平成 22 年度卒業研究（要約）題目病院の分煙化における喫煙整備と患者サービスに関する調査研究氏名高橋竜平（学籍番号 070781072）１．研究目的厚生労働省健康局は 2003 年に「健康増進法」第 25 条において受動喫煙の防止を努力義務とした１）。これを受け、（財）日本医療機能評価機構は 2008 年に病院機能評価 Ver.6.0 において、全館禁煙の方針が明確とした２）。横浜市医療安全支援センターは 2008 年、横浜市内の一般病床 71 施設を対象に立ち入り調査を行い、敷地内禁煙が約 4 割、全館禁煙が約 5 割、分煙が約 1 割であることを明らかにした３）。このような現状から、病院の分煙化における現地調査が必要と考え、病床数・病院機能評価と禁煙評価との比較による病院の禁煙・分煙を決定する要因分析を行った。２．方法調査対象は WAM NET に登録されている 20 床以上の一般病床で、名古屋市内の病院 94 施設、岐阜市内の病院 22 施設の合計 116 施設の現地調査を 2010 年 4 月から 5 ヶ月間で行った。一方、病院ホームページによる分煙化の対応の公開より、調査対象病院の病床数と禁煙・分煙状況を Google のサイト内検索を用いるとともに、（財）日本医療機能評価機構による病院機能評価認定の確認で行った４）。病院の分煙状況の実態把握は、現地調査による禁煙ポスターの設置、タバコの販売、タバコのポイ捨てを目視で調査し、病院の禁煙・分煙の評価し、病床規模と病院機能評価との比較による分析を行った。なお、禁煙ポスター、タバコのポイ捨ては写真撮影で行った。３．結果調査の結果、以下のことが分かった。１）病院ホームページ公開の施設は 111 施設（95.6%）であり、その中で日本医療機能評価機構が病院機能評価認定した病院は 46 施設(41.1%)あり、病院でホームページに掲載しているのは 40 施設（36.0%）であった。また、完全禁煙の掲載は 23 施設（20.7%）、分煙の掲載は 1 施設のみであり、分煙不明が 88 施設（79.3%）も存在した。２）現地調査における禁煙ポスターの設置状況から、完全禁煙が 62 施設（53.4%）、分煙が 31 施設（26.7%）、分煙不明が 23 施設（19.8%）であり、その中で病院機能評価認定病院では、完全禁煙が 46 施設中 35 施設（76.1%）、分煙が 8 施設（17.4%）であった。また、200 床以上を境として完全禁煙が 36 施設中 27 施設（75.0%）と多いが、分煙は 5 施設（13.9%）に留まった。指導教員酒井順哉３）禁煙ポスターは 83 施設（71.5%）の病院で設置され、その中で病院機能評価認定病院では 39 施設（47.0%）であり、100 床以上を境として 56 施設中 49 施設（42.2%）と多く掲載されていた。４）タバコの販売状況は、タバコ自動販売機を 1 施設で確認することができ、売店でタバコを販売している病院は存在しなかった。５）タバコのポイ捨ては、病院敷地外と敷地内に限られ、13 施設（11.2%）で確認でき、場所別に見ると、病院敷地外で 76 本、駐車場で 10 本、玄関外で 22 本のポイ捨てが確認された。病院機能評価認定病院でのポイ捨ては 46 施設中 8 施設（17.4%）であり、200 床以上を境として 9 施設（25.0%）であった。４．考察病床数の多い病院に完全禁煙を実施し、禁煙ポスターも多く存在するのは、病院機能評価の認定を取得するためであると考えられる。特に、病院機能評価認定の病院において、完全禁煙を実施し、禁煙ポスターも多く存在するのは、病院機能評価の評価項目を遵守し、患者からの高い評価をえるためであろう。しかし、完全禁煙を宣言する病院において、タバコのポイ捨てが多いのは、患者や見舞客が院内で喫煙できない反動と考えられ、分煙設備の設置も考慮すべきと考えられる。５．まとめ完全禁煙は病院の建前であり、医療スタッフが完全禁煙の努力まで見込んでおらず、患者の最適環境を提供しているとは限らない。病院機能評価認定病院では、禁煙ポスターが明確に表示され、完全禁煙のため、タバコのポイ捨てが多く、明確な分煙設備も必要であろう。病院環境は受動喫煙防止対策が促進する状況におかれているが、完全禁煙よりも明確な分煙を推進していくことで、患者と病院環境の最適化を図る必要がある。【参考文献】１）厚生労働省（2003）：受動喫煙防止対策について（健発第 0430003 号）２）（財）日本医療機能評価機構（2005）：病院機能評価統合版評価項目(Ver.6.0) ３）横浜市医療安全支援センター（2008）:横浜市内一般病床 71 施設への分煙状況立ち入り調査について４）（財）日本医療機能評価機構：病院機能評価結果の情報提供