この講座の特長 これから翻訳を学習する方へ 本講座の主な特長は、以下のとおりです。 翻訳の大原則 ●味わい深い名作を題材に、幅広い表現力がマスターできる 翻訳の世界へようこそ。さて、これから英日翻訳を学習していくにあたって、常に意識 翻訳を勉強したいけれど、無味乾燥な素材では途中で飽きてしまいそう…。どうせ学ぶ していただきたい「翻訳の大原則」があります。それは、 なら、作品自体が魅力的で、確かな手応えのある英文を訳してみたい――。そんな声にお 応えして、英語圏で今も読み継かれる多彩な5つの名作を厳選しました。毎回、ジャンル ■英文の構造と意味を正しく理解した上で、自然な日本語に移し変える も文体も異なる珠玉の作品と向き合うことで、英語と日本語の語感が同時に磨かれ、翻訳 に欠かせない豊かな表現力が身につきます。 ということです。翻訳というと、とかく文才や日本語表現力が強調されがちですが、学習 段階においてはこの「英文の構造と意味を正しく理解した上で」という点がきわめて重要 ●「読解」と「翻訳」を一体的に学習する 「2 ステップ方式」 で、ここに最初のステップがあると言えます。翻訳は、原文の内容がただ何となくわかっ 作品にじっくり取り組んでいただくために、読解演習+翻訳演習の「2ステップ方式」を ただけでは到底行えない作業だからです。テキスト全体の文脈の中で、一文一文がどうい 採用。読解演習では、読解力の向上をはかり作品の解釈を行き届いたものとするため、語 う意味と働きを持つのか――まずはそこをしっかり見極めることが出発点となります。 学的な解説を充実させました。翻訳演習では英日翻訳のテクニックをフルに活用し、作品 に適した具体的なアプローチをその都度さまざまな視点から提示していきます。 これから学習していく「翻訳」は、学校で学んできた「英文和訳」とは異なるものです し、英語の一字一句を直訳した「逐語訳」でもありません。こうした訳では、日本語の不 ●楽しくてためになる各種コラムで、さらに広がる翻訳学習 自然さは免れません。何度も読み返さなければ意味がわからないような日本語では 「翻訳」 原文の理解を深め、翻訳学習に役立つ各種コラムも充実。作品の背景知識やプロ翻訳家 とは言えないのです。 のアドバイス、読書案内などが盛り込まれているので、作品や翻訳への理解がより一層深 そこで、この翻訳の大原則に則して、 「自然な日本語に移し変える」ための「技術」が まり、学習意欲も一段と高まります。 必要になってくるわけです。その技術は次の2点に集約されると言えます。 ●受講生一人ひとりのレベルに合わせた、親身できめ細かな添削指導 1.英文の流れを生かす 添削課題は本講座で取り上げた各作品からの出題です。皆さまの訳文を経験豊かな添削 2.英文の形にこだわらない スタッフがチェックし、 「どうすればさらに良い訳文になるか」 「この先どんな点に注意す べきなのか」など、個々の答案に応じて具体的に指導します。 では、この2点について具体的に説明していきましょう。 ■1.英文の流れを生かす 「英文の流れを生かす」 とは、書き手の意識の流れを尊重して訳すということにほかなり ません。例えば次の英文を見てみましょう。 I was about to leave home when I saw her standing near the car. この英文には、大きく分けて次の2通りの訳し方があります。 「私は家を出るとき、彼女 がその車のそばに立っているのを見かけた」と文頭から訳す方法と、when ∼ 以下の文の 後半を先に訳して「私がその車のそばに立っている彼女を見かけたとき、私は家を出ると ころだった」とする方法です。この2つの訳は、文意こそ同じであるものの、後者は書き 手の意識の流れが反映されていない訳になっています。つまり、書き手の意識は「家を出 ようとした、そうしたら彼女を見かけた」 のように流れているのですが、訳文ではそうなっ 4 5 ていないのです。 ります。引くのに時間がかかり、持ち運びにも不便な紙版の辞書に比べ、軽量小型かつ調 一般に、前者のように文頭から順に訳していく方法を 「訳し下ろし」 、後者のように後ろ べたい語が瞬時に引ける電子辞書は便利なものですが、一つの単語にたくさんの意味があ から訳していく方法を「訳し上げ」と呼んでいます。書き手の意識の流れを尊重し、それ る多義語の場合、すべての訳語が一度で俯瞰できる紙版の辞書に比べ、いちいち画面を切 を再現するためにも、基本は「訳し下ろし」と覚えておくと良いでしょう。とくに、一連 り替えていかなければ全体が見られない点は不便です。いずれにしろ、紙版と電子辞書そ の動作や因果関係の説明など複雑な長文になればなるほど「訳し下ろし」の必要性が出て れぞれの特長を理解したうえで、使い分けると良いでしょう。 くるものです。また、書き手の意識の流れと文章の表現方法に密接なつながりのある文学 以下のリストは、DHC の上級講座「英日出版総合コース」の監修者である河野一郎先生 作品の翻訳には、とりわけ大切なことです。 (東京外国語大学・名誉教授)が、同講座「コースガイド」にてお薦めした辞書をベースに、 いくつか加えたものです(いずれも紙版) 。 ■2.英文の形にこだわらない 英文の構造と意味の正しい理解が不可欠であることは先に述べましたが、英語の構文に ●英和辞典 必要以上にとらわれるあまり、不自然な日本語になってしまったのでは意味がありません。 ・ 『リーダーズ英和辞典』 (研究社)…27万語もの見出し語をコンパクトに収録してあり、翻 英語と日本語では文の構造が大きく異なるのですから、その点は柔軟に考えて訳すように 訳を志す方には必須の辞典。 しましょう。 ・ 『ランダムハウス英和大辞典』 (小学館)…日本人向けによく考案された、百科事典的要 例えば、英文での主語が必ずしも日本語訳の主語になるとは限りませんし、英文では名 素を兼ねた信頼できる辞典。 詞であっても日本語では動詞的に訳した方が良い場合も多々あります。また、受動態の英 ・ 『グランドセンチュリー英和辞典』 (三省堂) …高校生向けの学習辞典だが、could, should, 文だからといって日本語でも同じように「受け身」で訳すとは限らないのです。 might などの基本的な用法が分かりやすく解説されており、迷ったときに原点に返って基 本機能を確かめるのによい。他に比較的新しい学習辞書として、 『ウィズダム英和辞典』 (三 さて、 「翻訳の大原則」 はご理解いただけましたか。翻訳は、自分以外の誰か――本の読 省堂) 、 『オーレックス英和辞典』 (旺文社)などもお勧めできる。 者や、仕事の発注者(=クライアント)など――に読んでもらうことを目的としています。 ●和英辞典 ですから、今後は英文の正しい理解を前提として、ご自分の訳が自然でわかりやすい日本 ・ 『プログレッシブ和英中辞典』 (小学館)…今はワープロの変換キー一つでいろいろな漢 語になっているかを常に意識するようにしてください。 字が出てくるが、漢和辞典を引くよりも簡単に漢字を確かめられるし、自分の使った日本 この講座では、ジャンルも文体も異なる 5 つの作品を取り上げますので、こうした大原 語表現の意味を逆に英語でもう一度確認できるので、翻訳家の中には愛用している人が多 則を踏まえた上で、それぞれの作品にふさわしい日本語表現を心がけていきましょう。 い。 ●英英辞典 ・ 『コウビルド英英辞典』 (紀伊国屋書店)…英英辞典であるが、用例が新しいのと、ある 翻訳学習に必要な辞書 語がどのような感じで聞き手に受け取られているか、細かなニュアンスまで説明がついて 翻訳の学習を始めるにあたって、お手持ちの辞書をご確認ください。最近購入された辞 いる点が役に立つ。 書が翻訳の学習に適したものであればそれをお使いいただけますが、例えば英語の勉強は ●国語辞典 久しぶりで、学生時代に使用した古い学習用の英和辞典しか持っていないといった方は、良 ・ 『新潮国語辞典 現代語・古語』 (新潮社)…表題通り、現代語と古語の双方を載せてい い機会ですから、ご予算や目的に応じて徐々に辞書や参考書などを揃えていかれることを るので、少々古い表現を使いたくなったときに極めて便利。 お勧めします。 ・ 『福武国語辞典』 (ベネッセコーポレーション)…『安心』を引くと、使用例とともに類 まず、英日翻訳をするにあたって英和辞典が必要なのは言うまでもありません。これは 義表現として「胸をなで下ろす、息をつく、肩の荷がおりる、愁眉をひらく、大船に乗っ できれば、文法や基本語などについて詳しく解説してある学習用の辞書と、とにかく収録 た気持ち」などと載っているのが強み。 語彙数が多い辞書の2種類を揃えておくと良いでしょう。ご自分に必要な辞書の種類を見 極めたら、書店でいろいろな辞書を引き比べて検討し、より使いやすいと思われるものを 購入しましょう。 最近では紙版以外の電子辞書もたくさん出回っていますが、それぞれに長所と短所があ 6 7
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