第1章 工業熱力学と基礎的事項

「はじめてのコンパイラ」
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序
本書で取り扱う工業熱力学 (Engineering Thermodynamics) は,機械 (工業) 熱力
学ともよばれるもので,物理学の一部門である熱力学を基礎に,熱の授受にともなう
作動流体 (ガスや蒸気) の状態変化と,それらの流体を用い,熱から仕事にエネルギー
変換する熱機関,仕事エネルギーを消費して流体を圧縮する圧縮機,熱を低温部から
高温部へ移動させる冷凍機などの熱に関連した機器のサイクルとその理論および作
動などを経験と実験的な事実を重視して取り扱う実用的な学問である.特に大学・高
専・短大において機械工学を学ぶ学生諸君にとって必須の基礎科目であろう.また,
実社会では熱に関連した仕事に直接・間接的に携わっている技術者も多く,このよう
な技術者にとっても,本書は基礎的な知見となろう.現代に生きるわれわれの生活を
豊かにするために,エネルギー (熱や仕事) を有効に利用し,省エネルギーや環境問題
を解決する場合にも,工業熱力学は有効な一つの手段になると考える.
しかしながら,学生諸君にとっては,あらゆる工学の基礎となる力学に共通した考
え方や概念と,エンタルピー,エントロピーなどの (工業) 熱力学特有の抽象的な量
や概念を基礎に,それらの応用である熱機関・圧縮機・冷凍機などの機器内での作動
流体の状態変化と熱サイクルなどを理解することが必要であるため,工業熱力学は辛
く難解な科目と誤解されている.このような一見難解な熱力学を理解し知識にして,
応用可能にするためには,単に講義を聴いたり,教科書を読んだりするだけでは不十
分であり,最も効果的な方法はただ一つ,基礎的な事項から応用までを系統的に順を
追って知見を増やし,そのつど関連する『例題』や『演習』を,こつこつと,自力で
自分のペースで解くことである.このことで自ら考える力や問題を解決する能力,論
理的な思考方法なども養われると考える.
本書では,このような考えで,著者らの長年の教職経験を基に『例題』と『演習』
を中心に構成した.熱力学の基礎的事項,熱と仕事,サイクルを第 1 章∼第 3 章に,
作動流体の流動が無視できる場合について,理想気体とその関連する機器内でのサイ
クルと動作や理論を第 4 章∼第 6 章に,蒸気については第 7 章∼第 9 章に述べ,流
動が無視できない場合については第 10 章に,さらに熱力学の一般関係式については
第 11 章に述べた.
各章の記述は基本だけに絞るとともに,① 初歩的な知識から出発して,関連事項や
概念と理論などを解説し,公式などの誘導も行い,② それらを確認するために『例
題』で確かめ,さらに ③ 章末の『演習』では,少し高いレベルの問題を取り扱い,そ
i
の略解を巻末に記載した.これらの『解答』では,できる限り基本に戻り,計算の途
中での単位確認なども適宜行ったので,スマートさに欠けるかもしれない.『学ぶ』と
は『真似る』に通じるとの考えもあり,解答の参考にされたい.
もし本書に特徴があるとすれば,これらの点であろう.本書は,大学・高専・短大
の学生諸君を対象にした自学自習のための演習書であるが,もちろん参考書・教科書
としても十分に活用できる.
さらに高いレベルの学習には巻末に記載した参考図書を適宜参照されたい.
内容,記述,挿入図表とも万全を期したが,なお不十分な箇所もあるかもしれない.
読者諸賢のご批判,ご叱正をいただければ幸いである.
終りに執筆にあたり,参考にさせていただいた内外書の多数の著者に深く感謝する
とともに,刊行にご尽力いただいた森北出版株式会社のみなさまに厚く感謝の意を表
したい.
2007 年 9 月
著 者
ii
序
「例題」や「演習」を解くために
パズルや推理小説では,まず与えられた既知の情報などを整理し,目的は何か,何
をどうするのかなどを考え,これまでに得た知識や知恵 (知的好奇心と論理的思考力)
などを総動員して考えることになる.
『例題』や『演習』を解く場合でもまったく同様
である.次の手順に従うと容易に解答できるであろう.
(1) 考えようとする範囲 (系) を特定し,その概略図を描く.
(2) 既知の情報 (状態量,熱量や仕事量の出入りなど) を概略図上に整理して記入
するが,変化や重力の加速度,大気圧などの特定がなければ,① 準静的変化,
② g0 = 9.80665 m/s2 ,③ Patm = 0.101325 MPa (1 標準気圧) とする.
(3) 適用可能な法則や式を記入する (どの物理量どうしが等しいか,またはどちら
が大きいか小さいかなど).
(4) 変化やサイクルを P –v 線図,T –s 線図上に描く (径路や仕事量と熱量の出入り
などが可視化できるのできわめて有効である) .
(5) 理想気体の式や蒸気線図・蒸気表などを用い,必要な状態量を求める.
(6) 関係式を記入する場合は, SI 単位で記入し,① 数値には必ず単位を付ける.
② 式の両辺は SI 接頭語を含めて同一にする.たとえば,長さの計算では,面
倒でも 1 m + 1 km = 1 + 1000 = 1001 m などとする.
パズルや推理小説と同様に,
『例題』や『演習』でも解答できるように情報などは必
ずどこかで与えられているが,実際の問題では必ずしもそうではない.条件が過剰で
あるときは,それを見抜き惑わされぬようにすべきであり,不足しているときはそれ
らを明確にして補うこともまた重要である.
解答するにあたり,設問順などにこだわらず,解答できるものより順に解いても
よい.
次の定数値は『例題』や『演習』で適宜使用されたい.
標準の重力加速度 g0 = 9.80665 m/s2
標準 (大) 気圧 101.325 kPa = 760 mmHg (定義) = 1 atm
◦
(※ 本書での圧力表示 mmHg は,g0 ,0 C の条件下である)
一般ガス定数 R = 8314 J/(kmol·K)
空気
ガス定数 R = 287.0 J/(kg·K),比熱比 κ = 1.40
定圧比熱 cP =1004.5 J/(kg·K),定積比熱 cv = 717.5 J/(kg·K)
純水
蒸発熱 r = 2256.9 kJ/kg (1 atm 下)
比熱 c = 4.186 kJ/(kg·K),密度 ρ 1000 kg/m3
iii
SI 単位
SI の基本単位
SI 接頭語
長さ
m
名称
質量
kg
エクサ
(exa)
E
1018
時間
s
ペタ
(peta)
P
1015
電流
A
テラ
(tera)
T
1012
熱力学温度
K
ギガ
(giga)
G
109
分子量
mol
メガ
(mega)
M
106
光度
cd
キロ
(kilo)
k
103
ヘクト
(hecto)
h
102
デカ
(deca)
da
10
デシ
(deci)
d
10−1
SI の組立単位
= 1 kgm/s2
記号
大きさ
力
1N
圧力,応力
1 Pa = 1 N/m2
センチ
(centi)
c
10−2
エネルギー,仕事,熱量
1J
ミリ
(milli)
m
10−3
動力,仕事率 (工率),電力
1 W = 1 J/s
= 1 Nm
SI 以外
動力,仕事率
1 PS = 75 kg·m/s
= 0.7355 kW
マイクロ (micro)
µ
10−6
ナノ
(nano)
n
10−9
ピコ
(pico)
p
10−12
フェムト (femto)
f
10−15
アト
a
10−18
(atto)
本書に用いたおもな記号
A
(断) 面積 (A0 ピストン)
B
燃料消費率
C
流速,速度 (CC 臨界) または定数
COP
動作係数 (COPH ヒートポンプ,COPR 冷凍機)
D
管・球の直径
F
力
G
質量
Hu
燃料の低位発熱量
I
電流
M
分子量 (Ma 空気,Mw 水蒸気),マッハ数
N
動力,入出力 (Nind 図示,Nnet 正味,Nth 理論,Ny 所要)
Na
アボガドロ数
NL
ロシュミット数
P
全圧,圧 (力) (Pa 絶対,Patm 大気,Pg ゲージ,Ps 飽和,PC または PK 臨界,Pm 平均
有効),分圧 (Pa 空気,Pw 水蒸気),または動力 (Pshaft 軸)
Q
加 (放) 熱量
R
ガス定数 (Ra 空気,Rw 水蒸気)
R
一般ガス定数
S
エントロピー,移動距離
T
絶対温度 (熱力学温度,Ts 飽和,TK 臨界)
U
内部エネルギー
iv
V
体積 (Vh 行程),VS 排気量,または電圧
W
仕事 (量) (W12 絶対,あるいは膨張,Wt 工業,WP ポンプ,WT タービン,Wr 圧縮機,
WO 開いた系,WC 閉じた系,Win 入力,Wout 出力,Wv 駆動,Wspring ばね,WL 押し
出し,Wis 等温圧縮,Wad 断熱圧縮,Wn ポリトロープ圧縮) ,Wg 総出力,エネルギー
(WPE 位置,WKE 運動,We 電気) ,または動力 (WT タービン,WP ポンプ)
a
音速
b
燃料消費率
c
比熱 (cP 定圧,cv 定積,cm 平均,cn ポリトロープ),成分数
d
直径 (ピストン)
f
自由度,自由エネルギー (比ヘルムホルツ関数)
g
自由エンタルピー (比ギブズ関数)
g
重力の加速度 (g0 標準)
h
液柱差,比エンタルピー (h 飽和液,h 飽和蒸気,ha 空気,hw 水蒸気)
k
ばね定数,断熱指数 (実際)
l
位置,管の長さ,またはピストン行程
m
質量 (ma 空気,mw 水蒸気),流量,または抽気の割合
n
回転数,モル数,またはポリトロープ指数
p
相の数
q
作動流体 1 kg あたりの加 (放) 熱量 (qB ボイラ加熱量,qC 凝縮器放熱量,ql 液体熱,qr 摩
擦熱または再熱器加熱量,qs 過熱量,qv 等積時,qP 等圧時,qT 等温時)
r
蒸発熱,または半径
s
比エントロピー (s 飽和液,s 飽和蒸気)
t
セルシウス度 (ts 飽和),乾球温度
t
湿球温度
t
露点
u
比内部エネルギー (u 飽和液,u 飽和蒸気)
v
速度,または比体積 (v 飽和液,v 飽和蒸気)
w
作動流体 1 kg あたりの仕事 (量) (w12 絶対,あるいは膨張,wt 工業,wP ポンプ,wT ター
ビン,wO 開いた系,wC 閉じた系,win 入力,wout 出力,wL 押し出し,wis 等温圧縮,
wad 断熱圧縮,wn ポリトロープ圧縮,wnet 正味,wth 理論,wind 図示,wr 摩擦) ,また
は wg 総出力,wR 仕事比
x
(ピストン) 移動距離,乾き度,または絶対湿度
z
高さ,または一回転あたりの行程数
無次元数
Re
レイノルズ数
v
ギリシア文字
α
角度,加速度,圧力上昇比,または等温圧縮率
β
体膨張率 (係数)
ε
圧縮比,動作係数 (εH ヒートポンプ,εR 冷凍機),ε0 すきま比
η
効率 (ηC 圧縮機,ηP ポンプ,ηT タービン,ηme 機械,ηen 機関,ηE 熱交換器,ηis 等温,ηad
断熱) ,または熱効率 (ηR 可逆,ηS 不可逆,ηC カルノー,ηO オットー,ηD ディーゼル,ηS
サバテ,ηB ブレイトン,ηnet 正味,ηth 理論,ηind 図示)
Θ
熱力学温度
κ
比熱比,または断熱指数 (理論)
λ
管摩擦係数,または体積効率
µ
ジュール–トムソン係数
ν
動粘度
ρ
密度 (ρK 臨界,ρair 空気)
σ
締切比
τ
時間,軸トルク,または温度比
φ
相対湿度,圧力比,速度係数,または広がり率
π
円周率
ln = loge
vi
目
第1章
工業熱力学と基礎的事項 ............................................................... 1
1.1 工業熱力学
1
1.2 基礎的事項
2
演習問題 1
第2章
13
熱 と 仕 事 ............................................................................... 15
15
2.1 熱力学の第 1 法則
15
2.2 内部エネルギー
2.3 エンタルピー
16
17
2.4 絶対仕事と工業仕事
2.5 エネルギー式
20
23
2.6 熱力学の第 2 法則
2.7 エントロピー
演習問題 2
第3章
24
30
サイクル .................................................................................. 32
3.1 可逆サイクルと不可逆サイクル
3.2 熱効率と動作係数
3.4 可逆サイクルの例
演習問題 3
32
34
3.3 可逆サイクルの熱効率
第4章
次
36
37
43
理想気体 .................................................................................. 45
4.1 状態量と状態式
4.2 状態変化
52
4.3 混合ガス
58
4.4 湿り空気
61
演習問題 4
45
64
vii
第5章
ガスによる熱機関サイクル .......................................................... 66
5.1 空気標準サイクル
66
5.2 ピストン式熱機関
69
5.3 タービン式熱機関
77
5.4 その他の熱機関サイクルとサイクルの比較
87
5.5 実機関サイクル
演習問題 5
第6章
91
ガス圧縮サイクル ...................................................................... 94
6.1 ガス圧縮サイクル (体積型)
6.2 その他の圧縮サイクル
演習問題 6
第7章
蒸
94
101
104
気 .............................................................................. 106
7.1 蒸気の一般的性質
7.2 状 態 式
106
110
7.3 蒸気表と蒸気線図の使用法
110
7.4 圧縮液・飽和蒸気・過熱蒸気の状態量
7.5 状 態 変 化
120
7.6 状 態 線 図
127
演習問題 7
第8章
蒸気による熱機関サイクル ......................................................... 131
131
8.2 ランキンサイクル
8.3 再熱サイクル
135
8.4 再生サイクル
138
8.5 再熱再生サイクル
8.6 実サイクル
132
141
142
8.7 2 流体サイクルと複合サイクル
演習問題 8
144
147
蒸気圧縮冷凍サイクル ............................................................... 149
9.1 冷凍サイクル
149
9.2 基準冷凍サイクルと冷凍能力
viii
114
129
8.1 蒸気原動所
第9章
84
目
次
150
151
9.3 冷媒とブライン
9.4 1 段圧縮冷凍サイクル
154
9.5 多段圧縮冷凍サイクル
158
161
9.6 多元冷凍サイクル
9.7 実サイクル
演習問題 9
第 10 章
163
163
ガスや蒸気の流動 ................................................................... 164
164
10.1 流動の基礎式
10.2 管内の流動
167
10.3 絞
り
169
10.4 音
速
171
10.5 ノズル内の流動
演習問題 10
第 11 章
172
179
熱力学の一般関係式 ................................................................ 180
11.1 ギブズの相律
180
11.2 全微分・周期的関係・逆関係
181
11.3 ギブズの関係とマクスウェルの関係式
182
11.4 内部エネルギー・エンタルピー・エントロピー・比熱
11.5 ジュール –トムソン係数
188
11.6 クラペイロン –クラウジウスの式
演習問題 11
184
188
189
演習問題解答 ........................................................................................ 190
参考文献 .............................................................................................. 223
付
表 .............................................................................................. 224
索 引 .............................................................................................. 228
目
次
ix
第1章
工業熱力学と基礎的事項
本章では,これまでに物理学や応用物理学などで学んできた力学や熱力学に関連し
た基礎的な事項や概念,物理量などを,工業熱力学で活用するために,それらを整理・
再確認する.
概念としては,作動流体,系,状態量,状態変化,サイクルなど,物理量としては,
力,仕事量,温度,圧力,熱量,エネルギー,動力などである.
1.1
工業熱力学
物理的な仕事をする能力をエネルギー (energy) といい,形態には,力学的仕事
(機械エネルギー;mechanical energy or work),熱エネルギー (heat),電気エネル
ギー (electric energy),化学エネルギー (chemical energy),放射エネルギー (radiant
energy),(原子) 核エネルギー (nuclear energy) などがある.
熱力学 (thermodynamics) とは,熱 (エネルギー) と他の形態のエネルギーとの関係
や変換の法則などを理論的に取り扱う古典的な物理学であり,熱力学の第 0 法則,第
1 法則,第 2 法則などの法則から構成されている.
一方,機械工学技術者には,理論的にではなく,現実に即した熱と力学的仕事 (エ
ネルギー) の関係,つまり熱を力学的仕事に変換する熱機関 (heat engine),力学的仕
事を消費して,低温から高温へ熱を移動させる冷凍機 (refrigerator) などの動作や原
理などを理解することが必要である.このような実際の経験と実験的事実を土台にし
た,巨視的で現象論的な熱力学を工業熱力学 (機械熱力学) とよんでいる.いいかえ
図 1.1
熱機関と冷凍機
(矢印はエネルギーの移動方向を示す)
1
ると,工業熱力学は実際の熱機関や冷凍機などの研究と発展に寄与し,エネルギー変
換や効率的な利用に資する学問ともいえる.図 1.1 に熱機関と冷凍機でのエネルギー
授受の関係をそれぞれ示す.
1.2
基礎的事項
1.2.1 基礎概念
( 1 ) 作動流体と系・境界・外界 (周囲)
たとえば,熱を仕事に変換する熱機関 (heat engine) では,媒体になる作動流体
(working fluid) が必要である.この作動流体 (気体や液体) は圧縮や加熱などによっ
て,圧力や体積が容易に変化する物質で,ガスや蒸気などがその例である.
境界 (boundary) とは,図 1.2 に示すように,考える対象区域内の系 (system) と区
域外の外界 (周囲 surrounding) との境で,任意に設定することができ,固定する必要
もない.たとえば,図 1.3 に示すピストン式機関で,シリンダー壁とピストンヘッド
に囲まれた空間を系に選ぶと,ピストンの運動にともなって境界の一部も動くことに
なる.多くの場合,系内の作動流体が状態変化を繰り返し,動力を発生したり,動力
を消費して冷凍や圧縮効果を発揮したりする.
図 1.2
図 1.3
系・境界・外界
ピストン式機関
作動流体は熱や仕事などのエネルギーを,境界を横切って外界と授受するが,作動流
体自身も境界を横切って外界へ移動する場合と,移動しない場合とがある.前者を開
いた系 (open system or control volume) ,後者を閉じた系 (closed system or control
mass) という.内燃機関は系内の作動流体が絶えず入替わり,その質量は一定ではな
い開いた系の例であるが,冷凍機は入替わらないので閉じた系の例である.
表 1.1
開いた系・閉じた系・孤立系
エネルギー
(熱や仕事)
作動流体
例
開いた系
○
○
内燃機関など
閉じた系
○
×
冷凍機など
孤立系
×
×
宇宙など
(○印は境界を横切る移動有)
2
第1章
工業熱力学と基礎的事項
このほかに,作動流体も熱も仕事もともに境界を介して,一切移動しない孤立系
(isolated system) がある [表 1.1 を参照].
例題 1.1
図 1.4 に示すように電気ヒーターで加熱されるヤカンがある.以下の (1),(2)
をそれぞれ系に選ぶとき,ヒーターによる加熱は,単なる加熱作用か,それとも
加熱作用ではないか.
(1) ヒーターを含むヤカン全体
図 1.4
解答
(2) ヤカンだけ
加熱されるヤカン
(1) ヒーターを含むヤカン全体を系に選ぶと,ヒーター加熱でヤカンは温度上昇する
が,このエネルギー移動は系内のみであるため, 加 熱 作 用 は な い .
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(2) ヒーターで,外界からヤカンを加熱する加 熱 作 用 と な る .
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( 2 ) 状態量と状態式
状態量 (quantity of state,property) とは,作動流体 (ガスや蒸気) の状態を表す量
で,圧力 P ,比体積 v ,絶対温度 T や後述の比内部エネルギー u,比エンタルピー h,
比エントロピー s など1) をいう.これらは現在の状態だけで定まり,現在に至る径路
には無関係である.
状態量は,絶対温度 T や圧力 P などのように,物質の量には無関係である示強状
態量 (intensive property) と,体積 V や内部エネルギー U ,エンタルピー H ,エント
ロピー S などのように,物質の量に関係する示量状態量 (extensive property) とに分
類できる.なお,比体積 v ,比内部エネルギー u,比エンタルピー h,比エントロピー
s は量に無関係な示強状態量である.表 1.2 に示強状態量と示量状態量の例を示す.
単一成分の気体では,状態量のうち,任意の 2 つの示強状態量だけが独立して変化
1) 質量 1 kg あたりの量に (比) を付け,比体積,比内部エネルギー,比エンタルピー,比エントロピー
などという.
1.2 基礎的事項
3
表 1.2
示強状態量と示量状態量
示強状態量
示量状態量
物質の量に無関係
物質の量に関係
温度,圧力,比体積,密度,比内部
体積,内部エネルギー,エンタル
エネルギー,比エンタルピー,比エ
ピー,エントロピーなど
ントロピーなど
でき2) ,その他の状態量は,これらの 2 量の関数として表現できる.たとえば,圧力
P ,比体積 v ,温度 T の 3 つの状態量は互に独立して決まるものではなく,式 (1.1) の
ように表される.ここで,関数 F や f は,流体の種類によって決まる固有のもので
ある.
F (P, v, T ) = 0 あるいは P = f (v, T )
(1.1)
このような状態量間の関係を示す式は,一般に状態式 (equation of state) または特
性式 (characteristic equation) とよばれ,理想気体では,式 (1.2) の関係が成立する
[式 (4.3) を参照].
P v = RT
(1.2)
しかし,状態量間の関係が複雑で簡単に状態式で表せない場合は,状態量を蒸気表
や,任意の 2 示強状態量をそれぞれ縦軸,横軸とする状態線図または状態図上の関係
で表すこともある.熱力学でよく用いられる状態線図には,P –v 線図,T –s 線図など
がある.特に蒸気機関では h–s 線図,冷凍機では P –h 線図が熱力学の解析のために
用いられる状態線図である [7.6 節を参照].
( 3 ) 状態変化とサイクル
作動流体がある状態から他の状態に変化することを状態変化 (change of state) また
は過程 (process) とよび,可逆変化と不可逆変化とがある.
可逆変化 (reversible change) とは,変化した系と外界を含むすべてを,何らかの方
法で,もとの状態にもどすことが可能な変化をいい,どんな方法を用いても,もとの
状態にもどすことのできない変化を不可逆変化 (irreversible change) という.実際の
変化は,熱移動や摩擦,光や音,渦の発生などの不可逆性を必然的にともなうので,
すべて不可逆変化であり,厳密にいうと,不可逆性をともなわない可逆変化は実在し
ないといえる.
しかし,圧力差 ∆P や温度差 ∆T を限りなく 0 (ゼロ) に近づけるような,動作に
2) ギブズの相律 (Gibbs’ phase rule) によると,流体 (ガスや蒸気) の状態を確定するに要する示強状
態量の数 f は,f = c − p + 2 となる.ここで c は成分数,p は相の数である.単一成分の気体では,
c = 1,p = 1 となるから,f = 2,つまり,2 個の独立した示強状態量を与えねばならない (詳しく
は,11.1 節を参照のこと).
4
第1章
工業熱力学と基礎的事項
長時間を要するが,きわめて静的な変化を考えることができる.このように力学的な
平衡 (machanical equilibrium) と熱力学的な平衡 (thermodynamic equilibrium) とが
保たれている変化を,準静的変化 (quasi-static change) とよび,可逆変化の一つと考
えることができる.この変化では同じ径路を逆向きにたどってもとの状態にもどるこ
とができるから,逆行可能な変化でもある.
また状態変化には,変化中の作動流体の圧力が一定である等圧変化 (isobaric change),
体積が一定の等積変化 (isovolumetric change),温度が一定の等温変化 (isothermal
change),外界と熱的に遮断された断熱変化 (adiabatic change) などがある.また,こ
れらの限定された変化と変化全般を広く表すポリトロープ変化 (polytropic change) が
ある [4.2.1 項 (5) を参照].
サイクル (cycle) とは,系内の作動流体が,ある熱力学的状態から出発して,連続
的に変化し,再びもとの状態にもどる循環過程をいう.サイクルには可逆変化だけ
で構成された可逆サイクル (reversible cycle) と,不可逆変化を含む不可逆サイクル
(irreversible cycle) とがある.可逆サイクルは可逆変化と同様に実現不可能であるが,
準静的変化を組み合わせた可逆サイクルを考えることができる.後述のカルノーサイ
クルなどは,そのようなサイクルである.
1.2.2 基礎物理量
( 1 ) 温度と熱力学の第 0 法則
寒暖の客観的な度合いを示す尺度に温度 (temperature) がある.温度が異なるのは
物体が保有する熱 (heat) の量が異なるからである.熱はエネルギーの一形態であり,
物体を構成する原子や分子などの運動が激しいときは温度が高く,激しくないときは
低い.また熱は高温物体より低温物体へ移動する.これは高温の激しい分子運動が,
低温の分子を刺激して,その分子運動を激しくし,高温にするためである.このよう
な高温物体から低温物体への熱移動はこれら 2 つの物体の温度が等しくなる,つまり
熱平衡 (thermal equilibrium) に達するまで続く.熱力学の第 0 法則 (zeroth law of
thermodynamics) は熱平衡の法則で “2 つの物体は接触していなくても同じ温度であ
れば,それらは熱平衡状態にある” というもので,この法則に基づいて,われわれは
温度計を媒介にして客観的に温度を測定している.
◦
日常生活で使用している温度目盛はセルシウス度 (摂氏度,Celsius) で,t C と記
◦
◦
すが,これは基本的には標準大気圧下での水の氷点を 0 C,沸点を 100 C(厳密には
◦
99.974 C) としている.正確には種々の物質の凝固点,融解点,沸点など 17 個の定
点 (fixed point of temperature) を国際温度目盛上や所定の公式3) で定義している.
3) 東京天文台編,理科年表 (2006),(物 36∼43),丸善を参照のこと.
1.2 基礎的事項
5
第5章
ガスによる熱機関サイクル
熱機関で用いられる作動流体には,ガス (gas) や蒸気 (vapor) などがあるが,本
章では作動流体を理想気体やガスとする熱機関 (heat engine) とそのサイクルにつ
いて述べる.熱機関では系に流出入するガスの運動エネルギーの差が無視できる場合
と無視できない場合とがあるが,本章では無視できる場合を取り扱う.無視できない
ジェット機関などについては,第 10 章を参考にすると導き出すことができる.
5.1
空気標準サイクル
ガスを作動流体とする熱機関には,ガソリン機関,ディーゼル機関,ジェット機
関などがある.これらの機関では,作動流体 (空気) 内で燃料を燃焼させ,作動流体
を加熱し,燃焼ガスを大気へ放出することで放熱しているので,内燃機関 (internal
combustion engine) とよんでいる.内燃機関では,はじめ作動流体である空気が,燃
料と混合し混合ガスとなり,それらが燃焼して燃焼ガスとなり排出される.このよう
に作動流体の組成と特性は刻々変化している.また 1 サイクルごとに空気を入れ替え
ねばならないから,必然的にサイクルの一部が大気に開放される開いた系の開放サイ
クル (open cycle) となり,厳密な意味では作動流体はサイクルを構成していない.こ
れに対し,作動流体として,同じガスを循環させ,加熱と放熱変化は外部熱源との間
でそれぞれ行う閉じた系の密閉サイクル (closed cycle) がある [図 5.6 を参照] .
このような内燃機関サイクルを,① 全サイクル中で作動流体は空気とし,それもガ
ス定数,比熱,比熱比が一定であり,理想気体であると考え,② すべて準静的変化で
構成され,しかも ③ 熱授受は外部の高温源と低温源との間でそれぞれ行う,密閉サイ
クルに置き換える.このように,簡単・理想化したサイクルを空気標準サイクル (air
standard cycle) とよび,内燃機関の基準性能の比較や理論的な解析と研究などに利用
している.
現在実用化されている熱機関の多くは,構造上からガソリン機関やディーゼル機関
のようにシリンダー内をピストンが往復動するピストン式と,タービンが回転する
タービン式とに分類できる.
熱機関の性能を比較するには,熱効率 η の大小ばかりでなく,有効に利用できる仕
事 (量) w や仕事比 (work ratio) wR の大小もまた重要な要素となる.仕事比 wR と
は,サイクルの総出力仕事 (gross work output) を wg ,有効仕事を w とするとき,式
66
(5.1) のようにそれらの比で定義される.熱機関が発生する総出力仕事 wg がそのまま
有効に利用できれば好都合であるが,サイクルを構成するには,圧縮などにいくらか
の入力仕事を要する.それで仕事比 wR は仕事の回収割合を示すともいえる.なお,
総出力仕事 wg は,絶対仕事 w12 (ピストン式) と工業仕事 wt (タービン式) とでそれ
ぞれについて算出できるから,仕事比 wR もそれぞれの仕事に対応して算出できる.
w
wR =
(5.1)
wg
カルノーサイクルは高熱効率であるにもかかわらず,例題 5.2 のように,wR の値
は意外に小さい.このことがカルノーサイクルを基本にする実際の熱機関が少ないこ
との一因でもある.なお,例題 8.1 などの蒸気サイクルでは非常に高く,wR 1 と
なる.
例題 5.1
理想気体で作動するカルノーサイクルの熱効率が,図 3.4 (a) に示した P –V
の関係を用いて,式 (3.10) になることを導き出せ.
解答
図 3.4 (a) のサイクルで系は熱量 Q1 を等温変化 (B → C) で受熱し,熱量 Q2 を等温
変化 (D → A) で放熱する.これらの熱量は式 (4.29) を用いると,m [kg] あたり,そ
れぞれ次のようになる.
VC
Q1 = mRT1 ln
(a)
VB
VD 1)
(b)
Q2 = mRT2 ln
VA
κ−1
一方,断熱変化時は,式 (4.37) より T V
= 一定 であるから,変化 (A → B) と変
化 (C → D) に対して,それぞれ
T2 VAκ−1 = T1 VBκ−1
T1 VCκ−1 = T2 VDκ−1 となる.
ゆえに T2 /T1 = (VB /VA )κ−1 = (VC /VD )κ−1 となり,VB /VA = VC /VD あるいは
VC /VB = VD /VA
したがって,式 (a) は式 (a) となる.
VD
Q1 = mRT1 ln
(a)
VA
したがって,カルノーサイクルの熱効率 ηC は式 (3.5) を用いると,次のようになる.
VD
mRT2 ln
Q2
T2
VA
ηC = 1 −
=1−
=1−
(3.10)
VD
Q1
T1
mRT1 ln
VA
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1) 式 (4.29) より,− Q2 = mRT2 ln(VA /VD ) となる.つまり Q2 = mRT2 ln(VD /VA ) と書ける.
ここで Q2 > 0 である.
5.1 空気標準サイクル
67
例題 5.2
空気を作動流体とし,カルノーサイクルで作動する熱機関の最高温度は 800
◦
◦
C,最低は 20 C,最高圧力は 20 MPa ,最低は 0.1 MPa である.このサイク
ルについて,以下の (1),(2) を求めよ.
(1) 理論熱効率
解答
(2) 絶対仕事 w12 に対する仕事比
◦
◦
図 5.1 に示すカルノーサイクルで,題意より t1 = t4 = 20 C,t2 = t3 = 800 C,
P2 = 20 MPa,P4 = 0.1 MPa である.
図 5.1
カルノーサイクル
T1
273.15 + 20
=1−
= 72.68 %
T2
273.15 + 800 ================
(2) 変化 (3 → 4),(1 → 2) はともに ds = 0 であり,式 (4.37) から,それぞれ,
κ
T3 κ−1
P3 = P4 ×
T4
1.40
273.15 + 800 1.40−1
= 0.1 × 106 ×
= 9.386 [MPa]
273.15 + 20
κ
T1 κ−1
P1 = P2 ×
T2
1.40
273.15 + 20 1.40−1
= 20 × 106 ×
= 0.2131 [MPa]
273.15 + 800
また,変化 (2 → 3),(4 → 1) は,それぞれ dT = 0 であるから,式 (4.28),(4.29)
より,次のようになる.
P2
20
w23 = RT2 ln
= 287.0 × (273.15 + 800) × ln
= 233.0 [kJ/kg]
P3
9.386
P1
0.2131
= 287.0 × (273.15 + 20) × ln
= 63.66 [kJ/kg]
w41 = RT1 ln
P4
0.1
一方,変化 (3 → 4),(1 → 2) は,それぞれ ds = 0 であるから,式 (4.38) より,
次のようになる.
R
287.0
w34 =
× (t3 − t4 ) =
× (800 − 20) = 559.7 [kJ/kg]
κ−1
1.40 − 1
R
287.0
× (t2 − t1 ) =
× (800 − 20) = 559.7 [kJ/kg]
w12 =
κ−1
1.40 − 1
図 (a) で,総出力仕事 wg = 面積 (233 2 2) + 面積 (344 3 3) = w23 + w34
(1) 式 (3.10) より,ηC = 1 −
68
第5章
ガスによる熱機関サイクル
∴ wg = w23 + w34 = 233.0 + 559.7 = 792.7 [kJ/kg]
一方,有効仕事 w = 面積 (12341) = w23 + w34 − w41 − w12 となる.
∴ w = 233.0 + 559.7 − 63.66 − 559.7 = 169.3 [kJ/kg]
w
169.3
したがって,式 (5.1) より,wR =
=
= 0.2136
wg
792.7 =============
注
このようにカルノーサイクルの熱効率は非常に高いが,仕事比 wR は例題 8.1 の
ランキンサイクルなどに比べて非常に低い.
5.2
ピストン式熱機関
ピストン式では,ピストンが上死点と下死点の間を往復動するので,往復動機関
(reciprocating internal combustion engine) ともよぶ.ピストンが上死点にあるとき
の体積をすき間体積 (clearance volume),ピストンの動きで排除する体積を行程体積
(=排気量 stroke or swept volume,piston displacement) とよんでいる.ピストン式
では,インジケーター (指圧計 indicator) を用いると,シリンダー内の圧力とピストン
変位との関係 (P –V 線図上での関係),つまりインジケーター線図 (指圧線図 indicator
diagram) が得られ,その面積からサイクルあたりの仕事 W を求めることができる.
また,その仕事 W (=面積) を行程体積 [=排気量 (V1 − V2 )] で除すと,平均有効圧
(mean effective pressure) Pm が算出でき,排気量の異なる機関性能の比較などに利用
している.作業流体 1 kg についても成立するので,次のようになる.
W
w
Pm =
=
[Pa]
(5.2)
V1 − V2
v1 − v2
なお,ピストン式では,構造上,圧縮と膨張は断熱変化,放熱は等積変化になる.
5.2.1 オットーサイクル (等積サイクル)
ガソリン機関の空気標準サイクルは,図 5.2 に示すような,2 つの等積変化 (dv=0
で加熱と放熱) と,2 つの断熱変化 (ds = 0 で圧縮と膨張) の合計が 4 変化からなる
オットーサイクル (Otto cycle) で表される.ガソリン機関の加熱は,上死点で空気と
燃料の混合ガスに火花点火する瞬間の燃焼で行われるので,加熱変化は dv = 0 に近
くなる.それで等積サイクルともよんでいる.
さて,このサイクルでの作動流体 1 kg あたりの加熱量 q1 ,放熱量 q2 ,仕事量 wO
は,cv = 一定 のとき,それぞれ次のようになる.
q1 = u3 − u2 = cv (T3 − T2 ) [J/kg]
(∵ dv = 0)
q2 = u4 − u1 = cv (T4 − T1 ) [J/kg]
(∵ dv = 0)
wO = q1 − q2 = cv (T3 − T2 ) − cv (T4 − T1 ) [J/kg]
5.2 ピストン式熱機関
(5.3)
69
第8章
蒸気による熱機関サイクル
蒸気を用いた熱機関は水蒸気 (steam) を作動流体とするものが大多数であり,構
造上からはピストン式とタービン式とに分類できる.ピストン式は以前に蒸気機関車
(steam locomotive) に用いられたが,現在ではあまり用いられていない.タービン
式は現在の火力発電所,原子力発電所,船舶推進などで動力発生用に広く利用されて
いる.本章では,系に流出入する作動流体の運動エネルギーの差が無視でき,作動流
体を水蒸気とするタービン式の熱機関とそのサイクルについて述べる.
8.1
蒸気原動所
蒸気原動所 (steam power station) である発電所 (electric power plant or station)
では,水を加熱して水蒸気にして,それで蒸気タービン (steam turbine) を回転さ
せ,直結した発電機で発電している.火力発電所 (thermal electric power plant or
station) では,ボイラー (boiler) 内で水を直接加熱するが,原子力発電所 (nuclear
power plant) では,原子炉 (nuclear reactor) 内で水を核反応熱で直接加熱し水蒸気を
作るか,または原子炉内で高温に加熱された水やガス,ナトリウムなどを熱交換器 (heat
exchanger) に導き,そこで水を間接加熱して水蒸気を作っている.前者の例が沸騰水
型原子炉 (boiling water reactor) であり,後者には加圧水型原子炉 (pressurized water
reactor),ガス冷却型原子炉 (gas-cooled reactor),ナトリウム冷却型原子炉 (sodium
cooled reactor)
1)
などがある.これらでは,原子炉や熱交換器が蒸気発生器 (ボイ
ラー) の役割をしている.
このように蒸気発生器 (ボイラーや原子炉など) で高温高圧に加熱された水蒸気は
蒸気タービンに導かれ,蒸気の断熱膨張 (等エントロピー膨張) によって発生した動力
で,発電機やスクリュー (船舶) を駆動する.蒸気の等エントロピー膨張が十分になさ
れるように復水器 (凝縮器 steam condenser) がタービンの後に接続されており,そこ
で自然水 (海水,河川水,湖水など) で冷却されて復水 (凝縮) する.復水は給水ポン
プ (feed water pump) で加圧され,再び蒸気発生器に戻る.このようなサイクル (循
環) を蒸気サイクル (vapor cycle) という.
蒸気サイクルの基本がランキンサイクルであり,その熱効率の向上を目指した再熱
サイクル,再生サイクル,それらを組合せた再熱再生サイクルと,作動流体である水
1) たとえば『工業熱力学 改訂 SI 版』,岐美格,奥野純平,牧野州秀共著 (森北出版),P.206,図 13.1
を参照のこと.
131
の高温領域での熱的特性の短所を補うように考えた, 2 流体サイクルや複合サイクル
が用いられている.
8.2
ランキンサイクル
ランキンサイクル (Rankine cycle) は 1854 年にランキン (William John Macquorn
Rankine) によって考案された蒸気原動所の基本サイクルである.図 8.1 に蒸気原動
所の機器の基本的な構成を,図 8.2 にランキンサイクルを P –v 線図,T –s 線図,h–s
線図上に描いた.それぞれの図は変化の様子が区別できるように,やや誇張して描い
てある.
図 8.1
ランキンサイクルを行う蒸気原動所
図 8.2
ランキンサイクル
これらの図で,変化 (1 → 2) は蒸気タービン (steam turbine) 内の変化で,水蒸気
は温度 t1 (初温),圧力 P1 (初圧) から圧力 P2 (終圧,背圧 back pressure) まで,等エ
ントロピー膨張し,エンタルピーの変化をタービン仕事 wT に変換する.変化 (2 → 3)
は復水器 (steam condenser) 内の変化で,湿り蒸気 2 が等圧 (P2 )・等温 (T2 = T3 ) 下
で凝縮 (放熱) し飽和水 3 になる.変化 (3 → 4) は給水ポンプ (feed water pump) 内
の変化で,給水ポンプ仕事 wP が加わり,飽和水が圧力 P1 まで等エントロピー圧縮さ
れ圧縮水 4 になる.また変化 (4 → 1) はボイラー (boiler) 内での等圧 (P1 ) 加熱変化
132
第8章
蒸気による熱機関サイクル
で,圧縮水 4 が飽和水 4 ,飽和蒸気 1 ,過熱蒸気 1 の順に変化する.つまりランキ
ンサイクルは,ボイラー (加熱) と復水器 (放熱) 内での 2 つの等圧変化と,蒸気ター
ビン (膨張) と給水ポンプ (圧縮) 内での 2 つの断熱変化の合計 4 つの可逆変化で構成
されている.
作動流体 1 kg あたりのボイラー加熱量 qB ,復水器放熱量 qC ,(蒸気) タービン仕事
wT ,(給水) ポンプ仕事 wP は,エネルギー式 (dq = dh + dwt = dh − v dP ) の関係を
用いると,式 (7.21),(7.38) より,それぞれ次のようになる.
qB = h1 − h4
[J/kg],
qC = h2 − h3
wT = h1 − h2
[J/kg],
wP = h4 − h3
[J/kg],
[J/kg]
(8.1)
したがって,理論仕事 wth ,仕事比 wR [式 (5.1)],理論熱効率 ηth は,それぞれ
wth = wT − wP = q1 − q2 = h1 − h2 − h4 + h3
[J/kg]
(8.2)
w
h1 − h2 − h4 + h3
=
(工業仕事について)
(8.3)
wT
h1 − h2
wth
qC
h2 − h3
ηth =
=1−
=1−
(8.4)
qB
qB
h1 − h4
となる.これらは,次のように P –v 線図,T –s 線図,h–s 線図上の関係でも表される.
wR =
P –v 線図上では,wth = wT − wP = 面積 (12341),wT = 面積 (12P2 P1 1),wP =
面積 (12341)
面積 (34P1 P2 3),wR =
となる.
面積 (12P2 P1 1)
T –s 線図上では,qB = 面積 (44 1 1s1 s3 4),qC = 面積 (23s3 s1 2),wth = 面積 (12344 1 1),
面積 (12344 1 1)
ηth =
となる.
面積 (44 1 1s1 s3 4)
また,h–s 線図上では,次のようにエンタルピー差で表される.
qB = h1 − h4
[J/kg],
qC = h2 − h3
wT = h1 − h2
[J/kg],
wP = h4 − h3
[J/kg],
[J/kg]
wth
wT − wP
h1 − h2 − h4 + h3
=
=
wT
wT
h1 − h2
qC
h2 − h3
ηth = 1 −
=1−
qB
h1 − h4
これらの関係は式 (8.1) ∼ (8.4) の関係とそれぞれ一致する.
wR =
(8.5)
上述のように,ポンプ仕事 wP は P –v 線図上の面積 (34P1 P2 3) で表されるが,水
(液体) は非圧縮性であると考えられるので,v3 v4 とでき,
wP = 面積 (34P1 P2 3) (P1 − P2 ) × v3
[J/kg]
(8.6)
となる.ポンプ仕事 wP は,初圧 P1 があまり高くないときは,タービン仕事 wT や加
熱量 q1 ,放熱量 q2 に比べて小さくなるから,一般に wP を無視することがある.この
とき,式 (8.1) ∼ (8.4) を用いると,次のようになる.
8.2 ランキンサイクル
133
wth wT = h1 − h2
qB = h1 − h4 h1 − h3
[J/kg],
[J/kg]
wT − wP
wth
h1 − h2
1,
ηth =
(8.7)
wT
qB
h1 − h3
ランキンサイクルの理論熱効率 ηth を式 (8.4) から算出した結果を図 8.3 に示す.
wR =
図から初圧 P1 ,初温 t1 が高いほど ηth は大きくなるが,P1 を高めるよりも,t1 を高
める方が効果的であることがわかる.しかし蒸気原動所を構成する機器の耐熱性と耐
圧性からあまり高温・高圧にできない.
図 8.3
ランキンサイクルの理論熱効率
また図 8.2 (b) などから,放熱 (復水器) 温度 t2 が低いほど ηth は高くなることが
わかるが,復水器は周囲の自然水 (海水,湖水,河川水など) で冷却することが多いか
ら,t2 はこれらの温度以下にはできない.
例題 8.1
◦
ランキンサイクルで作動する蒸気原動所で,初圧 5 MPa,初温 500 C の水蒸
気がタービンに供給され,5 kPa まで膨張して復水する.蒸気 1 kg に対する次
の (1) ∼ (6) を求めよ.ただし,給水ポンプ入口,出口の比体積は等しいとせよ.
(1) タービン仕事
(2) ポンプ仕事
(4) 復水器放熱量
(5) 仕事比
解答
(3) ボイラー加熱量
(6) 理論熱効率
◦
付表 (3) から,P1 = 5 MPa,t1 = 500 C なら v1 = 0.068583 m3 /kg,
h1 = 3434.48 kJ/kg,
s1 = 6.9778 kJ/(kg·K) となる.
◦
また,付表 (2) から P2 = 5 kPa なら,t2 = 32.88 C,v2 = 0.00100532,v2 = 28.1863
m /kg,h2 = 137.77,h2 = 2560.77 kJ/kg,s2 = 0.47625,s2 = 8.39391 kJ/(kg·K)
となる.
一方,変化 (1 → 2) は ds = 0 であり,式 (7.11) より,
3
s1 = s2 = 6.9778 = 8.39391 × x2 + 0.47625 × (1 − x2 ) kJ/(kg·K) であるから
x2 = 0.8211 となり,この値を式 (7.10) に代入すると,
h2 = 2560.77 × 0.8211 + 137.77 × (1 − 0.8211) = 2127.30 kJ/kg となる.
134
第8章
蒸気による熱機関サイクル
また復水器出口 (点 3) で飽和水になるから,h3 = h2 = 137.77 kJ/kg となる.
式 (8.5),(8.6) より,h4 = h3 + wP h3 + (P1 − P3 )v3
h4 = 137.77 + (5 × 103 − 5) × 0.00100532 = 142.79 kJ/kg
∴ h1 = 3434.48,
h2 = 2127.30,
h3 = 137.77,
h4 = 142.79 kJ/kg.
(1) 式 (8.1) より,wT = h1 − h2 = 3434.48 − 2127.30 = 1307.18 kJ/kg
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(2) 式 (8.6) より,wP (P1 − P2 )v3 = (5 × 103 − 5) × 0.00100532 = 5.011 kJ/kg
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(3) 式 (8.5) より,qB = h1 − h4 = 3434.48 − 142.79 = 3291.69 kJ/kg
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(4) 式 (8.5) より,qC = h2 − h3 = 2127.30 − 137.77 = 1989.53 kJ/kg
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wT − wP
1307.18 − 5.011
(5) 式 (8.5) より,wR =
=
= 99.62 %
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=
wT
1307.18
qC
1989.53
(6) 式 (8.5) より,ηth = 1 −
=1−
= 39.56 % となる.
qB
3291.69 ===================
研究
8.3
仕事比 wR は,例題 5.2 のカルノーサイクルと比べて,きわめて高い.
再熱サイクル
カルノーサイクルの理論熱効率 ηC [式 (3.10)] から明らかなように,一般に高温源
温度 T1 が高い程,熱効率は高くなる.しかし,構成する機器の耐熱・耐圧性の問題か
ら,実際は高温源温度,つまり初温 T1 をあまり高くできない.それで蒸気をタービン
の膨張の途中から再熱器 (reheater) に導き,そこで等圧 (再熱圧力という) 下で初温程
度まで再 (加) 熱してから,再び別のタービンに導き膨張させると,初温をあまり高
めることなく,理論熱効率を高めることが期待できる.これを再熱サイクル (reheat
cycle) という.
図 8.4 に 1 台の再熱器を用いた 1 段再熱サイクルの構成図を,図 8.5 にその
P –v 線図,T –s 線図,h–s 線図をそれぞれ示す.図でボイラー内での加熱は変化
(4 → 4 → 1 → 1),再熱器内では (a → b),膨張は高圧タービン内が (1 → a),低圧
図 8.4
1 段再熱サイクル
8.3 再熱サイクル
135
索 引
英数先頭
P –v –T 状態面
17
P –V 線図
17
P –v 線図
29
T –S 線図
30
T –s 線図
往復動機関
46, 129
あ 行
亜音速流れ
172
圧縮液
106, 114
圧縮機
89, 94, 155
圧縮性流体
171
圧縮比
70
圧力
10
上昇比
70
比
78
アボガドロ数
49
亜臨界圧
109
位置エネルギー
7, 15, 16
10
1 標準気圧
一般ガス定数
48
一般関係式
180
インジケーター
69
線図
69
運動エネルギー
8, 15
液体熱
114
エクセルギー
41
エネルギー
1
保存則
15
エネルギー
式
20, 22, 166
エリクソンサイクル
84
遠心型
94
エンタルピー
17
エントロピー
24
エントロピー増加の原理
28
228
逆行可能
69
オットーサイクル
音速
温度
171
流れ
5
69
5
給水加熱器
138
131, 132
給水ポンプ
172
境界
2
凝縮器
155
空気標準サイクル
か 行
加圧水型原子炉
外界
化学エネルギー
可逆サイクル
可逆変化
131
2
開放サイクル
66
1
5, 32
4
66
定数
46
冷却型原子炉
131
加速度
7
過程
4
過熱蒸気
107, 119
過熱度
107, 119
過熱量
119
過飽和空気
62
火力発電所
131
乾き圧縮冷凍サイクル
156
乾き空気
60
乾き度
115
換算熱量
25
管摩擦係数
167
機械エネルギー
1, 7
機械効率
87
機械熱力学
1
機関効率
87
ギブズ関数
183
ギブズの関係
183
ギブズの相律
180
逆関係
181
ガス
66
80
空気冷凍サイクル
101
クラペイロン –クラウジウス
の式
118, 188
クラウジウスの積分
40
クラウジウスの不等式
26,
41
系
2
孤立
3
閉じた
2
開いた
2
ゲージ圧 (力)
11
6
Kelvin の絶対温度
1
(原子) 核エネルギー
原子力発電所
131
原子炉
131
顕熱
8, 16
工業仕事
19
工業熱力学
1
合成サイクル
74
行程体積
69
行程容積
97
効率
34, 89
工率
9
国際温度目盛
5
混合加熱器
138
空気予熱器
さ
サイクル
行
5, 32
80, 82
再生サイクル
80, 138
再生器
再熱圧力
135
135
再熱サイクル
82, 135
先細ノズル
172
作動流体
2
サバテサイクル
74
示強状態量
3
軸トルク
10
仕事比
66
仕事率
9
湿度
61
質量
6
絞り
126, 169
湿り計
127
締切比
72
湿り圧縮冷凍サイクル
156
湿り空気
61
湿り蒸気
107, 115
湿り度
115
シャルルの法則
45
終圧
132
周囲
2
自由エネルギー
183
自由エンタルピー
183
重量
7
重力エネルギー
7
重力の加速度
7
周期的関係
181
ジュール –トムソン係数
188
ジュール –トムソン効果
50, 127, 171, 188
ジュールの実験
49
循環過程
5
準静的変化
5
初圧
86, 132
蒸気
45, 66
圧縮冷凍サイクル
154
原動所
131
サイクル
131
タービン
131,
た 行
132
再熱器
表
4
状態式
4
状態図
4
第 2 種の永久機関
4
状態変化
4
106, 107
器
155
潜熱
109
熱
109, 117
正味仕事
87
正味出力
88
正味平均有効圧
初温
88
86, 132
示量状態量
真空度
3
11
水銀気圧計
12
末広ノズル
178
すきま
94
体積
69
のない圧縮
比
94
97
容積
96
図示仕事
87
図示出力
88
図示熱効率
87
図示平均有効圧
88
スターリングサイクル
絶対圧 (力)
11
絶対温度
39
絶対仕事
18
絶対湿度
61
セルシウス度
5
全圧
59
潜熱
8, 16
全微分
総出力仕事
相対湿度
相変化
速度係数
151
6
型
94
効率
97
体膨張率
45, 187
多元冷凍サイクル
161
多段圧縮冷凍サイクル
158
タービン効率
89, 143
タービン式
66
ダルトンの分圧の法則
59
断熱系
27
断熱効率
100
断熱指数
56
断熱変化
5, 55
断熱流
177
中間冷却
82
サイクル
82
中間冷却再熱サイクル
82
抽気
138
超音速流れ
172
超臨界圧
109
定圧比熱
8
定積比熱
8
ディーゼルサイクル
71
定点
5
ディフューザー
172
電気エネルギー
1, 8
等圧サイクル
72
等圧変化
5, 52
等エンタルピー変化
170
等温圧縮率
187
等温効率
100
等温変化
5
動作係数
34, 150
等積サイクル
69
等積変化
5
動力
9
特性式
4
特定フロン
151
体積
16
蒸発
15
24
代替フロン
状態線図
状態量
第 1 種の永久機関
181
66
61
8, 106
174
84
索 引
229
閉じた系
サイクル
66
ド・ラバルノズル
178
比内部エネルギー
比熱
な 行
内燃機関
66
内部エネルギー
15
ナトリウム冷却型原子炉
131
2 流体サイクル
144
熱
1, 5
熱エネルギー
1
熱機関
1, 2, 23, 32, 34,
66
熱降下
173
熱交換器
131
の効率
81, 89
熱効率
34
熱平衡
5
熱容量
9
熱落差
173
熱力学
1
温度
6, 39
的ポテンシャル
182
特性関数
182
の第 0 法則
5
の第 1 法則
15
の第 2 法則
23
熱量
8
燃料消費率
88
ノズル
172
のど
178
は 行
背圧
132, 175
69
発電所
131
バネ仕事
8
比エンタルピー
183
ピストン式
66
比体積
6
ヒートポンプ
32, 34
排気量
230
索 引
149
183
8, 30
ポリトロープ比熱
57
5, 57
ポリトロープ変化
ポンプ効率
143
比
51, 56
標準状態
47, 48
標準の重力加速度
7
表面加熱器
138
開いた系
66
広がり率
179
ファン・デル・ワールスの式
110
不可逆サイクル
5, 32
不可逆性
24
不可逆変化
4
複合サイクル
144
復水器
131, 132
沸騰
107
水型原子炉
131
普遍ガス定数標準状態
48
不飽和空気
62
ブライン
154
フルオロカーボン系冷媒
151
ブレイトンサイクル
77
フロン系冷媒
151
分圧
59
分子量
48
平均有効圧
69
ヘルムホルツ関数
183
ボイラー
131
ボイル –シャルルの法則
46
ボイルの法則
45
放射エネルギー
1
膨張仕事
18
膨張弁
155
飽和圧力
106
飽和液
106, 115
線
108
飽和温度
106
飽和蒸気
107, 115
線
108
ポリトロープ指数
57
ま
行
マクスウェルの関係式
183
摩擦損失
167
マッハ数
172
マノメータ
12
密度
6
密閉サイクル
66
無効エネルギー
41
モリエ線図
128
や
行
有効エネルギー
正味熱効率
ら
41
87
行
ランキンサイクル
132
1, 7
力学的な平衡
5
理想気体
45
の状態式
46
理論仕事
87
理論熱出力
88
理論熱効率
70, 87
理論平均有効圧
88
臨界圧力
108, 175
臨界温度
108
臨界速度
176
臨界点
108
臨界密度
108
冷凍機
1, 34, 149
冷凍効果
149, 155
冷凍サイクル
149
レイノルズ数
167
冷媒
149, 151
連続の式
164
ロシュミット数
49
露点
62
力学的仕事
著 者 略 歴
牧野 州秀(まきの・くにひで)
1943 年生まれ
1966 年 関西大学工学部機械工学科卒業
1968 年 関西大学大学院工学研究科修士課程修了
1975 年 舞鶴工業高等専門学校助教授
1989 年 工学博士
1990 年 舞鶴工業高等専門学校教授
2006 年 舞鶴工業高等専門学校名誉教授
現在に至る
芹澤 昭示(せりざわ・あきみ)
1942 年生まれ
1966 年 京都大学工学部原子核工学科卒
1967 年 京都大学大学院工学研究科修士課程修了
1971 年 京都大学大学院工学研究科博士課程単位取得退学
日本学術振興会奨励研究員
1972 年 京都大学原子エネルギー研究所助手
1974 年 工学博士
1981 年 京都大学工学部助教授
1992 年 京都大学教授
2006 年 京都大学名誉教授
ダイキン環境・空調技術研究所主席調査役
現在に至る
例題で学ぶ工業熱力学
© 牧野州秀・芹澤昭示 2007
2007 年 10 月 5 日 第 1 版第 1 刷発行
2013 年 8 月 30 日 第 1 版第 3 刷発行
【本書の無断転載を禁ず】
著 者 牧野州秀・芹澤昭示
発 行 者 森北博巳
発 行 所 森北出版株式会社
東京都千代田区富士見 1-4-11(〒 102-0071)
電話 03-3265-8341 / FAX 03-3264-8709
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日本書籍出版協会・自然科学書協会 会員
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Printed in Japan / ISBN978-4-627-67321-2