[バトンタッチの難しさ]

№3
2011 年 3 月 21 日 号
[バトンタッチの
バトンタッチの難しさ]
しさ]
オーナー経営者の世代交代は、バブル経済が崩壊した後本格的に始まり、す
でに交代を終えた会社、これから交代しようとしている会社など、その真っ只
中にあります。
会社は、後継者がいなければ、廃業するかM&Aによって売却するしかあり
ません。
創業オーナーは、子息、子女、親族、会社幹部等の中から後継者を選ぶこと
になりますが、その選択がなかなか難しいようであります。
創業者の多くは、勇気をもって事業を興し有無を言わせぬ号令のもと、俺に
ついて来いというやり方で会社を引っ張ってきた剛健なつわものであります。
この創業者は、会社をここまで大きくしたという自負があり、多くの経験に
裏打ちされた自信の塊であります。ですからその反面、会社運営を人に任せる
ことができず、何でも自分が決断し、快刀乱麻切り進む勇敢な猛者なのです。
この創業者が求めている後継者像は、自分と同じように会社を運営してくれ
るつわものリーダーでなければならないと思い込むようです。しかし、つわも
の創業者からつわもの後継者へのバトンタッチは稀のようです。
後継者へのバトンタッチは、経済環境も育ち方も違う息子たちにバトンを渡
すのですから、当然創業者と同じようにできるわけがないのです。
後継者は既に出来上がった会社を引き継ぐというところからのスタートであ
り、何もないところからスタートした創業者とはおのずから違いがあるのです。
このように環境が違う中でバトンタッチをスムーズに行なうためには、社内
環境を整備し、組織として機能する体制を確立することが早道のようです。そ
して変えて良いもの、変えてはならないものを明確に区別し、変えて良いもの
については時代に合わせて変革するべきであります。
つわもの創業者は、組織を確立するといっても大手企業のように機能や効率
等を考えて構築するのではなく、単なる組織の形をまね、自分にとって都合の
いいように組み立てるため、すべての部署に権限と責任のないスタッフが集ま
り、創業者の意のままに動く部下に対して役職が与えられイエスマンばかりと
いうこともあるようです。
よく考えるとつわものの創業者は組織的運営が大の苦手のようですが、創業
者が剛健で猛者であるがゆえに会社は常に成長拡大を続けることができたので
す。
会社は、環境の変化や自然災害、創業者の病気などによってその歯車は狂い
始めます。その狂いに対応できるのが組織であり人材なのです。
しかも創業者は、いつまでも元気で未来永劫に会社の指揮が取れるわけでは
ありません。いつかは後継者にバトンを渡す時が来るのです。
その創業者が大切に守り発展させた会社を見事に引き継げるのは、創業者と
タイプの違う優秀な後継者でなければその後を継ぐことはできません。
後継者を育成するためには、5年10年の歳月がかかります。
そのためにこの育成期間は、創業者にとって納得のいかない理解のできない
事ばかりかもしれませんが、人材を登用し、リーダーに権限委譲し、責任を与
え、組織的に会社運営できるようにすることも大切です。
※
ここで説明している承継会社は、小さな家内経営の会社でも、大規模な
中小企業でもなく、その中間的な家内経営の会社をモデルにしています。