はじめに - 一般社団法人 千葉県臨床検査技師会

はじめに
前回の資料では「統計解析について」解説さ
範囲を臨床化学検査法に限定していますが、本
せていただきました。今回は、日常検査を行う上
ソフトでは一般的な定量検査にも適用は可能で
で必要な、「定量検査の精密さ・正確さの検討」、
す。
「新規に導入しようとする試薬や機器の検討」およ
検出限界・直線性や干渉物質の影響など、取
び「統計処理をする際に必要なデータの分布型
り決めがないものについても検討できるようになっ
検定」などをEXCEL上で容易に行うために開発
ていますが、判断は各自で行って下さい。
したSTSS/EXCELの解説書を示します。本プロ
重要な問題として、平均や標準偏差など殆ど
グラムの入手方法は、千葉県臨床衛生検査技師
の統計処理は、データ集団が正規分布であること
会のホームページのフリーソフトからダウンロード
を前提としていることから、扱うデータの分布型が
できます。
どのようなものであるのか注意をはらう必要があり
「定量検査の精密さ・正確さ」については、199
ます。また、飛び外れ値の混入に気づかずにデ
9年に改訂された JCCLS(GC−JAMT1−199
ータ処理をしてしまう危険を避ける意味で、分布
9)日本臨床衛生検査技師会 定量検査の精密
型の検討は必要です。STSS/EXCELでは、
さ・正確さ評価法標準化ワーキンググループの指
分布型の検討をグラフ化して確認しながら処理で
針を参考にしていますので、データ等の解釈、評
きるようになっています。
価の詳細については、日本臨床検査標準協議会
なお、操作面で不便さが感じられると思います
会誌 第14巻2号 JCCLS Section または医学
が、Excel の特性上、グラフ化処理において複雑
検査Vo
l.49 NO.7 を参照して下さい。また、2002
な部分があり、苦肉の策を講じた場面が何カ所も
年9月には日本臨床検査自動化学会 科学技術
あります。今後もユーザーの意見を聞きつつ改善
委員会から「日常検査法の性能試験法マニュア
を試みたいと思います。
ル Ver.1.3」が発行されていますのでこちらも参
また、御指導、御校閲賜りました千葉大学医学
照して下さい。さらに、データを解釈する際に利
部附属病院検査部 大沢進先生に深謝致しま
用する生理的個体内変動幅についても各種の文
す。
献から引用して下さい。なお、この指針では適用
【目 次】
は じ め に .........................................................................................................................................34
主な統計機能............................................................................................................................................36
36
必要システム ...............................................................................................................................................4
36
本ソフトウェアの容量....................................................................................................................................4
36
ダウンロード方法 .........................................................................................................................................4
36
ハードディスクへのインストール ....................................................................................................................4
36
プログラム起動法.........................................................................................................................................4
36
転載・配布について.....................................................................................................................................5
37
バージョンアップについて ............................................................................................................................5
37
基本的操作方法..........................................................................................................................................5
37
データ入力について....................................................................................................................................6
38
「シートの保護」について..............................................................................................................................6
39
「解 説」について ........................................................................................................................................7
39
各種ボタンを押す際の注意..........................................................................................................................7
39
[グラフ作製ボタン]について ........................................................................................................................7
39
[新規シートへの書き出し]ボタンについて....................................................................................................7
39
印刷について ..............................................................................................................................................7
39
「ファイルの保存」について...........................................................................................................................7
39
「定量検査の精密さ・正確さ」評価法の流れ ..................................................................................................8
40
各用語の解説..............................................................................................................................................8
41
Ⅰ 精密さの評価法......................................................................................................................................11
43
精密さの評価の解説:................................................................................................................................11
43
精密さの許容誤差限界: ............................................................................................................................11
43
同時再現性(併行精度).............................................................................................................................12
44
ランダマイズ2回測定 .................................................................................................................................14
46
望ましい患者試料の濃度分布 (NCCLS指針より要約) ............................................................................15
47
Ⅱ 正確さ評価法 .........................................................................................................................................16
48
正確さの評価解説: ...................................................................................................................................16
48
1(または2)種類の濃度の血清標準 ...........................................................................................................17
49
3種類以上の濃度の血清標準物質が得られる場合.....................................................................................18
50
比較対照法との比較実験による方法 (相関・回帰図) ................................................................................19
50
ブートストラップ法について ........................................................................................................................22
54
Ⅲ 直線性 ...................................................................................................................................................24
56
Ⅳ 検出限界測定方法(3SD法・2SD法).....................................................................................................25
57
Ⅴ 共存物質の影響試験 .............................................................................................................................26
58
Ⅵ 正規分布型適合度検定と反復切断法.....................................................................................................27
59
データの分布型について...........................................................................................................................27
59
正規分布の検定 実行方法: .....................................................................................................................27
59
外れ値について ........................................................................................................................................28
60
反復切断法 ...............................................................................................................................................29
61
Ⅶ 標本サイズの決定 .............................................................................................................................................................30
62
主な統計機能
•
運用に際してはハードディスクで行って下さい。
定量検査の精密さ評価
フロッピーディスクでの運用は困難です。他の媒
① 管理試料の反復測定値を用い日間変動と
体としてMOやCD-R・CD-RWを使用して下
日内変動を評価
さい。
② 多数の患者試料の二重測定値(ランダマイ
ズ2回測定)
ダウンロード方法
本プログラムは、千葉県臨床衛生検査技師会
•
正確さ評価
① 1(または2)種類の濃度の血清標準物質
のホームページのフリーソフトとして登録され
ています。こちらからダウンロードして下さい。
のみが得られる場合
② 3種類以上の濃度の血清標準物質が得ら
れる場合
③ 比較対照法との比較実験による方法
ハードディスクへのインストール
コンピューターのハードディスク上に適当なホ
ルダーを作製し、本プログラムをダウンロードし
て下さい。つぎにプログラムファイルをダブルクリ
•
直線性
•
検出限界
•
相関図作製
•
共存物質の影響
•
データの分布型検定と反復切断法
しくは 2002 を立ち上げ、本プログラムの入ったフ
•
標本サイズの決定(統計処理上必要なデータ
ァイルを呼び込む(エクスプローラーで直接本ファ
数の算出)
ックして、プログラムの解凍処理をして下さい。
プログラム起動法
コンピューターを起動後、EXCEL97・2000 も
イルを選択しても可)。途中、下図のようなメッセ
ージが出ますが、「マクロを有効にする」を選択し
必要システム
基本ソフトウェア
本ソフトは、Windows95・98・2000・Window
sNTおよびWindowsXP上の EXCEL97・200
0・2002によって動作します。EXCEL95では動
0・2002
作しない場合があります。
本ソフトウェアの容量
約 1.3 MBのファイルになっています(ダウン
ロード時は 0.4 MB)。ただし、シート上にデーを
書き込んでいくとさらに増加します。
てください。(ウイルスチェックは行っています。)
転載・配布について
転載配布は自由です。ただし本テキスト・データを
含めプログラム等に変更をしていない場合に限りま
・ 各種検定における必要なサンプル数の
計算を行えるようにした。
・ 「分布型と反復切断法」シートで分布型
検定後のデータセルロック状態を修正し
す。
た。
バージョンアップについて
•
Ver 1.0 からの変更点
・ ブートストラップ法による回帰式の区間推
EXCEL-Bookの最初にシートへ[はじめに]
定を古典的回帰式から直線関係式へ変
を加え、STSS/EXCELの使用方法などの
更した。
解説を表示するようにした。
•
• Ver 4.1 からの変更点 2002.10
Ver 1.5 からの変更点
「分布型検定」 および 「反復切断法」 を
・ データ容量低減のため、変更を行った。
• Ver 4.2 からの変更点 2002.11
・ 同時再現性シートの追加
加えデータの分布について調査出来るように
・ 解説の変更
した。また、「正確さの評価」における「比較対
・ 検出限界シートの 2SD 法への対応
照法との比較実験による方法」において、外
れ値検出のための「相対的な差の平均値」を
グラフ上部に表示するようにした。
•
Ver 2.0 からの変更点 2000.08
・ 「精密さの評価」において、患者試料によ
基本的操作方法
はじめに各シートには、サンプルデータがつ
いています。このデータを利用して、本ソフトの
操作方法に慣れて下さい。
る評価を追加
・ (多数の患者試料の二重測定値 ; ランダ
マイズ2回測定)
では使用方法などの解説を示します。目的の
・ 「正確さの評価」において「1種類の濃度
項目の上に、マウスカーソルを移動することに
の血清標準物質による評価」の 95%信頼
よって、内容が表示されます。内容はこの解説
区間を表示するように変更
書と同一のものです。わからないことがあれば、
・ 比較対照法との比較実験による方法にお
いて、ブートストラップ法での傾き・切片の
信頼区間を求めることが可能となった。
•
また、STSS/EXCEL の[はじめに]シート
Ver 3.6 からの変更点 2002.07
・ 日内日間の精密度において管理図に使
用する予備データの計算を行えるように
した。また、日差と日内の精密度比較グラ
フを追加した。
・ 相関図において95%等確率楕円の表
示が行えるようになった。
[はじめに]シートを参考にして下さい。
さらに、マウスカーソルの形が「手の形」にな
る所ではクリックすることによって目的にプログ
ラムシートへ移動します。
丸の中で右クリックす
ると各シートが表示さ
れる。
各シートの
解説
何れのシートにおいても青枠
何れのシートにおいても青枠は入力可能範囲を
青枠
示し、それ以外の部分には入力できません。
データ入力について
データ入力は、サンプルデータを削除してから
入力するか、または別にデータだけのシートを作製
し、計算する場合のみプログラムシートへデータを
コピーする方法があります。複数のデータについて
計算する場合には後者の方法が容易に行えると思
います。
ただし、コピーの時には値のみのコピーを実行し
て下さい。以下に方法を示します。
編集 → 形式を選択して張り付け 張り付け
データ張り付けの際の「形式を選択して張り付け」ウ
ィンドウ。データを「値」として張り付けるようにする。
方法を 値 として実行。
たデータは、もう一度入力することをお勧めします。
計算式、書式等まで張り付けてしまうと、計算や
グラフ化が行えなくなる場合があります。また、表入
力の際には、飛びデータがないよう左上詰めで入
力して下さい。
データの中に数値ではなく、文字が含まれてい
ることが有ります(ワープロソフトなどでデータ作成を
行った場合)。列名・行番号に全角文字が入ってい
ないか確認してください。また、ワープロなどで作っ
「シートの保護」について
各シートは保護処理がされています。保護を
解除するとマクロ処理その他に影響が出ますの
で 絶対に行わないで下さい!!。
絶対に行わないで下さい!! 。(解除のため
にはパスワードが必要です)
「解 説」について
各シートには「解説」というセルがあります。マウスカ
基本シートそのものを削除しないよう注意して下
さい!)
ーソルをそのセルに合わせると、そのプログラムの解
説が表示されます。
印刷について
各シートの印刷は、Excelの機能で行います。
各種ボタンを押す際の注意
ボタンを押す際には、必ずシート上のセルが選択
されている必要があります。グラフが選択されている
場合正常な処理が行えません。
1. はじめに、印刷したいところをマウスカーソルで
反転させる。
(グラフ部分の印刷であれば、グラフ周囲のセルを
指定する。)
2. 次に ファイル 印刷範囲 印刷範囲 の設定
[グラフ作製ボタン]について
[グラフ作製ボタン]について
EXCELの制限上、グラフ作製の際に[グラフ作
製ボタン]を押す必要がある場合があります。
[新規シートへの書き出し]ボタンについて
の順にマウスカーソルで移動し決定します。
3. そして、プリンターマークのアイコンか、または
ファイル 印刷 OK で印刷されます。
「ファイルの保存」について
本プログラム上の図表を加工したい場合、基本
本プログラムファイル起動後、最初の保存
最初の保存に
最初の保存
シート(日内日間精密度、3濃度以上の正確さの
際しては、ファイル 名前を付けて保存 を選択
評価、検出限界、相関図、直線性、共存物質)内
し、自由な名前を付けて下さい。
では、シート保護されているため、行えません。新
2回目以降の保存では、 上書き保存 を行
規シートへの書き出しを行うことによって、Excel
Excel
って下さい。こうすることによって本プログラムフ
の機能の範囲で自由に変更を行うことが出来ます。
の機能の範囲で自由に変更を行うことが出来ます
ァイルには変更が行われることなく、新たなファ
ただし、データを入力したシートと新規シートへの
新規シートへの
イル名のファイルで作業を行う事が出来ます。
書き出したシートではデータが連動しません
書き出したシートではデータが連動しませんので
連動しませんので、
ので
なお、Ver4.2ではファイルサイズが1.3MB
データの変更の際には両シートについて変更す
と大きいことから、フロッピーディスクでの運用は
る必要があります。
困難です。ハードディスク以外での運用にはM
なお、新規シートへの書き出しを多数行います
と、「メモリー不足」のメッセージやデータ量が多く
なります。不要な「シート」は[編集][シートの削
除]によって削除して下さい。
(一度削除したシートは元には戻らないので、
OやCD-R・CD-RWを使用して下さい。
以下に評価方法の流れおよび簡単な解説を行います。
「定量検査の精密さ・正確さ」評価法の流れ
いずれの評価を行う場合
精密さの評価
正確さの評価
直線性
検出限界
干渉物質の影響
操作性
にも、飛び離れ値の存在や
START
かが問題となることから、「正
精密さの評価
規分布型検定と反復切断法
シート」を使用してデータ分
標準化への対応
日内・日間精密度
価格 等
正規分布型をしているかどう
正規分布型をしているかどう
布を確認すると良い。
SDs<SDw/2
ランダマイズ2回測定
精密さの改善
SDE<SDw/2
正確さの評価
1(2)種類の
血清標準物質
平均値
信頼区間:
標準値
Bias<5%
Na Cl<2%
3種類以上の
血清標準物質
直線回帰式
SDE=日内精密度
SDS=総合精密度
SDW/2=生理的変動幅の 1/2
比較対照法との
比較評価
直線関係式
比例および一定系統誤差(ブートストラップ法)
b=1、a=0の検定
正確さの改善
医学的意思決定濃度
Bias<5%
END
※自動化学会のマニュアルでは、併行精度(同時再現性)を精密さの評価の最初に行うように示されている。
各用語の解説
8.
精密さ(precision)
ばらつきの小さい程度。標準偏差や変動係数
JCCLS(GC-JAMT1-1999)日本臨床衛生
で表した値を精密度という。
検査技師会 定量検査の精密さ・正確さ評価法
標準化ワーキンググループの指針より引用し一
部加筆。
9.
日内精密度:SDE(within-day precision)
同一と見なせるような測定試料について、同
1.真の値(true value)
測定量の正しい値。実際には求められないの
で認証標準物質の標準値、または、基準法で得
じ方法を用い、同じ試験室で、同じオペレータ
が、同じ装置を用いて1日の内に独立な測定結
果を得る測定条件による精密度。
られた値を真の値とみなす。
10. 日間精密度:SDA(between-day precision)
2.誤差(error)
測定値から真の値を引いた値。
同一と見なせるような測定試料について、同
じ方法を用い、同じ試験室で、同じ装置を用い
て日間にわたって独立な測定結果を得る測定
3.系統誤差(systematic error)
測定結果にかたよりを与える原因によって生じ
条件による精密度で、日内変動による成分を除
いた精密度。
る誤差。系統誤差には、比例系統誤差(prop
ortional systematic error)と一定系統誤
11. 総合精密度:SDS
差(constant systemati error)がある。
4.偶然誤差(random error)
日内精密度と日間精密度を合わせたもの。
12. 正確さ(accuracy)
突き止められない原因によって起こり、測定値
のばらつきとなって現れる誤差。
5.かたより(bais)
測定値の母平均から真の値を引いた値。
かたよりの小さい程度。推定したかたよりの限
界の値で表した値を正確度という。
13. 血清標準物質(serum reference materia
l)
血清そのものを組成とした標準物質で、特性
6.ばらつき(dispersion)
測定値の大きさがそろっていないこと。ばらつ
値が基準法、実用基準法、常用基準法のいず
れかによって決定されるもの。
きの大きさを表すには、例えば標準偏差を用い
る。
14. 標準値(reference value)
標準物質の特性または組成等を調整者が表
7.不確かさ(uncertainty)
示した値。
測定値の真の値が存在する範囲を示す推定
値。
15. 個体内生理的変動の標準偏差(standard d
eviation of within-subject biological va
riation、SDw)
健康な個人が生理的に示す平均的な変動の
大きさを標準偏差で表したもの。
度または他の数値で表したものをいい分析装置、
試薬の性能に起因する。
n=20以上で、盲検の平均値十3SD(または2S
16. 医学的意思決定濃度(medical decision le
D)の値が、低値試料の平均値一3SD(または2
vel)
SD)の値とオーバーラップしないときの低値試料
臨床医が診断や病態鑑別、治療開始の意思
の平均値。
決定を行う上で重要な物質や成分の濃度。
24. 干渉物質(interferent)
17. 許容誤差限界(allowble limit of error)
医学的に許容できると判断される誤差の限界。
干渉物質は、測定において実試料中に共存し、
測定値を変化させる可能性がある目的成分以外
の成分。
18. 基準法(definitive method)
測定原理的に誤差が最低の水準におさえる測
定法で、これは理論的にも実験的にも証明されて
いる方法。
25. 直線回帰式(古典的回帰式)
直線回帰式は、x軸側には誤差はない、または
y軸に比較して無視できる場合を想定した最小2
乗法によって求めた回帰式。
19. 実用基準法(reference method)
測定体系上基準法に次ぐ測定法であり、十分
26. 直線関係式(線形関係式)
に研究され必要条件ならびに手順が明確に記述
直線回帰式に対し、x軸側にも誤差が存在する
され、目的とする用途に相応した正確さと精密さ
事を仮定した回帰式。正確さを評価する際の比
をもった値が得られる測定法。
較対照との比較実験のときに使用する。
20. 日常一般法(field method)
日常検査で多数の試料測定に適用できる測定
法。
21. 被検法(test method)
評価の対象となる日常一般法。
22. 比較対照法(comparative method)
正確さを評価するときの基準になる方法。一般
にこれを基準法あるいは実用基準法であるが、認
証された基準法に対して正確さがトレーサブルな
日常一般法もこれに準ずる。
23. 検出限界(detectionlmit、detection of li
mit;DOLともいう)
検出限は、その測定法で、一定の確率で盲検
から区別できる最小測定単位で、その大きさを濃
Ⅰ 精密さの評価法
精密さの評価は以下の2点によって評価される。
また、精密度と濃度の関係を表す精密さのプロファ
(同時再現性が確認された上で)
イルにおいて、濃度の上昇とともに精密度が明らかに
① 管理試料の反復測定値を用い日間変動と日内
大きくなる場合は、ほぼ一定と考えられる濃度域群
変動を評価
② 多数の患者試料の二重測定値(ランダマイズ2
回測定)
(例えば低濃度域、中濃度域、高濃度域別など)に分
けそれぞれの濃度群別に評価する。なお、精密さの
プロファイルは、多数の患者試料の二重測定値を用
い、平均値を横軸に精密度の指標である範囲(または
精密さの許容誤差限界は、生理的個体内変動の標
標準偏差や変動係数)を縦軸にプロットしたものであり、
準偏差(standard deviation ; SD)の 1/2 または
測定範囲全域の精密度の状況を評価する方法である。
それに対応する変動係数(coefficient of variatio
これらデータに分散分析法を適用することにより、従
n ; CV)の値とされている。
来曖昧であった日間精密度と日内精密度のそれぞれ
精密さが許容範囲外の場合は、その原因について
を適切に推定することが可能となる。
改善策を講じる。!!
精密さの評価の解説:
(日本臨床検査標準協議会会誌 第14巻2号より)
日本臨床衛生検査技師会 定量検査の精密さ・正
確さ評価法標準化ワーキンググループの指針では精
密さの評価を、管理試料による評価と患者試料による
評価の2種類を実施し、いずれの場合も精密度の推
定には分散分析法を用いている。
管理試料による評価の主目的は、長期間安定な試
料を用い、日間精密度と日内精密度の推定すること
である。繰り返し測定日数は20日間以上となっている
(信頼性の高い日間精密度を求めるためには最低で
も16日以上20日程度の期間が必要)。
患者試料による評価(ランダマイズ2回測定法)は、
多数の実検体の二重測定値を用いることで、実際の
患者試料の精密さの状況を観察するとともに、精密度
と濃度の関係の把握を目的とする。この場合の二重
測定は同日内に実施するため日間変動を含まず、管
理試料から得られる総合精密度よりは小さな推定値
が得られ、日内精密度に近い値となる可能性が高い。
ここで、多数の患者試料の測定値は、正確さの評価
に用いるデータと共有すればよく、試料の濃度分布や
測定上の注意点などは正確さの評価の項に準ずると
している。(ただし、異常高値域を多く含む試料を用い
た評価は、健康者の基準値を基に設定した許容誤差
限界が適用できない場合があるので注意を要する。)
精密さの許容誤差限界:
許容誤差限界に対する従来の考え方は3つに大別
される。
1. 臨床的な有用性に基づき医学的意思決定濃度
における基準を経験的に定める方法
(立場や疾患によって基準が異なるという点が懸
念される。)
2. 現在の技術水準に基づいて定める方法
(優れた検査室における分析法の実際の測定誤
差の大きさに目標を求めるもの。)
3. Tonksや北村らによって提唱された基準で測定
誤差を生体の生理的変動幅と比較する考え方
(現在最も広く利用されており、Tonksの考え方
では基準範囲の1/4を基準範囲の中央値で割
った値を用い、その最大値を10%と定めている。
これに対し、北村やCotloveらの考え方は個人
の生理的変動に基づいており、個体内変動幅の
半分を基準値の平均値で割った値を誤差限界と
している。)
本指針では精密さの許容誤差限界として生
理的個体内変動の半分の値(SD W /2)を用い
ている。また、これらの値は基準値付近の濃度に
適用されるものであり、異常域の誤差限界につ
いてはCV%値をその参考として用いる。また、
生理的個体内変動が大きい成分については、許
容誤差限界として5%を上限値としている。
同時再現性(併行精度)
度(SD)の許容限界は、個人の生理的変動幅(S
1) 測定試料の準備:
DW)の1/2以下であること。
基準範囲の下限付近のものと上限付近のも
の、および異常値検体の3種類を用意する。
2) 試料の測定
注意:
短時間に20回測定を行う。この時、容器は
各濃度のデータに、飛び離れ値が存在しないこと
別々に分注したもので実施する。(濃縮などが
を確認すること。
確認する方法としては STSS/EXCEL の「分布型と
起こらないように注意)
3) 結果を「同時再現性シート」に入力
反復切断法」シートを利用すると良い。なお、分布型
4) 結果の解釈→以下の条件を満たさない場合は改
を検定する場合のデータ数は、30以上あることが望ま
善を試みる。
しい。
基準範囲の下限および上限付近検体の精密
40
(%)
元データの分布
(%)
元データの分布
35
30
25
20
15
10
5
0
0
1
2
3
4
5
データ百分率
6
7
8
9
10
11
12
13
元データの分布
(%)
50
45
40
35
30
25
20
15
10
5
0
45
40
35
30
25
20
15
10
5
0
0
1
2
3
4
5
データ百分率
6
7
8
9
10
11
12
13
0
1
2
3
4
5
データ百分率
「分布型と反復切断法」シートで飛び離れ値がないことの確認と分布型の確認を行う。
6
7
8
9
10
11
12
13
日間変動と日内変動の評価
トにデータとグラフがコピーされるので、その
1) 測定試料の準備:
シートを使って行う。
安定な管理試料を用い、基準範囲内のものお
よび異常値検体について3種類程度用意する。
このときマトリックスについても考慮する。
5) 結果の解釈→以下の条件を満たさない場合は改
善を試みる。
2) 試料の測定
① 総平均が基準範囲以下の場合は、総合精密度
1日数回、検体を測定。これを20日以上実施
(SD S )について生理的変動幅(SD W )の1/2で
する。
評価
3) 結果を「日内日間精密度シート」に入力 (このシ
ートでは、1濃度づつの検討となる)
② 上限以上の場合は、以下の式で評価
CV<100×(SDW/2)/健常者基準値の平均値
③ P値の判定結果(危険率 5%)から、日内精密度と
4) プロット図の作成
[分散分析]ボタンを押すことによって、計算お
よびグラフ化がなされる。なお、データやグラフ
について加工したい場合には、[新規シート
日間精密度の関係を検定する
④ 生理的個体内変動が大きい成分については、許
容誤差限界として5%を上限値としている
への書き出し]ボタンを押すと、新しいシー2
分散分析ボタン
新規シートへの書
き出しボタン
分散分析結果
日内精密度と日
間精 密度 の判 定
結果の表示
管理図用データ
日内日間精密度シート:
サンプルデータでは日間にデータ変動のある Ca 試薬検討データを載せた。また、Ver3.7 より
日内日間の精密度において管理図に使用する予備データの計算を行えるようになった。
[例題の解釈]
例題は、Ca 試薬検討データを示した。
「P-値 より 有意水準0.05以下から日内精
密度と日間精密度の差がある!」と判断され、グ
ラフ上においても数日間は安定したデータを示
すが、その後急速に試薬の劣化を示している。試
薬を新しいものに交換することで元に戻っている。
(このデータは、キャリブレーションを実施しない
で30日間データを追ったものである。)
総合精密度が 0.25mg/dlであるのに対し、「健
康者の固体内生理的変動幅;SDw/2」は 0.13m
g/dlである事から、今回検討した Ca 試薬は許
容範囲外となるため、満足な精密度は得られない
と判断される。しかし、試薬交換後の数日間は安
定していることから、この間のみについて再検討
したところ、良好な精密度が得られたため、4~5
日の試薬交換サイクルであれば問題なく使用で
きる。また、Ca の測定を行う場合、一般的には
毎日キャリブレーションを行うと思われるので、こ
の様な日差変動は現れないと考えられる。
日間変動と日内変動の評価では、3濃度以上に
ついて評価を行うため、他2濃度についても同様
に検討するが、この時「新規シートへの書き出し」
ボタンを押して、今回のデータを保存しておく。
ことから、今回の例のように、正規分布を示さない
例では、分散分析の結果を鵜呑みにすることは
危険である(下図)。
前回の資料の「統計解析について」で示したが、
分布型を考慮しない統計判断では思わぬ間違い
が潜んでいる。今回の例では試薬の劣化による
データの変動が生じたわけであるが、長期安定な
試料や試薬が提供されない項目であれば、この
様な現象が生じることも十分考えられるので注意
したい。
さらに、日内変動が非常に小さい場合、日差変
動との間に精密性の差が生じることがある。この
様な場合、臨床的に問題となるかどうかを考慮し
て判断する必要がある。指針では、生理的個体
内変動の半分の値(SDw/2)を用いて判断する
ように示されている。
元データの分布
(%)
60
50
40
30
20
10
0
ちょっと考えて:
日臨技の指針では分散分析法を用いて精密度
を評価する方法を取っている。分散分析法は分
散が正規分布することを仮定した分析方法である
0
1
2
3
4
5
6
7
8
9 10 11 12 13
データ百分率
Ca試薬の30日間総合精密度の日差変動ヒ
ストグラム:正規分布していないことが解る。
ランダマイズ2回測定
(患者試料による精密性の評価)
1) 測定試料の準備:
50例程度の患者試料を準備する。この際、N
CCLSの望ましい患者試料の濃度分布を参考
に試料を集める。
2) 試料の測定
集めた患者試料に順番をつけ、1 回目の測
定を実施する。つづいて 2 回目の測定は、順番
を単純無作為抽出法でランダムにするか、等間
隔ランダム法を用いるか、あるいはまったく逆の
順番にして同日内に測定する。(等間隔ランダ
ム法は、母集団の最初の一つを乱数表から抽
出し、以降は一定間隔で抽出していく方法で、
単純無作為抽出法より簡単にランダム化が出
来ることから薦められる。) なお、2回目の測定
時には試料の濃縮や変性に注意して測定す
る。
3) 結果を「ランダマイズ 2 回測定シート」に入力
4) 結果の解釈
①差のプロットが測定値の平均値の大きさにか
かわらずほぼ一様であることを確認する。
②差が測定値によって一様でない場合(値の上
昇に伴い増大するなど)は、ほぼ一様と考えら
れる濃度群(例えば低濃度、中濃度、高濃度
群の別)に分けて、それぞれの濃度群につい
て評価する。
③極端に大きな差がある測定値は外れ値でな
いかを検討する。
(外れ値の検出は、差の絶対値の平均値の4
倍以上ある場合をいい、その原因を検討し外
れ値のときは除外する。→原因の検討はその
場でやらないと解らなくなってしまうことが多い
ので、データの整理は分析後速やかに行うこ
とを薦める。どの値か見る場合は、差の残差
グラフ上にプロットされた点にマウスカーソル
を合わせると数値が表示される)
④標準偏差(SDE)と健康人の固体内生理的変
動の 1/2(SDw/2)と比較する。
SDE < SDw/2 であれば良し。
なお、本ソフトではデータセット数は最大100
まで
望ましい患者試料の濃度分布 (NCCLS指針より要約)
患者試料濃度域
基準範囲の下限値以下
基準範囲の下限値から平均値
基準範囲の平均値から上限値
基準範囲の上限値から上限値の2倍
基準範囲の上限値の2倍から4倍
基準範囲の上限値の4倍以上
基準範囲が低濃度域の場合
15~30%
20~30%
20~40%
10~20%
約10%
基準範囲が中濃度域の場合
10~30%
20~25%
20~25%
20~40%
ちょっと考えて:
外れ値を除外する際の注意として、機器・試薬の
2) 技術誤差 …
不良、操作ミスなどいろいろな要因をチェックする。
偶発的なもの(精密度を表現)
そのためには、測定結果を速やかに処理し、外れ
系統的なもの(正確度を表現)
値を見つける必要がある。以下にバラツキの起こる
総誤差(左記2つを合わせたもの)
3) 手技誤差 … 個人間の手技の違い、手技
原因を示す。
1) 固有誤差 … 検査法によるもの、使用器
の間違い
具・使用機器によるもの
差の絶対値の平均値
郡内平方和(SE)
誤差分散 (VE)
標準偏差(SDE)
ランダマイズ 2 回測定シート
Ⅱ 正確さ評価法
① 1(または2)種類の濃度の血清標準物質の
みしか得られない場合は、その反復測定値
みしか得られない場合
から求めた平均値の標準値からの偏りを評価
する。
信頼性で推定するためには、血清標準物質は4種類
以上の濃度を用いることが望ましい。
一方、血清標準物質を入手できない場合は、実用
基準法で値付けしたプール血清を、血清標準物質の
② 3種類以上の濃度の血清標準物質が得られ
代わりに用いることもできる。また実際与えられる標準
る場合は、それらの反復測定値の標準値に
る場合は
物質は1種類であることが多いが、それぞれを希釈調
対する関係を直線回帰式により評価する。ま
整して複数濃度の標準物質を作成する場合は、希釈
た、正確さの評価は直線性が得られる範囲内
用試料は一般的な患者血清と物理化学的性質が同
で行う。
様なものを用い、希釈操作は重量法などを用いて極
③ 比較対照法との比較実験による方法
力正確に行う必要がある。
血清標準物質が入手できない場合は、多数
血清標準物質の繰り返し測定は、ある日に集中的
の患者試料の比較対照法による測定値に対
に実施するようになっているが、その前提には日間誤
する被検法による測定値の関係を直線関係
差が無視できることを仮定しており、精度管理が十分
式で表し、被検法の正確さを一定系統誤差と
な状況下で測定を実施する必要がある。したがって、
比例系統誤差の大きさで評価する。
日間誤差が無視できない分析法の場合には、5日間
程度に繰り返し測定を分けて実施し、得られた測定値
正確さの評価解説:
(日本臨床検査標準協議会会誌 第14巻2号より)
を用いて結果の解析を行う必要がある。
多数の患者試料の測定も、日間誤差を相殺できる
日本臨床衛生検査技師会 定量検査の精密さ・正
ように、分析法が安定状態にあるときに精度管理を行
確さ評価法標準化ワーキンググループの指針では正
いながら、比較対照法と被検法の両法で毎日5~10
確さの評価は、① 1(または2)種類の血清標準物質
例ずつ5日以上に分けて測定を実施する。患者試料
による評価、② 3種類以上の血清標準物質を用いる
数は、信頼性の高い推定を行うために血清性状が異
評価、および、③ 多数の患者試料を用いた比較対
常でない50検体以上を用いる。試料分布については
照法との比較評価の3つに大別され、それぞれ評価
NCCLSの指針に準じ、分析法の測定可能範囲を考
のための解析手法も異なる。
慮し低値や高値側に極端な片寄りを示し、2相性分布
「①の1種類の血清標準物質による評価」は、分析
にならないような試料を集める必要がある。また、すべ
法の直線性が満足され一定系統誤差がないという前
ての患者試料をそれぞれ分析法で二重測定しておけ
提がなければ必ずしも測定範囲全域の正確さが保証
ば、正確さと精密さの両評価に利用することができる。
できない。その点、「②の3種類以上の血清標準物質
測定値の解析については、3種類以上の血清標準
を用いた評価」や「③の比較対照法との比較評価」は、
物質を用いる場合は直線回帰式(古典的回帰式)を
全域の正確さを比例系統誤差と一定系統誤差で評価
適用し、比較対照法に対する比較評価には直線関係
することができ、より望ましい評価法といえる。ただし、
式を適用した。その背景には、比較対照法に無視で
前提として分析法の直線性が確保されていることを事
きない誤差が含まれる場合に、通常の回帰式を適用
前に確認しておく必要がある。また、系統誤差を高い
することの統計学的な問題があるためである。
ちょっと考えて
の比較実験においては、比例および一定系統誤差の
直線回帰式と直線関係式の関係について詳しく述
統計学的検定によることとしている。この条件を満足
べると、直線回帰式はX軸のデータには誤差がないと
することが望ましいが、棄却された場合にはもう一段あ
いう前提で成り立っている。このため、3種類以上の血
まい基準として、バイアスの相対値の経験的な限界を
清標準物質を用いる場合は、標準物質であることから、
5%(Na・Clは2%)以下で処理する。評価のための
X軸上に誤差はないとして処理を行う。一方、比較対
濃度水準は医学的意思決定濃度とし、具体的には基
照法ではX軸・Y軸の両測定法に誤差があるため、直
準範囲上限値や治療方針決定値などを用いる。また、
線回帰式の前提のまま処理することはできない。そこ
比較対照法との比較実験においては、基準法あるい
で直線関係式を適用する。
は実用基準法を用いることが望ましいが、これら認証
された基準法に対して正確さが既知な自動分析装置
直線回帰式
90
による方法などを用いても良いとしている。
80
1(または2)種類の濃度の血清標準
物質のみしか得られない場合
70
60
1) 測定試料の準備:
50
指示に従い試料を調整する。
2) 試料の測定
40
140
160
180
200
直線回帰式では、y軸方向のみの誤差を
想定して回帰式を算出している。
90
返し測定を行う。また正確さの評価は直線性が得
ら れ
る範囲内で行必要があるた
め、先に測定法の直線範囲を確認しておく必要
直線関係式
がある。なお、正確さの評価を行う場合の前提とし
て、精密さが確保されている必要がある。
80
3) 結果入力
70
試料の表示値と実際の検査結果を「正確さの
評価」シートに入力して、[ 計算およびグラフ化]
60
ボタンを押す。
50
40
140
被検法が安定な状態にあるとき、10回以上繰り
(このシートでは数種類の濃度について
検討できる。)
160
180
200
直線回帰式に対して、直線関係式では回帰
式に対して直角の誤差を想定して算出して
いる。
正確さの許容誤差限界
1(または2)種類の血清標準物質を用いる評価で
は平均値の信頼区間と標準値を比較し、3種類以上
の血清標準物質を用いる評価あるいは比較対照法と
4) 結果の解釈
① 95%信頼区間の上限と下限の間に試料の表
示値が含まれれば平均値付近の濃度域におけ
る有意な偏りはないとみなす。
② 信頼区間から外れた場合には、バイアスの上限
5%(Na・Cl 2%)以内であれば良好とみなせ
る。
5)
3種類以上の濃度の血清標準物質
が得られる場合
が得られる場合
結果の解釈
① グラフから測定法の直線性を観察し、直線性か
ら外れたときはその原因を追究する。
② 残差プロット図では、全濃度にわたってばらつ
1) 測定試料の準備:
3種類以上の安定な管理試料を用いる。このと
きの一定性を確認するとともに、極端に乖離す
る測定値は外れ値であるかどうかを検討する。
きマトリックスについても考慮する。また正確さの
③ 比例系統誤差・一定系統誤差の検定結果から
評価は直線性が得られる範囲内で行必要がある
判定する。また検定結果から外れた場合は、医
ため、先に測定法の直線範囲を確認しておく必
学的意志決定濃度5%(Na・Cl 2%)における
要がある。
評価を行い、正確性について判定する。(検定
2) 試料の測定
各濃度について、5回以上測定。(本ソフトでは
最大20まで)
3) 結果を「正確さの評価シート」に入力
では、精密性が非常に高い場合に僅かな誤差
が正確性に影響を与えてしまうことがある。臨床
的な有用性を考えて判断することも必要であ
る。)
4) プロット図の作成
[計算およびグラフ化]ボタンを押すことによっ
[計算およびグラフ化]ボタン
て、直線回帰式の傾きおよび切片から、比例系統
誤差・一定系統誤差の検定を行い、同時にグラフ
が作製される。
95%
信頼区間
比例系統誤差・一定
系統誤差の検定結果
正確さの評価シート(サンプルデータはCRP試薬の検討結果を示した)
比較対照法との比較実験による方法
(相関・回帰図)
5日以上測定する事が望ましい。
3) 結果を「相関図シート」に入力
(相関図は新しいシートに作成される。)
1) 測定試料の準備:
基準範囲下限付近から、上限値の4~5倍程
度の濃度の 望ましい患者試料を、50例以上用
意する。データはX軸・Y軸共に連続性があるよう
にし、空白欄がない事が望ましい。
(濃度範囲を指定して相関関係を見たい場合は
データを並べ替えてから作図範囲の指定)
4) プロット図の作成
複数個の相関関係を見るために、グラフ化する
範囲を指定し、相関関係を見るように設計した。
(濃度範囲を指定して相関関係を見たい場合
なお、プロット図を作製する際、データの並べ替
はデータを並べ替えてから作図範囲の指定)
え(データ専用シートを用意しそのシート上で[デ
2) 試料の測定
ータ][並べ替え])をしておき、目的のデータ範囲
比較対照法と被検法が安定な状態にあるとき
について(低濃度、中濃度、高濃度別など)作図
試料測定を行う。なお、どちらかの方法に日間変
範囲を指定して相関図を作成すると特定の範囲
動が存在する場合、患者検体は1日で測定せず、
のみの相関関係を求めることもできる。
比較対照法と被検法の両法で毎日5~10例ずつ、
列名
行番号
[相関分析]ボタン
[相関分析]
相関図シートにおいて[相関分析]
[相関分析]ボタンを押
相関図
[相関分析]
すと、図のような相関図作成ダイアログボックスが
表示される。
このダイアログボックスでは、相関分析を行いた
い比較対照法データをX軸に取り、被検法をY軸
として処理を行う。X軸列名には比較対照法デー
タのあるEXCELシートの列番号(b・c・d・・・)を入
力し、開始番号にはEXCELシート上の行番号を
入れる。
相関図作成ダイアログボックス
作図範囲、タイトル、軸名、誤差分散比、さらに
信頼区間から判断する。信頼区間内に傾き=1・
ブートストラップ法による傾きおよび切片の信頼区
切片=0が入っていれば、比較実験の結果が良
間の計算やマハラノビス等確率楕円の表示など
好であった事を示すが、入らなかった場合は、
が可能である。ただし、両機能を同時にチェック
「医学的意思決定濃度」の5%を限界として判断
するとエラーが発生するので、必要な機能どちら
する。
か一方で実施する。
[OK]ボタンによって新規シートが自動的に作
製されグラフ化される(データ数が多いと処理に
時間を要する場合がある)。なお、作図範囲は
Excel 上の「行列番号」を入力する。
一般的な相関と回帰分析にこのシートを利用す
る場合:
「正確性の評価」では現れないが、一般的な
相関と回帰分析では、曲線の回帰を示すような
データも存在する。この様な場合には、変数変
関係式を利用する場合に、X軸とY軸のバラツ
換(log変換など)を行って処理することによ
キの比がわかっていれば、誤差分散比「λ」を考
って直線が得られる場合もある。変数変換でも
慮した関係式が出力される。わからないまたはほ
うまくいかなときは、曲線をいくつかに分割し
ぼ同等と考えられる場合には、「1」を入力する。
て、処理を行う(スプライン平滑化法)
。
誤差分散比 λ は以下の方法によって求める。
各方法について同一試料を用いた測定値の分散
マハラノビス95%等確率楕円は、「比較対
値(SDを2乗してもよい)を下式に当てはめ算出
照法との比較実験による方法による正確性の
する。
評価」に使用するものではなく、相関性を見る
際に使用する。この楕円が示すものは、xとy
誤差分散比 λ = X軸の分散 / Y軸の分散
の2変量が正規分布であるとき、分布の中心
(平均)からの等確率距離を表すものである。
5) 結果の解釈
相関性があるときには細長い楕円となる。
データのチェックポイントとしては、外れ値の問
題と使用したサンプルの問題がある。
注意:
外れ値の検出については、「相対的な差の平
ブートストラップ法による信頼区間の計
均値 dB’」 がグラフ上部に表示される。その値
算は500試行を行うため計算に時間を必
の4倍以上ある測定値はその原因を究明し外れ
要とするので、信頼区間を求めたい場合のみ
値の時は除外する。(どの値か見る場合は、差の
ブートストラップ法チェックボックスをO
残差グラフ上にプロットされた点にマウスカーソル
Nにする。また、相関図内の 回帰式 およ
を合わせると数値が表示される)
び
使用したサンプルの問題については、望ましい
濃度分布にある患者検体が、日常検査ではなかな
か得にくい場合、人工的に作成することもやもう
えないと思われるが、この時マトリックスにも注意
をはらう必要がある。
比例系統誤差・一定系統誤差の検定(回帰分
析)は、ブートストラップ法による傾きbと切片aの
Syx表示
が計算された値と異なる
場合がある(EXCELのバグ?)。シート上
部にある計算結果で確認。
[相関分析ボタン]を押す際にはシート上の
どこかのセルが選択されていること
新シートを何枚も作製すると「メモリー不足」
となる事があるが、「EXCEL」を一旦終了する
ことによって再び分析可能となる。
ブートストラップ法の結果
相関と回帰表示画面
各種CRP試薬の相関性
50
n = 105
r = 0.9556
古典的回帰式
y =0.981 x + 0.879
Syx = 2.204
線形関係式
y = 1.027 x + 0.47885
Syx = 1.573
マハラノビス95%等確率
楕円の表示を行ったところ
CRP-N
40
30
20
10
0
なお、この相関図シートは「比較対照法との比較
実験による方法」の検討以外に、一般的な相関分
析・回帰分析も行えるので利用していただきたい。
-10
-10
0
10 20
ARRAY
30
40
ブートストラップ法について
ブートストラップ法について
統計的推測における誤差の評価方法として、これ
③ 乱数をnコ発生させ、表のランダム値区間に対
までは母集団の変動を何らかの分布型(多くの場
応するデータ得る。
合正規分布)で近似して、誤差の評価を理論的・数
(このデータはブートストラップ標本と呼ぶ。この
武的に行ってきた。これに対して、複雑な理論や数
データでは、基のデータの内何個かが重複し
式に基づく解析を、コソピュータを用いた大量の反
て取り出される)
復計算で置換える統計的手法が近年注目を集め
④ 得られたデータから相関係数を算出する。
てきた。これが、エフロン(Efron,1979.1982)の
⑤ この作業を数百回から数千回繰り返す。
提唱するブートストラッブ(Bootstrap)法である。
われわれは、母集団から一部の標本データを抽
例題:無作為に抽出した高校生男子20人の身長
出し、平均や標準偏差(正規分布を仮定)を求め、
と体重の相関係数とその信頼区間について算出す
データの評価を行っている。しかし、データの評価
ることを考えてみる。
に用いる標本数はごくわずかであり、かなりの誤差
はじめに、表を作成し、ランダム関数をコンピュー
が含まれている。(1例として、日本人成人男性の身
ターで発生させる。つぎに得られたブートストラップ
長の平均を求めようとした場合のことを考えてみる。
標本から相関係数を算出する作業を1000回程度
全日本人成人男性の内、100人ほどのデータから
繰り返す。1000個の相関係数を小さい順に並べ、
平均値を算出するのは、きわめて危険であることが
小さい方から 2.5%の相関係数と大きい方から
推定できる。)
2.5%(中央部分は 95%)の相関計数値が信頼区
平均の場合は、標本数(n)、標本標準偏差(s)か
ら標準誤差
s
n
間となる。
を推定することができる。しか
では、STSS/EXCELで使用している回帰式の区
し、相関係数や回帰式の誤差を求めるのは、標準
間推定ブートストラップ法がどのような計算手順で
偏差などから単純に算出することはできない。そこ
求められているか解説する。回帰分析の場合は、
で、ブートストラップ法という手法を用いる。
回帰式から求めた予測値と、その残差を求める。そ
ブートストラップ法には、確率分布(正規分布)を
仮定したパラメトリック・ブートストラップ法と確率分
布を仮定しないノンパラメトリック・ブートストラップ法
がある。相関と回帰分析の場合は、分布型にとらわ
して、残差に基づいて新たにブートストラップ標本
作成し、信頼区間を求める。以下に例題を示す。
例題:下表に示すデータを利用して回帰式の推
定区間を求める。
れないノンパラメトリック・ブートストラップ法を採用
① 回帰式を求める。
する。
② 体重予測値とその残差を求める。
ノンパラメトリック・ブートストラップ法の作業手順
③ 20個のランダム関数を発生させ、ランダム値
について解説する。はじめに相関分析の場合は、
の区間から対応する残差を得る。(ブートスト
以下に示す作業を繰り返し、各相関係数小さい順
ラップ残差標本)
(大きい順)に並べ、その5%点から95%点を算出
④ NO.1~NO.20の身長データを回帰式に代
して推定値を求める。
入し、ブートストラップ残差標本の残差データ
① 観測したすべてのデータを適当に並べる。
を加える。(ブートストラップ標本)
② 観測データと 0~1 のランダム値区間を示し
た表を作成する。
(ブートストラップ標本)=(予測値)+(ブートスト
ラップ残差)
NO.1
y = ( 0.84 × 170 - 75.3 ) + 4.3
,
90
NO.2, ・,・,・・・・・・・・・,NO.20
85
80
(+4.3は最初にランダム関数を発生させた
差+4.3を使用した。)
⑤
ブートストラップ標本から回帰式を求
体重(Kg)
ときの値が0.224であったので、そのときの残
n = 20
75
r = 0.8532
古典的回帰式
y =0.839 x + -75.3
Syx = 5.685
線形関係式
y = 0.980 x + -99.198
Syx = 4.354
70
65
60
55
50
45
める。
40
⑥
③∼⑤を数百回から数千回繰り返す。
⑦
回帰式の傾きと切片を小さい順に並べ、
130
140
150
160
170
180
190
身長(cm)
身長と体重の相関性
中中央の95パーセンタイルをもって傾
ブートストラップ法(500 回)による
き・切片の95%信頼区間とする。
線形回帰式の信頼区間
傾きb信頼区間= 0.90∼1.04
切片a信頼区間=-109.7∼-86.1
NO.
.
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
身長
(cm)
170
160
155
148
180
176
168
163
185
142
172
164
178
172
171
169
176
174
170
179
体重
(Kg)
62
58
56
50
80
81
68
60
86
50
63
60
69
75
55
60
70
75
65
80
体重予測
値(Kg)
67.3
58.9
54.7
48.9
75.7
72.4
65.6
61.5
79.9
43.8
69.0
62.3
74.0
69.0
68.2
66.5
72.4
70.7
67.3
74.9
残差
(Kg)
-5.3
-0.9
1.3
1.1
4.3
8.6
2.4
-1.5
6.1
6.2
-6.0
-2.3
-5.0
6.0
-13.2
-6.5
-2.4
4.3
-2.3
5.1
ランダム値の区間
0.0000
0.0501
0.1001
0.1501
0.2001
0.2501
0.3001
0.3501
0.4001
0.4501
0.5001
0.5501
0.6001
0.6501
0.7001
0.7501
0.8001
0.8501
0.9001
0.9501
~
~
~
~
~
~
~
~
~
~
~
~
~
~
~
~
~
~
~
~
0.0500
0.1000
0.1500
0.2000
0.2500
0.3000
0.3500
0.4000
0.4500
0.5000
0.5500
0.6000
0.6500
0.7000
0.7500
0.8000
0.8500
0.9000
0.9500
1.0000
Ⅲ 直線性
1) 測定試料の準備:
的にY理論値、差、偏差率が計算され、プロット
高濃度検体準備し、この検体について 10段
図および回帰式も作成される。
階希釈または相当する希釈系列を作成する。こ
(この例では 5/10・4/10・1/10の3点から
のときマトリックスについても考慮する。
回帰式を作成して直線の理論値としている)
4) 結果の解釈
2) 試料の測定
希釈検体について数回測定し、その平均値を
プロット図および偏差率から直線性を観察し、
求める。
許容される偏差率(3%)、またはY理論値に対
3) 結果の入力
する差から直線範囲を求める。(例:偏差率3%
を許容限界とすると、この例では23.6まで直線
結果を「直線性シート」の値列に入力。
値の内、回帰式作成に利用できるデータを「回
帰式に利用するデータ」欄に入力すると、自動
直線性シート
性があると考えられる)
Ⅳ 検出限界測定方法(3SD法・2SD法)
て、得られた結果と、その平均値および標準偏
1) 測定試料の準備:
盲検試料(blank)と5種以上の系列の試料を
差からグラフが作成される。
(5)結果の解釈
準備する。
盲検試料とは、目的成分を含まないものであり、
「盲検試料(blank)の平均値+3SD(+2
マトリックスを考慮する必要があるが、入手困難な
SD)の値」(3SD:赤いライン,2SD:黒ライン)と
場合は、試薬ブランクで代用する。5種以上の系
「5種の低値試料の平均値-3SD(-2SD)」の
列の試料とは、予測される検出限界を含む濃度
値が、オーバーラップしない試料の測定値(平
であり、かつ間隔は細かいことが望まれる。この
均値)を読みとる。この例では0.32がその値と
系列についてもマトリックスを考慮する。
推定される。なお、試料の測定値がマイナス
予測される検出限界が不明な場合、はじめに
値で表示されない場合は、吸光度などを利
大まかな系列によって当たりをつけ、続いてさら
用して求めたり、マイナス値を含まない最
に細かな間隔で実施する。
小値をblank代わりに使用して求める必要が
2) 試料の測定
ある。
それぞれの検体を n= 20 以上測定(この
シートでは n=20 まで)
検出限界を求める場合も、算出の基とな
るのはSDであることから、各濃度のデー
3) 結果を「検出限界シート」に入力
タは正規分布していることが前提となる。
4) プロット図の作成
したがって外れ値がないかをチェックする
[計算およびグラフ化]ボタンを押すことによっ
検出限界シート
必要がある。
Ⅴ 共存物質の影響試験
1) 測定試料の準備:
工がしたい場合には、[新規シートへの書き出
しボタン]を押し、書き出したシート上のグラフ
各干渉物質が添加された添加べ一ス血清と
の加工を行う。
べ一ス血清ブランクを用いて、5~10段階の混
合系列を作製し、添加試料ごとに添加濃度を
5)
計算する。
2)
結果の解釈
プロット図および変化率を観察し、許容され
試料の測定
る変化率から判断する。
それぞれの試料を3重測定以上行う
3)
結果を「共存物質シート」に平均値を入力する
4)
プロット図の作成
タイトル・混合系列濃度および測定結果を入
力すると、自動的にグラフ化される。グラフの加
共存物質シート
Ⅵ 正規分布型適合度検定と反復切断法
データの分布型について
更され、ヒストグラムに反映される。また、正規
統計処理データ殆どが、正規分布を前提として
分布型を判定する際には、級間隔を変更する
組み立てられている。しかし医学データの殆どは
ことによって、当てはまりが良くなる場合がある
厳密には正規分布でないものも多い。
ので調整する。階級数の目安は、 ルート(デ
このような場合には、ノンパラメトリックな方法を用
いて処理すべきであるが、べき乗変換によって正
規化し、データ処理後(検定・反復切断など)元に
戻す方法によって、より検出力の高いデータを得る
ことが出来る。
ータ数) または 下表を参考にして行うと良
い。
③ 元データの分布図およびχ 2 値から分布型を
推測する。
有意水準 5%の χ 2 値は 表に示す通り
本プログラムでは、-1~2までのべき乗変換(5
であるため、元データ分布のχ2値がこの数値
種)を行なった後、χ 2 値を算出し、適切な分布型
より小さい場合は、その分布は正規分布型で
を求めるものである。また、データの中に混在する
あると判定される。
外れ値を切断し、より正規分布に近づける処理(反
復切断法)も行える。
χ2乗適合度検定について
χ 2乗適合度検定は、予測値に対するずれを
表現するものである。
ここでは、正規分布に対するデータ分布のず
れを求めるために使用している。χ2 値が小さい
ほど、正規分布からのずれが小さいことを意味す
階級数の目安とχ2値
データ数
30こ程度
40こ程度
60こ程度
130 こ程度
250こ程度
500こ程度
1000 こ程度
2000 こ程度
4000 こ程度
階級数
5
6
7
8
9
10
11
12
13
有意水準5%のχ2値
6.0 (自由度 2)
7.8 (自由度 3)
9.5 (自由度 4)
11.1 (自由度 5)
12.6 (自由度 6)
14.1 (自由度 7)
15.5 (自由度 8)
16.9 (自由度 9)
18.3 (自由度10)
る。
正規分布の検定 実行方法:
① 元データのブルーの欄にデータを入力する。
データを入力できるセルはブルーのセルのみ
(B8:B5025)
② 階級数を入力
設定可能範囲 ( 5~13 階級数)。
この数値を変えることによって、級間隔が変
分布が正規分布型でない場合には、次のべ
き乗変換処理や反復切断法を試みる。なお、
外れ値がある場合には、その原因を追及する
必要がある。→「外れ値について参照」
各べき乗変換後のχ2値表示
反復切断値の入力
階級数の入力
データ入力欄
分布型と反復切断法シート:
正規分布の検定と各種変数変換後の正規分布型への一致性をχ2値によって判定す
る。さらに、反復切断法によって外れ値の除外も行える。
④ 分布型検定ボタンを押すと右図のようなウィン
ドウが表示されるので、目的の項目を実行す
る。
このとき一番上の入力データのバックアップ
を必ず一度だけ実施。複数回実行すると元デ
ータが失効してしまう。
「各べき乗変換後のχ2値表示」は-1~2ま
でのべき乗変換(5種)を行った場合のχ2値を
示す。ここでのχ 2値を参考にして次のべき乗
変換を行う。更にきめ細かく調整したい場合は
任意の変換値欄に数値を入れて計算させる。
χ 2 値が小さければ小さいほど正規分布型に
近いことを示す。
「べき乗変換の選択」では元データ欄のデ
ータを目的の値に変換し、そのときのヒストグラ
ム表示を行い、分布型を視覚的に確認すると
ともに、χ2値・尖度・歪度をみて分布形態を知
る。
「元データに戻す」は、べき乗変換されたデ
ータを入力時のデータの戻す機能である。
外れ値について
外れ値の存在は、解析結果に大きく影響するた
め、その取り扱いには注意を要する。
外れ値の除外にあったっては、目的に応じて行
うべきである。迷った場合は、除外しない場合と除
ると極端値混入の危険性が高くなる。臼井法の
場合2.6SDが適当といわれている。
外した場合の両方を行って、得られた結果に違い
ただし、生物学的実験データ以外の統計学上
が認められなければ、外れ値を含めたデータで結
のデータはスルミノフ棄却検定において1つのデ
論を述べる。違いがあるときにはその原因を検索し、
ータを除くことしかできない。なお、反復切断法
やむを得ず除去する場合、反復切断法などのパラ
は正規分布に対して行うべきものであるため、切
メトリック法でデータ除去を行うときには、分布型に
断を実行する前には分布型を確認する必要があ
注意し、生データが正規分布を示さないときには
る。このとき分布が正規分布でない場合、上記の
変数変換によって正規分布化してから除去を行う
べき乗変換を実行し出来るだけ分布型を正規分
ように心がける必要がある。
布に近づける事が望ましい。サンプルデータのよ
外れ値の除去には、ランダマイズ2回測定で
は差の絶対値の平均値の4倍以上を用い、その
うに歪んだデータの場合、高値データのみが切
断されることになる。
他の場合は±2SDまたは±3SD以上の値
で切り捨てたり、反復切断法、スミルノフ・グ
反復切断法実行方法:
ラブス棄却検定法などがある。2変量以上のデ
¾ データを入力できるセルはブルーのセルのみ
ータの外れ値検出には、必ず散布図を作成し、
マハラノビス等確率楕円を使用し判断する。
(B8:B5025)
χ 2 値・尖度・歪度およびヒストグラムから分布
形態を観察し、正規分布から著しく異なる場合
反復切断法
は、上記の「べき乗変換」を行い正規分布に近
づけた後実施する。
¾ 計算する「データ数」と切断するための「標準
生物学的な実験においては、思わぬ異常値
が混入する場合がある。これらのデータを除去す
ることは、ある程度やむを得えないと考えられる。
偏差(SD)」を入力後[反復切断実行]ボタン
を押す。
¾ 切断後のデータ分布がリアルタイムで表示さ
除去の仕方としては、
れる。ただし、グラフの処理に時間がかかるた
①データの±2SDまたは±3SD以上の値を
め、データ数が多いと非常に時間がかかる。
切り捨てる。
②データの±2SDから±3SD以上の値を繰り
返し切り捨てていく反復切断法(臼井法)な
どがある。
切断中の文字が切断終了となるまで待つ(D
4)。なお、グラフの折れ線図は T分布を示
す。
¾ 「べき乗変換」後に反復切断を実行した場合
は、このあと分布検定の「元データに戻す」を
反復切断法とは、異常データを削除する一つ
実行してデータを戻し、切断されたデータを参
の方法であり、指定した切断 SD 値によって繰り
考にして削除するデータを確認しながら手作
手作
返し異常データを削除するものである。
業でデータを削除して反復切断後の値を求
除去する場合、小さいSDで外れ値を除外する
と、除外してはならないデータを誤って外れ値と
してしまう危険性が高くなり、大きいSDで除外す
める。
める
Ⅶ 標本サイズの決定
標本サイズの決定シートでは、つぎの4つの場合に必要な標本サイズを求めることができる。有意水準
(α)は 0.05 と 0.01 の固定で、検出力も0.8の固定とした。
¾ 区間推定の場合
n≥
N = 母集団のデータ数
M = 平均値
σ2 = 母集団の分散 (SDのときは2乗する)
有意水準(α) 例:5%の誤差の場合は(0.05)
2
ε = 誤差の2乗 例:5%の誤差の場合は(0.05×平均)2
1
ε2
1
1
(1 − ) +
2
4σ
N
N
¾ 母比率の区間推定の場合
母比率 p は、既知であればその確率を代入するが、わからない場合は予備調査の結果または
p = 0.5 を仮定して計算する。
2
Z 
n ≥  α / 2  p (1 − p )
 x 
¾ 独立2群の差の検定を行う場合
Zα=(1−α):正規分布における確率
Zβ=(β):正規分布における確率
差(δ) = 検出する平均値の差
2σ 2
2
n ≥ 2 (Z α + Z β )
δ
¾ 母相関係数の差の検定
2




2(Z α + Z β )
 +3

n≥
  1 + r1 
 1 + r2  
 − ln
 
 ln
1
−
r
1
−
r
1 
2 

 
r1=母相関係数 1
r2=母相関係数 2