線形代数とは

線形代数とは
第一回 ベクトル
教科書
¾ 「エクササイズ線形代数」
z
z
立花俊一・成田清正著
共立出版
¾ 必要最低限のことに限る
¾ 得意な人には物足りないかもしれません
線形代数とは何をするもの?
¾
線形関係 → y=ax → 直線
z
z
yもxも 1次式で登場する(1次の形)=線形
ただし、1次元の話 世の中は3次元[4次元]
¾
2次元、3次元、4次元、…はどうやって直線を表
すの?
¾
ベクトルや行列の概念
r
r
y = Ax
ベクトルを使うとy=axという式は
¾ Y=AX
z
z
X,Yが2次元以上だとベクトルになり、
Aは複数の数からなる行列というものになります
¾ 代数というのがついてますから
z
ベクトルや行列の演算を扱う学問ということになり
ます。
本日の御題 ー ベクトル
¾
幾つかの量をまとめて表すことを考えます
z
z
りんご3個
みかん5個
これを表すには
りんご
みかん
z
3
5
りんご
3
みかん
5
世の中りんごとみかんしかないとすると
⎛ 3⎞
⎜⎜ ⎟⎟,
⎝ 5⎠
⎡3⎤
⎢5⎥, (3 5), [3 5]
⎣ ⎦
と表してあげればよい
“計算する場合”
かご1に りんご3、みかん5
¾ かご2にりんご2、みかん4
りんご、みかんのそれぞれの合計は?
¾
⎛ 3⎞ ⎛ 2 ⎞ ⎛ 5⎞
⎜⎜ ⎟⎟ + ⎜⎜ ⎟⎟ = ⎜⎜ ⎟⎟
⎝ 5⎠ ⎝ 4⎠ ⎝ 9⎠
かご1が2かごある場合
りんご、みかんのそれぞれの合計は? 2⎛⎜ 3 ⎞⎟ = ⎛⎜ 6 ⎞⎟
⎜ 5 ⎟ ⎜10 ⎟
⎝ ⎠ ⎝ ⎠
¾
計算する場合(2)
¾
りんごの単価1こ80円、みかんの単価1こ
30円とするとかご1の値段総額は?
⎛ 3⎞
(80円 30円) • ⎜⎜ ⎟⎟ = (240円 + 150円)
⎝ 5⎠
数学的には
¾ 個数の計算
z
z
ベクトルの和(加法)
ベクトルのスカラー倍
¾ 値段の総額の計算
z
ベクトルの内積
ベクトルとスカラー
¾
¾
物理や幾何学で現れる量の多くは、ある単位
とこれを用いて測った数値で表すことができる。
Ex. 質量は何g、温度は何℃
こういう量をスカラーという
z
¾
他に:長さ、時間、密度、エネルギー、電気量など
方向を持っている量
z
z
重力などの力
方向は1つの矢で表す
AB
A
B
ベクトルの書き表し方
¾ a, A
¾
太字にする。手書きだと見分けにくい
r r 文字の上に矢印を書く
a, A
ベクトルの相等
¾
¾
大きさが等しく、向きも等しい
A=B
A
¾
¾
B
始点の位置は関係ない→自由ベクトル
束縛ベクトル
平行移動したベクトルはすべて相当の関係にある
力の合成
¾
¾
Oに作用する2力の合成
平行四辺形の法則(三角形の法則)
B
C
OB
O
OC
A
OA
OC = OA + OB
ベクトルの和(加法)
¾ 平行四辺形(三角形)の法則
¾ 一方のベクトルの尻尾(始点)をもう一方のベ
クトルの頭(終点)につけることにより定義
¾ 2つのベクトルA,Bの和A + BはAとBによって
作られる平行四辺形の対角線として表わせ
ます
交換法則
¾ A+ B= B+ A
A
A+B
B
A
B
結合法則
¾ (A+B)+C=A+(B+C)
B
C
B+C
A
A+B
A+B+C
ベクトルの和は次のような性質を持つ
1.2つのベクトルの和はまたベクトルである.(このこと
を和は閉じているといいます)
2.任意のベクトルAとBにおいて,A+B = B+Aが成り
立つ.(交換法則)
3.任意のベクトルA,B,Cにおいて,(A+B)+C =
A+(B+C)が成り立つ.(結合法則)
4.任意のベクトルAに対して,A+0 = Aとなるベクトル
0が存在する.(零元の存在)
5.任意のベクトルAに対して,A+B = 0となるベクトル
Bが存在する.(逆元の存在) B = -A
ベクトル0について
¾ 大きさ 0 (※大きさはまだ定義していない)
¾ 方向 なし
スカラー倍
(-1)a=-a
O
a
A
α a (α>1)
α a (α>-1)
ベクトルのスカラー倍 αA
は次のような性質をもつ
6.ベクトルのスカラー倍はまたベクトルである.
7.任意の実数αとβに対して,
α( β A) = (α β) Aが成り立つ.(結合法則)
8.任意の実数αとβに対して,
(α+β) A = α A + β Aが成り立ち,
任意のベクトルAとBに対して,
α (A+B) = α A + β Bが成り立つ.(分配法則)
9.1 A = A ; 0 A = 0 ; α 0 = 0が成り立つ.
ベクトル空間
¾ 線形空間ともいう
¾ 平面や空間の幾何ベクトルにおいて1から9ま
での性質が成り立ちます
¾ このとき、平面や空間のベクトルの集まりを
幾何ベクトル空間 (geometric vector space)
といいます
¾ もっと抽象的に1から9を満たす“もの”の集ま
りをベクトル空間といい、その集合の要素を
ベクトルといいます。
公理とは
¾ ある数学体系の出発点となる一般的法則の
こと
¾ 1~9は線形空間の公理といってよい
z
もとは加法とスカラー倍から導き出された
ベクトルの成分表示
¾
¾
¾
¾
平面、空間の直交座標系をO-xy、O-xyzとする
各座標軸の正方向に向かう長さ1のベクトルを I,
j あるいは i, j, kで表す。
基本ベクトル
ある点Pの平面座標を(x, y)とすると
r
r
⎛ x⎞
OP = x i + y j ベクトルの成分表示→ ⎜⎜ ⎟⎟, (x y )
⎝ y⎠
ある点Pの空間座標を(x, y, z)とすると ⎛⎜ x ⎞⎟
r
r
r
⎜ y ⎟, ( x y z )
OP = x i + y j + z k
ベクトルの成分表示→ ⎜ ⎟
⎝z⎠
n成分基本ベクトル
⎛ 0⎞
⎛ 0⎞
⎛1⎞
⎜ ⎟
⎜ ⎟
⎜ ⎟
r ⎜ 0⎟ r ⎜1⎟
r ⎜M⎟
e1 = ⎜ ⎟, e2 = ⎜ ⎟, L , en = ⎜ ⎟
M
M
0
⎜ ⎟
⎜ ⎟
⎜ ⎟
⎜1⎟
⎜ 0⎟
⎜ 0⎟
⎝ ⎠
⎝ ⎠
⎝ ⎠
r
ei
… 第i成分のみが1でその他の成分はすべて0
基本ベクトルを用いて
¾
任意のベクトル
⎛ a1 ⎞
⎜ ⎟
r ⎜ a2 ⎟
a =⎜ ⎟
M
⎜ ⎟
⎜a ⎟
⎝ n⎠
は、
r
r
r
r
r
a = a1e1 + a2 e2 + L an en = ∑ ai ei
n
i =1
ベクトルの相等
¾
成分表示において
⎛ a1 ⎞
⎛ b1 ⎞
r ⎜ ⎟ r ⎜ ⎟
a = ⎜ M ⎟, b = ⎜ M ⎟
⎜a ⎟
⎜b ⎟
⎝ n⎠
⎝ m⎠
n = m, a1 = b1 , a2 = b2 , L , an = bn
r r
⇔ ai = bi (1 ≤ i ≤ n = m ) ⇔ a = b
ベクトルの計算(和)
r ⎛ a1 ⎞ r ⎛ b1 ⎞
a = ⎜⎜ ⎟⎟, b = ⎜⎜ ⎟⎟
⎝ b2 ⎠
⎝ a2 ⎠
r ⎛ a1 ⎞
r
r r ⎛ b1 ⎞
r
r
a = ⎜⎜ ⎟⎟ = a1e1 + a2 e2 , b = ⎜⎜ ⎟⎟ = b1e1 + b2 e2
⎝ a2 ⎠
⎝ b2 ⎠
r
r
r
r
r r
a + b = (a1 e1 + a2 e2 ) + (b1 e1 + b2 e2 )
r
r
= (a1 + b1 ) e1 + (a2 + b2 ) e2
⎛ a1 + b1 ⎞
⎟⎟
= ⎜⎜
⎝ a2 + b2 ⎠
同じ成分同士を足す
n
n
r r n r n r
r
r
r
a + b = ∑ ai ei + ∑ bi ei = ∑ (ai ei + bi ei ) = ∑ (ai + bi ) ei
i =1
i =1
i =1
i =1
ベクトルの計算(スカラー倍)
r ⎛ a1 ⎞
r
r
a = ⎜⎜ ⎟⎟ = a1 e1 + a2 e2 , α :実数
⎝ a2 ⎠
⎛ a1 ⎞
r
α a = α ⎜⎜ ⎟⎟
⎝ a2 ⎠
r
r
r
r
= α (a1e1 + a2 e2 ) = (α a1 )e1 + (αa2 )e2
⎛ α a1 ⎞
⎟⎟
= ⎜⎜
⎝ α a2 ⎠
⎛ a1 ⎞ ⎛ α a1 ⎞
⎟⎟ 各成分それぞれα倍する
∴α ⎜⎜ ⎟⎟ = ⎜⎜
⎝ a2 ⎠ ⎝ α a2 ⎠
n
n
r
r
r
α a = α ∑ ai ei = ∑ (α ai )ei
i =1
i =1
連立1次方程式
r r ⎛ a11 ⎞ r ⎛ a12 ⎞
⎧a11 x1 + a12 x2 = b1
r
r
⇔ x1a1 + x2 a2 = b , a1 = ⎜⎜ ⎟⎟, a2 = ⎜⎜ ⎟⎟
⎨
⎝ a22 ⎠
⎝ a21 ⎠
⎩a21 x1 + a22 x2 = b2
r
r
r
x1a1 + x2 a2 = b
⎛ a11 ⎞
⎛ a12 ⎞ ⎛ b1 ⎞
⇔ x1 ⎜⎜ ⎟⎟ + x2 ⎜⎜ ⎟⎟ = ⎜⎜ ⎟⎟
⎝ a21 ⎠
⎝ a22 ⎠ ⎝ b2 ⎠
⎛ a11 x1 ⎞ ⎛ a12 x2 ⎞ ⎛ b1 ⎞
⎟⎟ + ⎜⎜
⎟⎟ = ⎜⎜ ⎟⎟
⇔ ⎜⎜
⎝ a21 x1 ⎠ ⎝ a22 x2 ⎠ ⎝ b2 ⎠
⎛ a11 x1 + a12 x2 ⎞ ⎛ b1 ⎞
⎟⎟ = ⎜⎜ ⎟⎟
⇔ ⎜⎜
⎝ a21 x1 + a22 x2 ⎠ ⎝ b2 ⎠
⎧ a11 x1 + a12 x2 = b1
⇔⎨
⎩a21 x1 + a22 x2 = b2
スカラー倍
和
相等
平面・空間の位置ベクトル
P
原点が点Oの座標系
Q
r
a
r
r
OP = a , OQ = b
r
b
O
OP
の定めるベクトル
r
OP = a
を点Pのこの座標系に関する位置ベクトルという
Pの座標が
( x, y , z )
ならば
⎛ x⎞
r ⎜ ⎟
x = ⎜ y⎟
⎜z⎟
⎝ ⎠
平面・空間の位置ベクトル
任意のベクトルはある点の位置ベクトル
空間の点とベクトルが1対1にもれなく対応する
P
Q
r
a
r
b
O
PQ = OQ − OP
r r
=b −a
平面・空間上の点を位置ベクトルで表す
平行四辺形ABCDと原点O
A
N
D
C
O
r
r
r
OA = a , OB = b , OC = c
OM = ?
M
B
原点Oの座標系での位置ベクトル
OD = ?
ON = ?
OM = ?
E
¾
¾
Mは線分AC(BD)の中点である
平行四辺形OAECの対角線
OEの中点になる
r r
OE = OA + OC = a + c
A
N
M
B
C
O
1
1 r r
OM = OE = (a + c )
2
2
D
A
N
D
OD = ?
M
1. O→A→Dと経由して作るか
2. O→C→Dと経由して作るか
B
C
O
OD = OA + AD = OA + BC
r r r
= OA + OC − OB = a − b + c
(
問 O→C→Dで
)
OD
を作ってみよ
A
N
ON = ?
¾
(
M
B
線分ADの中点
) (
D
C
) (
O
1
1 r r r
1 r r
ON = OA + OD = a + a − b + c = 2a − b + c
2
2
2
)
問
OA, OB, OC , OD をそれぞれ
ベクトル
r r
r
r r r
a , b , 2a + 3b , a − 2b とするとき、それらの終点を図示し、
r r
AC, DB, BC, CA を a , b で表せ