OA-11-4

OA-11-4
回復期リハビリテーション病棟における作業的挑戦に関する尺度開発
―ベイジアン構造方程式モデルを用いて―
Development of the Occupational Challenge Assessment in convalescent
rehabilitation
―Bayesian structural equation modeling―
○内田成美 (OT) 1,2),京極 真 (OT) 3),佐野伸之 (OT) 4),寺岡 睦 (OT) 4)
1)
医療法人社団KNI北原リハビリテーション病院, 2)吉備国際大学大学院保健科学研究科(通信制)
修士課程, 3)吉備国際大学大学院保健科学研究科, 4)吉備国際大学大学院保健科学研究科博士課程
Key words: 作業,評価尺度,回復期リハビリテーション病棟
<はじめに>
回復期リハビリテーション病棟(以下,回復期リハ病棟)における作業療法士の役割は,作業的挑
戦を促し,生活に困難を感じている状態から退院後の豊かな地域生活を送れるように変化させること
である.作業的挑戦は,日々の作業を再建していくために難しい作業や新しい作業を試みる.そのた
め,作業療法士は,作業的挑戦を促し,支援することが求められる.しかし作業的挑戦を適切に評価
する方法は,皆無であった.そこで我々は,先行研究をもとに,作業的挑戦を努力や工夫が必要であ
るものの,個人の願望と環境からの要求によってやり遂げることと定義し,個人的挑戦と環境的挑戦
の2因子に整理した.そして,内容的妥当性と表面的妥当性を備えた,29項目のOCA(Occupational
Challenge Assessment)仮尺度を開発した.
<目的と意義>
本研究の目的は,OCA仮尺度の信頼性と妥当性を検討し,完成版OCAを作成することであった.
それにより,作業療法士がクライエントの作業的挑戦の状態を理解しやすくなり,変化を促進しやす
くなると考えられた.
<方法>
対象は,回復期リハ病棟で作業療法を受け,判断能力に問題のないクライエント103名(男性56
名,女性47名,69.10±13.19歳)であった.調査用紙は,フェイスシートとOCA仮尺度,SOPI
(自記式作業遂行指標),SAMR(リハビリテーション領域における達成動機尺度)を使用した.尺度
開発における信頼性と妥当性の検討は,Consensus-based Standards for the selection of health
Measurement Instruments(COSMIN)を参考にした.データ解析はベイジアン構造方程式モデ
ルを中心に行った.本研究は,吉備国際大学倫理審査委員会の承認を得ている.
<結果>
項目妥当性の検討では,全項目で多列相関係数0.2以上の基準を満たし,尺度と項目の相関が確認
された.項目特性の検討では,項目反応理論を実施し,全項目が識別力0.5〜2.5,困難度絶対値4以
内の基準を満たした.構造的妥当性では,2因子13項目での適合度が良好であった.併存的妥当性で
は,SOPIとは多くの項目で相関が確認されなかったが,SAMRとは相関が確認された.仮説検証で
は,2つの因子のどちらも基準値を満たした.内的整合性の検討では,全項目のα係数が0.92であっ
た.再テスト信頼性の検討では,中等度以上の相関が確認された.その結果,信頼性と妥当性が良好
な,2因子13項目4件法の完成版OCAが作成された.
<考察>
今回,回復期リハ病棟に入院するクライエントを対象に完成版OCAが開発された.OCAの信頼性
と妥当性の検討では良好な結果が得られ,OCAは新しい概念を正確に,かつ,安定して定量的に評価
可能な尺度であると考えられる.OCAは作業的挑戦に至りにくく,支援がより必要なクライエントに
適している.また,項目数の少なさから,クライエントへの負担が少ない簡便な尺度になったと考え
られる.従来では捉えにくかった作業的挑戦を定量的に評価できることで,作業的挑戦を2つの視点
で捉えて支援できると考える.さらに,定量的評価は,クライエント,他職種,家族,及び作業療法
士などのチームメンバーが共通理解を形成しやすく,チームワークの質が高められることが期待され
る.