課 題 名 固体酸触媒を用いて紙からアルコールをつくる 発表者氏名 髙梨 光希 指導教諭 鈴木 長寿 滝 健太朗 西家 大貴 1.概要・目的 私たちは固体酸触媒を合成すること を主目的とし、その固体酸触媒を用いて セルロースを糖化し、さらにその糖を原 料としてエタノール発酵を行うことを 最終目標として研究を行った。 固体酸触媒とは固体でありながら硫酸 図1 カーボン系固体酸合成の流れ などの液体の酸触媒と同じ触媒効果を持つもののことである。砂糖などを加熱することでカーボンのシ ートをつくりその縁にスルホ基を付けることで作成する。カーボンシートが細かいほうが周りにたくさ んスルホ基がつけられるので、できるだけ小さいカーボンシートを作ることが重要になる。 この固体酸触媒を用いる長所は、セルロースの糖化に液体の硫酸を用いた場合、酵母菌を入れる前に 塩基で中和する必要があるところを、固体酸触媒は固体であるため、濾過によって酸を容易に分離・回 収でき、さらに、繰り返し使用できるところである。 2.実験操作 (1) 原料の炭化 図2の実験装置で、窒素を流しながら炭素源(砂糖、割り箸)をそれぞれ 400℃で加熱・炭化した。 (2) スルホン化 ① 中途半端な炭素を乳鉢で細かくすり潰した。 ② ①の炭素を 80℃の濃硫酸中で1時間加熱した。 ③ できた固体酸触媒をろ過し、精製水で洗浄、乾燥した。 (3) 性能評価実験(酢酸エチルの合成) ① 氷酢酸とエタノールをそれぞれ 5mL ずつ入れた試験管に固体酸触媒を 1.5g 加えた。 ② 70℃で 30 分間で湯煎・加熱した。 マントルヒーター 加熱 400℃ N2 図2 炭化装置 トラップ 3.結果 表1 固体酸と硫酸を使った酢酸エチルの合成量 (氷酢酸 5mL+エタノール 5mL+固体酸触媒 1.5g または濃硫酸) 触媒 酢酸エチル 合成量[mL] 固体酸触媒 濃硫酸(0.1mL) 濃硫酸(0.5 mL) 濃硫酸(1mL) 濃硫酸(2mL) 0.44mL 0.34mL 4.8mL 4.1mL 3.3mL ・最初は、缶やるつぼに炭素源となるようなものを詰 め、大気雰囲気中でガスバーナー、電気炉などで約 400℃に加熱して活性炭を作製していたが、それを用 いた固体酸触媒で酢酸エチルを合成したところ、酢 酸エチルの香りは確認できたが収量は計れないほど 少量だった。 図3 酢酸エチルの収量の比較 4.考察 ・大気雰囲気中で作製した活性炭を用いた固体酸触媒での酢酸エチル合成で収量が低かったのは、酸素 があると炭素源の自己燃焼により設定した温度よりも高い温度になって、炭化が進みすぎてしまった ためと考えられる。 ・窒素を流し酸素を遮断した状態で加熱したものは、自己燃焼を抑え、理想的な温度に近づけたことで 目標だった「中途半端な炭素」という状態に近く、固体酸触媒の性能も向上できたからと考えられる。 ・製造した固体酸触媒 1.5gを用いた酢酸エチルの合成の収量は、硫酸を 0.1mL 用いた合成の収量を比 較して、今回作製した固体酸触媒は 1.5g で硫酸 0.1mL と同じ程度または、それ以上の触媒としての 性能があるといえる。 5.今後の課題 ・私たちが作製した固体酸触媒の性能は、参考文献によるデータと比べるとまだまだ低いので、炭化時 間や材料などの条件をかえて、性能の向上を目指したい。 ・私たちの最終的な目標は、作製した固体酸触媒を用いてセルロースを糖化し、さらに糖からエタノー ルを合成することなので、今後はその実験まで取り組んでいきたい。 6.参考文献 Bionics 2006.2 オーム社 <謝辞> 東京工業大学 応用セラミックス研究所 原亨和教授には、実験に際し様々な助言をいただきました。 ここに謹んでお礼申し上げます。
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