第½章 変数分離形

第 章 変数分離形
変数分離形
¼
1階の微分方程式
が、
¼
は、次のようにし
のように、独立変数と従属変数の関数の積で書けるとき、この微分方程式を変数分離形という。
て解ける。両辺を で割ると、 は、
となる、この両辺を積分すると
任意定数
で、置換積分を用いると、左辺は
左辺
となり、 だけの積分で書けるから、微分方程式の一般解は、
を解いて求められる。初期値問題を解くときは、初期値における関係式を用いて、定数を決定すればよい。
の 、 を「微小量」のように考えて、形式的に別々なひとつ
以後、微分方程式を簡単に表すために、導関数
の量として扱うことにする。つまり、
と書く。このことは、数学的にも保障されるがここでは立ち入らない。
例 微分方程式
¼
( は定数)について考えてみよう。これは変数分離形なので
と変形し、これを積分すれば、
ここで、 £
任意定数
とすると、一般解
£ が得られる。(例終)
例 ある地域で、口コミでひろがる新しい流行を受け入れる人がどれだけいるかというモデルを考えよう。例えば、人口
とし時間 の時間で携帯電話を購入した人数が 人
であるとする。このとき、口コミは、携帯電話を買った人に比例すると考え、その効力は で、これがまだ買って
いない 人に比例して作用すると思うと、時刻 における、携帯電話の所持人数 に関する微分方程式は
人の値域で、最初の一人が携帯電話を購入した時間を となる。これは変数分離型なので解くことができる。
左辺
ここで £
の第1式より、
に注意すると
で
任意定数
£ とすると、
より、
£ £ 初期条件 £
£
£
1000
800
600
だから、
400
200
0
0
0.2
となる。このグラフは右のようになる。(例終)
0.4
0.6
0.8
t
1
1.2
1.4
購入者の変化
注 この例のような、
定数
の形の微分方程式を ロジスティック方程式という。これは、範囲が限られた中での成長を表すときによく用いられ、数
理経済学、数理生物学でよく使われる。(注終)
例 上の例に、さらに、別の伝播の要因が加わる場合について考えてみよう。上の例では、口コミのみで評判が伝わると
考えて、購買の影響を としたが、それ以外に、「テレビのコマーシャル」「広告」などの、他の要因が加わること
もありうる。そのときは、上での に それらの影響 を加えて、微分方程式
での解は、
を考えればよい。これも変数分離形で解け、初期条件 となる。このグラフの概形も上の例と似たものになる。(例終)
問題
を確かめよ。
初期値についてひとつ注意をしておく。例えば、微分方程式
を変数分離して解くと、第1式より、
となる。ここで
とすると、
のとき、解のグラフは下の左側のようになり、 から、微分方程式に
を漸近線として に発散する。 のときは、 にしたがって、負の
がこの初期値問題の解になる。ここで、 従って値を増加させてゆくと、
方向からゼロに近づく。
このように、初期値によって解の挙動が大きく異なることもあるので注意が必要である。
変数分離形に帰着される微分方程式
¼
の場合
微分方程式
¼
は、従属変数
を
定数
と変換すると、
¼
¼
¼
¼
¼
だから、
¼
であり、これは変数分離形である。
例 微分方程式
¼
について考える。
とおくと、
¼
左辺を積分すると、
とすると、
であることに注意すると、与式は、
任意定数
となる。(例終)
¼
の場合
微分方程式
¼
のときに、変数変換 ¼
を行うと、
¼
¼
¼
は
¼
¼
だから、
¼
となる。よって、
が解になる。
例 微分方程式
に対し、
¼
とすると、
¼
だから、与式は、
¼
となり、両辺を積分すると
となる。よって、 £
¼
¼
を用いると、一般解は
となる。(例終)
として、
¼
第 章 同次形
同次形
正規形に直すと
¼
となる微分方程式を同次形という。これは次のようにすれば、変数分離形に帰着される。まず、従属変数 を
とすると、
¼
¼ となるから
は、
¼
任意定数
となる。
例 微分方程式
¼
は同次形だから、
¼
とすると、
¼
ここで、
¼
¼
任意定数
任意定数
であることに注意すると、
任意定数
任意定数
¼¼
£
¼¼
£ £
となる。(例終)
注意 上の例では、
£
のように表すこともできるが、特に同次形の場合は、微分方程式を解いたときの
いので、解の形を無理やり
にする必要はない。慣例的に、、
形でも解けたとすることがほとんどである。
と の関係式が複雑になることが多
の関係式に導関数が含まれなかったら陰関数の
同次形に帰着できる場合
¼
¼
¼
の場合
¼
¼
¼ ¼
¼
の形の微分方程式は、このままの形では変数分離形でも同次形でもないが、次のように変数変換すると、変数分離形ま
たは同次形に帰着できる。
¼ のとき、
¼
¼
とすると
は、
¼
¼
となる。
¼
¼
とおくと、
¼
¼
¼
¼
となり、これは変数分離形である。
例 微分方程式
¼
を解く。
とすると、
だったから、
¼
¼
ここで、
¼ だから、
任意定数
となる。(例終)
¼
¼ のときは、連立1次方程式
¼ ¼ ¼
¼
の解 、 を用いて、
は、
と変数変換する。このとき、
¼
¼
¼
¼
¼ ¼ ¼
¼
¼
¼ ¼ となり、
¼ ¼ となるので、同次形に帰着される。
例 微分方程式
¼
を解く。連立1次方程式
を解くと、
、 だから、
とおくと、問題の式は、
となる。これは同次形なので、
とすると、
これは、同次形の最初の例と同じ方程式だから、その解は
と表せる。これを 、
任意定数
を用いて元に戻すと、
となる。(例終)
全微分方程式での表示
、 の関数 、 に対し、
の形の方程式を 全微分方程式という。この形式は、後で、統一的な扱いについて学ぶが、同次形に関するところだけ、
ここで考えてみる。
が、ある 実数 に対し
を 次の同次関数という。 、 が同じ 次の次数の同次関数ならば、 は、
を満たすとき、 となるので、方程式は同次形に変形できる。
次元量
もう少し、この考え方を一般化してみる。今、変数 に対し、重み を与え、この量を次元量と呼ぶことにする。
の次元量 に対し、 の次元量を 、 の次元量を とする。 に異なる次元量 を与えて、同様に考える。こうし
て、全微分方程式の項 ( は実数)の次元量を 、 ( は実数)の次元量を と数えることにする。例えば、 の次元量を 、 の次元量を とすると、
次元量は の次元量は 、
の
である。このようにしたとき、全微分方程式の各項の次元量が等しくなるような 、 が存在すると
きには、
とすれば、
は、同次形に帰着できる。
例 微分方程式
について考える。このとき、 の次元量を 、 の次元量が であるとすると、 の次元量は 、
は
、
の次元量は である。ここで、
くなる。よって、
とおく。
の次元量
、 とすると、全ての項の次元量は となり、等し
で、
だから、問題の式は
となる。これを積分すると、
任意定数
となる。(例終)
今の方法で、特に、
の場合が同次形である。その意味では、この考え方は、同次形の一般化であるといえる
が、実は、下の注で示すように、これは同次形に帰着させているところを次元量という言葉を用いてルーティーンにし
ているだけでもある。
注 「次元量」というアヤシゲな量はちょっと、という人は、最初から、例えば、
、
と変数変換すればよ
い。例えば、上の例
で、この変換を行うと、
だから、問題の方程式は、
ここで、
、 とすればこの方程式は同次形に変換できる。(注終)
第 章 1階線形微分方程式
1階線形微分方程式
¼
のとき、上の式は 斉次であるという。この微分方程式の一
の形の微分方程式を 1階線型方程式という。特に 般解は、
Ê
Ê
となる。以後、それぞれの考え方を応用するため、ふたつの方法で証明する。
積分因子法による証明 の両辺にある函数をかけて、両辺が函数の微分になるようにしたい(ここで掛ける函数
Ê
をかけて考える。このとき、
を 積分因子という。)。天下りだが、両辺に の左辺 Ê
¼
Ê
Ê
¼
Ê
Ê
¼
Ê
¼
となる。一方、
の右辺 Ê
Ê
Ê
だから、両辺を積分すると、
Ê
Ê
Ê
¼
Ê
となる。(証明終)
定数因子法による証明 まず、 の左辺を とした斉次方程式
¼
は変数分離形なので、解
Ê
を持つ。ここで、任意定数の部分が「少し」違っている
Ê
が、
の函数
の解であると思って、この方程式に代入してみよう。すると、
Ê
¼ Ê
Ê
よって、
Ê
Ê
¼ となる。(証明終)
を覚えておいてもよいが、忘れたり勘違いしたりするのを防ぐ意味でも、どれかの解法を知っ
この解の求め方は、
ておいたほうがよいと思う。以後、定数変化法を使った解法で例題を解いてみる。
例 1階線型方程式
¼
を解く。まず、斉次形
¼
の解は
だから、 の解を
¼ とおいて、方程式に代入すると、
以上より、
となる。(例終)
例 微分方程式
¼
について考えてみる。実は、この方程式は独立変数と従属変数を入れ替えると1階線形になる。実際、両辺の逆数をと
る と、
この微分方程式を解いてみる。 この斉次形の解は
だから、
として
に代入すると、
¼
よって、
である。(例終)
½ このような操作は、逆函数の定理が成立する場合は許される。
例 広告によって、売り上げがどれくらい変わるかを考えてみる。販売速度(基本時間あたりに品物が売れた数)を 、
時間を とする。このとき、何も宣伝しないとすると、その売り上げは、販売速度に比例して減少すると仮定する。
ここで、
比例定数
が時刻 における広告の普及率、 を広告の有効性、! を製品の飽和水準(起こりうる売り上げの
限界)とすると、とすると、
!
となる。方程式を整理すると、 に関する微分方程式
!
が得られる。簡単のために、 を定数 とした場合を考えることにする。
を解くと、
として、
!
となる。これで、特に 初期値を とすると、 の解は、
!
!
積分定数
がどれだけ売れるか、ということのシュミレーションができる。今、
何もしないと売り上げは週 減る( ")。
ドラマを見た人の 人に1人は を買う( ")。
飽和水準は 週 万枚(! )
初回プレスは 枚。 と仮定して、ドラマの視聴率( )が 、
、
の場合の の売り上げをグラフにしてみると、次のよ
うになる。視聴率 の場合は、売り上げが伸びることがわかる。
と書ける。これで、例えば、ドラマの主題歌の
30000
30000
29500
38000
28000
29000
26000
36000
28500
24000
28000
34000
27500
22000
32000
27000
20000
30000
26500
0
2
4
6
t
8
10
0
2
4
6
t
8
10
0
2
4
6
t
8
10
第 章 完全微分方程式
定義
¼
の形の1階微分方程式を 全微分方程式と呼んだ。全微分方程式が、特に ある関数 に対し、
と表せるとき、
となり、積分すると、
積分定数
という形になり、一般解が得られたことになる。()を満たす全微分方程式を、完全微分方程式という。
完全性の判定
全微分方程式 (
定理
)が完全であるかを確認する方法としては、次が知られている。
全微分方程式
(証明の概略) (
)(
が完全。 #
#
)が完全微分方程式とすると、
、
となる関数 が定まる。このとき、
が、適当な条件下でなりたつ。
#
#
( )
がなりたつとき、任意の 、
#
#
¼
#
#
だから、
に対し、
¼
とすると、
¼
となる。よって、 ¼
となるので、
となり、完全微分方程式となる。(証明終)
解の形
前節の証明より、全微分方程式
が完全であるときの一般解の形は、 、
¼
で与えられる。また、前節の定理の証明は、 と
¼
を任意にとったときの
の役割を交換しても同様になりたつので、一般解は、同様に
¼
¼
でも与えられる。問題に応じて、使いやすい方を使えばよい。
例 全微分方程式
を解く。
、
だから、この全微分方程式は完全。よって、
からの積分をとって、
となる。(例終)
例 全微分方程式
を解く。
だから、この微分方程式は完全。よって、
、
として、()の形で積分すると、その一般解は、
となる。(例終)
初期値問題
完全微分方程式の初期値問題
は、前節の解法の 、
¼
を積分の初期値にして、
¼
として積分すればよい。すなわち、)の一般解は、
または
¼
で表される。どちらで解くかは、計算の楽そうなほうを選べばよい。
¼
例 初期値問題
を解く。
を考えないほうが楽そうなので、上の2番目の公式を使うと、
となる。(例終)
第 章 積分因子
全微分方程式
をかけた
が完全でなくとも、 、 に同じ関数 ! ! ! が完全微分方程式になることがある。
例 全微分方程式
について考える。
だから、これは完全ではない。しかし、両辺に となり、完全微分方程式になる。これを解くと、
を掛けると、
が得られる。(例終)
このように、全微分方程式
にかけるとそれが完全になるような ! を 積分因子という。
積分因子の求めかた
全微分方程式
! ! が完全である条件は、
! ! !
! ! ! ! である。これが満たされればよいが、一般にこれを求めるのは難しい。この講義では、典型的な例のひとつをチェックす
ることとする。
命題
のみの関数 と
があって、
のみの関数 ならば、
! は、
Ê
Ê
の積分因子である。
が上の形のとき、
Ê
! (証明) ! Ê ! Ê
Ê だから、
! ! Ê
Ê がいえる。(証明終)
例 先の例
では、
となるように、、 を選べばよい。例えば、 、 ととると、
Ê
Ê ! となり、例の積分因子が求められた。(例終)
、または にとれる場合は見分けやすい。
上の場合で、特に 命題
が のみの関数だとすると、 の積分因子のひとつは、
! である。
が
のみの関数だとすると、
Ê
Ý Ü の積分因子のひとつは、
! Ê
Ý Ü である。
例
を解く。
となり、これは
だけの関数となる。上の公式より、積分因子のひとつとして、
!
がとれる。実際、
Ê ¿
Ý
は完全微分方程式で、前節の解法より、一般解は、
となる。(例終)
¼
例 1階線型微分方程式
を全微分方程式と見ると、
となる。このとき、
Ê
は積分因子になる。これをかけた
となり、これは のみの関数になるから、 ! Ê
Ê
は完全微分方程式で、一般解は、この両辺を積分すればよい。
Ê
Ê
Ê
Ê
Ê
Ê
¼
¼
となり、1階線型方程式の公式が得られる。これは、本質的には、積分因子法による証明と同じである。(例終)
また、次のような全微分に関する関係式を覚えておくと、積分因子を見つけて全微分方程式を解くのに便利である。
命題
例
は、上の公式を用いると、
と変形できるので、これを積分すると、一般解は
となる。(例終)
例
は、上の公式を用いると、
となるから、一般解は、
となる。(例終)
第 章 非正規形方程式
1階多項式形
今まで扱ってきたのは、微分方程式を整理すると、
¼
の形で表せる正規形のものであった。この節では、このように表すことの出来ない
$ ¼
という形の方程式について考える。以後、簡単のため、%
% ¼
と書く。このとき、関係式 $ が % の多項式
% % の形であるとき、これを 1階多項式形という。左辺が因数分解できて、
% % % となるとき、この解になる条件は、
%
& なので、それぞれの一般解を
' とすると、
& !"#" の一般解は、
' ' ' となる。' の中の任意定数 は、& に関わらず、全て同じものになる。
% 例 %
を解く。左辺を因数分解すると、% % となるから、
% %
のそれぞれの一般解
より、求める一般解は、
となる。(例終)
両辺を微分して解く場合
1階の微分方程式 $ %
が正規形でなくとも、
%
または
%
の形で書ける方程式がある。このときは、さらに両辺を微分することによって解を求めることができる。
の場合
1階微分方程式が、
%
の形に変形できる場合、両辺を で微分すると、
#
#
%
#
#%
#%
#
となる。これは、独立変数 、従属変数 % の1階微分方程式なので、これより % を解いて、その一般解
' % を得たとすると、元の
と、この式から、% を消去したものが解である。また、% の消去が困難なときは、これらを 、
について解いて、% を媒介変数とする表示
% % を解としてもよい。
例 %
%
を解く。両辺を
と変形し、両辺を で微分すると、
%
%
%
これをまとめると、
% %
%
%
%
%
%
よって、
%
%
%
%
と、この式から % を消去すると、
となる。(例終)
%
例
% % を解く。両辺を で微分して
%
%
% %
%
これより、一般解は、% をパラメタとする表示
% % % %
となる。(例終)
の場合
%
の両辺を
で微分すると、逆関数の微分の公式より、
#
#
%
#%
#
#% #
となる。これは、独立変数 、従属変数 % の1階微分方程式の正規形であるから、これを解いて一般解
' % を得たとすると、
%
から % を消去したものが
' % の解である。% の消去が難しいときには、これらを 、
について解いて、% をパラメタ
とする表示
% % を解とする。
例
% %
を解く。これを について解くと、
となる。この両辺を
%
% で微分すると、
%
% % % %
となり、整理すると、
%
%
%
となる。以上より、
% %
%
%
より
を消去して、
を得る。(例終)
例 % % を解く。この両辺を で微分して、
%
% %
%
%
となる。ゆえに、一般解は % をパラメタとして、
% %
% % となる。(例終)
% % 第 章 の微分方程式
の微分方程式
% %
の形の方程式を
る。
%
の両辺を微分すると、
%
%
% の形だから、前節の方法で解くことができ
の微分方程式という。この方程式は
%
%
%
% %
%
%
よって、
%
となる。
%
の場合、%
だから、これを
または
% %
に代入すると、任意定数 を含む一般解
が得られる。また、
% のときの解は、% をパラメタとして、
¼
%
% % %
¼
¼
で表される。
例 微分方程式
%
%
を考える。両辺を微分すると、
%
%
よって、この解は、
%
または
%
のとき、% が解だから、与式の左辺に % を代入して が解となる。これは任意
定数を含む一般解。 % のとき、% を与式に代入すると、
これが特殊解。(例終)
となる。
%
の微分方程式
% %
% は % % でない の形の微分方程式を
の微分方程式( の微分方程式、広義の の微分方程式)という。
# の微分方程式と同様に解ける。 の両辺を微分すると、
これも、
%
%
%
% %
%
%
%
%
% % %
%
%
%
%
%
の場合は、逆関数の微分の式より、
%
% % %
%
% %
%
%
% %
%% %
となる。この式を、% を独立変数、 を従属変数とする1階線型微分方程式と思うと は % の関数として、
'% (%
の形で書ける。これと、
から % を消去したもの、もしくは % をパラメタとした とこの式の連立によるパラメ
% である % が存在するならば、これを に代入すればよい。すなわち、
タ表示が求める一般解である。 %
%
%
が特殊解である。
例
% %
を解く。両辺を微分すると、
%
ここで、%
ならば、
%
%
% % %
%
%
% %
%
%
%
ここで、1階線型微分方程式の解の公式より、
Ê ¾
Ô
% ¾
Ô % %
がいえる。よって、
% %
が一般解で、%
の時の解
% %
が特殊解である。(例終)
% %
¼
% 第 章 2階定数係数微分方程式
斉次形の場合
解の線形性
次に、2階の微分方程式
¼¼
¼
は定数
について考えてみよう。まず、あきらかにわかることとして、 、
が
の解だとすると、
( 、
は定数)も解になるということである。線型代数の言い方だと、この解の集合は線型空間をなす。2階の微分方程式を
積分して入りうる任意定数は2つなので、この解のなす線型空間は2次元であるといえる。基底に当たる線型独立な2
種類の関数 ( 、( を見つければ、この方程式の一般解は、
( ( は定数
という形になる。このような解 ( 、( を基本解という。
定数係数2階線型斉次方程式の解法
微分方程式
に対し、 に関する2次方程式
を、(
の 特性方程式といい、特性方程式の根を 特性根という。このとき、以下がなりたつ。
命題
の2つの特性根を 、 とするとき、 の一般解
が異なる実数
が重根
) *+ )
*+ が異なる虚数
証明は、それぞれの関数を代入すれば得られる。もし、複素数の
を知っていれば、上の命題の
は次のように表される。
+ +
$# の公式
, * ,
の場合も、複素数の範囲で と同じ式に書けるが、今は実数関数を考えているので、
書き方を分けてある。
例
¼¼
¼
の特性方程式は 。その根は 、 であるから、一般解は
である。(例終)
例
¼¼
¼
の特性方程式は だから、特性多項式は重根 を持つ。よって、一般解は、
である。(例終)
例
¼¼
の特性方程式は * * だから、その根は *。一般解は、
である。(例終)
例
¼¼
¼
の特性方程式は 。特性根は * となるから、一般解は、
となる。(例終)
の微分方程式
定数係数2階線型微分方程式に帰着される方程式として、次の形のものを考える。
¼¼
¼
これは、
と変数変換すると、
となるので、
は、定数係数の方程式
に帰着される。
例 微分方程式
を解く。
¼¼
とすると、
となる。この特性方程式は だから、 の一般解は
となる。すなわち、
の一般解は、
となる。(例終)
例 微分方程式
を解く。
¼¼
とすると、
となる。この特性方程式は * * だから、 の一般解は
となる。すなわち、
の一般解は、
となる。(例終)
非斉次の場合
次に、非斉次の方程式
- の解法について考えてみよう。 の特殊解を 、 の右辺を とした斉次形
の一般解を . . とすると、 . . が の一般解になる。つまり、 を求めればよい。これは、
定数変化法で求めることができる。前節の方法で求めた の線型独立な解 . 、. に対し、
. .
が、 の解だとする。このとき、 、 の選び方には任意性があるので、後から扱いやすいように、条件
. .
を仮定する。
を に代入すると、
. . . . . . -
. . . . . . . . . . -
であるが、第1、2項は、. 、. が の解であることより、第3項は より、
である。よって、
. .
-
がいえる。 これより、 と を 、 についての連立一次方程式
. . . . -
¼¼
¼
¼¼
¼
¼
¼¼
¼¼
¼
¼
¼
¼¼
¼
¼
¼
¼
¼
¼
¼
¼
¼
¼
¼
¼
¼
¼
¼
¼
¼
¼
と思って解く。
% の公式を用いると、
. . ¼
. -
- .¼ ¼
/ -.
. . / . . ¼
となる。ただし、/ . . は、
/ . . で定義される行列式で
-.
/ . . / . . . . ¼
. .¼ と呼ばれる。よって、 、 の一般解は、 、 を任意定数として、
で表される。これを
-.
/ . . -.
/ . . に代入すると、 の一般解は、
. .
.
-.
.
/ . . -.
/ . . で表される。
例 微分方程式
¼¼
¼
を解く。斉次方程式
¼¼
の基本解は、 、 で、/ ¼
だから、
となり、一般解は
となる。(例終)
第 章 連立微分方程式
ベクトル値の微分方程式
連立微分方程式
については、片方の従属変数を消去することができれば、ひとつの従属変数に関する定数係数2階線型微分方程式に帰
着できる。
例 連立微分方程式
を解く。第1式より、 ¼¼
¼
。これを第2式に代入すると、
となる。よって、この方程式の一般解は、
となる。(例終)
例 連立微分方程式
を解く。第1式より、 ¼¼
¼
だから、これを第2式に代入すると、
となる。これより、この微分方程式の解は、
である。(例終)
例 ある商品に関する消費者動向は、時間 の関数として、ブランドの購入レベル 0 、ブランド志向の動機 ! 、ブ
ランドの情報レベル を仮定すると、連立微分方程式
0
!
0
0 ! 1
!
より小さい正の定数、、 は、正の定数とする。このとき、! を消去した 0 だ
の形で得られる。ただし、、 は
けの微分方程式として、
0
0
0
1
を持つことに注意すると、
が得られる。今、簡単のため、 を定数とする。この微分方程式は、特殊解 0
0 の一般解は、
0 0
½ ¾ 1
1
となる。ただし、 、 は、特性方程式の根
である。これらは実数で、条件 、 より、 、 がいえる。よって、解 は、
0 1
0
となり、時間を十分かければ、0
に近づいてゆくことが予想できる。(例終)
の係数行列を対角化して求めるのが効率的であるが、ここでは立
より大きいサイズの連立微分方程式においては、
ち入らない。
1変数の方程式に帰着できる場合
従属変数を消去することによって、連立1次方程式の中のひとつの従属変数に関する高階の微分方程式が得られる場
合、この微分方程式を解くことができる。
例 連立微分方程式
を解いてみよう。辺々引くと、
が成り立つ。これを第2式に代入すると
以上より、この方程式の一般解は、
となる。(例終)