食物アレルギー: 研究の進歩と今後の展望

食物アレルギー:
研究の進歩と今後の展望
【Key words】
アレルギー allergy
食物抗原 food antigens
腸管吸収 intestinal absorption
経口免疫寛容 oral immune-tolerance
松田 幹、松原 毅
名古屋大学大学院生命農学研究科
物アレルギーでは、口腔粘膜の腫脹、腹痛・下痢などの口腔・消
はじめに
化管での炎症や皮膚での湿疹や浮腫などが代表的な症状であり、
オーストリアの免疫学者で小児科医でもあった Clemens von
摂取された食物との因果関係を明らかにできる場合が多い。さら
Pirquet が、抗血清やワクチンに対する過敏反応に対して最初
に重篤な場合には毛細血管の拡張による血圧の低下などによるア
にアレルギー(allergie: ギリシア語の allos[other]と ergon
ナフィラキシー症状を誘発することもある。
[reaction]から)
いう言葉を用いて記述してから
(1)
、ほぼ 100
食物アレルギー患者血清中に検出される特異抗体
(特に IgE 抗
年が経過した。また、日常的に摂取する食物に含まれる特定の成
体)
との反応性を指標にして、食物成分に含まれる原因抗原
(ア
分が下痢や腹痛などのアレルギー性の急性胃腸炎などを引き起こ
レルゲン)の分析、同定が進んでいる。近年は、酵素標識抗体
すことが報告されたのは、今から約 40 年前のことである
(2-5)
。
を用いた免疫化学的検出技術と質量分析法による化学的同定技
食物が原因となるアレルギー性疾患に対して、当初は、いわゆる
術の著しい進歩により、同定された食物アレルゲンの数は急激
「食物原因説」
あるいは
「食物アレルギー仮説」
というような懐疑的
に増加している。同定されたアレルゲンの構造や性質を含め、
な見方もあった。食物に混在する有害成分ではなく栄養となる食
データベース化されており、いくつかの機関により Web 上に
物本来の成分が病状を引き起こすことや、食物アレルギーの発症
公開されている。たとえば、国立医薬品食品衛生研究所からは、
機構に対する理論的・科学的な根拠が不十分であったことなどが
“Allergen Database for Food Safety”
(http://allergen.nihs.
原因と推定される。その後、食物アレルギー患者血清中における
go.jp/ADFS/regist.do)
として、アレルゲンの立体構造や B 細
食物成分に対する特異抗体の存在が明らかとなり、その抗体をプ
胞エピトープ
(抗体が結合する領域)
の情報なども含めて多くの情
ローブとした原因抗原
(食物アレルゲン)
の同定が進んだ
(6)
。さ
報が提供されている。2007 年 8 月現在で、
アミノ酸配列
(cDNA
らに、その遺伝子が単離され、組換え型アレルゲンなどの高純度
塩基配列)
とともに登録されているアレルゲンは 2108 であり、
の標品や特異抗体を用いた臨床診断技術や食品分析技術も進歩し
その中で、立体構造が既知のタンパク質は 168、また、エピトー
た
(6)
。それと同時に、標的とする抗原や病原体に直接作用する
プが既知のタンパク質が 74 である。一方、海外においては、
リンパ球に加え、免疫応答の調節機能を持った多様なリンパ球、
International Union of Immunological Societies(I.U.I.S.)
と
また抗原提示細胞
(樹状細胞)
やマスト細胞などのリンパ球以外の
the World Health Organisation
(W.H.O.)
が共同で
“ALLERGEN
細胞の免疫応答制御への関与など、生体免疫系の複雑な制御機構
NOMENCLATURE”
( http://www.allergen.org/Allergen.
が徐々に明らかなってきた。このような食品科学および免疫学の
aspx)
を運営している。このデータベースでは、時として曖昧で
両サイドでの研究の急速な進歩により、食物アレルギーの大部分
混乱し易いアレルゲンの命名について整理されており、同時に、
が科学的裏付けをもって理解・説明できるようになってきた。そ
国際的な専門学術機関
(学会)
として認証された公式のアレルゲン
の結果、食物抗原に直接暴露される場である消化器系での病態の
リスト
(
‘Official list of allergens’
)
が作成・維持されている。また、
みならず、
皮膚
(アトピー性皮膚炎)
や呼吸器
(喘息)
でのアレルギー
EU の支援を受けて設立された、
“The InformALL Database”
性疾患にも食物抗原が関与する例があることも明らかになってき
(http://www.informall.eu.com/)
では、食物アレルゲンの構造
た(6)
。 本稿では、食物アレルゲンに関する情報の蓄積とデータ
や生化学的特徴に加えて、誘発されるアレルギー症状に関する臨
ベース化の現状と食物アレルギーの発症と制御のメカニズムに関
床的な情報も掲載されている。その他にも、アレルゲンの遺伝子
する最近の研究動向を紹介し、有効な予防や治療を目指した今後
塩基配列・アミノ酸配列を中心にデータベース化した
“Allergome”
の研究の展開について、食物の視点から考察してみたい。
(http://www.allergome.org) や“AllergenOnline”
(http://
www.allergenonline.com/)
がある。これらのデータベースに収
01 I アレルギーを誘発する食物抗原:
集された食物アレルゲンおよび吸入アレルゲンのアミノ酸配列
同定と構造、機能を含めたデータベース化
やドメイン、モチーフ、さらに機能
(生物活性)
などの類似性、共
通性に基づいて、アレルゲンとなるタンパク質には、ある程度の
食物として摂取された多様な成分の中で、食物アレルギーを誘
特徴的な構造や共通性があることを示唆する情報科学的解析結果
発する抗原の大部分はタンパク質である。タンパク質は、消化管
が報告されている
(7)
。これまでにアミノ酸配列が明らかにされ
内で酵素消化を受け、大部分は抗原としては作用しない低分子の
た膨大な数の全タンパク質の中で、アレルギーの原因となるタン
ペプチドやアミノ酸にまで分解される。しかし、未分解のまま体
パク質は、全体に散らばって分布しているわけではなく、限られ
内に取り込まれた場合には、免疫系が異物
(本来は病原体)
として
たタンパク質
(遺伝子)
ファミリーやスーパーファミリーに属して
認識しうる高分子である。食物中にはタンパク質以外にも多糖・
いることが明らかにされた。属するアレルゲンの数が多い上位3
複合糖質糖鎖などの抗原となりうる高分子が存在するが、T リン
つのタンパク質ファミリーは、種子貯蔵タンパク質であるプロラ
パ球を活性化してアレルギーを誘発するような免疫応答を誘導す
ミンスーパーファミリー、細胞骨格タンパク質で花粉の主要アレ
る抗原はほとんどがタンパク質である。多様な食物アレルギーの
ルゲンであるプロフィリンファミリー、次に、動物の筋肉を構成
中で、
食物を摂取した後、
比較的短時間
(1 ∼2時間)
のうちに種々
するタンパク質であるトロポミオシンファミリーである。これら
の症状を誘発するような病態は
「即時型」
とよばれる。即時型の食
の情報は、これまでに食経験の無い、新規のタンパク質や遺伝子
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を食物に利用する際の、アレルゲンとなるリスクを評価するため
のアレルゲンとしての強度を増すことが報告されており、その結
の一つの指標として有効であると思われる。一方、メンバーの一
果として、ローストしたピーナッツを食べる頻度が高い米国の子
タンパク質のみがアレルゲンと同定されているようなタンパク質
供たちにピーナッツアレルギーが多くなっていると推定される。
ファミリーも多く存在するため、アミノ酸配列の比較のみで議論
することは難しいと思われる。既知のアレルゲンが存在するタン
パク質ファミリーに属する他のメンバータンパク質について、ア
レルゲンとならないことを示唆するような情報や研究報告も収
集、整理する必要があろう。既知の食物アレルゲンは消化酵素に
対して抵抗性を持つものが多く、逆に速やかに分解されるタンパ
ク質は食物アレルゲンとして知られていない、という報告があり
(8)
、食物アレルギーの場合には消化酵素に対する抵抗性の有無
も重要な情報と思われる。
上述したデータベースや報告に示されるように、構造や機能で
表 1:食物アレルギーの原因となりやすい食物
のある程度の共通性・類似性は持つものの、食物に含まれる多種
多様なタンパク質が、過去に臨床的に確認できるようなアレル
ギー症を誘発したか、あるいは誘発するリスクがあると考えられ
02 I 食物抗原の腸管吸収と体内動態
る。しかし、これらのデータベースに登録された食物アレルゲン
食物アレルギーが誘発される最初のステップは、消化管内に残
の多くは食物アレルギー患者の血清 IgE 抗体との特異的な反応
存する未分解の抗原
(おもに食物タンパク質)
が、消化管上皮を横
性を指標にしてアレルゲンと同定されたものであることに注意す
切って体内に移行
(侵入)
することである。腸上皮の管腔側表面は
る必要がある。患者血清に含まれる IgE 抗体の抗原であること
ムチンや分泌型 IgA に富む粘液で覆われており、さらに上皮細胞
はアレルギー感作を誘導しており、再度の抗原の侵入により症状
は頂端付近の密着結合
(tight junction)
により隣通しの細胞が密着
を誘発する可能性は大きいと推定される。しかし、実際にアレル
しているため、タンパク質やペプチドのような高分子物質は、粘
ギー患者に対する経口負荷試験をしていないので、厳密には潜在
液層を透過し細胞間をすり抜けて上皮細胞の層を横切ることは容
的アレルゲンとよぶのが妥当であろう。このような IgE 抗体と
易ではない。培養細胞とポリエチレングリコールを用いた透過実
の反応性の確認とともに、アレルギー患者を被験者とした経口負
験により分子量 600 以上の分子は透過しないことが示されている
荷試験において即時型アレルギーの臨床症状を誘発することが確
(11)
。分子量 600 以下の低分子化合物
(ペプチドやアミノ酸)
は
認されたものは真の食物アレルゲンと定義することができる。特
体内には移行するが、このような低分子化合物は免疫系を刺激す
に、プラセボ
(偽薬)
を対照としたダブルブラインド法によって負
ることはない
(抗原として作用しない)
。もし、腸上皮細胞の間隙
荷試験が実施された場合には信頼性がより高い。我が国において
をすり抜けるルート
(paracellular route)
だけが消化管の内容物が
2001年から開始された食物アレルギーの原因となる
「特定原材料」
腸上皮を横切って体内に取り込まれる手段であれば、疾病や傷害
の表示の義務化においても、このような臨床症状の誘発・発現
(エ
によって上皮細胞層が破壊されない限り、理論的には食物アレル
ピソード)
の有無が
「特定原材料」
のリストの作成における根拠と
ギーは起こらないことになる。食物アレルギーが誘発される機構
なっている。具体的には、
「過去に一定の頻度で血圧低下、呼吸
の一つとして、何らかの原因で消化管上皮にわずかな傷害が起こ
困難または意識障害等の重篤な健康被害が見られた症例から、そ
ることが最初の引き金になる、という考え方がある。わずかな傷
の際に食した原材料の中で明らかに
(原因物質として)
特定された
害を受けて腸上皮のバリアーが低下または消失すると、その部位
原材料」
と定義されており、症状の中でもアナフィラキシーのよう
から食物抗原が体内に侵入して抗原に対する免疫応答が誘導され、
な全身性で重篤なものが選別されている。この
「特定原材料」
は、
さらに再度の抗原刺激
(食物摂取)
によって消化管局所での抗原抗
当初に指定された卵、小麦、そば、ピーナッツ、乳に、最近になって
体反応に端を発する一連のアレルギー反応が起こり、その結果、
追加されたエビとカニを含めて7品目であり
(9)
、これらの食物
腸上皮のバリアー機能がさらに低下してより多くの食物抗原が体
の中には、少なくとも一つの真の食物アレルゲンが含まれている
内に侵入するようになり、食物アレルギーが憎悪する、という機
と考えられる。この7品目の中でソバ以外は、欧米における調査
構が考えられる
(12)
。一方、傷害による腸上皮のバリアーの部分
研究に基づいてリストアップされた主要な食物アレルゲンと一
的低下や消失が無いような状態、すなわち健常な消化管において
致している
(表1)
。ソバの例に示されるように、国や地域、民族
も、未分解の食物抗原が取り込まれることも知られている。
などに依存して、アレルギーの原因となる食物が異なる場合があ
ヒトを対象にしてタンパク質の取り込みに関する定量的な解析
る。その原因として、遺伝的背景、特に遺伝的多型に富み免疫系
を行った先駆的な臨床試験が、今から 20 年も前に既に行われて
に大きく関与する HLA(MHC)
の差異によるものと、食習慣によ
いる
(13)
。小麦グルテンに対するアレルギーであるセリアック病
るものの、両方が考えられる。ソバの場合には、麺類などでソバ
の患者において、腸上皮の傷害と食物タンパク質抗原の取り込み
を食べる習慣がある日本と韓国では多くのソバアレルギーの報告
(血中への移行)
との関連を調べた研究の中に、比較対照として実
があるが、欧米では少なく、ソバを日常的に食べる習慣の有無が
施した健常者のデータが示されている。3 歳から 13 歳の被験者
原因の一つとなっていると推定される。もうひとつ食習慣依存的
に 2ml/kg の生の卵白
(卵アルブミンは約 100mg/kg となる)
を
な例として、ピーナッツがあげられる。米国ではピーナッツアレ
胃内投与し、その後、経時的に採血して、血液中に移行した卵ア
ルギーが多いが、人口あたりのピーナッツの消費量が米国で同程
ルブミン
(OVA)
をサンドイッチ ELISA 法によって定量している。
度である中国では、ピーナッツアレルギーの報告はほとんど無い
血中 OVA 濃度に個体差はあるが、5 人の被験者のいずれにおい
といわれている
(10)
。中国では料理やお菓子の材料として、ほ
ても、胃内投与後 30 分で既に血液中に検出され、徐々に上昇し
とんどが茹でたり揚げたりしたピーナッツとして食べられている
て2∼3時間後に最高値
(5 ∼ 100ng/ml)
に達し、その後、追跡
が、米国では炒った
(ローストした)
ピーナッツがほとんどである。
した 7 時間後までは最高値を維持する結果が得られている。著者
このような高温での加熱
(ロースト)
と成熟・乾燥過程がピーナッツ
らの研究グループは健常なマウス
(14)
とラット
(15)
を用いて同様
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に胃内投与した OVA の血中への移行を調べた。ラットでは OVA
この疑問に対する解答を考える際に、特定の食物抗原に対する感
の胃内投与
(250mg/kg)後の血中 OVA 濃度は、45 分で最高値
作
(過去の同一抗原に対する暴露により、既に特異的 IgE 抗体が
(15ng/ml)
となり、投与後 120 分でも斬減
(10ng/ml)
する程度
産生されマスト細胞上の受容体に結合している状態)
が成立して
である。さらにマウスでは、OVA(400mg/kg)
を投与後 20 分で
いる場合と、そうでない場合
(まだ特異的 IgE 抗体の産生が認め
最高値
(40ng/ml)
となり 80 分後には、ほぼ半減し、120 分後に
られない場合)
に分けて考える必要がある。感作が成立している
は 10ng/ml 程度まで低下する。これらの実験は卵タンパク質を胃
のはアレルギー患者の場合で、上記の疑問に対する答えは YES
内投与した後の血中への移行と、その後の変動を調べたものであ
である。症状を誘発するのに必要な抗原量の域値には個人差や
り、細部の違いはあるものの、投与と検出の基本的な手法は同じ
体調などによる差異はあるものの、体内に抗原が入れば、特異的
であり、相互に比較して考察するに値すると思われる。マウス、ラッ
IgE 抗体と反応しマスト細胞の脱顆粒に始まる一連のアレルギー
トでの結果をそのままヒトに外挿することはできないことは生理
症状を誘発するものと思われる。このような即時型のアレルギー
学、生化学の常識であるが、図1に模式的に示すように、OVA の
症状を誘発すると同時に、取り込まれた抗原に対する感作
(免疫
腸管からの末梢血への移行の結果を見ると、通常の食事や餌とし
応答)
をさらに増強する、という悪循環に陥る。一方、後者の場
て摂取する程度の投与量で、少量ではあるが一定のレベルの未分
合は健常人であり、アレルギーは誘発しないで通常はむしろ反対
解のタンパク質が腸管から吸収され血中に移行することは、動物
の経口免疫寛容を誘導するようである。実際にマウスでの OVA
種を超えて共通の生理的現象と解釈することができる。さらに、
の経口投与実験においても、複数回の投与と血中での OVA の存
クローズドコロニーであるマウス、
ラットでは個体間での偏差は
(こ
在を確認した後に、血中の OVA に対する特異抗体を調べてみて
の手の実験としては)
小さく、ヒトにおいても年齢や遺伝的背景の
も有意な上昇は観察されない
(松原 毅、未発表)
。遺伝的背景や
差異を考慮すれば、個体差はそれほど大きくはない。このように
環境要因によりアレルギーを誘発しやすい人も、
そうでない人も、
タンパク質の腸管吸収は定常的に起こっており、栄養素の消化・
最初から感作されていることはなく、いわゆるナイーブ
(naive)
吸収のような腸管の生理現象の一つであるとも考えられる。また、
な状態である。
このナイーブな状態から、
消化管経由で体内に入っ
10-100ng/ml という血中濃度は、生化学的にも十分検出できる
てきた食物抗原の刺激によって、免疫寛容の方向に進むか、ある
量であり、生理的にも無視できる濃度ではない。実際に、腸上皮
いはアレルギー感作に向かうかが大きな分岐点となる。上述した
に点在するパイエル板の管腔側を覆う M 細胞(microfold cells)
は、
ように、
生理現象として常時わずかな量の食物抗原を
(意図的に?)
バクテリアのような粒状の抗原に加えて、可溶性の食物抗原
(タン
取り込むことにより有益無害な食物抗原に対しては経口免疫寛容
パク質)
も細胞内に取り込み、一部を基底側に輸送することが知
を誘導する、というのがデフォルトと考えるのが合理的と思われる。
られている
(16)
。さらに、栄養素の吸収を担う腸上皮細胞も、腸
この
「食物抗原に対しては寛容の方向に進む」
という設定が、生体
管腔内に残存する未分解の食物タンパク質の一部を細胞内に取り
に害を及ぼす病原体に対するかのような免疫応答を誘導するよう
込んで、大部分は細胞内消化により分解するものの、わずかな量
に変える要因が複数考えられる。ひとつは、活性化や抑制による
の未分解のタンパク質を基底側に放出することが報告されている
免疫系の複雑な制御系が全体に活性化の方向にシフトすることが
(17,18)
。このような個々の上皮細胞による未分解のタンパク質
挙げられる。生体の免疫系は、それを担当する細胞や器官の機能
の基底膜側への経細胞輸送はごく僅かであっても、腸上皮管腔面
分化と同時に、外界からの抗原の刺激
(病原体による感染、腸内
の絨毛、微絨毛構造によって形成される広大な上皮表面を埋める
細菌のような共生微生物との相互作用)
によって発達し成熟する。
上皮細胞の数は極めて多く、それらが輸送する
(透過させる)
タン
病原体か無害な異物かを、さらに自己か非自己かの微妙な違いを
パク質の総和はある程度の量に達すると推定できる。これらの腸
区別ができるように、免疫系には、活性化と抑制のバランスと強
上皮を横切って体内に到達したタンパク質は、腸粘膜固有層から
度と質を制御しながら恒常性を保つような高度な機構が備わって
毛細血管およびリンパ管に取り込まれ、循環血中に移行し、 上述
いる。このような恒常性が崩れた時に、本来は寛容に進むべき無
したような 10 -100ng/ml の濃度で検出される結果となったと推
害な食物抗原に対して免疫系の活性化の方に向かいアレルギー
定される。
応答が誘導されると考えられる。デフォルトの恒常性が崩れる要
因としては、外来抗原刺激に代表される外的因子と遺伝的因子や
神経系や内分泌系などの内的因子が想定される。もう一つの要因
として、抗原の体内への侵入の仕方が考えられる。正常な活性化
と抑制のバランスが保たれている場合でも、抗原の量や質、さら
に取り込み
(侵入)
のルートなどによっては、寛容から応答にシフ
トすることが想定される。正常な生理状態において、パイエル板
M 細胞や腸上皮細胞による経細胞輸送という、ある種のフィル
ターを通して体内に移行した抗原に対しては、予定通りの免疫寛
容を誘導するようなプロセスが進行すると考えられる。一方、傷
害や疾病などにより予期しない量の抗原が通常とは異なるルート
で入ってきた場合
(例えば、傷害により上皮細胞層が脱落したり
密着結合が緩んだりしたような部位からの直接の侵入や、病原体
図 1:卵アルブミン
(OVA)
の胃内投与後の血液への移行と動態
文献 13, 14, 15 のデータを基に OVA の血液中動態のイメージを
作図した OVA の胃内投与量:
400mg/kg(マウス)、250mg/kg(ラット)、100mg/kg(ヒト)
やその成分に付随した侵入、などが想定される。
)
には、抑制よりも
活性化が勝り、
異物の排除を目指した免疫応答に進むと思われる。
このような消化管から体内に取り込まれた外来抗原に対して、排
除するための敵対的な応答と寛容に処理してやり過ごすための応
答を制御してバランスをとる腸管粘膜免疫系の制御機構が最近の
このようにして体内にとりこまれ、循環血にのって全身に到達
研究から明らかになってきた
(19)
。
する食物タンパク質は、アレルギーを誘発しないのであろうか?
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September, 2008
03 I 腸管粘膜免疫と経口免疫寛容
は、免疫応答の本質であり、たとえ生理的な条件で取り込まれる
わずかな量であっても抗原特異的な免疫反応が誘発される。その
生理的な条件で消化管の上皮細胞およびパイエル板の M 細胞
結果、多様なアレルギーの病状が惹起されるとともに、さらに強
から経細胞輸送によって取り込まれた食物抗原は粘膜固有層や
力な免疫応答が誘導される。同時に、消化管局所でもアレルギー
パイエル板に常在する樹状細胞に取り込まれる。樹状細胞がパイ
反応に伴う炎症反応などが進行し、腸上皮のバリアー機能が破綻
エル板や腸間膜リンパ節の T 細胞領域に移動してナイーブ T リ
することにより、腸管管腔内から非生理的
(病理的)
な量と質の抗
ンパ球と接触することで、細胞内に取り込まれプロセスされた食
原が体内に侵入することになる。また、抗原特異的 IgE 抗体が
物抗原は MHC classⅡとともに T リンパ球に提示され、その結
関与する腸上皮での内向きの経細胞輸送によっても抗原の取り込
果 T リンパ球は活性化される。食物抗原のような体にとって無
みが増加すると推定される
(21)
。このようなアレルギー症状の
害な分子は、LPS や CpG モチーフなどの病原体に固有の構造
誘発と感作は、さらに多くの抗原の侵入と抗原刺激につながり、
(pathogen-associated molecular pattern: PAMP)
を持たない
排除のための免疫応答のいっそうの増強、という負のスパイラル
ため、Toll-like レセプターのようなパターン認識受容体
(PRRs)
に陥ることになる。現在、最も有効な食物アレルギーの治療法は
経由で細胞を刺激することはない。その場合には、腸上皮細胞
アレルゲンを摂取しないような食生活を続ける、いわゆる除去食
やマクロファージなどの樹状細胞周辺の細胞からは免疫応答を
療法であるが、このような食物アレルギー発症の憎悪機構を考え
抑制するタイプのサイトカイン
(TGF- β)
や脂質メディエーター
ると、その対症療法的な有効性は肯けるが、同時に、積極的な治
(PGE2)
が産生され、そのような環境で食物抗原と取り込んだ
療
(免疫寛容の誘導)
には至らないということも予想できる。これ
樹状細胞も、ナイーブ T リンパ球を制御性 T リンパ球
(T reg)
に
に対して免疫応答そのものを制御する原因療法を目指して、原因
分化させるような抗原提示の方が優勢となる
(19)
。このように、
タンパク質の変異体や部分ペプチドを用いることにより排除する
腸管粘膜免疫系には PAMP を一つの手がかりとして病原性の有
方向の免疫応答を誘導、増強
(ブースト)
することなく抑制性の応
無を判断して、感染や傷害の無い生理的な条件下で取り込まれた
答のみを誘導する試みがなされている。ピーナッツアレルギーに
抗原に対しては、免疫応答を抑制して寛容にやり過ごす方向の応
おける 2 種の主要アレルゲン
(Ara h1, Ara h 2)
の IgE エピトープ
答を誘導すると推定される。腸管粘膜免疫系において応答を主
(IgE 抗体が結合する領域)
に変異を導入した組換えタンパク質に
に抑制の方向に調節する機能を持つ T リンパ球を表2にまとめ
ついて、感作マウスでの経口投与誘発アナフィラキシーモデルを
る
(19)
。これらは B リンパ球を活性化して抗体を産生させるヘ
用いた研究の報告がある
(22)
。調製した組換え変異タンパク質を、
ルパー T 細胞やウイルス感染細胞を攻撃する細胞傷害性 T 細胞
IgE 抗体との結合性の消失を確認した後、殺菌した大腸菌とともに、
などの、エフェクターTリンパ球とは異なる T 細胞集団である。
既に感作されているマウスの直腸内に注入すると、ピーナッツ
一方、消化管でのウイルスや細菌の感染や、粘膜の傷害による食
特異的な IgE 抗体が減少し、ピーナッツの経口投与によっても
物抗原の量的、質的に無秩序な侵入に対しては、免疫系を活性化
アナフィラキシー反応は誘発されなかったと報告されている。ま
して抗原を排除する方向の応答が誘導されるものと考えられる。
た、食物ではないが、花粉アレルギーにおける原因抗原の部分ペ
例えば、腸上皮バリアー機能の破綻により大量の食物抗原が腸内
プチド
(T リンパ球エピトープ)
を経口投与することで、花粉症を
細菌やその産物とともに体内に侵入したような場合には寛容では
抑制しようという試みもある
(23)
。低分子量のペプチドは不完
なくアレルギー応答が誘導されるものと推定される。
全な抗原という意味で、免疫応答を誘導する能力
(免疫原性)
は低
いか、あるいは持たないが、寛容を誘導することはできると推定
される。一定の分子量以下の乳タンパク質酵素消化物を用いた育
児用ミルク
(低アレルゲン化育児用ミルク)
が開発され、乳児のミ
ルクアレルギーにおいて有効に利用されている。これは一定のサ
イズ以下のペプチドはアレルギー反応も誘発しないし、免疫応答
も誘導しない、という性質を利用した対症療法的な効果を期待し
たものであったが、
最近の大規模で長期間の臨床疫学的研究では、
それ以上の効果が期待できることが示唆されている
(24)
。ドイ
ツでのアトピーの遺伝的素因を持つ新生児 2252 人を対象にし
て、母乳保育の補助として、あるいは食物アレルギーのハイリス
クの子供への離乳食として、酵素消化乳タンパク質を用いた数種
表 2:腸管粘膜免疫に関与する制御性 T リンパ球
類の異なる育児用ミルクを摂取させた。その後、6 歳まで追跡し、
アトピー性皮膚炎、食物アレルギーなどの発症との関連が調べら
以上に述べたように、健常な消化管では、日常的に摂取する食
れ、通常の育児用ミルクに比べて、酵素消化カゼインや酵素消化
物のほんの一部を体内に取り込んで、
異物であるにもかかわらず、
乳清タンパク質を用いた育児用ミルクを摂取した群では、6 歳に
それに対する免疫応答をむしろ積極的に抑制するような機構が
なるまでの間の食物アレルギーとアトピー性皮膚炎の発症の頻度
存在すると言うことができる。古くから現象として知られている
が優位に低いことが報告されている。この研究成果は、遺伝的に
「経口免疫寛容」
は、このような機構によってうまく説明ができる
食物アレルギー発症のリスクが高い乳幼児においても、ペプチド
(20)
。
このような調節機構が備わっているならば、
食物アレルギー
性の抗原を適切に摂取することで、抑制性の応答を誘導して経口
の治療にも抗原
(アレルゲン)
を経口投与して免疫寛容を誘導すれ
免疫寛容を成立させることも可能であることを示している。
また、
ば良いと思われる。しかし、既にアレルゲンに対して排除する方
消化管粘膜免疫を含め免疫系が発達し外来抗原の適切な刺激をう
向の免疫応答が誘導されている状態では、抗原刺激による寛容の
けつつ成熟する乳幼児期に摂取する食物の量や質が、その後の幼
方向へのスイッチは難しいと思われる。一旦、排除すべき抗原と
児期での食物アレルギーの発症のリスクに少なからず影響するこ
して免疫系に認識
(記憶)
されると、二回目以降の同じ抗原への暴
とを示唆している。
露・遭遇では一回目以上に強力で速やかな応答が誘発されること
Nestlé Nutrition Council, Japan Nutrition Review
September, 2008
polyethylene glycol oligomers. Am J Physiol Cell Physiol.
おわりに
2001 Aug;281(2):C388-97.
食物アレルギーの原因抗原や発症機構とその制御に関する理解
12) Heyman M. Gut barrier dysfunction in food allergy. Eur J
は、この 10 年ほどの間に大きく進んだ。それに伴って診断や予
Gastroenterol Hepatol. 2005 Dec;17(12):1279-85.
防、治療の技術も進歩した。しかし、一方で、食物アレルギーや
13) Husby S, Foged N, Host A, Svehag SE. Passage of
花粉症などのアレルギー性疾患が増加してきたことに対する明確
dietary antigens into the blood of children with coeliac
な回答は未だ得られていない。20 世紀後半から、
食物アレルギー
disease. Quantification and size distribution of absorbed
や喘息のようなアレルギー性疾患のみならずⅠ型糖尿病や多発性
antigens. Gut. 1987 Sep;28(9):1062-72.
硬化症のような自己免疫疾患も増加している
(25)
。アレルギー
14) Matsubara T, Aoki N, Mizumachi K, Kurisaki J, Okajima T,
と自己免疫の共通点は、生体にとって無害な物質にまで排除する
Nadano D, Matsuda T. Absorption, Migration and Kinetics in
方向の応答が誘導される、すなわち免疫応答の制御、特に抑制機
Peripheral Blood of Orally Administered Ovalbumin in a Mouse
能が鈍くなっていることである。このような抑制機構が鈍化して
Model. Biosci. Biotech. Biochem. 2008 In press
いる原因の一つとして、感染症の減少との関連から議論され、20
15) Morita T, Tanabe H, Ito H, Yuto S, Matsubara T, Matsuda
年前に提唱された衛生仮説
(hygiene hypothesis)
が再び議論の
T, Sugiyama K, Kiriyama S. Increased luminal mucin does not
対象になっている
(25,26)
。一方で、感染症が自己免疫疾患を誘
disturb glucose or ovalbumin absorption in rats fed insoluble
発したり、上述したように食物アレルギーの最初の引き金になった
dietary fiber. J Nutr. 2006 Oct;136(10):2486-91.
りする可能性もあり、我々の免疫系が過敏になる傾向にあること
16) Owen RL. Sequential uptake of horseradish peroxidase
と衛生環境の向上に伴う感染症への羅患率の低下との関係を議論
by lymphoid follicle epithelium of Peyer's patches in the
するには、さらに多くの情報の蓄積が必要であろう。モデル動物
normal unobstructed mouse intestine: an ultrastructural study.
実験や臨床試験、疫学調査などによる今後の研究の展開が期待さ
Gastroenterology. 1977 Mar;72(3):440-51.
れる。
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Nestlé Nutrition Council, Japan Nutrition Review
September, 2008
Food Allergies:
Research Progress and Future Perspectives
【Key words】
allergy
food antigens
intestinal absorption
oral immune-tolerance
Tsukasa Matsuda and Takeshi Matsubara
Graduate School of Bio-agricultural Sciences, Nagoya University
About 100 years have passed since Dr Clemens von Priquet
macromolecules from ingested food and commensal bacteria.
first used a term "allergy"(allos[other]and ergon[reaction]
Therefore, the first immunological sensitization could be
in Greek)to describe a hypersensitive reaction to antiserums
initiated by antigens which had passed through some regions
and vaccines. Acute gastrointestinal inflammation caused by
of intestinal epithelia damaged by unknown exogenous or
specific components of daily ingested food was reported for
endogenous causes such as infection and physical injuries.
the first time about 40 years ago. Subsequent progress in
However, several studies have demonstrated that very
scientifically understanding of the causative antigens in food
small amounts of intact food proteins normally pass across
and specific serum-antibodies of patients with a food allergy,
intestinal epithelia and migrate into circulating blood in both
as well as in clarifying the regulatory mechanisms in complex
mouse and rat models, and also in healthy humans. Such
immune system, has made it possible to explain scientifically
normally absorbed food proteins appear not to trigger immune
how and why allergic hypersensitive reactions are induced
responses for antigen elimination but to induce immune
by innocuous and nutritious food components. We now know
unresponsiveness, termed oral tolerance. When normal
that in some cases food allergies are in response to the
and regulated absorption of food proteins were changed to
pathology of skin tissue and respiratory organs rather than
unregulated infiltration by physical or pathophysiological
the digestive system.
damage, immune response to food antigens might also be
switched from tolerance to allergic sensitization.
In this short review, recently growing food-allergen databases
and research trends on the mechanisms of food allergy
provocation and suppression methods are overviewed, and
3. Mucosal immunity of digestive tracts and
oral immune-tolerance
future avenues of research for effective prevention and
Recent studies on intestinal immunity suggest that eliciting
therapy of food allergies are discussed from the perspective
immune responses to eliminate antigens require antigen
of food antigens.
stimulation in combination with pathogenesis-relating costimulation through unique receptors that recognize pathogen-
1. Food allergens: identification and
associated molecular pattern(PAMP), such as LPS and
construction of databases including structure and function
CpG motif. When intestinal immune system is stimulated by
Food contains various antigenic high-molecular components,
food-antigen alone without PAMP co-stimulation, suppressive
and while some have food proteins have been known to
or regulatory immune responses seems to be induced,
induce hypersensitive immune-reactions leading to various
resulting in establishing oral immune-tolerance. Some
allergic diseases, not all do. Many causative food antigens,
attempts for active induction of oral immune-tolerance by
i.e., potential food-allergens, have been analyzed and
using allergen-derived peptides containing a T-cell epitope
identified using specific antibodies, especially the IgE class
have been conducted in mouse models. Furthermore, recent
from sera of patients with clinical food allergy. Remarkable
clinical-epidemiology studies have demonstrated that milk
progress in chemical and biochemical technologies for
protein hydrolysate-based infant formula was effective on not
protein microanalyses, such as mass spectroscopy, has
only reducing the risk of milk allergy provocation of suckling
resulted in a sharp increase in the number of identified food
infants, but also reducing subsequent prevalence of food
allergens. Thus, information on structure and function of
allergies and atopic dermatitis of the infants after weaning.
such potential food-allergens has been accumulated and
stored in several public databases, e.g., "Allergen Database
The hygiene hypothesis proposed 20 years ago has regained
for Food Safety", "Allergen Nomenclature", "The InfomaALL",
attention. At the same time, possibilities have also been
"Allegome", "AllegenOnline". By utilizing the accumulating
shown that some infectious diseases of the digestive tract
information on allergen sequences, some computational-
may be an initial trigger of food-protein infiltration leading to
science studies suggested that allergens possess a certain
allergic sensitization and may relate to some auto-immune
common structural feature and belong to restricted protein
diseases.
(gene)families or superfamilies.
Further progress in basic and clinical research is expected
2. Intestinal absorption and blood-kinetics of food antigens
on allergic responses to food antigens as well as immune
Intestinal epithelia are known to have barrier functions for
responses to oral pathogens and commensal bacteria.
blocking transepithelial passage(unregulated infiltration)of
Nestlé Nutrition Council, Japan Nutrition Review
September, 2008