※国際エンジニア育成プロジェクト -実践的技術者教育と英語教育の連携シス

※
国際エンジニア育成プロジェクト
-実践的技術者教育と英語教育の連携システムの構築-
香川高等専門学校
○小竹望,長岡史郎,福井智史,森和憲
本校は,アジア地域の大学と包括的学術交流協定
を締結している.これら協定校と本校の学生が参加
する研究成果発表会を開催し,国際的技術教育の機
会を創出する.なお,本校の協定校は,東洋未来大
学(韓国),ダナン工科大学(ベトナム),正修科技
大学(台湾),ソウル大学工学部(韓国),マラ工科
大学(マレーシア)の 5 機関である.
3) 実務英語教育推進プログラム
国際シンポジウム・英語プレゼンテーションコン
テストに学生が積極的に参加することを目標に,将
来国際エンジニアとして必要な英会話力を身につけ
る.すなわち,国際学術交流活動の推進によって新
たな技術者教育の場を創出し,実践的な技術者教育
2.事業の概要
と英語教育を連携させた教育システムの構築を図る.
本事業では,国際学術交流,実務英語教育,グロ
この教育システムは,創造的な専門知識や技術を習
ーバル・キャリア教育の三者の連携から生まれる相
得することに加えて国際的に活躍できるための英語
乗効果によって実践的能力を開発し,新たに創出す
る国際的教育機会で能力を発揮させることによって, 運用力を身につけ,さらにグローバルな視野にたっ
て地域社会や国際社会の抱える問題解決に貢献でき
日本国内と同様に海外でも活躍できる国際エンジニ
る国際エンジニアの育成を目的とした.
アの育成を図る新しい教育システムを構築すること
を目標に掲げた(図1).
3.主要な活動内容
3.1 グローバル・キャリア教育推進プログラム
1) 国際理解セミナーの開催
JICA か ら 海 外 援 助 活 動 経 験 の あ る 講 師 を 招
聘し,学生と教職員を対象とする国際理解セ
ミ ナ ー を 2 回 開 催 し た( 参 加 100 名 ) .また,
本校在籍の留学生を講師とする国際文化理解
セ ミ ナ ー を 開 催 し た .こ れ ら は ,学 生 が 異文化
理解,国際連携と相互依存について理解を深める機
会となった.
2) 海外インターンシップ派遣
高 専 機 構 主 催 事 業( 2 名 )と JODC 主 催 事 業
( 2 名 )の 海 外 イ ン タ ー ン シ ッ プ に そ れ ぞ れ 学
図 1 国際エンジニア育成プロジェクト概念図
生 を 派 遣 し た .ま た , JICA 等 の 関 連 す る 国 際
協力プロジェクトに参画し,海外インターン
1) グローバル・キャリア教育推進プログラム
シップ派遣先を確保できた.
地域連携と国際交流を通じて国際的技術者教育の
3) 海外インターンシップ受入れ
機会を創出し,グローバルな視野にたって地域社会
マラ工科大学から専攻科特別聴講学生とし
や国際社会の抱える問題解決に貢献できるグローバ
て 2 名の留学生を受け入れ,企業でのインタ
ル・エンジニアを育成する.海外インターンシップ
ーンシップと特別研究からなる 4 ヶ月間の留
等のキャリア教育やグローバルな視野の養成を目的
学プログラムを実施した.
とする国際化セミナーを開催する.
グローバル・キャリア教育の成果として,国際化
2) 国際学術交流推進プログラム
セミナー参加者のアンケート結果は目標値を満足し
1.はじめに
平成 22~23 年度の特別教育研究経費による「国際
エンジニア育成プロジェクト」1)では,本校に新た
に設置した国際交流室が実施主体となり,国際性の
向上のスタートアップとして取組んだ.特に,従来
から実施していた異文化交流を国際学術交流へ発展
させること,英語の学習意欲を高める新たなインセ
ンティヴが必要な状況であったことから,
「実践的技
術者教育と英語教育の連携システムの構築」に英語
科と専門学科の教員が一丸となって全学的に取り組
んだ.
【連絡先】〒761-8058 香川県高松市勅使町355 香川高等専門学校 国際交流室
小竹 望 TEL:087-869-3927 FAX:087-869-3929 e-mail:[email protected]
【キーワード】国際学術交流,実践的技術者教育,実務英語教育,教育連携システム,国際シンポジウム
た.また,来年度以降の海外インターンシップ派遣
先を確保でき,今後の留学生受け入れ拡充に対する
態勢を整えた.
3.2 国際学術交流推進プログラム
1) 国際シンポジウムの開催
H22 年 7 月に正修科技大学と共催で本校にて「技
術革新と持続可能な社会をテーマとする国際シンポ
ジウム ITSS2010」(参加 124 名)を開催した.H23
年 5 月に本 校 主 催「 環 境 地 盤 工 学 に 関 す る 国 際
シ ン ポ ジ ウ ム GEE2011」を 開 催 し ,10 カ 国 か
ら 60 余 名 の 参 加 が あ っ た ( 図 2). H23 年 7 月
に東洋未 来 大 学 と 共 催 で 国 際 シ ン ポ ジ ウ ム 3rd
IJWTEER を 本 校 で 開 催 し た .
図 2 国際シンポジウム GEE2011(香川高専主催)
2) 学 術 交 流 ・ 学 生 交 流
H22 年 10 月に東洋未来大学との学生交流に専攻
科生を派遣し,KINTEX の韓国電子展に学生作品を
出展した.H23 年 7 月に東 洋 未 来 大 学 の 交 流 訪 問
団の受け入れ,交流協定の更新に当たって調
印 式 を 挙 行 し た . H23 年 3 月と平成 24 年 3 月に
正修科技大大学とマラ工科大学に教員と学生を派遣
して国際ワークショップを開催した(図 3).その際,
専門分野のカウンターパートと共同研究や学生の協
働教育について協議した.また,ASET17,ISTS2011,
日台青少年シンポジウムへ学生を派遣した.
海外の大学等との学 術 交 流 推 進 し ,平 成 22 年
6 月 に ソウル大学工学部(韓国)と,同年 8 月にマラ
工科大学(マレーシア)と学術交流協定を締結した
(図 4)
.また,国際シンポジウムで研究発表等を経
験した学生による総合評価は目標値を満足し,学生
の国際性向上に大いに寄与できる機会が得られた.
図 3 国際ワークショップでの学生発表
図 4 マラ工科大学との学術交流協定調印式
サホール学長(左)と本校嘉門校長(右)
3.3 実務英語教育推進プログラム
英語授業ならびに課外指導において以下の取り組
みを行った.1)英語多読授業,2)レ ゴ・ブ ロ ッ ク を
利用した英語授業,3)iPad を 利 用 し た 英 語 授 業 ,
4)英 語 合 宿 ,5)放課後英会話指導,6)iPad を用いた
英語学習支援システムの開発,7)第 4~5 回全国高等
専門学校英語プレゼンテーションコンテスト出 場
お よ び 見 学 研 修 , 8)英語による専門授業,9)遠 隔
講義システムを活用した英語特別講義.
実践英語教育における成果として,外部テスト結
果が目標値を達成した.また,四国地区高背英語ス
ピーチコンテストにおいて1,2位となり,全国大会
において1名が審査員特別賞を受賞した.プレゼン
テーション部門においても1チームが予選を通過し,
全国大会に出場した.
4.今後の展望と課題
本事業における成果と課題を踏まえ,今後も「国
際エンジニア育成プロジェクト」の基本方針に沿っ
た国際交流活動を継続していく.すなわち,1)海外
インターンシップ派遣先の新規確保に取り組むとと
もに,国際理解セミナーの充実を図る.2)学術交流
協定に基づく相互の学生交流,共同研究を積極的に
推進し,学生に技術者教育と実践英語教育の場を提
供していく.また,低学年からの継続と蓄積の重要
性が再認識されたことから,低学年を対象とする英
語研修,異文化体験の機会提供にも注力していく.
そのため,世界規模の多様な地域を視野に入れて協
定校を増やし,国際学術交流の活動範囲と選択肢を
拡大していく.3)「英語もできる高専生」の育成を
目指す.英語科と専門学科の連携を一層強化し,高
専に特化した英語教材の開発や授業展開を考案する.
国際交流活動における課題として,継続性の確保
と効率性の向上が挙げられる.この解決には,四国
高専の連携,機構レベルの連携を視野にいれた規模
拡大を検討していく必要があると考えている.
参考文献
1) 香川高等専門学校国際交流室,特別教育研究経費
事業「国際エンジニア育成プロジェクト-実践的
技術者教育と英語教育の連携システムの構築-」,
平成 22~23 年度プロジェクト実施報告書(2012).