切手・牛牧場-壁画になった野牛

【切手・牛牧場】へようこそ
印南 博之
(日本郵趣協会評議員、農政ジャーナリストの会会員)
人類がはじめて牛との関係を持ったのは、直立
①
猿人の仲間であるジャワ原人とされています。そ
②
れはよく知られるインドネシア民謡「ブンガワン
ソロ」に唄われているソロ川上流で発掘された遺
跡では、カバ、ゾウ、シカと共にスイギュウの骨
が出土され、30∼40万年前の猿人がそれを食べて
いたことが解りました。
ずっと時代が下がって10万年前、ヨーロッパ、
それもドイツの日本人が多く住んでいるデュッセ
ルドルフに近いネアンデルタール(谷)で発見さ
れた旧人(*)と共に、ヨーロッパ野牛の骨があ
「これはすばらしい。昔の人が描いた絵だ。き
りました。ネアンデルタール人はドイツの他にフ
みたちはすごい発見をしたね。」とほめられまし
ランス、イタリア、イスパニアそして中央アジア、
た。神父は、この洞窟の入口近くに古代人(クロ
パレスチナにも住んでいたことが知られていま
マニヨン人;紀元前3∼1万年)が住み、石器や木
す。
の道具を使用して狩をしていたこと、なかにはシ
ャーマン(まじない師)が鳥の仮面をかぶって、
壁に牛の絵が
多くの獲物がとれるように祈っているシーンがあ
1940年のフランスは、北部をドイツ軍が占領し
ることを説明しました。
て、連日英国を空襲しており、南部にペタン元帥
よみがえるバイソン
を主席とする親独ヴィシー政府があり、地中海の
対岸である北アフリカのリビア、エジプトでは英
ラスコーに描かれたのは「西ヨーロッパ野牛」
国とドイツが激しい戦車戦の真っ最中でした。
とされましたが、その牛は1627年(江戸時代の初
そのフランス西南部のドルドーニュ県のラスコ
め頃)ポーランドで絶滅してしまいました。現在
ーで子供たちがお城の抜け穴さがしをやっていま
生存している最古のヨーロッパ野牛(②)は、ポ
した。手作りのランプで、小さな穴をさぐってい
ーランドとロシアおよびその他の国で飼育されて
るうちに広い所へ出てランプをかかげた一人が
います。特にポーランドのヴォヴイエジャ国立公
「ウマが居るぞ!」と叫びました。周囲の壁を照
園は、ケルト文化を育んだ原生林が残っており、
らしてみると、そこには赤茶けた絵の具で、角の
そこには10年前わずか千頭の野牛しか居ませんで
ある牛やウマ、シカなどいろいろな動物が描かれ
したが、各国が育成活動に協力して2万頭をこえ
ていたのです(①)。
るほどに回復しているのは、牛を愛する者として
子供たちは学校の先生へ知らせると、考古学者
父と一緒に洞窟へ入ってみました。
(
*人類の進化の区分:猿人⇒原人⇒旧人⇒新人⇒現代人
ネアンデルタール人は旧人、クロマニヨン人は新人に区
分されています。
(
のブルイユ神父に知らせた方が良いといわれ、神
喜ばしいかぎりです。
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