アルコール依存症治療における家族援助の必要性

アルコール依存症治療における家族援助の必要性
―看護師から家族へのアプ ローチを考える―
富○○一
看護師
札幌太田病院
ストレスケ ア病棟
1.はじめに
アルコール依存症の 治療や回復には 家族など周囲の 協力が必要にな ってくる 。しかし 、
何度も酒で裏切られ、 信頼関係がなく なってしまって いる家族にとっ て対象が入院治 療
で完全な断酒をしない 限り受け入れる ことは難しいだ ろう。今回はそ のような家族に 対
しての必要な援助を、 受け持った症例 を通して考察し た結果を報告す る。
2.症例紹介
氏名:I 氏
年齢:76 歳
病名:アルコール依存症
入院期間:4 月中旬から3ヶ月間
入院形態:医 療保護
同居家族:妻 (要介護 )、長女、その 夫
3.入院中の経過
入院時、I 氏は不穏状態のた め 1 週間ほど隔離・拘 束となった。行 動制限解除後、 集
中内観療法を実施しそ の後、各プログ ラムにも自主的 参加。院内、外 の断酒会の参加 、
外出泊でも飲酒はなく 、断酒の意思も 聞かれるように なる。
家族(長女、義息子 )の面会は 1 か月に 1 回程度、当院のアルコー ル家族会は仕事 の
都合で参加できていな かった。入院後 の初回の外泊は 医師より許可が 出ていたが、家 族
からは「酒を飲むか ら」
「 しばらく退院させ て欲しくない 」という言葉が あった。その 際
I 氏のプログラム参加 状況、断酒への 言葉があること など伝えるが、 家族は「真面目 の
ふりをしているだけ」 と否定的な返答 があった。その 後も家族から I 氏を受け入れる よ
うな言葉もなく、入院 治療が終了して 退院となった。
4.考
察
I氏が疾患の知識や 断酒に対する意 識を高められて いったとしても 、受け入れる家 族
にアルコール依存症者 の理解がされず 、治療経過や変 化がわからなく ては退院後の生 活
の不安が大きくなり I 氏を受け入れる のが難しかった と考えられる。 入院時に当院の ア
ルコール家族会の紹介 をしているが、 他の家族会や研 修会の紹介もす る事が必要だっ た
と考える。入院治療経 過については家 族の面会時や各 治療期に酒害相 談員スタッフな ど
から情報提供すること で知識の獲得や I 氏の変化を知 ることができ受 け入れ方が変わ っ
てくるのではないかと 考える。今回は これらのアプロ ーチが少なかっ たこと、私の情 報
不足で家族に情報提供 ができなかった ことが反省すべ き点だと思う。
5.おわりに
看護をする上で入院 者だけでなく家 族のケアも大切 であることが症 例を通して改め て
気付かされた。今後は 今回経験したこ とを踏まえなが ら家族との関わ りを多く持ち、 退
院後も家族の理解、協 力が得られ、少 しでも不安を軽 減できるよう関 わりたい。