物流特性と波動で商品を絞り込み 共同化のシナジー効果を最大に

共通プラットフォーム
企 画 広 告
共同化の壁を破る
本誌 大矢昌浩 編集発行人「物流専門誌の
編 集 者という立 場から大 塚 倉 庫を見ていて感
じることの一つは、
物流会社におけるマーケティ
ングの重要性です。
物流子会社がプラットフォー
ム化を経 営ビジョンに掲げ、 共 同 物 流 事 業に
なく、 どの会 社の、 どの商 品と、 我々のベー
みです。 どの業 界を狙うかというレベルでは
大 塚 倉 庫・ 濵 長「 一つはターゲットの絞り込
うに進んでいったのですか」
本 誌・ 大 矢「 マーケティング改 革は、 どのよ
マーケティングとは選ぶこと
その背中を親会社から強く押された格好です」
大きく一 歩 踏み出すことができずにいました。
知れません。なまじ業績も安定していただけに、
精 神に欠ける会 社だと評 価されていたのかも
せない、他のグループ会社と比べてチャレンジ
での当 社は物 流 業 界の横 並び体 質から抜け出
大塚倉庫・濵長「親会社から見れば、それま
とになったわけですね」
そのノウハウが物 流 子 会 社にも適 用されるこ
ティングに秀でた会社として知られています。
本 誌 ・ 大 矢 「 もともと大 塚グループはマーケ
セプトが本格的に導入されたんです」
な り ま し た。 マーケティングと い う経 営コン
までの経 営の在り方を抜 本 的に見 直すことに
当 社の営 業マンなら従 来から分かっ ているこ
荷 主はどこも困っているはずです。 いずれも
日 用 品とは分けて管 理しなければなりません。
品 に は各 種 の取 扱 規 制 が あ る た め、 一 般 の
ら容 積 勝 ち で、 し か もエアゾールタイプの商
と止まってしまう。商品は比較的軽量ですか
忙 期が終わると翌シーズンまで出 荷がぱたっ
料以上に季節波動の大きな商品で、夏場の繁
「 同 様にグループのアース製 薬も殺 虫 剤で約
五 〇 % のシェアを持っています。 殺 虫 剤は飲
て最高の条件を備えていた」
大でした。共通プラットフォームのベースとし
ターを調査したところ、保管面積でも業界最
プメーカー です。 取 引 先の大 手 卸の物 流セン
などの輸 液では約 五 〇 % のシェアを握るトッ
しかし、医薬品のなかでも重量がかさむ点滴
大塚グループのポジションは中堅に過ぎません。
「 医 薬 品 物 流は取り扱い重 量が当 社の強み
でした。売上高で見ると医薬品業界における
すれば大きなシナジーが得られます」
繁忙期を迎える商品や容積勝ちの商品と混載
約五〇%の容積を余してしまう。従って冬に
は重 量 物ですので、 トラックに満 載にすると
期との繁 閑 差は四 倍にも上ります。 また飲 料
した。 いずれも夏に繁 忙 期を迎え、 冬の閑 散
ロナミンC 』 の物 流 特 性と季 節 波 動がカギで
ました。食品物流では『ポカリスエット』と『オ
子会社の実力を測る一つの目安とされています」
はあった。世間的にも外販比率三〇%は物流
を達 成しています。 それだけ当 時から競 争 力
目 標を掲げるようになり、 〇 七 年 度にはそれ
〇〇年代に入って外販比率三〇%という経営
本誌・大矢「資料によると、大塚倉庫は二〇
はありませんでした」
けで、 今 考えれば戦 略と呼べるようなもので
手 当たり次 第に見 込み客に声をかけていただ
は二〇〇〇年頃には既に確立していた。しかし、
共同配送で外販を拡大しようという方針自体
会社やグループ会社のベースカーゴを活かした
という言 葉こそ使っていませんでしたが、 親
大塚倉庫 濵長一彦 営業本部長「当社もか
つてはそうでした。『 共 通プラットフォーム 』
出ない。付加価値が低くなってしまう」
ケティングが甘い。だから、サービスに特徴が
バーするのか、
絞り込みが足りない。つまり、
マー
チェーン上のどこからどこまでのプロセスをカ
うな特 性を持っ た荷 物を扱うのか、 サプライ
対 象 顧 客の業 種を曖 昧に括るだけで、 どのよ
詰め切れないことが原因の一つだと思います。
しかし、 多くが長 続きしない。 ターゲットを
は五〇%を見込んでいます。一連の経営改革
販比率は四八%まで上昇しました。一三年度
の勝率が跳ね上がり、二〇一二年度時点で外
うになりました。 その結 果、 受 託 率やコンペ
社には真 似のできない仕 組みを提 案できるよ
が増え、本当に付加価値のある、他の物流会
た。 荷 主の懐に深く入り込んで議 論する機 会
割にマンパワー を集 中できるようになりまし
を捨てたわけですが、 それによって残った一
「そして外販のターゲット顧客数を一〇分の
一 近くまで絞り込みました。 見 込み客の九 割
手を出すべきではないことを悟りました」
らさない。 シナジー を発 揮できない仕 事には
強みを発 揮できない仕 事は荷 主に価 値をもた
べきでないのかも明 確になりました。 我々が
「ターゲットがはっきりしたことで、何をす
べきかが明らかになっただけでなく、 何をす
主を一つひとつそこにマッピングしていった」
荷 主はもちろん今 後のターゲットとすべき荷
忙期をとって具体的な荷主名・商品名を書き
縦軸に重量や容積などの商品特性、横軸に繁
で食品、医薬品、日用品について、それぞれ
イントは荷 物の組み合わせにあります。 そこ
大塚倉庫・濵長「その通りです。共同化のポ
利益を出すことができます」
率が上がる。競争力のある料金で受託しても
きる。商品特性が逆の荷物を混載すれば積載
これを機に当 社の経 営 陣も刷 新されて、 それ
への貢 献を期 待されることになったわけです。
グループ会 社 をサポートす る だ け で な く収 益
事業会社の一つに位置付けられました。単に
製 薬 や 大 鵬 薬 品 工 業 等 と 並 ぶ、 六 つ の 主 要
なりました。 この時に当 社はグループの大 塚
「親会社の大塚ホールディングスが二〇一〇
年に株 式 上 場を果たしたことが大きな転 機に
な飛躍ができないことは明らかでした」
きなくなっていた。そのやり方のままでは大き
いたずらに荷主の数ばかり増えて深い提案がで
出していたので、採算は良くありませんでした。
た。 その四 国にしても、 どんな荷 物でも手を
他の地 域に広げることができていませんでし
ら、
『まずは四国から始めませんか』と荷主に
普 通は物 量がまとまらなくて困る地 域ですか
に集中しているため、
倉庫もたくさん持っている。
います。大塚グループの工場が創業の地の四国
当社は四国に強力な配送ネットワークを敷いて
した。しかし、同時に壁にぶつかってもいた。
して及 第 点はもらえるはずだと自 負していま
大塚倉庫・濵長「我々としても物流子会社と
乗り出すというケースは珍しくはありません。
スカーゴを組み合わせれば、共同化のシナジー
とでした。しかし、それが十分に経営戦略に
を通じて我 々 が学んだのは、 マーケティング
本誌 大矢昌浩 編集発行人
込んだ『 戦 略マップ 』 を作 成しました。 既 存
持ちかければ仕 事がとれた。 しかし、 それを
が最 大になるかというところまで落とし込み
反映されていなかった」
とは選ぶことだということです。
『選択と集中』
大塚倉庫 濵長一彦 営業本部長
本 誌・ 大 矢「 確かにベースカーゴと繁 閑 差が
積極的な営業活動で目標としていた外販比率30%
を達成した。しかし、そこで成長は踊り場を迎えた。
従来のやり方では、大きな飛躍は難しいことが明ら
かだった。親会社の株式公開を機に経営改革を断行。
マーケティングを物流会社に本格的に導入すること
で、その壁を乗り越えた。 (本誌編集部)
の意味を知ったんです」 (次号に続く)
物流特性と波動で商品を絞り込み
共同化のシナジー効果を最大に
逆になる荷物を共同化すれば作業を標準化で
第 11
回