A型肝炎検査マニュアル

病原体検査マニュアル
平成18年8月
A 型肝炎
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目次
Ⅰ.概説
. 検査に関する一般的注意
1.操作上の一般的注意
2.検査材料の採取
3.検査材料の輸送
4.検査の判定
. 検査方法
1.血清学的診断
1)IgM 抗体の検出
2)疫学調査
2.ウイルス分離と抗原診断
3.遺伝子診断
3− 1
RT-PCR 法
3− 2 ハイブリダイゼーション法
A. マイクロプレート・ハイブリダイゼーション法
B. ドット・ハイブリダイゼーション法
3− 3 リアルタイム PCR 法
Ⅳ. 参考文献
Ⅴ. 試料の分与依頼先
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. 概説
A 型肝炎は A 型肝炎ウイルス(HAV)感染によって引き起こされる予後良好の
急性肝炎で、慢性化することはなく、治癒後に強い免疫が残される。HAV は感染
者の糞便中に多量に排泄され、それが感染源になる。人体へは感染者との接触
感染やウイルスに汚染された飲料水や食物を介して経口的に侵入し、肝へ達す
る。糞口感染で伝播するので、患者の発生は衛生環境に影響されやすい。A 型肝
炎は発展途上国では蔓延しているが、先進国では上下水道等の整備により感染
者は激減している。日本の A 型肝炎の発生は食品の汚染、貝類の生食に関連し、
飲食店を介した集団感染がみられる。発展途上国で感染し帰国後発症する海外
感染例は 1 割を占める。ますます盛んになる国際交流、発展途上国からの輸入
食料品の増加等、A 型肝炎の感染予防対策は社会的に重要な問題として認識され
るようになってきた。抗体保有率が非常に低下したために、施設内の集団発生
や家族内感染への注意も必要である。国産の不活化ワクチンが製造認可され、
1995年から医療現場で使われている。
HAV はピコルナウイルス科のへパトウイルス属に所属する。ウイルスの形態
は被膜を持たない直径 27nm の球形粒子である。ゲノムは 5'端末に VPg 蛋白、
3'端にポリ A 鎖が結合した約 7.5kb のプラス鎖 RNA である。HAV 粒子の構造と
性状、ゲノムの構造と機能、粒子形成等は基本的には他のピコルナウイルスと
共通であるが、成熟粒子に VP4 が検出されないこと、VP1/2A 接合部が切断され
ないまま粒子形成が進行するなどの特性がある。 A 型肝炎ウイルスは発見当初、
ピコルナウイルス科のエンテロウイルス属に分類されていたが、塩基配列相同
性が極めて低いために、ヘパトウイルス属として独立した。HAV の遺伝子型は 7
種類に分けられているが、血清型は 1 種類しかない。
HAV は培養細胞において増殖性であるが、培養細胞を用いた患者糞便検体から
のウイルス分離には長期間かかる。また、継代培養により培養細胞に馴化した
株でも、増殖速度は他のピコルナウイルスに比較して遅く、一般的に細胞変性
効果(CPE)は示さない。生物学的に野生株は肝臓に強い親和性を持っているが、
ほかの肝炎ウイルス同様、ウイルスの増殖により細胞を殺すことはない。肝炎
は宿主免疫反応を介して起きる。
HAV は酸耐性であり、熱、乾燥などにも強い。エーテルなどの脂溶性物質、界
面活性剤、蛋白分解酵素などに耐性であるが、高圧滅菌、UV 照射、ホルマリン
処理、塩素剤処理などで失活する。また、高度精製 HAV は微量の水銀イオンな
どにより失活し、抗原活性も失われる。
潜伏期間は 2〜6 週であり、発熱、倦怠感等に続いて血清トランスアミナーゼ
(ALT または GPT 、AST または GOT)が上昇する。食思不振、嘔吐等の消化器
症状を伴うが、典型的な症例では黄疸、肝腫脹、黒色尿、灰白色便等を認める。
まれに劇症化し死亡する例を除き、1〜2 カ月の経過の後に回復する。
小児の感染は不顕性であることが多いが、感染年齢が上がるにつれ、臨床症
状も肝障害の程度も強くなる。成人の感染は半数以上が黄疸になる。
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. 検査に関する一般的注意
1.操作上の一般的注意
A 型肝炎には不活化ワクチンが 1995 年より実用化されているので、実験従事
者は事前に予防接種を済ませておくこと。
患者の材料を取り扱う時にはクラス II の安全キャビネット内で行い、感染防止
や病原体の拡散に注意を払うこと。
2.検査材料の採取
A 型肝炎の遺伝子検査は HAV が多量に排出される発症の 2 週前から発症後 1 週
間の時期の糞便の採取が望ましい。糞便に比べ、血液中のウイルス量は少ない。
換言すれば、ウイルスの遺伝子検査には発症後出来るだけ早い時期に採取され
た検体が適している。血漿を遺伝子診断に用いる時は抗凝固剤に PCR 反応の妨
げとなるヘパリンは使用してはならない。EDTA かクエン酸を使用する。血清学
的診断のためなら、発症後数ヶ月の患者血清から IgM 抗体の検出ができる。原
因と推定される食材からウイルス遺伝子の情報が得られれば感染源や感染経路
の解明に非常に貴重なものとなるが、A 型肝炎は潜伏期が平均 1 ヶ月と長いので、
一般的に原因食材は調査時には存在しないことが多い。
3.検査材料の輸送
HAV は比較的外界の環境に抵抗性であるが、保管、輸送中の凍結融解は繰り返
さないように留意する。輸送にあたっては冷却を保たれる状態で包装し、被験
者の氏名、年齢、発病日、検体採取日、最近の海外渡航歴、ワクチン歴、被験
者の周囲の発生状況など必要事項を記入のうえ送付する。送付先には予め検体
数、搬入日を連絡しておくこと
4.検査の判定
以下のいずれかの方法によって血清学的診断や病原体診断がなされたもの。
・血清抗体の検出
例、HAV 特異的 IgM 抗体が陽性のもの
・病原体の遺伝子の検出
例、RT-PCR 法による HAV 遺伝子の検出
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. 検査方法
1.血清学的診断
1) IgM 抗体の検出
一般の検査では A 型肝炎の診断は血中の IgM 型 HAV 抗体を検出する方法がとら
れている。IgM 型抗体は発症から約 1 カ月後にピークに達し、3〜6 カ月後には
陰性となる。重症例ほど IgM 型抗体価は高く、発症 6 カ月以降にも検出される
例がある。また、治癒が遷延化する例では IgM 型抗体持続期間も長い。
検査診断目的には体外診断薬用の市販キットが普及している。操作および判
定は各キットの取り扱い説明書にしたがって行う。
2) 疫学調査
IgG 型と IgA 型抗体の測定は、特殊な血清疫学調査以外使われていない。IgA 型
抗体は感染後 1〜2 年間、IgG 型抗体はさらに長期間持続するので、一般的な血
清疫学調査、γ-グロブリン(ISG )やワクチン接種対象者の選択などには、全
クラスの HAV 抗体を測定する競合抑制 ELISA 等が用いられる。なお、検出され
る HAV 抗体はウイルス粒子と結合する防御抗体であり、過去の感染またはワク
チン免疫を意味する。
2.ウイルス分離と抗原診断
培養細胞によるウイルス分離には長期間が必要なため、診断目的には適さな
い。興味のある研究者は文献(戸塚敦子、ウイルス実験プロトコール、1995)
を参照されたい。発症ごく初期の患者糞便中には、ELISAで測定可能な量(1ml
当たり 108 粒子以上)のHAVが含まれることもあるが、感度が低いので抗原診断
法も一般的な検査法ではない。
3.遺伝子診断
微量の HAVRNA の検出が可能である RT-PCR 法が、多くの研究室に普及してい
る。PCR 産物の確認はハイブリダイゼーション法か塩基配列を解析する。VP1-2A
領域を標的にした RT-PCR 法で増幅した産物の遺伝子解析を行えば、感染経路の
推定などに役立つ。5’非翻訳領域を標的にしたリアルタイム PCR 法も検査に使わ
れている。
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RT-PCR 法
<操作上の一般的注意>
PCR を行う際には手袋をし、チューブの蓋を開ける時にはその前に軽く遠心し
た後、オープナーを用いること。また、RT-PCR 反応液の調製をする部屋と PCR
産物の電気泳動の部屋を分ける。それができない時にはそれぞれのクリーンベ
ンチで行う。クリーンベンチで行う際にファンは止めて行う。コンタミ防止と
RNase の混入の防止に細心の注意を払うこと。
1)器具
サーマルサイクラー、超遠心器、ホモジナイザーあるいはストマッカー、ヘ
ラ、メス、ハサミ、ピンセット、マイクロ冷却遠心器(12,000rpm)、Vortex、
電気泳動装置、UV 照射写真撮影装置、マイクロピペット(2、20、200、1000μ
l)、チューブ(0.5ml、0.2ml、1.5ml)、15ml および 50ml 遠心管、濾紙。
2)試薬
核酸フリー精製水 、EDTA・2NA(エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム)、電
気泳動用アガロース ME(岩井科学、250g 入り Cat. No. 50013R)、エチジュウ
ムブロマイド、
Random primer hexamer (Amersham Pharmacia,Cat.27-2166-01)
Super Script Ⅱ(GibcoBRL, Cat. No. 18064-014)
100mM DTT ( Super Script Ⅱに添付)
QIA Viral RNA Mini Kit (Qiagen Cat.No.52904)
DNaseⅠ(Takara,Cat. No.2 215A)
Ribonuclease Inhibitor (Takara, Cat. 2310A)
Takara EX Taq (Takara、Cat. No. No.RR001A)
50 倍濃度 TAE buffer [Tris 242g、氷酢酸 57.1ml、0.5M EDTA・2NA (pH8.0)
100ml を蒸留水で 1,000 ml とする]。
Ethanol、ショ糖、ポリエチレングリコール 6000、NaCl、KCl、リン酸水素二ナ
トリウム、リン酸二水素カリウム。
3)材料の前処理
血清、血漿はそのまま RNA の抽出に使用できる。糞便は10%乳剤をつくり、
RNA 抽出材料とする。貝類等の食材も 10%乳剤が RNA 抽出の出発材料である。
・糞便抽出液の作成
①15 mL または 50 mL の遠心チューブに糞便の 9 倍量の PBS と1倍量の
クロロフォルムをいれておく。
② 糞便を遠心チューブにいれ、10%糞便懸濁液を作る。
③ 20 分激しく攪拌する。
④ 3000 rpm で 20 分遠心する。
⑤ 上静を新しいチューブに移し、10%糞便乳剤とする。
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・食品の処理
本項では食品として最も重要視されている貝類の方法について記す。他の食
品においても基本的にはこの方法に準じて行える。超遠心器のローターとの関
係もあるが、貝の中腸腺が1gあるいはそれ以上の時は1個または2個を1件として
行い、1ロットに付き3検体から10検体(中腸腺として合計12gから24g程度を目
途とする)を行う。シジミ、アサリ等の中腸腺が1g以下の貝では中腸線1gから
1.5gを 1件検体として、3検体から5検体の検査を行う。3通りの方法を述べる。
(1) 超遠心法
① 殻付き貝類はヘラ、メス等で貝柱を切り、殻を開く。
② 貝の外套膜を取り、次いで中腸腺の周りに付いている脂質部分をメス、ハ
サミ等で可能な限り取り除き、中腸腺を取り出す。中腸腺を摘出する際には
できる限り周りの白い組織(脂肪)を取り除くこと。特にリアルタイムPCRを行
うときには完全に取り除くこと。
③ ホモジナイザーまたはサンプリングバッグに中腸腺をいれ、次いで10倍量
PBS(-)を加え粉砕する。貝類の乳剤は20%以上の濃度にしないこと。20%以上
にすると回収率が悪くなる。
④ 粉砕した試料を遠心管に移す。
↓10,000 rpm 20 分間冷却遠心し、上清を新しい試験管に取る。
⑤ 超遠心用遠心管に30%ショ糖溶液を遠心管の10%程度入れ、それに④の遠心
上清を静かに重層させる(ショ糖層を壊さないように初めは特に注意して少
量ずつ入れる)
↓35,000 rpm 180 分間 あるいは40,000 rpm 120 分間 冷却遠心する。
⑥ アスピレーター、注射器等で液層を吸引し、沈渣のみとする。
⑦ 遠心管の管壁をPBS(-)で軽く1回洗い、管壁の周りの水分を滅菌した濾紙で
吸い取る。
⑧ 沈渣に200μlのDDW(滅菌後、0.22μmフィルターで濾過したもの)を加え、
浮遊させる。これをウイルスRNAの抽出に用いる。
(浮遊液に不純物が多いときには10,000 rpm 20 分間の遠心を行い、その上清
をRNA抽出に用いる)
(2) ポリエチレングリコールによる濃縮法(遠心器を使えない時)
① 超遠心法④の遠心上清にポリエチレングリコール 6,000を8%、NaClを
2.1g/100mlになるように加え、軽く撹拌し4℃の冷蔵庫に一晩置く、または室温
で2時間撹拌する。
↓5,000~12,000 rpm. 20分間、冷却遠心する。
② 上清をアスピレーター、注射器等で吸引し、沈渣のみとし、管壁の周りの
水分を濾紙(滅菌したもの)で吸い取る。さらにPBS(-)で管壁を軽く2回洗い、
その後濾紙で水分を完全に取る。
③ 沈渣を200μlのDDWに浮遊させる。これをウイルスRNAの抽出に用いる。浮
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遊液に不純物が多い場合には10,000 rpm 20 分間の冷却遠心を行い、その上清
をRNA抽出に用いる。
(3) 凍結法
① 超遠心法②の中腸腺を内容液が漏れないように取り出し、それを大きめの
遠心管に入れ、ガラス棒等で中腸腺を潰した後、1 度凍結融解する(-40℃以下
で凍結させ、融解するときには 40℃程度のお湯ですばやく融解する)。
② 10,000 rpm で 20 分間冷却遠心し、上層の液層を新しいチューブに取る。
③ 得られた液を RNA 抽出に用いる。但し、後述する QIAamp Viral RNA Mini キ
ットによる RNA の抽出では 560μl まで、それ以上の量の時には 2 つに分けて
行うか、PBS で6倍希釈した後、前項のポリエチレングリコールあるいは超遠
心器による濃縮を行い、200μl の DDW に再浮遊させ、それを RNA 抽出に用い
る。
4)RNA 抽出
QIAamp Viral RNA Mini キット(QIAGEN, Cat.No. 52904)を使用する RNA 抽出
法を述べる。これはスピンカラムを使用する方法で、糞便、血清,食材からの
HAVRNA 抽出法として、簡便に利用できる。このキットは RNA 抽出に Carrier RNA
が含まれており、RNA 抽出効率は SV Total RNA isolation system より 10 倍程
度良い。
(1)使用前に行う試薬の調整
サンプルを室温(15~20℃)に戻す。
Buffer AW1 は 96~100%エタノールを 25ml 加える。Buffer AW2 は 96~100%エ
タノール 30ml を加える。Carrier RNA(凍結乾燥品)のチューブに Buffer AVL 1ml
添加し、Carrier RNA を溶解させ、Buffer AVL に全量を添加する。添加した Buffer
AVL/Carrier RNA は室温で 2 週間、2~8℃で 6 ヶ月間安定。Buffer AVL/Carrier
RNA 中に沈殿物がある場合には、5 分間以内の加熱(80℃)により溶解し、6 回以
上の加熱は行わない。使用前に室温に戻す。
(2)操作法
以下の操作は室温で行う。
① 1.5ml チューブに Buffer AVL/Carrier RNA 560μl を入れる。
② サンプル 140μl を①のチューブに加える (560μl まで増量することも可
能である。詳細はキットの添付マニュアル参照)。サンプルと Buffer を充分
混合するため 15 秒間 Vortex にかけ、室温(15~25℃)に 10 分間置く。チュー
ブをスピンダウンする。
③ エタノール(96~100%)560μl をチューブに加え、15 秒間 Vortex をかけた後、
チューブをスピンダウンする。液が混濁した時には 9,000Xg(10,000rpm)5 分間
遠心する(リアルタイム PCR を行うときにはこの遠心を行ったほうが良い)。
④ ③の液 630μl を QIAamp スピンカラム(2ml コレクションチューブの中にス
ピンカラムが装着されている。)に注入し、蓋を閉め、6,000Xg(8,100 rpm)、1
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分間遠心する。QIAamp スピンカラムを新しい 2ml のチューブに移し、残りの
③の液 630μl を入れ、同様に遠心し、全ての液が無くなるまで行う(RNA 抽出
液が 140μl の時には 2 回で終わる)。
⑤
QIAamp スピンカラムを開け、Buffer AW1 500μl を入れる。
⑥
蓋を閉め、6,000Xg(8,100 rpm)、1 分間遠心する。QIAamp スピンカラムを
新しいコレクション 2ml のチューブに移し、濾液の入っているコレクションチ
ューブは捨てる。
⑦
QIAamp スピンカラムに Buffer AW2 500μl を加え、20,000Xg(14,000
rpm)で 3 分間遠心する。Buffer AW2 の濾液等が接触した時には⑧を行う(こ
のような事は通常起きない)。
⑧ QIAamp スピンカラムを新しい 2ml のコレクションチューブに移し、濾液の
入っているコレクションチューブは捨てる。フルスピードで 1 分間遠心する
(必ずしも必要でない)。
⑨ QIAamp スピンカラムを新しい蓋つき 1.5ml のチューブに移し、濾液の入っ
ているコレクションチューブは捨てる。QIAamp スピンカラムの蓋を開け、室
温に戻した Buffer AVE 30μl を加え、蓋を閉めて 1 分間置いた後、
6,000Xg(8,100 rpm)で 1 分間遠心する。
⑩ この濾液が抽出 RNA であり、RNA は-20℃以下で 1 年間は安定。
5) DNase 処理
貝の中腸腺には様々な DNA が含まれており、しばしば PCR で非特異バンドが
出現するので、それらを抑制するため DNase 処理を行う。この時点までに DNA
の混入が起きた時でも、それらを消化することができる。従って、キットに DNase
処理が含まれていない時にはこの操作を行うことが望ましい。注意として DNase
Ⅰを使用するマイクロピペットは専用のものを用い、可能であればオートクレ
イブができるものが良い。検査終了後使用した DNase の含まれている液、チュ
ーブ等は全てオートクレイブにかける。
① 表1に示したように DNase 処理混合液の調製を行う。
表 1.
Super Script RT Ⅱ buffer を用いる時
反応液量
15μl 系
30μl 系
Sample RNA
12.0μl
24μl
注
5X First-Strand buffer
1.5μl
3.0μl
DDW
0.5μl
1.0μl
DNase Ⅰ(1U/μl)
1.0μl
2.0μl
注)使用する Reverse Transcriptase の buffer を用いる。
②
③
④
混合液調製後、37℃に 30 分間置く。
次いで 75℃に 5 分間置く。
直ちに on ice(または 4℃)する。これが DNase 処理済み抽出 RNA である。
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6)
①
RT 反応{ Super Script RT Ⅱ(GibcoBRL) を用いる時}
表 2 の RT 反応調製液を作製する。
表 2.
RT 反応液調製液( Super Script RT Ⅱを用いる時)
反応液量
DNase 処理 RNA
5X First-Strand Buffer
10mM dNTPs
Random Primer(1.0μg)
RNAasin(33unit/μl)
100m M DTT#
Super Script RTⅡ(200u/μl)
DDW
注)Random
15μl 系
7.5μl
2.25μl
0.75μl
0.375μl
0.5μl
0.75μl
0.75μl
2.125μl
20μl 系
10.0μl
3.0μl
1.0μl
0.5μl
0.67μl
1.0μl
1.0μl
2.83μl
30μl
15.0μl
4.5μl
1.5μl
0.75μl
1.0μl
1.5μl
1.5μl
4.25μl
50μl 系
30.0μl
7.0μl
2.5μl
1.25μl
1.67μl
2.5μl
2.5μl
2.58μl
Primer の代わりに HAV では HAV-3273 プライマーを用いても良い。
② 反応は 42℃で 30 分から 2 時間行う(通常 1 時間)。
③ 次いで 99℃で 5 分間加熱し、on ice(または 4℃)する。
7)1st PCR
①1st PCR の混合液を作製する(表 3)。
表 3.
1st PCR 混合液
1.DDW
33.75μl
2.10X Ex TaqTM buffer
5.0μl
3. dNTP(2.5mM)
4.0μl
4. HAV+2799 primer(25μM)注) 1.0μl
5. HAV-3273 primer(25μM)
1.0μl
6. cDNA(Templete)
5.0μl
7. EX Taq(5unit/μl)
0.25μl
Total
50.0μl
注)
プライマーの塩基配列は図 2 を参照。
② PCR 反応
増幅は 94℃ 3 分を 1 サイクル、 94℃ 1 分、 50℃ 1分、 72℃ 2 分を
40 サイクル、 72℃ 15 分を 1 サイクルで行う。増幅条件はプライマー、サーマ
ルサイクラーによって異なるので、それぞれ最適な条件で行うと良い。
③ 電気泳動
PCR 産物 8μl と 5 倍 Loading buffer 2μl を混合し、1.5%アガロースゲル
を用いて泳動する。泳動 buffer は TAE を使用する。
④ アガロースゲル染色
泳動後ゲルをエチジュウムブロマイド染色液(TAE 溶液 100ml にエチジュウ
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ムブロマイド 10mg/ml のものを 10μl 加えた溶液)に 20 分間入れておく。この
時に緩やかに揺すると良い。
⑤ 写真撮影、バンドの確認
染色したゲルは UV 照射で写真撮影し、バンドの確認を行う。
8) Nested PCR法
食品の時にはウイルス量が少ないので、1st PCRで陰性の時にはNested PCR
を行う。但しNested PCRを行う時にはコンタミが起こる危険性が有るので注意
して実施する。
① Nested PCRの調製
Nested PCRの混合液(表4)を作製する。Nested PCRではHAV+2907/-3162プ
ライマーを用いる。
表4
Nested PCRの混合液
1.DDW
2.10X Ex TaqTM buffer
3.dNTP(2.5mM)
4. HAV+2907 Primer (25μM)
5. HAV-3162 Primer (25μM)
6. 1st PCR産物
7. EX Taq
Total
36.75μl
5.0 μl
4.0 μl
1.0 μl
1.0 μl
2.0 μl
0.25μl
50.0 μl
②
PCR反応、電気泳動
増幅は1st PCR と同様に行うが、サイクル数は 35 とする。
Nested PCR 産物の電気泳動、UV 照射で写真撮影、バンドの確認は1st PCR
と同様に行う。
9) PCR結果の判定
① PCR法ではRNA抽出のコントロールとして入れたHAVのPCRで目的とするバン
ドが認められること
② 検査材料の代わりにDDWを入れた陰性コントロールでバンドが見られない
こと(遺伝子の混入が無い)。
③ 目的とする大きさのPCR増幅産物であればPCR陽性とする。HAV+2799/-3273
は498bp、HAV+2907-3162は280bpである。
④ PCR陽性と判定された時には確認試験としてドットあるいはマイクロプレ
ート・ハイブリダイゼーションで確認する。または遺伝子配列を決定し、既知
のHAVと比較して同一のクラスターのものが存在すればHAVとして良い。
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Ⅲ-3− 2
ハイブリダイゼーション法
A. マイクロプレート・ハイブリダイゼーション法
ここではPCR産物の確認試験としてのマイクロプレート・ハイブリダイゼーシ
ョン法について記す。この方法はマイクロプレート上でハイブリダイゼーショ
ンを行うもので、洗いが簡単であり、反応は通常の酵素抗体法と同一である。
42℃でハイブリブリダイゼーションを行うと、80%以上の相同性のときに陽性と
なる。ハイブリダイゼーションの温度を上げるとさらにその感度は高まる。
1) 器具
恒温器、ヒートブロック、電気泳動装置、UV 照射写真撮影装置、マイクロプ
レートリーダー、UV 防御メガネ、サーマルサイクラー、マイクロ冷却遠心器
(15,000rpm)、ウォーターバス、ヘラ、ハサミ、メス、マイクロピペット(2、
20、200、1000μl)、マイクロプレート(NUNC-IMMUNO PLATE、 Cat.No.442404)。
2)
試薬
MinElute Gel Extraction Kit (QIAGEN Cat.No.28604)、フナゲルチィップ、
ホルムアミド、Tween20、サケ精子 DNA、マクロプレートシール、ペーパータオ
ル、ストレプトアビジン標識ペルオキシダーゼ(BIOSOURCE,Cat. #SNN1004)、リ
ン 酸 水 素 二 ナ ト リ ウ ム 、 ク エ ン 酸 、 30% 過 酸 化 水 素 、 硫 酸 、 T3,3,5,5 ’
-Tetramethylbenzidine(TMB)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ウシ血清アルブミ
ン(SIGMA,Cat No.A-2153)、3M 酢酸ナトリウム(pH5.0)、100%イソプロパノール、
PBST(PBS(-)+0.5%Tween20)。
3)ゲルからのDNA抽出法 (MinElute Gel Extraction KitによるPCR産物の精製)
マイクロ遠心機を利用する方法を示す。
このプロトコールは、TAE buffer または TBE buffer の標準的なアガロース
ゲル、あるいは低温融解アガロースゲルから、70bp から 4kb の DNA フラグメン
トを高い最終濃度で抽出、精製することができる。1 個のスピンカラムにつき、
最大 400mg のアガロース処理が可能である。Buffer QG は pH7.5 以下の時、黄色
になる。すべての遠心操作は、一般的な卓上遠心機で≧10,000Xg(~13,000rpm)
で行う。
(1) 使用前に行う試薬の調整
① 使用前に Buffer PE にエタノール(96~100%)を添加する(添加容量は試薬
ボトルのラベルを参照)。
② 3M 酢酸ナトリウム溶液(pH5.0)が必要な場合がある。
(2) 操作法
① 清潔で刃の鋭いメスあるいはフナコシのフナゲルチィップでアガロースゲ
ルから DNA フラグメントを切り取る。余分なゲルを取り除いて、ゲルスライ
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スのサイズを最小とする。
② 1.5ml のチューブにゲルスライスを測り入れる。サンプルゲル(100mg=100
μl とする)に対して 3 倍容量の Buffer QG を添加する。
③ 50℃で 10 分間(ゲルが完全に溶解するまで)インキュベートする。ゲルの溶
解を助けるため、インキュベーション中、2~3 分に 1 度チューブを Vortex
にかけて溶液を混合する。
注:アガロースゲルを完全に溶解する。2%以上のゲルを用いる場合は、(2)
でゲルに対して 6 倍量の Buffer GG を添加し、インキュベーション時間を
長くする。
④ ゲルスライスが完全に溶解後、溶液の色が黄色であることを確認する(アガ
ロース溶解前の Buffer QG の色とほぼ同じ)。
注:溶液の色がオレンジ色あるいは紫色の場合は、3M の酢酸ナトリウム
(pH5.0)を 10μl ずつ添加混合し、溶液の色が黄色になるようにする。DNA の
メンブレンへの吸着は、pH7.5 以下においてのみ効率的に行われるので、pH
指示薬により pH7.5 以下で黄色、それより高い pH ではオレンジまたは紫色を
呈する Buffer QG は、DNA 結合に最適な pH を決定するのに便利である。
⑤ ゲルと同容量のイソプロパノールをサンプル溶液に添加し、チューブを 10
回上下混合する。
例えば、100mg のアガロースゲルスライスには、100μl のイソプロパノール
を添加する。この時点でサンプルを遠心しない。
⑥ ラックにセットした 2ml コレクションチューブに MinElute カラムを乗せる。
⑦ サンプルを MinElute カラムにアプライし、DNA をカラムに結合して、1 分
間遠心する。最大の回収率を得るために、サンプル液は残さず全てカラムに
添加する。カラムへ 1 度に添加可能な最大容量は 800μl である。800μl よ
りサンプル量が多い場合には、数回に分けて添加、遠心操作を行う。
⑧ フロースルー液は捨て、MinElute カラムを同じコレクションチューブに再
度乗せる。
⑨ 500μl の Buffer QG をスピンカラムに添加し、1 分間遠心する。
⑩ フロースルー液は捨て、Min Elute カラムを同じコレクションチューブに再
度乗せる。
⑪ 洗浄のため、750μl の Buffer PE を MinElute カラムに添加し、1 分間遠心
する。
⑫ フロースルー液を捨てた後、MinElute カラムをさらに 1 分間≧10,000Xg(~
13,000rpm)で遠心する。
⑬ 新しい 1.5ml のマイクロ遠心チューブに MinElute カラムを乗せる。
⑭ DNA の溶出を行うために、10〜30μl の Buffer EB(10mM Tris-Cl、pH8.5)
あるいは DDW をメンブレン表面の中央に添加し、1 分間カラムを放置後、1
分間遠心する。これが抽出 DNA である。
4)
ハイブリダイゼーション
① 抽出DNAを 0.5mlのチューブに取り、1.5M NaCl buffer#1 でバンドの濃度
を見て適宜希釈する(DNA量は 200ng/ml程度の濃度とする)。なお通常のPCRでバ
- 13 -
ンドがしっかりとみられた増幅DNA (PCR産物 8μlを泳動)は 5 倍から 20 倍希
釈して用いる。
↓98℃、5 分間加熱処理、直ちにon iceする。
② マイクロトレイに固定化液#2を 90μl入れ、それに加熱処理したDNAを 10μl
ずつ1検体当たり1ウエルに入れる。
#1:3 倍濃度 1.5M NaCl buffer:4.5M NaCl、30mM リン酸 2 ナトリウム、
30mM EDTA、pH7.0
#2:固定化液:3 倍濃度 1.5M NaCl buffer 3.0ml、DDW 6.0ml
1
N
C
2
P
C
3
検
体
4
検
体
5
検
体
6
検
体
7
B
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
C
○
○
○
○
○
○
○
A
Control
HAV-prob +3129
図 1.
トレイのレイアウト
↓プレートにシールし、37 ℃恒温漕に重しをして沈めて 2 時間以上置く。
③ PBS-T でプレートを 3 回洗浄する。
④ 表 5 に示したようにプローブの調製を行い、98 ℃、5 分間加熱処理、直ち
に on ice する。
表 5.
プローブの調製(1 検体当たり)
プローブコントロー
ル
100pmol/μl probe
TE 1μl
100μg/mlサケ精子DNA注
5μl
プローブ
1μl
5μl
1
3 倍 1.5M NaCl buffer
3.3μl
3.3μl
DDW
0.7μl
0.7μl
注1
サケDNA:DNA量 10mg/mlのものをTEで 100μg/mlに希釈したもの
⑤ 表 6.に示したようにハイブリ液を調整し、④のプローブ・サケ精子 DNA 混
合液と合わせる。
- 14 -
表 6. ハイブリ液(1 検体当たり)注
3 倍 1.5M NaCl buffer
30μl
ホルムアミド
50μl
10% Tween20
1μl
DW
9μl
注:
ハイブリ液は使用前に氷冷しておく。
⑥ 表 6 で作製した混合液 10μl に表 7 で作成したハイブリ液 90μl を加え,100
μl とし、それを各ウエルに 100μl ずつ入れる。
マイクロプレートにシールをし、45 ℃ 恒温漕に重しをして沈
め、6 時間以上、あるいは 1 夜置く。
⑦ シールのプレート側を内側にして巻き込むように剥がす(マイクロプレー
ト内の DNA を撒き散らさないように包み込む)。45 ℃に温めておいた PBS-T
で 3 回洗浄する。プレート洗浄時にはプレートをペーパータオル等で包み、そ
の後叩き水分を完全に除くと同時に DNA を周りに撒き散らさないように細心
の注意を払う。使用したペーパータオル、洗浄液等は 1000ppm 濃度の次亜塩素
酸ソーダに直ちに漬ける。
ストレプトアビジン標識ペルオキシダーゼ(1%BSA+PBS-T で適宜希釈したもの
を全てのウェルに 100μl 入れる(ストレプトアビジン標識ペルオキシダーゼ
入れた容器は使用後廃棄するか高圧滅菌し酵素を不活化する)。
↓室温1時間置く(弱く振動させるとよい)。
⑧ プレートを PBS-T で 5 回洗浄する。
⑨ 全てのウエルに発色液#3を 100μl入れる。
#3:TMB 1mg、 DMSO 1ml、phosphate-citrate buffer 9ml (0.2M dibasic sodium
phosphate 25.7ml、 0.1M citric acid 24.3ml、 精製水 50ml、 pH5.0)を作
製し、30% H2O2 2μlを使用直前に入れる。
↓室温 15 分間(プレートは遮光しておく)。
⑩ 停止液(4N H2SO4)を 50μl入れる。
⑪ 450nm で吸光度を測定する。
⑫ 判定: コントロールに比べ OD 値が 2 倍以上、かつ 0.2 以上の差が認めら
れた時に陽性とする。
B. ドット・ハイブリダイゼーションインによる A 型肝炎ウイルス(HAV)遺伝子
確認検査
この方法はメンブレンに DNA を吸着させて行う方法である。ウイルスでは一
般的にこの方法で行われている。
1)器具
恒温水槽、ハイブリダイゼーションインキュベータ、トランスイルミネータ、
ヒートシーラ、ポジティブチャージナイロンメンブレン:Nylon menbranes,
- 15 -
positively charged ベーリンガー Cat.No.1209272、ハイブリダイゼーション
バッグ:ニッポンジーン,Cat.No.533-19171、タッパー:井内 Code.No.45-068
-022)
2)試薬
NaCl、濃塩酸、DW、SDS、マレイン酸、MgCl2、
20×SSC:NaCl 100g を 900ml の蒸留水に溶解(68℃)し、濃塩酸で pH7.2 に調整
後、蒸留水で,1000ml とする。
10% SDS:SDS 100g を 900ml の蒸留水に溶解(68℃)し、濃塩酸で pH7.2 に調整
後、蒸留水を加え全量を 1000ml とする。
N-Lauroylsarcosine:SIGMA, Cat.No.L-5777
ホルムアミド:Wako, Cat.No.068-00426
Blocking reagent:ロシュ・ダイアグノスティックス Cat.No.1096176
NBT/BCIP:ロシュ・ダイアグノスティックス Cat.No.1681451
Buffer 1:0.1M マレイン酸;0.15MNaCl(pH7.5,20℃)pH の調整は pH6.5 くら
いまで固形 NaOH(8.5g)で、それ以降は 1N NaOH を加えて調整する。
洗浄 Buffer:Buffer 1 に 0.3%となるように Tween 20 を加える。
ブロッキング溶液:Buffer 1 で Blocking reagent を 1%とする。
検出溶液:100mM Tris-HCl;100mM NaCl(pH9.5,20℃)10mlに 2.5M MgCl2を 200
μl加える(最終濃度 50mM MgCl2)。
Streptavidin Alkaline Phosphatase:Promega, Cat.No.V5591
ビオチン標識プローブ:HAV-probe+3129。
3)操作法
① アガロースゲル電気泳動で HAV 陽性バンドが認められた部分から DNA を抽
出後、100℃で 5 分間熱変成し、その 1μl をナイロンメンブレンにスポット
し風乾後する(上記ゲルから DNA 抽出を参照)。
② トランスイルミネータ上でスポットした面を下にして 3 分間 UV 照射する。
それをハイブリダイゼーションする。
③ 溶液量は、約 20cm2のメンブレンで計算してあるので、メンブレンの面積に
よって以後適宜調整する。
④
ハイブリ液(表 7)5ml にビオチン標識プローブを 50μl (200ng/ml) 加え
プローブ溶液を調整し、沸騰水中で 5 分間(98℃、5 分間)、加熱しプローブ溶
液を調整する。
適量のプローブ溶液(2~5ml)をメンブレンの入っているバックに加え、バッ
グ中から気泡を追い出した後ヒートシーラでシールする。
⑤ 42℃の恒温水槽中で 6 時間~一夜ハイブリダイゼーションする。
- 16 -
表 7. ハイブリダイゼーション溶液
Stock solution
Final
concentration
20×SSC
5×
10% Blocking reagent
2%
10%-Lauroylsarcosine
0.1%
10% SDS
0.02%
Formamide
50%
DW
0
Required volume for 50ml
12.5ml
10ml
0.5ml
0.1ml
25ml
2ml
⑥ バッグからメンブレンを取り出し、タッパーに移し 0.1% SDS を含む 2×SSC
(表 8 参照)20ml で 5 分間、室温で 2 回洗浄する。その後、0.1% SDS を含む
0.1×SSC(表 8 参照)20ml で 15 分間、42℃で 2 回洗浄する。
注:使用したプローブ溶液は、数回使用できるので、捨てずに取っておく。使
用前には、沸騰水中で 5~10 分間熱変成する。 0.1% SDS を含む 0.1×SSC
は、あらかじめハイブリダイゼーション温度と同じ温度に温めておく。
表 8. 洗浄液の組成
Stock
2×SSC,0.1% SDS
solution
20×SSC
50ml
10% SDS
5ml
DW
445ml
Total
500ml
0.1×SSC,0.1% SDS
2.5ml
5ml
492.5ml
500ml
⑦
メンブレンを洗浄 Buffer 1 の 20ml に 10% Tween 20 を 600μl 加えた Buffer
で 1 分間洗浄する。
⑧ ブロッキング溶液 20ml で 30 分間、室温でインキュベートする。
⑨ ブロッキング溶液 200ml で Streptavidin Alkaline Phosphatase を 5000 倍
希釈した溶液 20ml にメンブレンを浸漬し、30 分間室温でインキュベートする。
⑩ 洗浄 Buffer 25ml で 15 分間室温 2 回洗浄する。
⑪ 検出溶液 20ml で 2 分間、平衡化のためインキュベートする。
⑫ 検出溶液 5ml に NBT/BCIP stock 溶液 100μl を加え、発色基質溶液を調整
する。
加える stock 溶液は 50μl でも行える。
⑬ 検出溶液で平衡化したメンブレンをハイブリバッグに移し、発色気質溶液
を 3~5ml 加え、気泡を追い出した後ヒートシーラでシールする。発色するま
で、静置する。発色中は、振とうしたり攪拌したりしない
⑭ 発色が確認できたら、メンブレンを TE Buffer 30~50ml で 5 分間洗浄して、
- 17 -
反応を停止させる
4)判定
紫色にスポットが染色されたものを陽性とする。この際には必ずゲルの陰性コ
ントロールと比較して行う。
- 18 -
Ⅲ− 3− 3
A型肝炎ウイルスのリアルタイムPCR法
cDNA の調整は前出の RT-PCR 法による。ここでは Random primer で cDNA を作
製したものを用いる。
1) 反応液の調整
反応液の調製は表 9 に示した。但しこの方法は ABI PRISM7700 あるいは 7000
でのものである。機種が異なる時にはそれぞれの機種での最適な条件に合わせ
る。
ウイルス陽性コントロール(107から 100 )および検体は各 2 ウエルを用いる。
表 9. 反応液の調製
――――――――――――――――――――――
DDW
16.6μl
TaqMan Universal Master MIX(ABI)
25.0μl
100pmol/μl プライマーHAV+449* 0.2μl
100pmol/μl プライマーHAV-557
0.2μl
4pmol/μl プローブ HAV+482-P-FAM 3.00μl
cDNA
5.00μl
---------------------------------------------計
50 μl
――――――――――――――――――――――
*:プライマー、プローブの配列は図2参照
2)PCR 反応
PCR 反応は以下に示した条件で行う。
50℃ 2 分間
95℃ 10 分間
95℃ 15 秒間
56℃ 2 分間
50 回
3) ABIPRISM7700(ABI)で蛍光強度測定
蛍光強度測定し、標的領域をプラスミドに組み込んだDNAを 107から 100コピー
に希釈した標準サンプルによる検量線を作成し、サンプルの初期濃度(コピー
数)を算出しする。
4)判定
サンプルのコピー数が2ウエル共に 10 コピー以上の時に陽性とする。また、
1ウエルのみ行ったときには再度行い,2回共に 10 コピー以上の時に陽性とす
る。
判断に困難を来したときには再度行い判定する。
- 19 -
- 20 -
Ⅳ. 参考文献
1.
Fiore AE: Hepatitis A transmitted by food: Clinical Infectious Disease
38: 705-715, 2004.
2.
米山徹夫:A 型肝炎— 我が国の最新の発生動向を中心に— .
ス 32: 149-155. 2004.
3.
西尾治:糞便及び食品中の A 型肝炎ウイルスの検査法について. 食監発第
0816001 号、平成 14 年 8 月 16 日.
4.
戸塚敦子:A 型肝炎ウイルス RNA の RT-PCR 法による検出法. 肝炎ウイルス
検査法マニュアル、平成 14 年 7 月.
5.
Feinstone S. Gust ID.: Hepatitis A virus. In Textbook of Clinical Virology, 2nd
edition.eds. Richman DD. Whitley RJ. Hayden FG. ASM press, Washington, DC,
2002, pp.1019-1039.
6.
Purcell RH. Emerson SU.: Hepatitis A virus pathogenesis and Attenuation in
Textbook of Molecular Biology of Picornaviruses, eds. Semler BL. Wimmer E.
ASM press, Washington, DC, 2002, pp.415-425.
7.
Probst C. et al. : Intrinsic signals for the assembly of hepatitis A virus particles. J
Biol. Chem. 274: 4527-4531, 1999.
8.
Kiyohara T, Satoh T, Yamamoto H, Totsuka A, Moritsugu Y: The latest
seroepidemiological pattern of hepatitis A in Japan. Jpn J Med Sci Biol 50:
123-131, 1997.
9.
戸塚敦子:Hepatitis A virus (HAV). ウイルス実験プロトコール、監修:永井
美之、石浜明、編集:小林信之、長田恭介、メジカルビュー社、1995、pp.79-89.
臨床とウイル
10. Robertson. H. et al: Genetic relatedness of hepatitis A virus strains recovered from
different geographic regions: J Gen Virol. 73: 1365-1377, 1992.
- 21 -
. 試料の分与依頼先
陽性コントロールの分与
標的領域をクローニングしたプラスミド(プライマー+2799/-3273 の領域)の
必要な機関は宮城県環境保健センター、神奈川県衛生研究所、愛知県衛生研究
所、大阪府公衆衛生研究所、愛媛県衛生環境研究所、福岡県保健環境研究所の
ウイルス担当官に分与を依頼する。
リアルタイム PCR のコントロール(257-707 の部分を組み込んだもの)は神奈川県
衛生研究所、愛媛県衛生環境研究所に分与を依頼する。但しリアルタイム PCR
のコントロールは半年程度しか持たないので使用時に連絡すること。
感染性 HAV が必要な機関は国立感染症研究所ウイルス第二部第五室に分与を依
頼する。
- 22 -
おわりに
本マニュアルは A 型肝炎が E 型肝炎とともに 2003 年 11月の感染症改正で 4 類
に分離されたことを受けて、2002 年 7 月に印刷された急性ウイルス性肝炎診断
マニュアルと同年 8 月に印刷された食中毒調査における A 型肝炎検査法を再編
集したものである。
問合せ先
国立感染症研究所ウイルス第二部第五室
執筆者
米山徹夫
西尾治
(米山徹夫)
国立感染症研究所ウイルス第二部
国立感染症研究所感染症情報センター
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