シリーズ もっと知りたい! がん診療 ∼地域がん診療連携拠点病院の取り組みから∼ 子 宮がんについて す の しげ お ひょうご夢Life 公立学校共済組合近畿中央病院産婦人科部長 2013年12月号 須野 成夫 6 染すること自体決して特別なことでは なく、性交経験のある女性であれば70 ∼80%が生涯に一度は感染するとい われています。ほとんどの場合一過性 の感染でウイルスは自然に排除されま す。 しかし、 このウイルスが排除されず に長期間感染(持続感染) が続くと、 子宮頸部の細胞・組織に変化が生じ 自然に治癒せずに進行し「がん」 とし て発症します。 発生頻度 2008年のがん対策情報センター による統計では子宮頸がんで2,486 人が死亡しています。 検診制度の普及により、検診で発 見されるがんの60%以上は上皮内が んで子宮頸がん全体の46%を占めて います。全年齢での死亡者数は減少 してきていますが30代では増加傾向 にあります。 症 状 子宮がん (子宮の悪性腫瘍)には 一般的な子宮がん検診で見つかる子 宮頸がん以外に子宮体がん、子宮肉 腫があります。今回は子宮頸がんにつ いて説明します。 子宮は全体が洋梨のような形をして おり、中が空洞になっています。球形 に近い形の部位は、妊娠をして胎児 の宿る部分が体部で、下方に続く部 分は細長くその先は膣に突出していま す。 この部分が頸部で膣のほうから見る と、奥の突きあたりに頸部 (子宮の入り 口) の一部が見えます (子宮膣部とい います) 。 子宮頸がんはこの子宮の入り口部 分、子宮頸部に発生するがんです。子 宮頸部の表面を覆っている上皮細胞 には、重層構造の扁平上皮細胞とそ れに続いて子宮体部よりにある一層 の円柱上皮の2種類があり、子宮頸 がんはその2種類の細胞の境界(扁 平円柱上皮境界、SCJ)付近から発 生します。 子宮頸がんには大きく分けて扁平 上皮細胞から発生する 「扁平上皮が ん」 と円柱上皮から発生する 「腺がん」 があります。扁平上皮がんは腺がんの 約4倍の発生率ですが、最近では腺 がんが増加傾向にあります。婦人科 検診や人間ドックなどで受けるがん検 診は子宮頸がんの検査です。子宮頸 がんの発生には、 ヒトパピローマウイル ス (HPV)の感染が関与していること がわかっています。このウイルスに感 子宮頸がんでは、上皮内がんのよう な初期の段階では半数以上の人には 症状がありません。進行してくると、不 正出血が多くみられ、特に「 接 触出 血」 と呼ばれる性交時の出血が特徴 的です。 さらに進行すると悪臭を伴っ た赤色のおりものが現れてきます。 検 査 子宮頸がんでは細胞診、 コルポスコ ピー (膣拡大鏡診)、生検(組織診:病 変部を生検用器具やメスなどで採取し て調べる検査) による一連の検 査でがんであるかどうかを調べま す。 さらに、 がんだとわかったらそ のがんの深さや、広がり、転移を 視診、触診、内視鏡検査、 レント ゲン検査とCT、MRIなどを参考 に進行期を決定します。 進行期分類は現在「 子宮頸 癌取り扱い規約」 ( 第3版2012 年4月)に従った臨床進行期分 類が使われています。進行期は Ⅰ ・Ⅱ・Ⅲ・Ⅳ期に分けられます。 ※表1 (以前の分類では上皮内がん (CIS) が0期と位置づけられてい ましたが、 0期は進行期分類から 除外されました。) 診断から治療へ 子宮がん検診 (子宮頸部細胞 診) で異常が見つかったら、 まず コルポスコピー (膣拡大鏡診) を 行い、続いて狙い生検(組織検 査) を行い、組織診断を行います。 生検で高度異形成細胞∼悪性 細胞が見つかった場合、子宮頸 部円錐切除※図1を行い、 その 広がりや深さを調べ、高度異形 成から上皮内がんまでの早期の ものなのか、進行期Ⅰ以上のもの なのかを診断します。 ( 進行期ⅠB 以上の肉眼でわかるようなものは、 円錐切除は行いません。) 0期 (上皮内がん) の段階で発 見されて治療を行えば、ほとんど が治ります。治療は子宮頸部円 錐切除術あるいは単純子宮全 摘術が行われます。子宮頸部円 錐切除術とは子宮を円錐状に切 り取る手術で基本的には子宮頸 がんの診断のための検査ですが、 0期 (上皮内がん) の場合には治 療法にもなります。切除した標本 を調べ、 その切断端(せつだんた ん) にがん細胞がいない (断端陰 性:切断端に異形細胞やがん細 胞の遺残を認めないこと) 場合は、 その時点で治療終了となります。 一方、断端陽性の場合には続け て子宮全摘術を行います。 ⅠA期以上の場合、単純子宮 全摘術から準広汎(こうはん)子 宮全摘術、広汎子宮全摘術から 放射線療法まで、浸潤や転移の 程度によって術式を変えて行い ます。また子宮頸部の浸潤がん において妊孕性(にんようせい: 受胎能力。妊娠すること。) を温 存する術式広汎頸部摘出術も 行われるようになってきています。 また腫瘍の状態や患者さまの全 身状態 (高齢や合併症) によって 放射線療法や化学療法を組み 合わせた治療を行います。 子宮頸がんは子宮がん検診 によって早期で見つける事の出 来る病気であり、治せる病気です、 そしてワクチンにより予防するこ とのできる病気です。 症状があってからではなく、症 状のない時に病院へ行くのが検 診であり健康診断(健診) です。 病院に行くのが怖いという人もい ますが、病院へ行かない貴女の 方がもっと怖い。 と思いませんか? ※ 図1 子宮頸部円錐切除 ※ 表1 子宮頸がんの進行期分類 Ⅰ期 A1 (子宮頸部に限局) Ⅱ期 (子宮傍組織・ 浸潤の深さ:3mm以内 癌の広がり:7mm未満 A2 浸潤の深さ:3mmを超え5mm以内 癌の広がり:7mm未満 B1 腫瘍径:4cm以下 B2 腫瘍径:4cmを超える A1 腫瘍径:4cm以下 膣壁浸潤(+) 傍組織浸潤(−) A2 腫瘍径:4cmを超える 膣壁浸潤(+) 傍組織浸潤(−) 膣壁上部に浸潤) B 子宮傍組織浸潤 Ⅲ期 A 膣壁下部1/3に浸潤 B 骨盤壁に浸潤または、明らかな水腎症や無機能腎を認める A 膀胱・直腸粘膜に浸潤 B 小骨盤外に浸潤 (膣壁下部・骨盤壁に浸潤) Ⅳ期 (遠隔転移) 参考文献 子宮頸癌取扱い規約(2012年4月) 日本産科婦人科学会・日本病理学会・日本医学放射線学会・日本放射線腫瘍学会編 患者さんとご家族のための子宮頸がん・子宮体がん・卵巣がん治療ガイドラインの解説 日本婦人科腫瘍学会編集 2013年12月号 ひょうご夢Life 7
© Copyright 2024 Paperzz