坂田 信一郎さん 松葉

特集
1
2014
活躍する卒業生
お客様の潜在的ニーズを探る
開発型企業として歩む
自動車部品・用品を中心に、ニッチなニーズに応える
開発型企業として歩みを続ける中央自動車工業。坂田
信一郎さんが2012年に代表取締役社長に就任して
から2年。誠心誠意を込めた営業という初心を愚直な
までに貫き、お客様の満足を追求しています。
中央自動車工業 代表取締役社長
坂田 信一郎 さん
さかた・しんいちろう
87年3月摂南大国際言語文化学部中国語中国文化学科卒。同年4月中央自動車
工業に入社。05年取締役、07年常務取締役を経て12年代表取締役社長就任。
13年7月に発足した摂南大卒業生の異業種交流会「淀都会」の会長も務める。大
阪府出身。
「仕事はお客様に感謝する気持ちが大切。相手の役に立ちたい
ながら働き、
私も見習わなくてはと思うようになりましたね」
という気持ちがあれば、
やりがいも感じられるようになります」
と、
コーティング剤は現在も同社国内の主力商品。産学協同で開発
中央自動車工業代表取締役社長の坂田信一郎さん。摂南大卒業
した無機防汚コーティング剤は特に太陽光パネルへの使用に適
後、
車好きだったことから自動車部品を扱っていた同社へ。広島営
し、
塗るだけで発電効率が約3%上がるという優れものです。
また、
業所に勤務した当初は「部品の出荷と配送に明け暮れて大変な毎
オリジナルのアルコール検知器は2010年から警察庁の飲酒検
日でした」。2年目からは山陰地方の営業を担当。朝5時ごろに家
問用に採用されています。
「現場の潜在ニーズを掘り起こし、
よそ
を出て広島に帰るのは午後9時過ぎという忙しさに、いつも仕事
にないサービスを提供していくことが開発型企業の役目。真剣に
を辞めることを考えていたと言います。
しかしそれでも「石の上に
お客様と向き合い、
新しい需要を創造していくと、
他社に負けない
も3年」
と持ち前の根気強さを発揮し、
じっくりお客様の話を聞く
企業になります」
と胸を張ります。
姿勢を貫いて信頼関係を構築。人口の少ない地方で市場を開拓し
坂田さんのもう1つの顔が、摂南大卒業生が中心となって開催
た経験から得たものは大きく、
「魚が少ないところで釣り上げるに
する異業種交流会
「淀都会」
の会長です。13年7月に発足し、
第1回
は、
きちんと汗をかかなくてはいけない」
ことを実感しました。
は36人が参加。
「できるだけたくさんの方にお越しいただきたい
本社に戻った98年ごろに転機が訪れました。自動車産業界の構
ので、年会費も無料です。校友会の総会でたくさんの方に声を掛
造変化に伴って、商社として事業を展開していた同社も国内にお
けていただき、反響の大きさに驚いています」
と顔をほころばせ
いてはオリジナル商品を開発する方向へとシフトしていったので
ます。将来的には企業が自社商品をPRできるような時間を設け、
す。時を同じくして、新商品の車用ボディコーティング剤の開発と
ビジネスマッチングの場にすることを目指しているそうです。
販売を企画する部署に営業兼務
在学中の思い出を問われると、
「厳しくも温かい恩師に出会えた
で指名された坂田さん。時代の変
こと」。中国と日本の同形異義語の解釈についての卒業論文作成
化や顧客ニーズなどの商品に関
にあたり、
「 勉強というのは自分で考えてやるものだから、
自分の
するあらゆる情報を収集して開発
言葉で論文を書きなさいと指導されたことが忘れられません。お
に尽力したほか、販売促進のため
陰で上司や先輩から教わったことを自分なりにかみ砕いて、肉付
の営業マニュアルなども作成。試
けすることが習慣になりました」。60カ国と取引をする企業の長と
行錯誤の日々でしたが周囲の協
して、
こう付け加えます。
「海外では日本の歴史や文化について聞
力と理解ある上司に恵まれ、
納得
かれることが多く、
無知なビジネスマンは商談でも相手にされない
できるだけの成果を達成したそう
ので、
私は息子の歴史の教科書を読むなどして勉強し直しました。
です。
「たとえミスがあっても部下
後輩の皆さんも一生学ぶ気持ちを持ち続けてください。人間が成
がやり抜くまで見守る懐の深さを
長するには、社会に出てからいかに勉強するかが非常に大切だと
備えた上司でした。その背中を見
思います」
07 FLOW | No.58 | March, 2014