PAL NEWS 2008/12

PAL NEWS
∼人と動物の絆∼
2008/12
パル動物病院
猫伝染性腹膜炎
今月の専門科診療
よりよい関係を目指して
今月は下記の日程で専門科の診察を行いま
今回は、猫の感染症の一つである猫伝染性
示し、衰弱し、中枢神経を冒すことがあり、発
腹膜炎(FIP)についてお話します。
作や四肢の麻痺がみられることがあります。
す。ご希望の方は事前にご予約ください。
私たちは最先端の診療技術を生かし、地域
1960
年代に米国で初めて報告され、現在で
また、
眼や腎臓、
肝臓などに障害を与えるこ
(カッコ内はカレンダー内の省略形です)
に密着した動物病院を目標にしております。
はほとんど全世界で発生がみられる病気です。 とがあります。
◆歯科(歯)
猫伝染性腹膜炎は滲出型と非滲出型の二つの
診療時間
歯学博士
タイプに分かれます。3ヵ月∼3歳の若いネコと 【診断】
奥田 綾子 先生
症状、血液検査、腹水、胸水の検査、抗体検
免疫力の低下したネコで発症しやすい病気です。
●裾野センター病院
査などを行い、総合的に診断します。
月∼土 午前 9:00 ∼ 12:00
◆エキゾチックペット(エキゾ)
【原因】
午後 2:00 ∼ 9:00
エキゾチックペットクリニック
病原性の弱い猫腸コロナウイルスに感染し、 【治療】
日・祝 午前 9:00 ∼ 12:00
霍野 晋吉 先生
猫伝染性腹膜炎に抗ウイルス薬などの有効な
そのウイルスが猫の体内で突然変異を起こす
午後 2:00 ∼ 7:00
治療法はありません。治療は症状に合わせた対
年末年始(12 月 31 日∼ 1 月 3 日) と、猫伝染性腹膜炎ウイルスとなり、猫伝染性
◆腫瘍科(腫瘍)
症療法になります。補液、利尿剤などを使用し
腹膜炎になります。したがって、猫伝染性ウイ
午前 9:00 ∼ 12:00
麻布大学獣医学部附属動物病院
ます。また、免疫療法としてステロイドを使い
ルスが猫から猫に伝染するのではなく、
猫腸コ
川村 裕子 先生
ます。腹水や胸水が貯まって呼吸困難を起こし
●沼津病院
ロナウイルスの蔓延が根本的な原因になりま
ている場合は腹水、
胸水の吸引除去を行います。
平日
午前 9:00 ∼ 12:00
す。突然変異には、ストレスや他のウイルス
◆画像診断科(画)
午後 2:00 ∼ 7:00 (猫白血病ウイルス、猫免疫不全ウイルスなど)
茅沼 秀樹先生
【予後】
木曜日 休診
感染などが影響しているのではないかと考えら
猫伝染性腹膜炎は、慢性的に病状が進み死
日・祝 午前 9:00 ∼ 12:00
◆眼科(眼)
れています。
亡率が非常に高い病気です。
年末年始(12 月 31 日∼ 1 月 4 日)
全日休診
お問合せ
・裾野センター病院
〒 410-1123
静岡県裾野市伊豆島田 843-5
TEL: 055-993-3135
・沼津病院
〒 410-0058
静岡県沼津市沼北町 1 丁目 5-27
TEL: 055-922-6255
・ウェブサイト
http://pal-ah.jp
【感染経路】
猫腸コロナウイルスは、便や尿、口腔および
鼻腔分泌中に排泄され、
他のネコに経口的ある
いは経鼻的に感染します。
【症状】
感染初期には発熱、食欲不振、脱水、嘔吐な
どがみられます。その後、下痢や体重の減少が
起こり、腹膜炎が現れます。
腹膜炎の病態には滲出型と非滲出型があり
ます。滲出型では、腹水や胸水の貯留が特徴
で、腹部膨満がみられることがあります。ま
た、腹水や胸水による呼吸困難を起こします。
高熱が続き、
食欲不振による体重の減少が起こ
ります。一方、非滲出型では発熱と体重減少を
【予防】
現在、日本には、ワクチンはありません。
この病気は、
猫腸コロナウイルスに感染しな
いと起こりません。4 週齢の離乳の時期に子ネ
コを大人のネコから離せば、猫腸コロナウイル
スに感染しません。また、猫腸コロナウイルス
は、他のネコから感染する可能性があるので、
他のネコとの接触はさける必要があります。
このように、猫伝染性腹膜炎は非常に怖い
病気です。
上記のような症状がみられる場合は
早期に受診してください。
参考文献
・イヌ・ネコ家庭動物の医学大辞典(PIE BOOKS)
・動物の感染症(近代出版)
獣医学博士
当院:小野 啓
◆皮膚科(皮)
当院:神田 聡子
月
1
火
水
29
3
眼
9 皮・10
腫瘍 歯
16
17
皮
眼
23
24
皮
眼
31
30
5
6
8
15
22
2
7
木
金
4
5
11
12
18
19
25
26
エキゾ
1
2
8
9
土
日
6
画
13
眼
20
眼
27
画・眼
7
3
4
14
21
28
裾野病院(午後休診)
沼津病院(休診)
10
11
犬の脂漏症
人間と同じように、犬も肌質、被毛の質は個体によって異なっ
ています。犬と接していて臭いが強い、フケが多い、脂っぽくべ
たべたする、などと感じることがあるかもしれません。
今回は犬の皮脂とそれに関係する皮膚病の一つ、
『脂漏症』に
ついてお話します。
皮脂は人間も動物も同じように毛包に付属する皮脂腺で生産さ
れ、毛穴から体表に分泌されます。成分はワックスエステル、ト
リグリセリド、スクアレンなどです。適切な皮脂は被毛に撥水加
工を施し、毛づやを保ちます。皮脂の量は個体差が大きく、皮脂
の量と皮膚の水分量が肌質に反映しています。
皮脂腺の機能の亢進により、皮脂が過剰に分泌された状態を
脂漏(脂漏症)といい、フケが増える場合を乾性脂漏、におい
がきつくなり、被毛のべたつきが増す場合を脂性脂漏と分類し
ています。
脂漏症の原因には原発性(過剰な脂漏が問題になっている場
合)と続発性(他の原因により脂漏が増加する場合)のものがあ
ります。
原発性の脂漏症では症状は幼いころからみられ、
加齢により悪
化します。また、犬種によって発生率が異なり、シーズーやコッ
カースパニエル、ウエスティ、バセットハウンドなどに多くみら
れます。
続発性の脂漏症では、
脂漏を増やすような基礎疾患が存在しま
す。脂漏症を引き起こす基礎疾患には、内分泌疾患、感染症、ア
レルギー疾患があります。食事内容、シャンプーなどの刺激が原
因となることもあります。
脂漏が原因となり、皮膚炎を起こすこともあります(脂漏性皮
膚炎)。脂漏が多い部分(脇の下、内股、尾の腹側、口周囲、指
間)でマラセチア(酵母菌)が増えやすく、マラセチアによる皮
膚炎でロウ様の皮脂やフケの増加、皮膚の発赤や強いかゆみ、色
素沈着がみられるようになります。
治療としては、過剰な皮脂をおとすためにシャンプーを行いま
す。この際、使用するシャンプーの種類と実施する回数を肌質に
よって使い分ける必要があります。皮脂が減ってきているのに皮
脂を落とす作用が強いものを使い続けると乾燥肌になったり、
シャンプーによる皮膚炎を起こす原因となります。乾燥肌になっ
てしまう場合はシャンプーを実施する間隔を長くしたり、シャン
プー後に保湿剤を使用するとよいでしょう。
シャンプー後に急激な皮膚の赤みが増したり、かゆみが強く見
られる場合は病院にご相談ください。
二次的な皮膚の感染症が疑われる場合は、皮膚検査によってそ
の原因を調べます。原因が細菌感染やマラセチア感染の場合は抗
生物質や抗真菌薬を用いて治療を行います。
参考文献
・イヌの家庭医学大百科(ペットライフ社)
・犬とネコの皮膚科臨床(ファームプレス)
・あたらしい皮膚科学(中山書店)
・犬の解剖学(学窓社)
・5分間コンサルタント(インターズー)
・Small Animal Dermatology(Saunders)
・スキンケア最前線(メディカルレビュー)
パルニュース 2008 年 12 月号