伴わないけいれん発作。 「全身がけいれんする発作を経験したことがありますか」 感覚喪失:感覚機能の喪失。 「手や足やほかの体の一部がシビレたように感覚がなくなって、物にさわっても感じな たり、痛みも感じなかったことがありますか」 かっ 非器質性身体症状:上腹部症状(腹痛、嘔気・嘔吐・悪心、上腹部膨満感、しゃっくり等)・下 腹部症状(排便異常、下腹部痛、鼓腸感等)・心血管症状(胸痛等)・呼吸器症状(呼吸困難・ 切迫、過換気等)・泌尿生殖器症状(排尿困難・頻尿、陰部不快感、月経過多、性交時痛、月 経痛等)・皮膚筋症状(シミ・色素消失、シビレ・皮膚異常感覚等)・疼痛(四肢・躯幹部の疼 痛、関節痛、頭痛・頭重感等)のうちいずれか 自己臭症候群:口臭・おなら・体臭を現実に較べて不釣合いに強く自覚して不快感を訴える か、自分では臭わないが周囲の人の態度から分かると訴える。 「ゲップや、おならや、口臭が強いと悩むことがありますか。それは自分でも臭うので すか。周囲の人の態度で自分が臭っていると分かるのですか」 醜形恐怖症候群:自己の身体の一部が現実の外見に不釣合いなほど異常な形をしていると 自覚して醜いと訴える。 「例えば鼻や、耳や、唇など、ご自分の体の一部の形が変なので劣等感を持っていたり、 人が自分のことをジロジロ見ていると思ったりすることがありますか」「気になる部分 はどこで すか」 体感異常症候群:医学的に不合理な異常体感を持続的に訴え続け、このために日常活動や 社会的機能の明かな低下をもたらしている。 「体の表面や内部に奇妙な感じや嫌な感じがして困ることがありますか。体の表面や、 直 ぐ下やもっと内部に、ゴムやガラスや鉛等の物が入っていて嫌だと感じることがあり ますか」 心気症候群:重篤で進行性の身体疾患に罹患しているという危惧・心配。心気妄想は精神病 の症状の節においても評価する。 「症状が心配というよりむしろ、御自分が癌やAIDSなどのこわい病気にかかってい るので はないかと心配することがありますか」 離人症候群:自己または外界に対する非現実感や疎外感 「自分が自分であるという実感がなくなったことがありますか」「人や花を見て、それ がそこ にあるということはわかるけれども実感が沸かないとか、変わって見えるという ようなことがあり ますか」 その他の症候群 その他の症状:特定し記入する。 「他に気の付いた症状や、困ったことがありますか」 病 因 器質性の病因:今回病態の症状を明確に説明できる器質性の病因がある場合のみ「あり」とす る。病因とは断言できないけれども、身体合併症があれば、余白に記入してください。 1.なし 2.あり(内容記入) 精神作用性物質性の病因:今回病態の症状を明確に説明できる精神作用性物質(アルコ− ルを含む)の病因がある場合のみ「あり」とする。 1.なし 2.あり(内容記入) 治 療 歴 過去3ヵ月の治療内容。 抗うつ薬:スルピリド(ドグマチ−ル)、アルプラゾラム(コンスタン、ソラナックス)、クロナゼパム (リボトリ−ル、ランドセン)、バルプロ酸(デパケン)は抗うつ薬に含めない(これらの薬剤がもし 投与されていれば余白に記入して下さい)。リチウム(リーマス)、カルバマゼピン(テグレトー ル)は抗うつ薬に含める。 1.なし 抗不安薬: 1.なし 睡眠薬: 1.なし 抗精神病薬:含スルピリド(ドグマチール) 1.なし その他: 1.なし 2.あり 2.あり 2.あり 2.あり 2.あり 病 名 診 断 DSM−Ⅲ−R:下位診断まで決定し、診断名を記載した上でコ−ド番号を記入する。感情障 害に属する診断名で頻回に使用されるものは、記入用紙に掲載されている中から選び、○を つける。 JCM:下位診断まで決定し、診断名を記載した上でコ−ド番号を記入する。感情障害に属す る診断名で頻回に使用されるものは、記入用紙に掲載されている中から選び、○をつける。 同 意 本追跡調査の目的と内容を説明し、治癒した後も追跡調査を行う旨告知し、同意書(同意書 用紙は事務局で準備)により患者の同意を得る。対照群には、2年後に追跡調査を行う旨告知 し、口頭で患者の同意を得る。 IPS//COALA-E1 C O A L A Comprehensive Assessment List for Affective Disorders Entry Version Part 1 感 情 障 害 用 統 合 面 接 基 準 初 回 面 接 版 第 1 部 1 9 9 4 年 4 月 緒 言 感情障害用統合面接基準 Comprehensive Assessment List for Affective Disorders(COAL A)は、厚生省精神・神経疾患研究委託費による多施設共同の感情障害転帰調査での臨床 項目評価を目的として特別に編集した一連の構造化面接の総称である。COALAには以下 の版がある。 初回面接版第1部(COALA−E1) 初回面接版第2部(COALA−E2) 各月追跡版(COALA−F1) 6か月追跡版(COALA−F2) 再発再燃版(COALA−R) 簡略初回面接版(COALA−XE) 簡略各月追跡版(COALA−XF1) 簡略6か月追跡版(COALA−XF2) 簡略再発再燃版(COALA−XR) 病歴初回調査版(COALA−HE) 病歴追跡調査版(COALA−HF) いずれの版を用いるかは、共同研究のうちのいずれのプロジェクトに参加するかという点と、被 検者の病期によって異なるので、全体研究計画の指示に従って版を選択する。初回面接版第 1部および第2部は、集中追跡計画(IPS)のエントリーにおいて用いる。初回面接版の第1部 と第2部は、それぞれ日を分けて実施するが、情況が許せば短かい休息をはさみ同日に行っ てもよい。第1部は今回病態は今回病態中の諸症状の有無と重症度を評価し、DSM−Ⅲ− R、JCM、RDCなどの操作的診断基準に従った診断を決定する。さらに、recurrent brief depression, neurotic major depression, suaffective dysthymia といった特徴的病型の 診断と評価尺度の得点を自動換算によって求める。種々の診断体系に対応するために splitting of the concept (T. A. Ban) を行った。そのため類似の概念が人工的に差異化されて いる印象を与える項目があろうが、あくまでCOALAの定義に従って判断する。第2部は、今 回病態の発症と経過に影響を与えた可能性のあるストレッサー、発生したストレッサーについ て採用した対処行動、不快気分そのものへの対処行動、精神科既往歴、精神科家族歴につ いて評価する。 COALA−E1を開始する前に、既にPISAによって患者の病歴の概要は聴取している。症 状評価の節と観察評価と総合評価の節における評価の対象となる期間は2つある。ひとつは 過去1週間(PISA面接直前の7日間)であり、もうひとつは今回の病態中(病態の期間が1年 を越す場合は過去 12 か月間)の最も重症の1週間である。各症状について、前者の重症度得 点が後者の得点を上まわることはないので注意すること。面接は、すべての症状について過去 1週間の評価を行い、次に最重症時の評価を行ってもよく、あるいは各症状ごとに過去1週間 の評価と最重症時の評価を行った上で次の症状の評価に移行するという手法を取ってもよ い。また、COALA−E1は抑うつ症状を最初に並べ、その後に躁症状を挙げているが、今回 病態が躁病相を前景に持つならば、躁症状から評価し、抑うつ症状を後半にまわしてもよい。 さらに、PISAで十分確認してあるならばCOALA−E1で更に聴きなおす必要はない。ただ し、いずれの症状も標準的質問にならって問診した上で評価するものであり、患者が自発的に 訴えないことを理由に「なし」と判断してはならない。 各症状項目には標準的設問を備えてある。しかし、これに盲従して読み上げる必要はなく、 患者の教養、文化背景、方言等に応じて、表現の変更を行うことが望ましい。さらに、必要なら 他の質問を追加する。また、COALAの記入は、患者との面接だけでなく、例えば家族からの 情報、看護スタッフからの情報、過去のカルテの記載等、入手可能なすべての情報を勘案し て評価する。 一般に「2」以上が閾値以上で、これは「当該の症状、つまり病的とみなしうる閾値を越えた 症状があった」という意味であり、「1」は病的と判断される閾値以下だが、ないとも言えない場 合にスコアします。このような考え方は、代表的な評価方法である Hamilton でもSADSでも採 用されている基準です。 また、「閾値以上」となるための持続期間は、自殺企図のような場合を除き、「4日以上の持 続」を指すというのが、PISA、COALAに共通した認識です。「閾値以上」か否かは、持続の ほかに頻度、重症度を加味し、臨床判断してください。 アンカーポイントで評価するのではないことも御留意ください。(いくつかの明らかな例外を 除き)症状として定義された概念を2段階とか6段階とかに評価してください。アンカーポイント に盲従・拘泥すると、判断が臨床的実態にそぐわなくなることがあります。例えば「イライラしま すか」と問うて、患者が「はい」と答えても、それが易刺激性という臨床症状に該当するかどうか を判断しなくてはなりません。換言すれば「1」は、例えば患者が「あり」と陳述し、評価者の判 断では確かに存在するだろうが病的と言える程度ではない場合にスコアされることがあるでしょ う。つまり、 症状なし 正常 範囲 0 疑わしい 病的 1 2 軽症 中等症 重症 2 3 4 3 or 4 5 6 4 5 6 記載方法 1. 記入用紙の記載はすべてBの鉛筆でお願いします。記載の変更をする際は消しゴム で消して新しく書き直して下さい。 2. 各項目はいくつかの項目を除いてすべて適切な数値を右につめて記入して下さい。 3. 被検者の発言内容が面接の途中で変ったために判断がつかなかったり、面接で聴取 しそこなったり、質問が不可能(例:回答が拒否される)あるいは回答があいまい、 等の 場合は「9」(2桁なら「99」、3桁なら「999」)と記入します。ただ し、近似値を推測できる 場合は、可及的に推測値を記載する。例えば、「最初の結 婚時の年齢」がおよそ25∼ 27歳ごろであるなら、99でなく26を記入する。 面 接 お よ び 評 価 の 開 始 施設:施設番号は別紙一覧表参照 施設名 施設番号 評定者: 評定者名 評定者番号(別紙一覧表参照) 記入者は 1. 面接者 2. 観察者 被検者: 患者番号 PISAで振られた番号 施設でのカルテ番号 生年月日 19 性別 調査時年齢(不明なら近似値を) 状態 調査年月日: 年 月 日 1. 男性 2. 女性 歳 1. 入院患者 2. 外来患者 19 年 月 日 調 査 期 間 の 設 定 次に、面接が被験者の問題や困難について聞くものであり、面接を受ける人には必ず尋ねる 標準的質問も含まれていることを説明する。そしてこれまでの面接にもとづき、以降の質問の 調査期間を設定する。以下の面接の目的は、過去1週間の現在症評価、ならびに、今回病態 の評価である。したがって、それぞれの項目について、過去1週間はどうであったかをまず質 問し、次に、今回の病態中で当該症状が最も強かった1週間を調査の対象とする。 「これから色々な症状について順番におうかがいします。これは同じような状態になると皆さん が体験することが多いものばかりです。それぞれの症状が最近1週間ではどうだったか、また、 ○○年○○月(PISAで明らかになった時期)以降で一番ひどいときにどうだったのかを教えて ください」 今回の病態の持続期間が1年を越す場合は、過去1年間の中で当該症状が最も強かった1週 間に焦点を当てる。 「これから色々な症状について順番におうかがいします。これは同じような状態になると皆さん が体験することが多いものばかりです。あなたが悩んでおられる問題はずっと以前から続いて いるようですが、それぞれの症状が最近1週間ではどうだったか、また、この1年間で一番ひど いときにどうだったのかを教えてください」 症 状 評 価 以下の各症状は、(1)過去1週間と(2)今回の病態中(病態の期間が1年以上なら過去 12 か 月間)で最も重症だった1週間のそれぞれについて与えられた段階で評価する。 不快気分 抑うつ気分:沈んだ気分 lowered mood を特徴とし、悲しさとして経験される、否定的な色合い をもった感情状態 negatively-tinged affective state。悲しみや意気消沈から、何とも言いようの ない極度の内的苦悶にいたる広い範囲の感情が含まれる。抑うつ気分の表現としては、泣くこ と、悲しそうに見えること、打ちのめされ絶望したように見えること、苦痛や苦悩にとらわれたよう に見えることが含まれる。 「この1週間、どんな気分でしたか」 「ゆううつでしたか。悲しいでしたか。絶望的でしたか」 「毎日、そのように感じていたのですか。それともときどきですか」 「涙もろくなっていますか」 0 症状なし。 1 ごく軽度。一過性の悲哀感。外見上抑うつの徴候なし。 2 軽度。気力の喪失の訴え。沈んでいる。くよくよする。悲しい。 3 中等度。外見上ゆううつ。悲しい。どうしようもない。 4 やや高度。抑うつの身体的徴候(通常はいくらかの制止もしくは 激越を示す)。絶望感。希望喪失。抑うつ的内容が前景。自殺念 慮。 5 高度。抑うつの身体的徴候を示す広範囲で重篤な抑うつ。抑うつ 性妄想。死や自殺への没頭。悲哀不能 Nichttraurigseinkoennen 6 非常に高度。抑うつ性昏迷もしくは激越。はなばなしい抑うつ性 妄想。自己破壊行為。 不機嫌:気むづかしい、むっつりした、不満な気分。不機嫌で、ふてくされた態度。 「不機嫌でむっつりしていた時期がありますか。不平でも言いたいような、ふてくされた気分で したか。不満な気分でしたか」「不平・不満がつのるときはありましたか」 0 1 2 なし 軽度 あり 易刺激性:反応性が高まり、怒った様子。患者は外面ではおとなしそうに振舞っていても、攻 撃的な感情の爆発がいまにも起こりそうな感じがある。 「ふだんよりもイライラと怒りっぽい時期がありますか」 0 1 2 なし 軽度 あり ▲今回挿話中に抑うつ気分を認めなければ興味と社交性へ飛ぶ。 気分の質的変化:抑うつ感が、特に親しい人が死んだときに抱くであろうような種類の気分とは 質的に異なる(すなわち、ただ単により極度になっているとか、興味の喪失などといった他の症 状が混入しているという以上の質的変化を認める)こと。 「その感情は、親しい人がなくなられたときや、悲しい映画や小説を見たり読んだりした ときに、感じるような気持ちとは違っていますか」 0 1 2 なし 軽度 あり 涙もろさ: 「涙もろくなりましたか。泣いたり、涙ぐんだりしましたか」 0 1 2 なし 軽度 あり 他責傾向:自分の抑うつ気分を人のせいにする。 「あなたは今回このように落ち込んだ(その他適当な患者の言葉を用いよ)原因は何だ思われ ますか」 0 1 2 なし 軽度 あり 抑うつ的な状況評価:抑うつ気分に由来する、否定的で悲観的な評価や判断。この評価は、 誘因に関連した事柄に限定されず、その他の題材にも及ぶ。 「自分の気分が自分の考え方や見方に影響していると思いますか。状況の判断がふだんよりも 悲観的になっていますか。悲観的な物の見方がほとんどすべてにわたっているようですか。悲 観的な物の見方が現在だけでなく過去や未来のことがらにもおよんでいますか」 0 なし 1 軽度 2 あり 気分の反応性:まわりの出来事の結果として、これに応じて生ずる気分の変化。 「何かがあれば気分がよくなることはありましたか。誰かがあなたの気分をよくしようとすれば、で きたでしょうか。友達としゃべっていると気分はよくなりますか。何か楽しいことがおこれば気分 がよくなりますか」 0 1 2 なし(気分が良くなることはない) 軽度 あり(気分が良くなることがある) 午前悪化:患者は真夜中の 12 時から真昼の 12 時の間にあきらかに気分が悪化する。 「一日のうちでも、かならず気分が良くなるとか、悪くなるとか決った時間帯がありますか。いつ ですか」 0 1 2 なし 軽度 あり 午後悪化:患者は昼から夜にかけてあきらかに気分が悪化する。 0 1 2 なし 軽度 あり 貧困感:生計を維持するための手段を失ったという気持ち。これは妄想的でありうる。 「自分は何もかも失ってしまったと感じられたことがありますか。生活費をかせぎ、服を買い、食 べ物を買うこともできなくなったと。自分や自分の家族は、必ず一文なしになってしまうとお考え ですか」 0 1 2 3 なし 軽度 あり 貧困妄想 絶望感:未来にたいする肯定的な期待を持てない悲観的気分。 「どちらかと言うと、絶望的な気分になったことがありますか。将来に対する計画を何かお持ち ですか。それはどんな計画ですか。(患者の言う計画がどんなものであるか特定できるか)」 0 1 2 なし 軽度 あり 興味と社交性 興味と喜びの喪失 「この1週間はどんなことをして過ごされましたか」 「それは(興味深く、熱中して)やれたのですか。それとも、それをやるには自分に無理をしなく てはならなかったですか」 「いつもやっていることでこの1週間やらなかったことがありますか」(もしあれば)「どうしてです か」 「何か楽しみにし待っていることがありますか」 「物事を楽しむことができなくなった時期がありましたか。以前なら楽しめたことを楽しめなくな ったのですか。例えば、テレビや、新聞や、趣味や、友達付き合いを、以前に比較して楽しめ なくなったようでしたか」 「まわりで起きている出来事に対する興味や関心がなくなってしまった時期はありましたか。何 が起ころうとどうでもよくなったと思われましたか」 0 1 困難なし。 活動性・仕事・趣味などについて出来ない、気力が出ないという 感じがある。 2 直接患者の口から、あるいはものうげ、優柔不断、不決断(無理 をして仕事をしている)などから間接的に、活動・仕事・趣味などに興味を失っていることが分 かる。 3 活動的に過ごす時間の減少、生産性の減少、入院患者の場合は病 棟の定期的仕事以外に仕事や趣味などの活動に参加する時間が3時間以下。 4 現在の疾患のために仕事をやめてしまう、入院患者の場合、病棟 の定期的仕事以外には何もしないか、それも介助なしにはできない。 社会的引き込もり:元来、若い頃からそうであると述べる場合も、「あり」とする。 「ふだんとくらべて、人付き合いが少なくなりましたか。(あるいは、もともと人付き合いの少ない ほうですか)大勢のなかにいるよりも、一人でいるほうが好きですか。人と会わなければいけな いような状況を避けたり、ことわったりするようになりましたか。友達に電話をしなくなったり、電 話にでなくなったりするようになりましたか」 0 1 2 なし 軽度 あり 無口:元来、若い頃からそうであると述べる場合も、「あり」とする。 「ふだんとくらべて、口数が減りましたか。(あるいは、もともと口数の少ないほうですか)人と話 すことが少なくなりましたか」 0 1 2 なし 軽度 あり 疲 労 疲労感:疲労して衰弱した感じ。患者は身体的に消耗したように感じている。疲労感は努力す る前から存在し、行動するにつれて衰弱した感じが強まる傾向がある。 「疲れきった感じの時期がありましたか。消耗した感じですか。弱ってしまっていますか。衰弱し た感じですか」 「ほとんどの時間、そんな感じですか」 0 1 2 なし 軽度 あり 疲労の身体症状:活力・エネルギーの低下と疲労性の増大に由来する身体症状のみを評価 する。 「肩凝り、頭痛、筋肉痛がありましたか」 「体や頭の重い感じはありましたか」 0 1 2 全くない。 背中、頭、手足の重い感じ。 内容の明らかな一般的身体症状が認められる。 主観的元気のなさ:元気よさや気力の喪失または著名な減退 「何かをするのが、億劫ですか」 0 1 2 自 己 評 価 なし 軽度 あり 罪業感:患者にとっては道徳的あるいは宗教的教えに反した過去の行動、考え、希望に対す る過度の後悔。妄想的でありうる。 「回りの人に対して申し訳がないとか、悪いことをしたという風にお感じですか」 「自分がしてきたこと、あるいは、するべきだったのにしなかったことについて、やましく感じると ころがありますか。(罪の意識を感じるところがありますか)自分が心の中で考えたことや望んだ ことについてはいかがですか。何について罪の意識を感じておられるのですか。(罪責感の内 容を特定できるか)」 「今の状態は自分のせいであるように感じられますか」「今の状態は何かの罰だと感じられます か」 0 症状なし。 1 ごく軽度。質問されたときのみ。過去の行為について多少の軽度 の後悔。内容の発展はない。 2 軽度。過去の行為についての後悔。些細な事についての自責傾 向。 3 中等度。良心の呵責および自責的思いめぐらし。 4 やや高度。うまくゆかないことすべてについての自己卑下と自己 非難を示す広範囲にわたる罪業感。 5 高度。罪業妄想、罪責妄想。 6 非常に高度。 自己評価の低下:自分が無能で、無力で、不器用で、ぶざまで、決断力がなく、まぬけで、無 知で、魅力がないという非妄想性の感情。客観的評価に対して著しく不釣合いな想像上の能 力減退。 「他の人と比べて、自分が劣っていると感じられるところがおありですか。無能だとか、不器用 だとか、ぶざまだとか、まぬけだとか、無知だとか、魅力がないとか、お感じですか」 0 1 2 なし 軽度 あり 自 殺 希死傾向: 「気分がゆううつな(その他、適当な患者の言葉を用いよ)ときは、生きていてもしかたがないな あとか、いっそ死んでしまいたいなどと思えてしまう人がおられますが、あなたの場合はいかが ですか」 (希死念慮がある場合)「実際にどうやって死ぬか具体的に方法を考えたり、実行に移されたこ とはあるのですか。それはいつですか。どのような方法で」 0 1 2 3 4 なし。 人生は生きる価値がないと感じている。 死んだほうがましだとか、死の可能性について考える。 希死念慮あるいはその素振り。 自殺企図。 自殺企図回数:今回病態中の自殺企図の回数。正確な数が得られなければ、最も近いと思わ れる回数を記入する。この項は過去1週間のみの評価は行わない。 回 ▲自殺企図回数が0回なら睡眠へ飛ぶ。 真剣でない自殺企図回数:他人を操作するため、あるいはごくわずかな意志しかないような自 殺企図の今回病態における既往。救助される見込み、発見されないための用心、企図中ある いはその後の助けを求める行動、計画性の程度、自殺企図の目的などを含む全体的状況か ら判断する。この項は過去1週間のみの評価は行わない。 回 睡 眠 初期不眠: 「この1週間、睡眠はとれていますか」 「寝付きはいかがですか。床に入ってから寝付くまで、どれくらいかかりますか」 「寝付きの悪い日は、この1週間のうち何日ありましたか」 0 1 2 寝付きには問題がなかった。 時々寝付くまで 30 分以上かかった。 毎晩寝付くまで 30 分以上かかった。 中期不眠:病前に比して、夜間に睡眠が頻回に中断される。 「夜中に目が覚めることがありましたか」(もしあれば)「目が覚めたときには、フトンから出ます か。何をしますか。トイレへ行くだけですか」 「いったん目が覚めても、すぐまた眠れますか。眠りが浅いようですか」 0 1 2 問題なし。 夜落ち着かなかったり、睡眠が妨げられた。 夜中に目覚めて(トイレ以外の目的で)床から出た。 末期不眠:「早朝覚醒」とも呼ばれる。ふだんの覚醒時間よりも2時間以上早くに目が覚めてし まい、患者はふたたび寝付くことができない。 「朝は何時ごろ目を覚ましておられますか」 (もし朝早くに起きているならば)「目覚し時計で起きるのですか?それとも、ひとりでに目が覚 めてしまうのですか」「調子をくずされる前、ふだんは何時ごろ起きておられましたか」 0 1 2 問題なし。 早朝に目が覚めるけれども、またウトウトと眠れる。 いったん床を離れると、もう眠れない。 過眠:病前に比して、しばしば2時間以上睡眠時間が増加している。元来毎日9時間以上眠る 人ならば病前に比して増加していなくても「あり」と考える。 「ふだんよりも長い時間寝ていますか。いつもよりどれくらい長くですか」 0 1 2 なし 軽度 あり 食 欲 と 体 重 食思不振:意図的なダイエットは、0につける。 「食欲はいかがでしたか。ふだんのあたなと比較していかがですか」 「むりやり口に押し込んで食べていましたか」 「人にうながされないと食べれませんでしたか」 0 1 2 問題なし。 食欲はなかったが、強制なしに食べられた。 強制なしには食事が難かしかった。 食欲増加:病前に比して、食事摂取量が増加し、食べたい気持ちが病的に増加している。 0 なし 1 軽度 2 あり 体重減少:今回挿話中(あるいは過去1年間に)数週にわたって 0.5 kg/週以上、または2 kg/ 月以上、または 5.0 kg/年以上、体重が減少。ただし、自発的な食事制限による場合は除く。 発症時点からの変化の度合いを評価する。 「最近体重が減りましたか」(もし減っていたら)「何キロくらい減りましたか」 (はっきり分からない場合)「着物がブカブカにゆるくなってきているようですか」 0 2 なし あり 体重増加:今回挿話中(あるいは過去1年間に)数週にわたって 0.5 kg/週以上、または 2 kg/ 月以上、または 5.0 kg/年以上、体重が増加。発症時点からの変化の度合いを評価する。元 の体重に復する途上の体重増加は病的と言えないので「なし」に評価する。 0 2 なし あり 自 律 神 経 症 状 性的症状:もとから性欲などないと言う場合には0。 「気分がゆううつな(適当な患者の言葉)ときは、性欲も落ちてしまう人がありますが、あなたの 場合はいかがですか。実際の回数よりも、興味がどうだったかをお聞きしています。以前とくら べて、性欲はどうですか」 「夫婦生活はいかがですか」「仕方のないことと受け入れていた夫婦生活がさらに嫌になったこ とはありませんか」 0 1 2 なし(性欲は普段と変わらない) 軽度 重度(性的症状がある) 便秘:抗うつ薬に由来するものであるとの推測されても(追跡調査中)「あり」に評価する。 「以前よりも便秘がちですか」 0 1 2 なし 軽度 あり 自律神経症状:自律神経機能のかたより。口渇、無月経など。抗うつ薬に由来するものである と推測されても(追跡調査中)「あり」に評価する。 「口が渇いて困っておられますか。」 「生理不順で、一番最近来るはずの生理が来なかったということはありませんか。妊娠しておら れないことは確かですか」 0 1 2 なし 軽度 あり (高齢女性の場合) 「閉経は何歳のときでしたか」 歳 Histerectomy をやっていれば不明(99)。ただし、total ovarectomy をやっていれば閉経と同義 と考える。 精神運動症状 精神運動抑制:運動活動性の客観的な(観察された)減退。軽症の「活動性低下」においては 感情表出または反応性の運動のみが減少する。極端な「活動性低下」は一般に「昏迷」と呼ば れているが、そのような状態になると、患者は何時間も不動で激痛にも無反応であることがあ る。過去の精神運動制止については、単なる主観的感覚ではなく、遅速化が実際に起こった ものであることを確認しなくてはならない。また、緊張病様強剛はここに含めない。 「いつもより動作が緩慢になっていますか。喋り始めるのが難しいですか。まるでスロ−モ−シ ョン映画みたいに動いている感じですか」 0 1 症状なし。 ごく軽度。主観のみ。自発性欠如。会話もしくは運動におけるわ ずかな躊躇。 2 軽度。1と同様でかつ会話に間がある。返答はおくれて、かつ短 い。しかし文章は完成している。 3 中等度。運動の減退。会話に自発性がない。声は低い。返答はお くれ、短くあるいは不完全。 4 やや高度。表情の変化がすこしもない。運動は遅く、躊躇しがち で、不完全。会話は単語のみで、ささやくような発語であり、質 れた時のみのものである。 5 高度。亜昏迷。 6 非常に高度。 問さ 精神運動不穏:目的や方向性のない運動活動性。凶暴状態に達することがある。精神運動不 穏の患者は、常時動きまわっている。歩き回り、走り回り、あるいはその場で手や足を動かす。 精神運動不穏は、また、限定的なものであることもある。例えば、爪でひっかく、揉み手をす る、手をこすりあわせる、絶え間なく体の向きを変える、チック様運動など。「激越」、即ち運動 の頻度の亢進は、精神運動不穏と同じ意味である。激越は、過活動性、即ち目標のある運動 活動性の頻度の亢進とは明らかに区別されるが、過活動性の極端な形である「興奮」からは実 際上区別できない。興奮は、多種多様な活動となって現われてくるが、それらは決して完遂さ れることがないので目標に欠けた活動のように見える。緊張のなさや落ち着きのなさといった単 なる主観的感覚はここに含めない。この主観的感覚が誤ってしばしば激越と呼ばれることがあ るので注意しなくてはならない。また、躁症状群とともに現われる精神運動興奮もここに含めな い。 「静かにすわっておれなかったり、いつも動いていたり、あちこち歩きまわっていなければなら なかった時期がありましたか。手をもんだり、着ている物や髪の毛を引っぱったりしましたか。叫 んだり、まわりの人に大声で文句を言ったりしましたか」 0 1 2 3 4 なし。 そわそわと落ち着かない。 手や髪の毛をもてあそぶ。 じっと座っていられず動き回る。 動き回るため、面接困難。手を握りしめる、爪をかむ、髪を引っ 張る、唇をかむ。 集中力 集中困難:ひとつのテーマに集中し、その集中を継続することができないこと。一定の活動また は一定の対象に継続的に注意を向ける能力の障害。 「集中力はいかがですか。しばらくの間でもひとつのことに注意を集中させることが難かしいで すか。ひとつの物事に集中することが困難ですか。注意散漫や集中困難のために、仕事や日 常の活動の妨げになっていますか。仕事とは、主婦業も含めて考えます。新聞を読むことの妨 げになっていますか。テレビを見ることの妨げになっていますか」 0 1 2 なし 軽度 あり 決断困難:決断を下すことが困難だ、不可能だという主観的体験。 「何かを決心するのにふだんよりも時間がかかりますか。たとえ時間的にはかわらないにして も、日常の物事を決めることが、ふだんよりも困難ではありませんか。決断力低下のために、何 も決めることができないくらいですか。買い物に行っても、何を買うか決めることが非常に難か しいですか。何を着るかとか、何を食べるかといったような小さなことですら決めることが難かし いくらいですか」 0 1 2 なし 軽度 あり 反芻思考:患者にとって異質なものと体験されていないが(普通は)不愉快な1つまたは少数 の考えに無限に没頭すること、あるいは絶え間なく関心をもつこと。反芻思考は、現実の状況 または患者の(普通は)過去の出来ごとに関連している。 「物事をくよくよ考え込む傾向がおありですか。何について考え込まれるのですか(考え込んで いる内容が特定できるか)」 「過去の出来ごとにまつわる不愉快な思いに何時までも囚われていますか。どんな思いに囚わ れているのですか(不愉快な思いを特定できるか)」 0 1 2 なし 軽度 あり 不安 精神的不安:心配、過度の懸念、不安といった主観的体験。 「神経がピリピリしていたり、不安だったりしたことはありますか」 「小さなことでいろいろ心配をしてしまいますか。ふだんなら気にしないようなことでも、心配して しまうようですか」(もしそうならば)「例えばどんなことで心配してしまうのですか」 0 症状なし。 1 ごく軽度。質問された時のみ、軽度かつごく稀な不快感や懸念。 2 軽度。軽度で一過性の緊張。些細な事柄への過度の懸念。もしく は特定の情況に関連した軽度の不安。 3 中等度。たいていの間出現する緊張、不安感、動揺。 4 やや高度。たいていの間出現する「ふるえ」、「こわさ」。 5 高度。それ以外の心的事柄を忘れるほどに、喪失、みはなされ、 障害を予期するための持続的おびえ。 6 非常に高度。 不安の身体症状:明らかに薬物による症状ならば、評価の対象としない。たとえば、抗うつ薬服 用中の口渇。 「神経がピリピリして不安なために、次に言うような症状がありましたか。(以下のリストを読みあ げる)口が渇くとか、おならがよく出るとか、消化不良とか、下痢とか、腹痛とか、げっぷとか。(こ こでいったん間をおいて患者の答えを待つ)あるいは、手がふるえたり、心臓がドキドキしたり、 頭が痛かったり、息が苦しくなったり、溜め息をついたり、何度もトイレへ行ったり、鳥肌が立っ たり、汗をかいたりしましたか」 「そのためにどれくらい困られましたか(どんな頻度で、どんな程度の症状があったのですか)」 0 1 2 なし。 軽度。 中等度。 3 4 重度。 耐えられない。 心気症:自己の身体に対する不安で恐怖感の強い知覚。病気になるのではないか、あるいは 病気なのではないかという客観的には根拠のない恐れ。身体感覚は不安をもって知覚され、 過度の注意関心を与えられる。妄想性でありうる。 「体の調子について心配をされましたか」 「体のことが心配でたまらなくて、人に助けを求めるほどでしたか」「自分の体の健康について、 とても心配するほうですか。自分は何か重い体の病気ではないかという考えが頭を離れないよ うですか。あるいは、自分が何か重い体の病気にかかりつつあるのではないかという考えが頭 を離れないですか」 0 1 症状なし。 ごく軽度。身体の健康状態について直接問われた時のみ軽度の訴 2 軽度。自発的な軽度の訴え。身体の健康状態についての過度の懸 え。 念。 3 中等度。身体の健康状態への没頭(心気的態度)。身体症状が主 訴であり、面接の最初に出てくる話題である。 4 やや高度。身体症状に集中。絶えまなく訴え、援助を求める。い わゆる癌恐怖、梅毒恐怖等。 5 高度。心気妄想があり、通常奇異な訴えと顕著な不安を呈する。 それ以外の事柄を忘れるほど心気妄想に没頭。 6 非常に高度。持続性の心気妄想で(恐怖や絶望といった)感情面 の負担があり、今にも死ぬのではないかとか、重い障害になるの で はないかという予期を示す。 虚無妄想:身体臓器の腐敗・消失等の訴え 0 1 2 なし 軽度 あり 躁 症 状 「ゆううつと反対の状態になったことはありませんか。気分がとても良くなって、ウキウキした楽し い状態になり、全身に活力が満ちあふれて、何日も眠らないで平気だといったような状態はあ りませんか」 ▲躁症状を呈した疑いが否定されれば、その他の症状へ飛ぶ。 高揚気分:健康感の増大から、多幸症と軽躁、さらに躁状態と恍惚状態まで。開放気分と易怒 的気分はここに含める。抑うつ気分が長く続いた人では、ゆううつな状態を普段と考え、元来の 状態に戻っただけなのに軽躁的と表現しがちであるので注意して下さい。 「特に陽気とか、調子が良いとか、調子が高いとか感じますか」 「普段に比べて休息や睡眠が少なくても済みますか。普段より活発ですか。気力や体力があり 余ったり、すばらしい考えが出たり、新しい計画をたてたりとか、普段より物を買ったり、余計な 金を使ったりしますか」 0 1 2 症状なし。 ごく軽度。健康感の増大。 軽度。幸福で力が充実した感じ。過度に楽天的。多弁。目的ある 活動が増加。 3 中等度。調子が高い、興奮している、いつも幸福だ、自分は強い などと感じる。落ち着かない。イライラ。言語促迫。転導性亢進。 多 動だが目的ある活動が障害される。 4 やや高度。歓喜と怒りが交互にあられる。会話は大声で速い。連 合は(音や韻によって)表面的。混乱した多動。 5 高度。恍惚もしくは歓喜と怒りが交互にあらわれる。持続的にし ゃべり、どなり、歌う。観念奔逸。意味のある会話が限られてい る。 常に動いている。 6 非常に高度。5と同じだかその程度が極端。意味のある接触が不 可能。 誇大性:過大な自己評価、優越感、異常な才能、重要性、力量、富、使命。 「他人に比較して自分をどう思いますか」 (患者が劣等感を持っているならここで打ち切る) 「自分が何か秀れていると感じますか。何か自分に特別なことがあると感じますか。(たとえば、 特別な力量や才能があるとか、何かの使命を帯ているとか)」 0 1 2 扱いされることを望む。 3 を確信する。 4 5 支配している。 6 症状なし。 ごく軽度。自己評価の誇張。 軽度。優越感、重要性、才能、能力があると感じる。自慢。特別 中等度。自分の稀な能力、特別な責任、重要な役割、偉大な業績 やや高度。力量、超自然的能力。使命についての妄想的確信。 高度、誇大妄想(偉大な指導者、予言者等)。行動のほとんどを 非常に高度。強度の誇大妄想と全能感に全く没頭。 社交性増加:通常の社交的抑制の喪失による、状況や性格にそぐわない行動 「普段に比べて、あまり親しくない人ともやけに親しく話したり、全く知らない人 も気軽に声をかけられるようになりましたか」 0 1 2 なし 軽度 あり 睡眠欲求の減少: 「疲れをとるのに必要な睡眠時間が普段より少なくなりましたか。眠れないで仕事 をしてもまるで疲れないようなことがありましたか」 0 なし に 1 2 軽度 あり 転導性亢進:注意散漫、活動性の頻繁な変化または計画の頻繁な変更 「まわりでちょっとした音がしたり刺激があるとすぐそれらに注意が移ってしまっ て、それまでしていたことを忘れてしまうようなことがありましたか。注意が散漫 だと上司 や友人から指摘されたことがありましたか。まわりの重要でもない事柄に すぐに気をとら れてしまうために、注意集中するのが困難でしたか」 0 1 2 なし 軽度 あり 脱抑制:むこうみずないし無分別で、危険性を認識しない行動 「普段よりちょっと元気すぎたり、はしゃぎすぎたりして、家族や友人に迷惑をか けるようなことをしてしまいましたか。無駄使いだとか、とんでもないことをして いるとか言 われて、周囲の人から非難されたり注意されたことがありましたか。下 手をするとひどい 問題になるような今から思うと馬鹿げたこと、たとえば物をすご く買ったり、事業投機をし たり無謀運転などしましたか」 0 1 2 なし 軽度 あり 性行動亢進:性的活力の著明な増加または性的無分別 「ちょっとはしゃぎすぎて、普段のあなたなら考えられない位女性(男性)に対し て積極的になったり、問題を起こしたりしましたか。今から思うと軽率な異性との 交際を しましたか」 0 1 2 なし 軽度 あり 思考の冴え:思考の冴えもしくは異常な創造性 「普段より頭が良くなった感じでしたか。仕事でも普段なら思いつかないようなア イデアが浮かんだり、趣味のことでも創造力が高くなった感じがありましたか」 0 1 2 なし 軽度 あり 楽天性:過度の楽天性 「将来のこともクヨクヨせず、むしろ自分だったら何とでもなるとか、運がついて わるとか、楽天的になっていましたか」 ま 0 1 2 なし 軽度 あり その他の症状 これらの症状の確認には、しばしば患者自身の言明よりも家族の陳述や過去の病歴が参考に なる。 疑惑:自分に対し他者からの悪意や妨害または差別待遇があるという確診。自意識の増加や 軽度の疑惑から関係念慮や迫害妄想まで含める。妄想気分も含める。 「誰かがわざとあなたの邪魔をしたり、あなたを困らせようと企んでいると感じたことはありません か」 「人が特別な注意をあなたに払っていると感じますか。どんなことからそう考えるのですか」 「人があなたのことを批判して話しているとか、笑っているようですか。例えば、どんなことです か」 「周囲の人があなたについてほのめかすとか、裏の意味のあることを言っているようですか。い ろいろな事柄が特別に処理されているようですか。テレビや新聞で、あなたに関係していること が出ますか。そのことについてどう説明しますか」 「説明できないような、何か変わった、普通でないことが起こるように感じたことがありますか。ど んなふうでしたか」 0 1 症状なし。 ごく軽度。自意識。他人への信頼の欠如。 2 軽度。漠然とした関係念慮。自分のことを笑っている、些細なこ とで反対されているなどと疑う傾向。 3 中等度。被害的態度。関係もしくは迫害念慮。しかし、その内容 は漠然としていて、弱くて、体系化されてはおらず、残遺的であ る。 4 やや高度。活発で感情面の負担のある被害妄想。いくらかの体系 化、あるいは妄想気分。 5 高度。はなばなしく活発に仕上げられた被害妄想体系、もしくは 強力な妄想気分。 6 非常に高度。すべてを包括するはなばなしい被害妄想体系もしく は圧倒的な妄想気分。 思考内容の異常:通常では見られない、奇妙、奇怪な思考内容。すなわち、強迫観念、優格 観念、風変わりな確信や理論、妄想性の曲解、すべての妄想。この項目では、内容の非通常 性についてのみ評価し、思考過程の解体の程度は評価しない。思考内容の異常は、たとえ他 の項目(心気的訴え、罪責感、誇大性、疑惑、強迫思考など)ですでに評価されていても、ここ で再び評価する。また、ここでは、離人症(妄想性のものも非妄想性のものも含める)、病的嫉 妬、妊娠妄想、性的妄想、空想的妄想、破局妄想、影響妄想、思考吹入などの内容も評価す る。 0 1 症状なし。 ごく軽度。孤立した優格観念もしくは通常では見られない信念。 2 軽度。優格観念。通常では見られない信念。風変わりな理論。強 希な強迫観念。 迫観念。 3 中等度。患者にとって相当に重大な意味をもつ奇怪な理論や確信。 4 やや高度。奇怪な理論への没頭、もしくは妄想が他の活動を制限 し思考内容の前景に立つ。 5 高度。奇怪な理論もしくは妄想が思考内容および行動の大部分を 決定する。 6 非常に高度。すべてを包括する奇怪な理論もしくは圧倒的な妄想 が行動と思考内容のすべてを決定する。 幻覚:外界からの刺激のない知覚。錯覚や明瞭な精神的表象からは区別する。 「どなたにでもお聞きする質問なのですが、まわりに誰もいないはずなのに、人の声や物 音が聞こえてくるような気がしたことがありますか」「どんな物音ですか。言葉として聞き分けるこ とができますか。何と言われますか。あなたの名前を呼んでいるのですか。あなたのこと「あの 人は……」などと言って、噂をしているのですか。あなたのやっていることを批評しているので すか。命令するのですか。おどかしてくるのですか。悪口を言うのですか。安心させてくれるの ですか」 「そのような声は頭の中でするのですか。それともまるで耳を通して、外から聞こえてくるのです か」 「見ることでいつもと違った体験をしましたか。ほかの人が見ることのできないようなものを見た ことはありますか。どんなものですか。いつでしたか。おそろしかったですか。完全に目が覚め ているときにおこったのですか」 「物のにおいや味がいつもと違うことはありますか」 「身体のなかに変わった感じがありますか」 0 1 症状なし。 ごく軽度。患者の報告する体験の質が幻覚と言えるか疑わしい。 入眠時幻覚。 2 軽度。孤立した断片的幻覚体験(光、自分の名前が呼ばれる)。 3 中等度。言語幻覚、または完全に発展した他の感覚の幻覚で、明 らかに存在するが、出現頻度が希なもの。行動に影響しない。い く らかの洞察がある。 4 やや高度。頻回の幻覚、患者がそれに反応する。洞察なし。 5 高度。持続性で強度の幻覚。患者の行動を決定する。 6 非常に高度。強大な幻覚。幻覚状態(急性せん妄や急性幻覚症の 時のような)。患者は幻覚体験に完全に没頭。接触不可能。 気分との調和:抑うつ性または躁性の内容を持った妄想または幻覚の有無。抑うつ性なら例え ば、罪業妄想、貧困妄想、虚無妄想、心気妄想のような、個人の不全感、罪責感に関連した 妄想、あるいは責められる、非難される、処罰されるといった内容の幻覚や妄想は気分と調和 している。幻覚と妄想が「なし」ならば、「なし」とする。そうでない場合、面接者は定義に従って 自分の判断で評価する。気分と調和している精神病像と気分と調和しない精神病像がともに 認められる場合は「2」とする。 0 1 2 なし 気分と調和している 気分と調和しない 病識欠如:評価者の判断で患者がもはや抑うつ状態もしくは躁状態にない場合は、0。評価時 点で感情症状以外の症状(例えば幻覚)が前景に立っているならばその状態についての病識 を評価する。 「今の状態は疲れすぎだけが原因で、十分に休みさえすれば、前のようにすっかり元気になれ るようにお考えでしょうか」「それとも一種、心の病気だと考えておられますか」 「気候が不順なために、病気になってしまったようにお考えですか」 0 抑うつ的であったり、病気であるという認識がある、あるいは、 もう感情障害が認められない。 1 病気とは認めるが、食事、気候、働きすぎ、ウイルス、休息を要 する状態などが病気の原因であると思っている。 2 否認、病気であることをまったく認めない。 敵意:他者に対する敵意、軽蔑、憎悪の表現。面接場面以外のイライラした、敵対的、攻撃的 行為で、患者自身により報告されたり、最近の病歴から知られているもの。ただし、面接者に対 する敵意は非協調性の項目で評価する。 「まわりの人とはどうですか。まわりの人があなたをイライラさせたりしますか」 「人と口論しますか」 「どのくらい怒るのですか」 「人にどなることがありましたか」「怒って、人をなぐったことがありますか」 0 症状なし。 1 ごく軽度。他人への過度の批難。 2 軽度。嫌悪。あらさがし、憤り、焦燥。 3 中等度。顕著な焦燥。敵対的態度。告発、侮辱、言語的脅迫を呈 する怒りの爆発。 4 やや高度。頻回の言語的攻撃性、時々の身体的攻撃性。 5 高度。全般性の言語的攻撃性、頻回の身体的攻撃性、破壊的行為 を呈する持続性の緊張した敵対的態度。 6 非常に高度。無差別の持続性の言語的および身体的攻撃性(どな り声での侮辱と脅迫。家具をこわす。近ずく人をなぐる。) 持続様式 ▲今回病態がうつ病に該当しなければ観察評価と総合評価へ飛ぶ。 短期反復:各抑うつ挿話は2週間以下であるが、過去1年のあいだ、少なくとも月に1∼2回ず つ反復している。各挿話は1−3日しか続かないこともある。 「ゆううつな状態はいつも2週間以内でおさまりますか。そのような短いゆううつな期間が、毎月 1−2回のわりで1年以上にわたって繰り返していますか」 0 1 該当しない 該当する ▲持続期間が1年未満なら総合評価へ飛ぶ。 慢性:現在の挿話が少なくとも2年続いており、2ヶ月またはそれ以上はっきりした抑うつ性の症 状のない(診断項目の症状がまったくないか、あっても軽症で2項目まで)期間がない。今回の 発症に関して2年以上持続していることが推測されても、以下の質問で持続を再確認する。 「過去2年間、ほとんどずっと憂うつであったと考えてよろしいですか。過去2年間のあいだ、少 なくとも2ヶ月間つづけて憂うつではなかったという時期がありましたか」 0 1 該当しない 該当する 断続型慢性:現在の挿話が少なくとも2年続いているが、数時間、2−3日、あるいは2−3週間 続く正常な気分の時期を頻回にあいだにはさむ。ただし、大部分の時期を抑うつ気分によって 断続的に悩まされている。 「過去2年間、ときには2−3時間とか、2−3日とか、2−3週間とか気分が憂うつでなくなること も何度もありましたか」 0 1 該当しない 該当する 生涯を通じて抑うつ的:患者が思い出せる範囲の過去を通じて、抑うつ性の症状が継続して存 在。抑うつ症状が生涯を通じて存在していることが推測されても、以下の質問のうち4つ以上を 満たす。 「記憶にあるかぎりずっとゆううつだったと考えてよろしいですか」 「ということは、過去においてほとんどいつも弱よわしく感じていたといっていいですか」「そし て、ほとんどいつも自信がなかったといっていいですか」 「ほとんどいつも自分が悪いとか、自分に罪があるような感じがしていましたか」 「ほとんどいつも不安な感じがしていましたか」 「ほとんどいつも自分はもう助からないと感じていましたか」 「ほとんどいつも自分には希望がないと感じていましたか」 0 1 該当しない 該当する 補足項目 症状の補足項目(したがって、過去1週間と、今回病態の最重症の1週間について評価) 思考力低下:緩徐で困難な思考の流れ。思考は段々と遅れてゆき、重度の場合には、ほとん ど何ら進行しないことを特徴とする。言葉が粘着性で遅いことは観察可能である。 「考えることがむつかしつなりましたか」 0 1 2 なし 軽度 あり 持続様式の補足項目(したがって、今回病態について評価) 大うつ病に重複しない慢性軽症うつ病:2年間以上の軽症抑うつ状態があり、かつこの最初の 2年間に大うつ病挿話または躁病挿話があったという証拠がない。現在が大うつ病挿話(DS M−Ⅲ−R)に相当し(従ってCOALA−E1評価の対象は現在大うつ病挿話 の最重症時および評価に先立つ1週間である)としても、今回の大うつ病挿話に先立ち、慢性 軽症うつ病が2年間先行していた場合、該当すると判断してください。 0 1 該当しない 該当する 気分循環:少なくとも2年間にわたり、多数の軽躁状態と軽うつ状態をくりかえしており、かつ1 度に2ヵ月以上続けて軽躁または軽うつの症状がなかったことはなく、かつこの障害の最初の2 年間に躁病挿話または大うつ病挿話があったというはっきりした証拠はない。ここで、躁病挿 話、大うつ病挿話はDSM−Ⅲ−Rの基準に従って判断してください。 0 1 該当しない 該当する Rapid cycling :過去12ヵ月の間に4回以上の躁/軽躁またはうつ病挿話がある。 0 1 該当しない 該当する 精神病像と気分症状の時間関係:精神病像が見られた場合、気分症状との時間関係は以下 のどのパターンに当てはまるか(Ⅰ型は気分症状が初発症状、Ⅱ型は気分症状と精神病像が 同時に初発、Ⅲ型は精神病像が初発症状)。 (注)気分症状と精神病像が時間的にずれていると判断するには、2週間ずれていることをめど としてください。判断がややこしい症例についてはメモをつけてください。 誘因:ストレスは、患者の生活習慣を(一時的にでも)変更させる程度であり、かつ気分症状の 発症3ヵ月前に生じている。 0 誘因なし 1 患者においても、一般論としても、ストレスに見合った反応であ る(例:正常悲哀反応) 2 患者においても、一般論としても、予期されるよりも過度の反応 である(例:子供が独立・別居したあとの抑うつ) 3 一般論としては過度の反応であるが、それはむしろ患者の過剰反 応のパターンの一つである(例:一部の人格障害でみられるよう に、 軽度のストレスで容易に抑うつとなる) 観察評価と総合評価 以下の評価は、患者が退席してからつけることができる。この節の各項目は、今回の病態の最 も重症だった週の評価は困難であるので、過去1週間の評価のみ行う。 失見当識: 0 1 2 感覚は鮮明。見当識は正しい。 感覚の混濁が軽度にあるか、たまに起こる。 面接時間中ほとんどずっと明らかな見当識障害がある。 高歌高唱:この項目は面接時に認められる患者の引き起こす騒々しさの水準に関するもので ある。 0 患者は小さいか、適度な大きさの声で話す。 1 はっきりと話し一度は大きな声で話す。周囲の状況に応じて声の 程度を調整する。 2 絶えず大声で話すが騒々しいとみなすほどではない。 3 患者の話す騒々しさはかなり離れた所でも聞こえるほどである。 患者は周囲の状況に合うように声のレベルを調節しない。患者の 発 する騒音量は騒々しいと言える。 4 患者は多かれすくなかれ絶え間なく叫び怒鳴る。そして非常に 騒 々しい。 過活動:この項目は全般的な動きに関するもので、表情、身振り、歩行その他意図的な運動の 中で観察される。運動の量および速度を考察すること。 0 静止しているか、ゆっくりとした運動・わずかな身振り・活動に かかるまでの時間は普通あるいは軽度に延長している。 1 運動と速度と量の変化の仕方は普通である。時折ごく短い運動停 止時間がみられる。 2 活発な表情と歩行、身振りや運動は豊かであるが、誇張的な点や 特に目立ったものはない。 3 誇張的でおおらかで急激な運動がくりかえしおこる。身振りも目 立つ。患者は面接時間中に席を立つことが1回ある。 4 持続的な活動性、患者を説得しても静かに席についていたり、ベ ッドに寝ていることができない。 会話促迫:この項目は面接時間に観察される患者の言語活動性の量的な評定に関するもの である。 0 簡潔な応答をする。自発的にはセンテンスを2、3コしか述べな 1 言葉多く言うことなく適切な答えが出来る。つっかえることなく 2 自発的に長々としたセンテンスを述べる。言葉の多い応答をする。 い。 話す。 早口である。 3 非常におしゃべり、自発的に事細かく言葉の多い話をし、面接者 の話しをさえぎることが1回ある。 4 完全に一方的な会話。患者の話しを止めさせることが出来ない。 患者は質問者からの刺激に注意をはらうことなく絶え間なく話す。 観念奔逸:この項目は面接時に患者の会話から推測される連合の涌出に関するものである。 0 患者の会話は筋が通っており、センテンスの相互の関係は適切で ある。連合数は少ない。 1 自由で生き生きとした連合に主題から偏奇する傾向が伴っている。 2 連合の涌出が速く、音または他の刺激で誘発される異常な連合が 1回起こる。 3 連合が豊かで速く、視覚的、聴覚的刺激により誘発される連合が 面接時間中豊富にある。 4 会話が主題からしばしばはずれ、患者は新しい連合があるために 論理的な会話を続けることが大変困難である。 精神運動興奮:会話と行動の量と出現率の増大。観察に基づく評価。精神運動不穏と区別す る。 0 1 2 3 症状なし。 ごく軽度。多弁。 軽度。多弁かつ多動。 中等度。会話が大声で早い。落ち着かない。運動が早い。目的あ る活動が障害される。 4 やや高度。会話がとぎれない。頻回な叫び声。常に動いている (徘徊、踊り)。活動が混乱している。 5 高度。混乱した会話がとぎれない(言葉のサラダ、叫んで脅迫す る、卑わいな内容、断片的な言葉)。破壊的な行動興奮。 6 非常に高度。持続的で制御不可能な混乱した運動興奮および言語 興奮で、極度の疲労に至るもの(たとえば緊張病性興奮、せん妄、 急性躁病等にみられる)。 訴えのしつこさ:痛み、悲しみ、不快、その他の心配事を表現する傾向の増大。「訴えのしつこ い」患者は、言葉、表情、身振りによって普通よりもたやすく自分の問題を表現する。「訴えの 多さ」は、声をあげて嘆くこと、泣くこと、溜め息をつくこと、またはうめき声をあげることによって 現わされうる。面接者は定義に従って自分の判断で評価する。 0 なし 1 軽度 2 あり 演技性: 芝居がかった、極めて示威的な行動。演技的な患者は、自分たちが置かれた状況、困難、障 害を誇張する。面接者は定義に従って自分の判断で評価する。 0 1 2 なし 軽度 あり 非協調性:面接者および面接状況に対する敵意と抵抗。観察にもとづく評価。 0 症状なし 1 ごく軽度。会話と行動が過度に形式的。 2 軽度。ある質問には答えたがらない。面接に対していらだちを示 す。返答が短い。 3 中等度。ある質問には反対する。返答は短いか、不明瞭で回避的。 面接に対して明らかないらだちを示す。面接を最後まで遂行する の が困難。 4 やや高度。面接者に対する表だって敵対的態度。面接室を出よう とする。面接を最後まで遂行するのが不可能。 5 高度。診察を受けたり面接室にはいるのを拒否する。返答は不適 切もしくは緘黙、あるいは口ぎたない。面接は不可能だが多少の 接 触はもてる。 6 非常に高度。面接不可能。面接室にはいったり、そこにいること を拒否する。質問や命令に対して従わない。あるいは持続的に攻 撃的。 感情的引き込もり:面接状況に対する関与の欠如。感情的接触を評価する。観察にもとづいて のみ評価する(ここでは、抑うつ、不安その他の感情の表出に由来する接触障害は評価しな い) 0 1 2 3 症状なし。 ごく軽度。冷たい。打ちとけない。 軽度。興味を示さない。飽きやすい。自発性がない。 中等度。返答が短い。形式的。声が平板。表情の変化が少ししか ない。 4 やや高度。いくつかの質問に答えるのみ。視線を合わせることを 避ける。感情的反応が欠如もしくは不適切。 5 高度。緘黙もしくは言語による返答が不適切。しかし表情やジェ スチャーにいくらかの反応を認める。 6 非常に高度。全く反応を欠く。 情動鈍麻もしくは不適切な情動:感情緊張の低下もしくは不適切、ならびに正常の感受性や 興味・関心の明らかな欠如。無関心、無欲症。表現された感情がその状況や思考内容に対し て不適切。観察にもとづく評価。 0 1 2 症状なし。 ごく軽度。感情反応に自発性を欠く 軽度。感情反応が希で堅い。もしくはときに文脈からはずれたも のである。 3 中等度。無欲的。情動が平板。家族、友人、環境、自分の将来に ついて少しも興味を示さない。妄想がある場合は、その妄想がま だ 感情の変化をともなう。不適切に歯をむきだして笑う。 4 やや高度。無欲と引きこもり。自分の置かれている情況に無関心。 妄想や幻覚が情動的色づけを欠く。不適切な情動。 5 高度。顕著な無欲と引きこもり。興味の欠如。情動の表出が欠如、 もしくは非常に不適切。身なりや行動に注意を払わない。 6 非常に高度。完全な無欲と引きこもりに加えて自分に関する基本 的な事柄についても注意を払わない。情動は、仮に表出されたと し ても非常に不適切。 思考解体:思考形式の障害。主に観察にもとづいての評価。 0 1 症状なし。 ごく軽度。主観的なもののみ。もしくは、多少の不明瞭、注意散 漫、迂遠。 2 軽度。1と同様。しかし、面接中に明らかに出現。 3 中等度。多少の無関係、連合弛緩、言語新作、途絶、筋道を失う。 返答に理解困難なものがある。 4 やや高度。3と同様だが、意志の疎通が困難。 5 高度。 6 非常に高度、会話が理解不可能(言語のサラダ、分裂言語、支離 滅裂)。 衒奇的な行動や姿勢:風変わり、常同的、不適切、奇妙な行動および態度。観察にもとづいて の評価。 0 症状なし。 1 ごく軽度。 2 軽度。多少の風変わりな姿勢。ときどき小さな不必要で反復性の 運動(手をのぞきこむ、頭を掻くなど) 中等度。頻回の常同的運動。ときどき粗大な常同的運動(身体を 3 ゆり動かす、敬礼する、魔術的な運動、奇異な姿勢)、しかめま ゆ。 4 やや高度。しかめまゆ。常同的運動。たいていの間粗大な。常同 的あるいは奇異な姿勢。 5 高度。持続的な常同的運動、しかめまゆ、あるいは奇異な姿勢。 やめさせることは可能。 6 非常に高度。絶え間のない常同的な不自然な運動および態度で、 コントロール不可能。 抑うつ状態の総合評価:すべての情報を総合し、抑うつ状態の総合評価を以下の連続線上に ×で印をつける。 過去1週間 症状なし | ----------------------------| 極度 今回挿話中(挿話の持続が1年以上なら過去12か月間)で最も重症の1週間 症状なし | ----------------------------| 極度 躁状態の総合評価:すべての情報を総合し、躁状態あるいは軽躁状態の総合評価を以下の 連続線上に×で印をつける。 過去1週間 症状なし | ----------------------------| 極度 今回挿話中(挿話の持続が1年以上なら過去12か月間)で最も重症の1週間 症状なし | ----------------------------| 極度 陽性症状の総合評価:すべての情報を総合し、陽性症状の総合評価を以下の連続線上に× で印をつける。 過去1週間 症状なし | ----------------------------| 極度 今回挿話中(挿話の持続が1年以上なら過去12か月間)で最も重症の1週間 症状なし | ----------------------------| 極度 陰性症状の総合評価:すべての情報を総合し、陰性症状の総合評価を以下の連続線上に× で印をつける。 過去1週間 症状なし | ----------------------------| 極度 今回挿話中(挿話の持続が1年以上なら過去12か月間)で最も重症の1週間 症状なし | ----------------------------| 極度 神経症症状の総合評価:すべての情報を総合し、神経症症状の総合評価を以下の連続線上 に×で印をつける。神経症症状はPISAの定義による。 過去1週間 症状なし | ----------------------------| 極度 今回挿話中(挿話の持続が1年以上なら過去12か月間)で最も重症の1週間 症状なし | ----------------------------| 極度 総合評価尺度(GAS): GASでは精神的健康と障害の間に仮説的な連続量を想定した上で、被検者の機能を表す 最も低い範囲を選ぶことによって、被検者の機能の最低水準を評価する。例えば、「その行動 が妄想によって著しく影響されている」(21−30範囲)ならば、たとえ「数領域における著明な 障害」(31−40範囲)を持つにせよ、21−30範囲で評価する。中間の水準も適宜使用する (例:35,38,62)。また被検者が受けている投薬あるいはその他の治療の有無やその内容に 関わりなく、実際の機能を評価する。 身体疾患による機能障害は評価しない。 今回病態発症前(過去に病相があれば寛解時)の平均的機能水準 今回病態中(または過去12ヵ月)の最も重症時点の機能水準 評価直前の1週間の機能水準 GAS 100 広範囲の活動で優秀な機能。生活上の問題がない。暖かさと誠実さのため人望があ | る。症状はなし。 91 90 すべての領域で良好な機能。多くのことに興味を持ち、社交上も活発。全般的に人 | 生に満足。一過性の症状や時に手に余る「日常」の心配事があることもある。 81 80 機能上の障害がわずかにあり、いろいろな程度の日常の心配事や問題がときに手に | おえなくなる。ごくわずかの症状が存在することもある。 71 70 いくつかの軽度の症状(例:抑うつ感情や軽い不眠といった)もしくは数領域にお | いて機能上の困難があるが、一般的にはかなり良好な機能で、良い対人関係も持ち、 61 精神医学的訓練を受けていないたいていの人は「病気」とは思わない。 60 中等度の症状もしくは全般的に機能しているがいくらかの困難(例:友人がほとん | どいなく情動が平板、抑うつ気分と病的な自己不確実感、多幸気分と言語促迫、中 51 程 度に重大な反社会的行為)。 50 たいていの臨床医が明らかに治療もしくは観察の必要があると考えるような重大な | 症状あるいは機能障害(例:死ぬことばかりに気持が向いたり自殺の意志表示をす 41 る、 重症の強迫行為、頻回の不安発作、重大な反社会的行為、強迫的飲酒、軽度で はあ るが明らかな躁症状群)。 40 仕事、家庭関係、判断、思考、あるいは気分といった数領域における重大な障害 | (例:ゆううつな女性が友人を避け、家族を無視し、家事ができない)、もしくは 31 現実 検討力や意志伝達上の何らかの障害(例:言語が時に不明瞭、非論理的、また は無関 係になる)、もしくは1回の自殺企図。 30 ほとんどすべての領域で機能することができない(例:終日横臥)、もしくは妄想 | か幻覚によって行動が著しく影響されている、もしくは意志伝達上(例:時折の支 21 離滅 裂もしくは無反応)、あるいは判断上(例:行動がひどく場にそぐわない)の 重大な障 害。 20 自傷他害から防ぎ、最低の個人の衛生を維持するために何らかの監視が必要(例: | 自殺企図の反復、頻回の暴力、躁性興奮、大便をこすりつける)、もしくは意志伝 11 達上の極度の障害(例:極端な支離滅裂もしくは緘黙)。 10 自傷他害からまもるために数日にわたり持続的な監視が必要、あるいは最低の個人 | の衛生を保とうとしない(例:職員による特別の観察を行なう集中管理病棟への入 1 院を必要とする)、あるいは明らかな意志をもった死の可能性のある真剣な自殺行 動。 総合評価尺度(GAS)は、心理学的あるいは精神医学的健康状態から障害に及ぶ連続量 を規定し、ある特定の時期の患者(被検者)の全般的な機能を評価する単一項目尺度である。 尺度の範囲は、仮説的に最も重症な状態を表す1点から、仮説的に最も健康なことを表す1 00点までである。この尺度は、1−10,11−20で始まり、81−90,91−100で終る、10点ず つの範囲に区切られている。それぞれの 10 点範囲を定義づける特徴が、この尺度を構成して いる。81−91と91−100の、2つの高得点の範囲は、重大な障害が存在しないだけではな く、優秀な機能、広範囲の興味、活発な社交、暖かさ、誠実さなどのような「積極的な精神的健 康状態」としばしば表現される多くの特性を具備している場合にあてはまる。その次の71−80 範囲は、症状は全く認められないかわずかにあるだけであるが、上に挙げたような積極的な精 神的健康の特徴はもっていない場合のものである。この上位3つの範囲(71−100)にあると 評価された人の中には、心理的問題に対して何らかの形で治療や援助を求める者もあるかも しれないが、心理学的あるいは精神医学的治療を受けている大多数の者は、1から70の範囲 に属している。外来患者の大部分は、31−70の4段階の範囲で評価され、入院患者の大部 分は1−40の4つの範囲に属する。 GASは重症度の全ての範囲を包括しているため、疾病の重症度あるいは健康の程度の総 合的な評価を必要とする状況や研究において使用できる。 多くの研究では、実際にはこの尺度の一部分だけが評価に用いられている。例えば、地域 住民の研究では最も低い範囲の人々はめったに扱わないが、新入院患者を含む精神医学的 研究では最も高い水準の人々はめったに扱わない。しかしながら治療の過程にしたがって、 非常に低い範囲にしか評価されなかった人々が、追跡期間中に回復して最も高い範囲の1つ に得点されることもある。これは特に、感情障害で挿話と挿話の中間の機能が正常または以前 よりすぐれている患者についてあてはまる。急性期に精神分裂病の診断を与えられた患者が、 やがて回復し比較的高い水準で機能することもある。 対象期間中の機能と精神症状にのみ基づいて評価を行ない、予後・以前の診断・基礎とな っている障害の仮説上の特性などによって影響を受けないことが重要である。同様に、患者が 投薬や他の形の治療を受けているかどうかによって評価が影響を受けてもいけない。評価に 必要な情報は、いかなる情報源からでもよい。本尺度の下端での評点をするためには、ごくわ ずかの情報しか必要としないであろう。例えば真剣な自殺企図をしてほとんど死にかけたこと がわかっていれば、それだけで患者に1−10の範囲の評価を下すのに充分である。その一方 大変高い評価を与えるには、症状や機能上の重大な障害が存在しないことを確認するばかり でなく、「積極的な精神的健康状態」の徴候の存在を確定しなければならない。評価に際して は、まず検討されるべき1週間の期間の機能を示す最低の範囲を選ぶ。例えば「行動が妄想 によって著明に影響を受けている」(21−30範囲)被検者はたとえ「数領域において著明な障 害」(31−40範囲)を呈しているとしても前者 の範囲の評価を与えられなければならない。前後の近接範囲を規定する特徴を調べ、被検者 がどちらにより近いかを決める。例えば31−40範囲の被検者が、41−50範囲よりずっと21− 30範囲に近いなら31、32、33という評点を与える。前後の近接する範囲から等距離にあると 思われる被検者には、34、35、36や37といった評点を下す。 解説と症例 GAS評価は(1)日々の機能障害(2)現実検討力(3)自殺または暴力の可能性、という3つ の主な精神病理学的要因から構成されている。さらに症状の程度と治療必要性の緊急度もあ わせて考慮する。 〔81以上〕 この範囲は、機能全般にわたる優秀な水準を示す。調査対象期間中、数多くの目立って素 晴しい特性によって、私たちのようなたいていの普通人からは区別されるような人々のための 範囲である。仕事上、社会的、娯楽的活動の領域や、対人関係において、「優秀な」水準で機 能しているという明白な事実が必要とされる。平均的な人よりも広い範囲の活動に関わってい て、さらに、少なくとも1つの社会的活動に深く関わっている場合に、機能が高い水準であると 評定される。ここに評定された人は、しばしば地域社会の他のメンバ―からは指導者として見ら れていたり、援助を求められたりすることがある。これらの人々は仕事において成功している が、いわゆる「仕事中毒」ではない。彼らの対人関係は、家族の中においても家の外において も、非常にうまくいっている。共感性が高く、他人の問題を理解し、直接個人的な利益をもたら さないような問題に対しても、時間と労力を提供することをいとわない。 91−100: 広範囲の活動で優秀な機能。生活上の問題がない。暖かさと誠実さのため人望がある。症 状はなし。 この範囲は、日常生活のどんなストレスのもとでも、前述のような優秀な機能を続けられる人 のためのものである。 81−90: すべての領域で良好な機能。多くのことに興味を持ち、社交上も活発。全般的に人生に満 足。一過性の症状や時に手に余る「日常」の心配事があることもある。 この範囲には、時折一過性の症状があるとか、わずかに手に余る「日常の心配事」をも っていることもあるが機能水準は優秀な人が含まれる。この範囲の例としては、うまくいっている ビジネスマンで、前述のように優秀な仕方で機能しているが、度々夜眠れなかったり、会社の 乗っ取りの可能性のある入札に関連した軽い不安症状があるとか、愛する人の死に直面して 抑うつ症状があったりするが、すぐに彼の「優秀な」機能に戻るような人である。 〔61−80〕 目下のところ病気ではなく、軽い症状かわずかな障害以上のものはもたない大部分の人々 の、通常の適切な機能をあらわすのが61−80の範囲である。 71−80: 機能上の障害がわずかにあり、いろいろな程度の日常の心配事や問題がときに手におえな くなる。ごくわずかの症状が存在することもある。 これらの人々は、自分の仕事や家族以外にも多くの活動に対して熱中でき、大勢の友達や 広い興味をもっている。しかし、他の領域で―例えば家族関係において―この機能が犠牲に なる形跡があることもある。優秀なレベルで機能しているが、わずかに他人を妨げるという人格 特性をあらわす人々も、ここに評価する。この範囲に属する人々は、例えば彼らが遭遇する問 題に反応して不安、抑うつ、焦燥などの症状を呈することもある。しかし、これらの症状は軽徴 なもので、持続しない。この様な人々は問題のために専門的な精神医学的治療を求めること はめったになく、彼らはそれを自分で、または家族や友達の範囲内で処理している。この人々 は仲間から病気とは見なされない。 61−70: いくつかの軽度の症状(例:抑うつ感情や軽い不眠)もしくは数領域において機能上の困難 があるが、一般的にはかなり良好な機能で、良い対人関係を持ち、精神医学的訓練を受けて いないたいていの人は「病気」とは思わない。 この範囲が示すのは、特定の問題で専門的援助を求めることもあるが、他の点では健康な 人である。症状がおきた時でも、症状が特別に訴えられるまでは主観的なもので、友達や家族 に顧みられない傾向がある。例えば、平均的に良好な対人関係にもかかわらず、自己疑惑で 悩まされている大学生がここに属する。意義のある対人関係が家族の中や外で認られる。スト レスをつくる状況からは、「普通」として他人に容認できる位の症状が出現する。軽い人格障害 はあらわれることもあるが、まわりの人からは「病的」とは見なされない。例えば、雇用主の乱暴 を追いつめることはあるが、また興奮させることをさけ十分に仕事をして家族ととてもよくやって いるという受動攻撃的な人がここに属する。 〔31−60〕 60以下の得点は、被検者をよく知っている人々が障害あるいは治療の必要性が明らかにあ ると考える場合に用いられる。病気の後に以前の健康水準に戻らずにいる多くの患者がここに 含まれる。 51−60: 中等度の症状もしくは全般的に機能しているがいくらかの困難(例:友人がほとんどなく情動 が平坦、抑うつ気分と病的な自己不確実感、多幸気分と言語促迫、中程度に重大な反社会的 行為)。 薬物療法で安定している多くの患者がここに該当する。 例: 1.慢性の分裂病者でフェノチアジン系薬物が維持療法として投与されており、社会的に孤 立し情動が平坦であるが、精神病的症状は全くなく、仕事並びに家族との接触も維持できて いる。 2.リチウムで安定している躁病者に認められる大変軽度の躁状態。彼の行動が家庭と仕事 について緊張を引き起こすが、入院を必要とするほどひどくはない。患者は計画を立てるのに 夜遅くまで起きていたり、幾分誇大的であるが、言語促迫や過度の活動性はない。 また外来 治療にくる多くの患者がここに含まれる。例: 1.最近離婚し軽度の抑うつ状態を呈している女性は、子供の扱い方で困難があり、復職す ることを心配し、手助けはいるが家事の責任は負えるし仕事も探している。 2.来院を嫌がっている 10 代の子供が家族に連れてこられた。彼女はしばしば学校を休み、 友人といっしょに大麻を吸ったり、万引きに出掛けたりしているが、進級はしているし、家庭で ひどい暴力をふるうこともない。 41−50: たいていの臨床医が明らかに治療もしくは観察の必要があると考えるような重大な症状ある いは機能障害(例:死ぬことばかりに気持ちが向いたり自殺の意思表示をする、重症の強迫行 為、頻回の不安発作、重大な反社会的行為、強迫的飲酒、軽度ではあるが明らかな躁症状 群)。 この範囲は多くの外来患者と、一部の入院患者を含んでいる。例: 1.ある定型抑うつ症状群の患者は、仕事は続けているが自殺念慮に悩み治療を求めて来 院。 2.完全に躁状態の患者で他人をたいへん怒っているが、トラブルをくい止めるだけの判断 はあり、措置入院が必要なほど重症ではない。 3.抑うつ感と妄想で、現在入院している患者で、目下かなり回復し、週末には外泊し、妄想 はなくなってきているが、まだ気力がなく、集中力に欠け、幾分不眠症でまだ仕事に復帰でき るまでの期待は持てない。 真剣な自殺企図を行なった場合にはそれ以前の機能状態にかかわらず 40 点以下の範囲 を与える。その評価は、患者が如何に緻密な死の方法を決定したか、そして再度企図する度 合い、凶器、計画性の程度、その企図が発覚するかの見込み等を考慮に入れた臨床的判断 を行なう。 31−40: 仕事、家庭関係、判断、思考あるいは気分といった数領域における重大な障害(例:ゆうう つな女性が友人を避け、家族を無視し、家事ができない)、もしくは現実検討力や意志伝達上 の何らかの障害(例:言語が時に不明瞭、非論理的、または無関係になる)、もしくは1回の自 殺企図。 31−40範囲は次のような例を含んでいる: 1.ひどくゆううつな男性で、これ以上仕事ができないと感じるほど集中力がなくなったため に、最近休職。しかし自殺傾向はない。 2.完全に躁症状の主婦で、自分の衣服をすべて救世軍に提供し、さらに 500 ドルする新 品の衣服を購入したため、怒った夫に病院に連れられて来た。 3.すべての領域でたいへんよく機能している若い女性が、恋人から別れ話の手紙を受けた 後、遺書めいた手紙を書き、セコナ―ル 10 錠服用して自殺企図、そして偶然にも友人に発見 された。回復後はもはや自殺は考えていないがまだ気分はゆううつである。 4.ある元患者は表面的には通常に機能し、仕事はしているが、貯水地に毒をもるという共 産主義者の企てを阻止するべくCIAに雇われているという数年来の妄想がある。その妄想に ついて自発的に話しはしないが、問われれば行動をおこす「良い時期を待っている」と述べて いる。 〔30以下〕 21−30: ほとんどすべての領域で機能することができない(例:終日横臥)、もしくは妄想か幻覚によ って行動が著しく影響されている、もしくは意志伝達上(例:時折の支離滅裂もしくは無反応) あるいは判断上(例:行動がひどく場にそぐわない)の重大な障害。 病院の外にいる限り自傷行為の可能性があるため保護する必要があるものの、持続的な監 視の必要はない患者がここに含まれる。 例: 1.抑うつ状態の女性が週末、モーテルに一人で部屋をとり、1びん 50 錠入りのネンブター ルを1錠ずつ飲んでいくという綿密な自殺計画を立てた。しかし、20 錠飲んだところで吐気の ため薬を吐いてしまった。生き続けることも自殺することもできなくなったため、夫に助けに来て ほしいと電話してきた。 2.観念奔逸と過活動を伴う躁状態の患者で、町なかのレストランでテーブルの上にあ がり、衣服はコミュニケーションの邪魔だからというので脱いでしまい、一緒に食事に来た連れ にもそうしろと勧めた。 3.家族はみんな死んでしまい、自分の家で生活している者は本当は詐欺師である、と信じ ているため、家をとび出し教会に逃げ場を求めた重症のうつ病の患者。 4.慢性的障害のある無職の男性は、母親と同居しており、ほとんどずっと寝室でビールを 飲んで過ごしている。 11−20: 自傷他害から防ぎ、最低の個人の衛生を維持するために何らかの監視が必要(例:自殺企 図の反復、頻回の暴力、躁性興奮、大便をこすりつける)、もしくは意志伝達上の極度の障害 (例:極端な支離滅裂もしくは緘黙)。例: 1.ある患者はくり返し自殺企図を行ったために、病院に連れてこられた。家族が患者の自 殺行動を確実に制することが次第に困難になっており、自殺が未遂に終らず成功してしまった らと家族は心配している。直接家族をせきたてた行動というのは、患者が台所に行き手首を切 るためにパンナイフを手にとったことであり、さらにその時止められた患者は、そのナイフで自 分の娘に切りつけようとした。 2.躁状態の男性が、5日間全く寝ないで、危険な黒人街を夜も昼も徘徊しながら白人至上 主義を説いてまわったため、2度にわたりその近所の十代の若者たちに攻撃され打ちのめされ た。そのため警察に保護された。 3.髪・服装をとり乱した女性が交通量の多い道路をふらふらさまよっているところを警察に 発見され、連れてこられた。ほとんど支離滅裂の状態だが、神の声が行けという所に行かねば ならないともぐもぐ言っている。 1−10: 自傷他害からまもるために数日にわたり持続的な監視が必要、あるいは最低の個人の衛生 を保とうとしない(例:職員による特別の観察を行なう集中管理病棟への入院を必要とする)、 あるいは明らかな意志を持った死の危険のある真剣な自殺行動。 例: 1.ある抑うつ状態の患者は、服薬自殺をはかり、救急治療室に運ばれたが意識不明に陥 った。精神科病棟に入って3日後、風呂場で首をつろうとしているところを看護婦によって発見 されている。その翌日は、割れたプラスチックのスプーンの鋭い部分で、手首を切ろうとしてい るところを発見されている。 2.異常に興奮した活動が持続している躁状態の患者。支離滅裂なことを叫び、保護室の 壁に自分の身体をうちつけ、部屋に入ってくる人は誰でも攻撃する。 3.ある牧師は自分自身の救済のためキリストのはりつけをくり返さねばならないと信じ、自分 の足首と手首を十字架に釘でうちつけているところを発見された。入院後、自分 は死にかかっていると言い、水を一杯求めた後は緘黙状態になり、全く無反応の状態でベット に横臥。両便失禁を認め、拒食。 4.ある 10 代の少年は、両親宛の遺書を書くと、自分の車を岩壁に向って走らせたが、軽い 外傷だけで助かってしまった。 最終診断 これまでの情報をもとに最終診断を決定する。COALA初回面接版第2部で聴取した内容か ら最終診断を変更する必要が生じたならば、そのように書き直す。各診断コ−ドごとに、2個ま での重複診断が許される。 DSM−Ⅲ−R: 診断名 コード番号 診断名 コード番号 JCM: 診断名 コード番号 診断名 コード番号 RDC: 診断名 コード番号 診断名 コード番号 なお Recurrent brief depression, Neurotic major depression, Subaffective dysthymia, Newcastle Index, Feinberg Index, Bech Melancholia Scale, Hamilton Rating Scale for Depression, Petterson Mania Scale, Brief Psychiatric Rating Scale についてはコンピュータ 入力後に自動換算する。 参考 ハミルトンうつ病評価尺度換算表 COALA 抑うつ気分 罪業感 希死傾向 初期不眠 中期不眠 末期不眠 興味と喜びの喪失 精神運動抑制 精神運動不穏 精神的不安 不安の身体症状 (食思不振+便秘) (疲労感+疲労の身体症状) 性的症状 心気症 体重減少 病識欠如 0 1 2 3 4∼6 0 1 2 3,4 5,6 0∼4 0∼2 0∼2 0∼2 0∼4 0 1 2 3,4 5,6 0 1,2 3,4 0 1,2 3,4 0∼4 0 → 0 → 1 → 2 → 3 → 4 → 0 → 1 → 2 → 3 → 4 → 0∼4 → 0∼2 → 0∼2 → 0∼2 → 0∼4 → 0 → 1 → 2 → 3 → 4 → 0 → 1 → 2 → 0 → 1 → 2 → 0∼4 → 0 1,2 3,4 0 1∼2 3∼4 0∼2 0 1 2 3,4 5,6 0∼2 0∼2 → 1 → 2 → 0 → 1 → 2 → 0∼2 → 0 → 1 → 2 → 3 → 4 → 0∼2 → 0∼2 HRS 抑うつ気分 罪業 自殺 入眠障害 熟眠障害 早朝睡眠障害 仕事と興味 精神運動抑制 激越 精神的不安 身体についての不安 消化器系の身体症状 一般的な身体症状 生殖器症状 心気症 体重減少 病識
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