肝 (肝 内 胆 管 を含 む) (C22) 肝 に原 発 する悪 性 腫 瘍 は ICD-O 分 類 の場 合 、局 在 コード「C22._」に分 類 される。 肝 に発 生 した肉 腫 、リンパ腫 などについての病 期 分 類 や病 理 組 織 型 はそれぞれの章 を参 照 。 ICD-O局在 診療情報所見 C22.0 肝 肝内胆管 C22.1 胆小管 細胆管 1.概 要 わ が 国 に お け る 肝 が ん 粗 死 亡 率 (人 口 10 万 対 )は 、 男 38.0、 女 17.2、 年 齢 調 整 死 亡 率 は 、 男 24.8、 女 8.1 で あ る (2004 年 )。 悪 性 新 生 物 死 亡 全 体 に 占 め る 割 合 は 、 男 12.1% 、 女 8.7% と な っ て い る ( 男 第 3 位 、 女 第 5 位 )。 2000 年 に お け る 全 国 推 計 年 齢 調 整 罹 患 率 (人 口 10 万 対 )は 男 32.8、女 11.1 で 男 第 4 位 、女 第 7 位となっている。 右葉 後 区 域 (P) 左葉 前 区 域 (A) 外 側 区 域 (L) 内 側 区 域 (M) 中矢状裂 下大静脈 右矢状裂 左矢状裂 8 7 1 4 6 2 3 5 横断面 門脈 カントリー線 図 1.肝 臓 の葉 と区 域 2. 解 剖 肝 臓 (liver)は 2 本 の 血 管 か ら 血 液 の 供 給 を 受 け て い る 。 1 本 は 腹 腔 動 脈 (celiac artery)の 枝 で あ る 肝 動 脈 (hepatic artery)、 も う 1 本 は 腸 管 を 流 れ て き た 門 脈 (portal vein)で あ る 。 肝 臓 を 通 過 し た 血 液 は 、 肝 静 脈 (hepatic vein)を 通 っ て 下 大 静 脈 (inferior vena cava)に 注 ぐ 。 原発部位 肝 臓 の 葉 と 区 域 は 、解 剖 学 的 区 分 と 機 能 的 区 分 の 2 つ の 分 け 方 が あ り 、右 葉・ 左 葉 の 分 け 方 が 異なる。臨床上は、機能的区分を用いることが多い。 1 解剖学的区分 肝 臓 を 4 つ の 葉 ( 右 葉 、 左 葉 、 方 形 葉 quadrant lobe、 尾 状 葉 caudate lobe) に 分 け る 。 左 右 の 葉 は 肝 鎌 状 間 膜 (falciform ligament)で 区 切 ら れ る 。 機能的区分 肝 臓 は 門 脈 に よ る 血 行 支 配 が 強 い た め 、肝 臓 内 の 門 脈 支 配 に よ る 区 分 を 行 う 方 法 で あ る 。胆 嚢 窩 と 肝 上 部 の 下 大 静 脈 を 結 ぶ 線 (cantlie 線 )に よ っ て 左 右 の 葉 に 分 割 す る 。 こ の 線 上 に は 、 左 右 の 門 脈 支 配 の 境 界 と な る 中 肝 静 脈 が 位 置 し て い る 。さ ら に 、Couinaud(ク イ ノ ー )に よ り 、肝 臓 は 、 4 つ の 区 域 ( segment) と 8 つ の 亜 区 域 ( subsegment) に 分 け ら れ た 。 3 本 の 主 な 肝 静 脈 に よ っ て 形 成 さ れ る 垂 直 面 (右 ・ 中・ 左 矢 状 面 )と 、左 右 の 門 脈 枝 に 寄 っ て 形 成 さ れ る 横 断 面 によって分けられ、4 つの区域は横断面によって亜区域へと分けられる。これら8つの亜区域 は、肝臓を内蔵面から見て尾状葉を1とし、反時計回りに数字が振られている。 解 剖 学 的 左 葉 は 、機 能 的 区 分 で は 外 側 区 域 の み と な り 、機 能 的 区 分 で 左 葉 の 内 側 区 域 は 、解 剖 学的区分では右葉に含まれる。 解剖学的右葉 解剖学的左葉 機 能 的 右 葉 (右 肝 ) 後区域 機 能 的 左 葉 (左 肝 ) 内側区域 前区域 前 上 区 域 ( Ⅷ) 外側区域 外 側 上 区 域 内側上区域 後上区域 外 側 下 区 域 Ⅳ (Ⅶ) 内側下区域 前 下 区 域 ( Ⅴ) 後下区域 (Ⅵ) カントリー線 図 2.肝 の 解 剖 学 的 機 能 的 区 分 【機能的区分】 尾状葉 ( C) S1 左葉 門 脈 の 左 枝 に 支 配 さ れ る 領 域 を い い 、画 像 上 で は 中 肝 静 脈 の 内 側 に 位 置 す る 。 さ ら に肝鎌状間膜で内側区と外側区に分画される。 内 側 区 域 ( M) S4 肝鎌状間膜の内側。門脈の左枝の内側枝に支配される。 外 側 区 域 ( L) S2, S3 肝鎌状間膜外側。門脈の左枝の外側枝に支配される。 右葉 門 脈 の 右 枝 に 支 配 さ れ 、画 像 上 で は 中 肝 静 脈 の 外 側 に 位 置 す る 領 域 を い う 。 さ ら に 右肝静脈で前区と後区に分画される。 前区域 ( A) S5, S8 門脈の右枝の前枝に支配され、画像上は右肝静脈の腹側に位置する。 後区域 ( P) S7, S6 門脈の右枝の後枝に支配され、画像上は右肝静脈の背側に位置する。 2 所属リンパ節 TNM 分 類 で は 、 所 属 リ ン パ 節 は 、 肝 門 部 、 肝 十 二 指 腸 間 膜 、 および腎静脈上方の腹部下大静脈に沿ったリンパ節(横隔膜 下リンパ節を除く)としている。取扱い規約では、左記の表 のようにリンパ節を取り決めている。 原発性肝癌取扱い規約(第4 版)での所属リンパ節 (p.6) 右噴門 左噴門 小彎 遠隔転移 左胃動脈 肝臓癌の主な転移様式は、門脈経由(肝内転移)もしくは、 総肝動脈 肝静脈経由である。肝内静脈を経由した転移は、衛星病変 腹腔動脈 ( satellitosis)す な わ ち 多 発 巣 性 腫 瘍 と 区 別 で き な い た め 、 脾門 脾動脈 多発巣性腫瘍として分類される。 肝十二指腸靱帯 肝外転移の頻度が最も高い部位は肺と骨である。腫瘍はしば 膵裏面 しば肝被膜を超えて隣接臓器(副腎、横隔膜、結腸など)に 腸間膜 浸潤したり、破裂して急性出血や腹膜播種を引き起こしたり 中結腸動脈周囲 する。 大動脈周囲 膵頭前部 下膵 横隔膜下 食道裂孔 下部縦隔傍食道 横隔膜上 肝鎌状間膜 横隔膜 左葉 右葉 肝円索 総胆管 膵尾部 胆嚢 膵臓体部 膵管 膵頭部 空腸 大十二指腸乳頭 図 3 肝 臓 の周 辺 臓 器 3 No.1 No.2 No.3 No.7 No.8 No.9 No.10 No.11 No.12 No.13 No.14 No.15 No.16 No.17 No.18 No.19 No.20 No.110 No.111 3.病 期 分 類 3.1) TNM 分 類 (UICC 第 6 版 , 2002 年 ) T-原 発 腫 瘍 T 分 類 は 、 ① 血 管 浸 潤 の 有 無 ( 画 像 診 断 学 的 ま た は 病 理 学 的 に 評 価 )、 ② 腫 瘍 性 結 節 の 数 ( 単 発 か 多 発 か )、 ③ 最 大 腫 瘍 径 ( ≦ 5 cm か > 5 cm か )、 ④ 主 要 脈 管 へ の 浸 潤 ( 門 脈 の 主 枝 ( 左 ・ 右 門 脈 ; 区 お よ び 区 域 へ の 枝 は 除 く )へ の 浸 潤 や 右 中 左 肝 静 脈 へ の 浸 潤 、⑤ 胆 嚢 以 外 の 隣 接 臓 器への直接浸潤、肝癌破裂等を考慮し決定される。 表1. T-原発腫瘍 TNM分類第6版 TX T0 T1 T2 T3 T4 内容 原発腫瘍の評価不能 原発腫瘍を認めない 単発で脈管浸潤のない腫瘍 ・単発で脈管浸潤を伴う腫瘍 ・多発性で最大径が5cm以下の腫瘍 ・最大径が5cmをこえる多発腫瘍 ・門脈または肝静脈の大分枝に浸潤した腫瘍 ・胆嚢以外の隣接臓器に直接浸潤する腫瘍 ・肝癌破裂を起こした腫瘍 N-所 属 リンパ節 表2.N-所属リンパ節転移 TNM分類 内容 NX 評価不能 N0 所属リンパ節転移なし N1 所属リンパ節転移あり ※ 所 属 リ ン パ 節 へ の 浸 潤 は 、 線 維 層 板 肝 細 胞 癌 ( fibrolamellar carcinoma ) を 除 く と ま れ ( 5 % ) と 考 え ら れ る ( AJCC 6 t h edition よ り )。 M-遠 隔 転 移 表3.M-遠隔転移 取扱い規約 内容 MX 評価不能 M0 遠隔転移なし M1 遠隔転移あり 病期分類 Ⅰ期 Ⅱ期 ⅢA期 ⅢB期 ⅢC期 Ⅳ期 T1 T2 T3 T4 Tに関係なく T,Nに関係なく N0 N0 N0 N0 N1 M0 M0 M0 M0 M0 M1 4 3.2)臨 床 進 行 度 分 類 限局: 所属リンパ節転移: 隣接臓器浸潤: 遠隔転移: ・単発、多発を問わず、一葉にとどまる。 ・所属リンパ節への転移を伴う。 ・複数の葉への浸潤 ・肝外血管への進展(肝動脈、大静脈) ・2葉にわたる多発結節 ・肝外胆管、横隔膜以遠への進展 ・遠隔転移があるもの。 ・噴門、横隔膜リンパ節への転移 【補 足 】 取 扱 い規 約 では、腫 瘍 の存 在 範 囲 を H で表 す。 Hs:ひとつの亜 区 域 に存 在 H1:ひとつの区 域 に存 在 H2:2 つの区 域 に存 在 H3:3 つの区 域 に存 在 H4:3 つの区 域 を超 えて存 在 3.3)取 扱 い規 約 (原 発 性 肝 癌 取 扱 い規 約 2000 年 11 月 【第 4 版 】) 取扱い規約における病期分類(進行度分類)は、T 因子、N 因子、M 因子であるが、T 因 子 に つ い て は 、 TNM 分 類 の T 分 類 と 異 な る が N 因 子 、 M 因 子 で は 、 TNM 分 類 と ほ ぼ 同 じである。 1)T 因 子 腫 瘍 の 「 個 数 」、「 大 き さ 」、「 脈 管 侵 襲 の 有 無 」 の 3 項 目 の 組 み 合 わ せ に よ り 規 定 さ れ る 。 T因子 ①腫瘍個数:単発である ②腫瘍径が2cm以下である ③脈管侵襲が無い(Vp0, Vv0, B0)* T1 ①②③すべてが合致 T2 2項目合致 T3 1項目合致 T4 すべて合致せず、または肝癌破裂 *脈管侵襲について Vp0: 門脈への侵襲を認めない Vv0:肝静脈への侵襲を認めない B0:肝内胆管への侵襲を認めない ※癌 腫 の「個 数 」「大 きさ」「脈 管 侵 襲 」の 3 項 目 によって規 定 される。複 数 の癌 腫 は多 中 心 性 癌 主 であ っても肝 内 転 移 癌 腫 であってもよい。肝 細 胞 癌 破 裂 S 3 は T4 として扱 う。 5 2)N 因 子 N0:リンパ節 転 移 を認 めない N1:リンパ節 転 移 を認 める 3)M 因 子 M0:遠 隔 転 移 を認 めない M1:遠 隔 転 移 を認 める 表. 取扱い規約の病期分類 Stage T因子 N因子 I T1 N0 II T2 N0 III T3 N0 T4 N0 IV いずれのT いずれのN M因子 M0 M0 M0 M0 M1 4.進 行 度 (ステージ) C. 肝臓がん 原発性肝癌取扱い規約 4版 T1 T2 T3 T4 M1 原発性肝癌取扱い規約 4版 と進展度 Hs、H1、H2(1葉に局在) Vp0-2, Vv0-1, B0-1 H2(2葉にわたる)、H3、H4 S1-3、Vp3-4、Vv2-3、B2-4 M1,P1-2 N0 1 2 3 4a 4b N1 4a 4a 4a 4a 4b TNM分類 (ステージ) T1 T2 T3 T4 M1 N0 1 2 3a 4 4 N1 3b 3b 3b 4 4 N0 限局 限局 隣接臓器浸 隣接臓器浸 遠隔転移 N1 所属リンパ転移 所属リンパ転移 隣接臓器浸 隣接臓器浸 遠隔転移 TNM分類と進展度 T1 T2 T3(<5cm,多発,一葉) N0 限局 限局 限局 隣接臓器浸 遠隔転移 N1 所属リンパ転移 所属リンパ転移 所属リンパ転移 隣接臓器浸 遠隔転移 T3(複数葉,Vp,Vv大分岐浸潤)、T4 M1 ※肝 内 転 移 例 :後 区 域 に主 腫 瘍 が存 在 し後 区 域 に転 移 と考 えられる病 巣 を認 める場 合 は IM 1 (P)とし外 側 区 域 にも 認 める際 は IM 2 (P,L)と記 載 する。 註 1:肝 内 転 移 は取 扱 い規 約 【第 4 版 】 第 II 部 -B-3・註 1(p.32)の定 義 に従 う 註 2:主 癌 結 節 に近 接 して見 られるよ 小 さい癌 結 節 を衛 星 結 節 (satellite nodule) という。肝 内 転 移 、多 中 心 性 発 生 を問 わない。従 来 、娘 結 節 (daughter nodule)と呼 ばれていたものはこれに含 まれるので娘 結 節 という用 語 は使 用 しない。 p.32 註 1:肝 内 転 移 intrahepatic metastasis 以 下 の病 変 は肝 内 転 移 癌 巣 と診 断 する。 1) 2) 3) 6 註 2:Multicentric occurrence 7 5. 取 り扱 い規 約 と TNM 分 類 の変 換 に関 する事 項 表1. 取扱い規約分類TコードとUICC TNM分類T分類との関係 取扱い規約第4 診療記録の記載事項 版 T因子 脈管侵襲 単発か? 大きさ 門脈、肝静脈第 2次分岐まで 原発腫瘍の評価不能 原発腫瘍を認めない T1 T2 単発 ≦2cm なし 単発 2cm< なし 単発 ≦2cm 多発 ≦2cm 単発 2cm< T3 T4 多発 多発 多発 ≦2cm 2cm<、≦5cm 5cm< 多発 2cm< あり 門脈、肝静脈の 大分枝に浸潤 門脈、肝静脈本 幹に浸潤 なし あり 門脈、肝静脈の 大分枝に浸潤 門脈、肝静脈本 幹に浸潤 あり なし なし あり 門脈、肝静脈本 幹に浸潤 肝癌破裂 胆嚢以外の隣接臓器に直接浸潤 TNM分類 TX T0 T1 T3 T4 T2 T3 T4 T2 T3 T4 取 扱 い規 約 に従 い記 載 された T 因 子 コードから UICC TNM 分 類 T 分 類 コードへのそのままの変 換 は、 不 可 能 であり、取 扱 い規 約 の取 り決 めにより記 載 されている診 療 録 から、TNM 分 類 への変 換 を行 う必 要 がある。 TNM 分 類 でのコードに必 要 な情 報 1. 腫 瘍 は単 発 か?多 発 か? 2. 腫 瘍 径 3. 脈 管 浸 潤 に関 する記 録 (Vp0-4, Vv0-3) ① 末 梢 か? (Vp1-2, Vv1) ② 腫 瘍 分 岐 か?(Vp3, Vv2) ③ 本 幹 か? (Vp4, Vv3) 4. 遠 隔 転 移 に関 する記 録 8 TNM分類 T: 腫瘍の形態 取扱い規約による記載情報 多発 単発 門脈への侵襲なし (Vp0) 肝静脈への侵襲なし (Vv0) 脈 門脈並びに肝静脈の区域枝までの浸潤をいう。 管 門脈第2次分枝に侵襲(腫瘍栓)あり (Vp1,2) 侵 肝静脈末梢枝に侵襲(腫瘍栓あり (Vv1) 襲 ・ そ 門脈または肝静脈大分岐部への浸潤 の 門脈第1次分枝に侵襲(腫瘍栓)あり (Vp3) 他 右・中・左肝静脈本幹、下右肝静脈・短肝静脈のい ずれかに侵襲(腫瘍栓)あり (Vv2) 肝癌破裂 胆嚢以外の隣接臓器への直接浸潤 門脈本幹、対側の門脈に侵襲(腫瘍栓)あり(Vp4) 下大静脈に侵襲(腫瘍栓)あり (Vv3) 5cm≧ 5cm< T1 T2 T3 T2 T2 T3 T3 T3 T3 T4 T4 T4 ※脈管浸潤の定義: 取扱い規約では、「門脈1次分枝は右側は共通幹、左側は横行部をいい、2次分枝は右側では区域枝本幹、 左側では臍部をいう。」としている。 一方、TNM分類(第6版)では、「門脈または肝静脈の大分岐に浸潤が認められる場合」をT3とするとしてい る。TNM分類よりもさらに詳細な記述がなされているAJCC第6版をみると「脈管浸潤とは、肉眼的もしくは顕 微鏡的浸潤を含む。大分岐への浸潤(T3)は、門脈については、門脈右枝、左枝への浸潤と定義し、これに は、区域枝を含まない。肝静脈については、右、中、左肝静脈のいずれかへの浸潤を持って、大分岐への浸 潤(T3)と定義する」としており、大分岐への浸潤は、取扱い規約におけるVp3、Vv2にそれぞれ相当する。 N: リンパ節転移の情報 (取扱い規約による記載情報) N1 ・N1, NOS ・所属リンパ節転移あり, NOS 取 扱 い規 約 で取 り決 めている所 属 リンパ節 と TNM 分 類 で定 めている所 属 リンパ節 とは若 干 異 なるが、 現 時 点 では、取 扱 い規 約 に基 づき記 載 された N 因 子 をそのまま TNM の N 分 類 にも転 用 することとする。 M: 遠隔転移の情報 (取扱い規約による記載情報) M1 ・M1 ・P1 ・遠隔転移あり, NOS 9 6.形 態 コード 病理組織名(日本語) 英語表記 Hepatocellular carcinoma (liver cell carcinoma) Intrahepatic cholangiocarcinoma 肝内胆管癌 (peripheral bile duct carcinoma) 胆管嚢胞腺癌 Bile duct cystadenocarcinoma 混合型肝癌(肝細胞癌と胆管細胞癌の Combined hepatocellular and 混合型) cholangiocarcinoma 肝芽腫 Hepatoblastoma 未分化癌 Undifferentiated carcinoma Epithelioid haemangioendothelioma, 類上皮(性)血管内皮腫(悪性) malignant 血管肉腫 Angiosarcoma (Hemangiosarcoma) Undifferentiated sarcoma(embryonal 未分化肉腫 sarcoma) 横紋筋肉腫 Rhabdomyosarcoma 奇形腫 (悪性) Teratoma, malignant 卵黄嚢腫瘍 Yolk sac tumor(endodermal sinus 癌肉腫 Carcinosarcoma カポジ肉腫 Kaposi sarcoma 悪性ラブドイド腫瘍 Rhabdoid tumor 肝細胞癌 形態コード 8170/3 備考 ※NOSコード使用 8160/3 8161/3 8180/3 8970/3 8020/3 9133/3 9120/3 8805/3 ※ICD-O-3で新しく採用されたコード 8900/3 9080/3 9071/3 8980/3 9140/3 8963/3 肝細胞癌の分化度 Edmondson分類 分化度 I型 II型 III型 IV型 高分化型 中分化型 低分化型 未分化癌 ICD-O-3組織異 型度・分化度を 示す6桁目 1 2 3 4 7. 根 治 度 の評 価 (原 発 性 肝 癌 取 扱 い規 約 第 4 版 ) 1) 肝 細 胞 癌 治癒度 内容 治療内容コード 治癒度A 癌の遺残が無く、治癒の可能性が 高い 1:治癒切除 治癒度B 癌の遺残はないが、治癒度Aの条 件を満たさない 1:治癒切除 治癒度C 明らかな癌の遺残がある 2:非治癒切除 備考 大脈管に腫瘍栓が存在する場 合は、これらが完全に除去でき たとしても治癒度Cとする。 2) 肝 内 胆 管 癌 治癒度 内容 治療内容コード 治癒度A StageⅠまたはStageⅡの癌に対す 1:治癒切除 る取り残しのない切除 治癒度B StageⅢまたはStageⅣの癌に対す 1:治癒切除 る取り残しのない切除 治癒度C Stageに関わらず、取り残しのある 切除 2:非治癒切除 10 備考 7. 診 断 検 査 1) 腹 部 CT 検 査 、造 影 CT 検 査 X 線 にて人 体 の断 層 像 を得 る検 査 方 法 。造 影 CT 検 査 は血 行 動 態 から原 発 性 肝 癌 の質 的 診 断 が 可 能 である。肝 癌 では組 織 診 、細 胞 診 なしに治 療 に移 行 することが多 い。 2) 腹 部 MRI 検 査 、造 影 MRI 検 査 磁 気 共 鳴 現 象 にて人 体 の断 層 像 を得 る検 査 方 法 。造 影 MRI 検 査 は血 行 動 態 から原 発 性 肝 癌 の 質 的 診 断 が可 能 である。肝 癌 では組 織 診 、細 胞 診 なしに治 療 に移 行 することが多 い。 3) 超 音 波 検 査 超 音 波 にて画 像 を得 る方 法 。最 も簡 便 に検 査 を行 うことができ、病 変 のスクリーニング、慢 性 肝 疾 患 患 者 の経 過 観 察 に用 いられる。 4) 血 管 造 影 検 査 血 管 内 に造 影 剤 を流 し、X 線 画 像 を得 る方 法 。CT、MRI の出 現 により、診 断 のみが目 的 の血 管 造 影 は減 少 した。CT-A や CT-AP などの動 注 CT や TAE などの interventional radiology (IVR, 血 管 造 影 で処 置 を行 う方 法 )に応 用 されている。 5) 腫 瘍 生 検 、穿 刺 細 胞 診 超 音 波 ガイド下 、CT ガイド下 で行 われる。上 記 に示 したように、CT, MRI で確 定 診 断 とし、生 検 や細 胞 診 は行 われないことが多 い。 6) MRCP (Magnetic resonance cholangiopancreatography) MRI で、胆 管 像 を得 ることができる検 査 。胆 管 病 変 のスクリーニング的 な用 いられ方 をすることが多 い。 7) ERCP (Endoscopic retrograde cholangiopancreatography) 十 二 指 腸 内 視 鏡 下 に細 いカテーテルを十 二 指 腸 乳 頭 開 口 部 に挿 入 し、造 影 剤 を逆 行 性 に注 入 す ることで、膵 管 胆 管 像 を得 る検 査 。侵 襲 的 であるが、MRCP よりも詳 細 な映 像 が得 られる。経 乳 頭 的 な 内 視 鏡 処 置 にも用 いられる。 8) PTCD (Percutaneous transhepatic cholangiography drainage) 経 皮 的 および経 肝 的 に細 いカテーテルを肝 内 胆 管 内 に挿 入 し、造 影 剤 を注 入 することで、胆 管 像 を得 る検 査 。侵 襲 的 であるが MRCP よりも詳 細 な映 像 が得 られる。すでに黄 疸 をきたしている患 者 に胆 管 ドレナージとして行 われることが多 い。 9) 腫 瘍 マーカー 肝 細 胞 癌 では AFP (α-fetoprotein), AFP L3 分 画 , PIVKA-Ⅱが、肝 内 胆 管 癌 では CA19-9 や CEA が高 値 となる。 9. 治 療 1) 外 科 的 治 療 (1) 手 術 療 法 部 分 切 除 : Partial resection 肝 の 小 さな部 分 を切 除 する 術 式 。 肝 機 能 が 悪 い 肝 細 胞 癌 患 者 で 行 われることが多 い。 亜 区 域 切 除 : Subsegmentectomy Couinaud の亜 区 域 にて切 除 する術 式 。肝 細 胞 癌 で肝 機 能 が 十 分 な場 合 は亜 区 域 切 除 、区 域 切 除 、葉 切 除 が行 われることが多 い。 亜 区 域 切 除 : Segmentectomy 肝 区 域 ( 外 側 、 内 側 、 前 、 後 ) にて切 除 する 術 式 。 肝 細 胞 癌 で 肝 機 能 が十 分 な場 合 は亜 区 域 切 除 、区 域 切 除 、葉 切 除 が行 われることが多 い。 葉 切 除 : Lobectomy 肝 の右 葉 、左 葉 を切 除 する術 式 。肝 細 胞 癌 で腫 瘍 が大 きく、肝 機 能 が十 分 な場 合 、胆 管 細 胞 癌 の場 合 は葉 切 除 が行 われることが多 い。 拡 大 葉 切 除 (Extended lobectomy)、3 区 域 切 除 : 葉 切 除 よりも拡 大 した肝 切 除 法 。胆 管 細 胞 癌 で行 われることがある。 肝 移 植 Liver transplantation: 肝 機 能 が悪 く、肝 切 除 ができない肝 細 胞 癌 患 者 に行 われる場 合 がある。 11 (2) 体 腔 鏡 的 治 療 腹 腔 鏡 下 手 術 : Laparoscopic surgery 部 分 切 除 、亜 区 域 切 除 などの手 術 が腹 腔 鏡 下 で応 用 さ れているが、未 だ臨 床 研 究 の段 階 で、保 険 適 用 はなされていない。 2) 放 射 線 治 療 通 常 、肝 細 胞 癌 には 行 われない。胆 管 細 胞 癌 においても姑 息 的 治 療 として用 いられているのみであ る。 3) 薬 物 治 療 (1) 化 学 療 法 (単 剤 または併 用 で使 用 される薬 剤 名 、略 語 、商 品 名 ) 肝 細 胞 癌 : Mitomycin C (MMC, マ イ ト マ イ シ ン ), Cisplatin (CDDP, ラ ン ダ , ブ リ プ ラ チ ン ) , Doxorubicin(DXR, ADR, ア ド リ ア シ ン ), Epirubicin (EPI, フ ァ ル モ ル ビ シ ン ), Fluorouracil (5-Fu), Tegafur/Uracil (UFT, ユーエフティ), Cyclophosphamide (CPA, CPM, エンドキサ ン) 胆 管 細 胞 癌 : Doxorubicin(DXR, ADR, アドリアシン), Fluorouracil (5-Fu), Tega fur/Uracil (UFT, ユーエフティ) (2) 免 疫 療 法 ・BRM(単 剤 または併 用 で使 用 される薬 剤 名 、略 語 、商 品 名 ) 肝 細 胞 癌 : Interferonα (IFNα, スミフェロン) 4) その他 の治 療 (1) TA(C)E (肝 動 脈 (化 学 )塞 栓 療 法 , Transatheter arterial (chemo)embolization) 肝 細 胞 癌 の大 部 分 は肝 動 脈 血 で栄 養 されている。TAE は腫 瘍 を栄 養 する肝 動 脈 内 に塞 栓 物 質 を 注 入 し、腫 瘍 を阻 血 壊 死 に陥 らせる方 法 。門 脈 本 幹 閉 塞 、肝 不 全 患 者 以 外 の幅 広 い肝 細 胞 癌 患 者 に 適 応 となる。TACE は抗 癌 剤 を注 入 後 に肝 動 脈 塞 栓 を行 う方 法 。 (2) PEIT (経 皮 的 エタノール注 入 療 法 , Percutaneous ethanol injection therapy) 超 音 波 ガイド下 で、 100%エタノールを腫 瘍 内 に注 入 する方 法 。 中 等 度 の肝 障 害 (Child B)患 者 の 2cm 以 下 、2 個 以 下 の肝 細 胞 癌 に良 い適 応 がある。 (3) レーザー等 治 療 (焼 灼 ) a. 経 皮 的 マイクロ波 凝 固 療 法 (PMCT, Percutanous microwave coagulation therapy) 超 音 波 ガイド下 で、マイクロ波 (電 子 レンジと理 論 は同 じ)で、腫 瘍 を焼 灼 する方 法 。2-3cm 大 の 肝 細 胞 癌 に適 応 がある。 b. ラジオ波 焼 灼 療 法 (RFA, Radiofrequency ablation) マイクロ波 よりも周 波 数 の低 いラジオ波 を用 いた焼 灼 療 法 。マイクロ波 や PEIT よりも焼 灼 範 囲 が 広 い 長 所 が あ る 。 最 近 は、 内 科 的 局 所 療 法 と して 、PEIT やマイ クロ 波 凝 固 療 法 よ りも多 く 行 わ れて い る。 12 8. 肝 癌 治 療 A.肝細胞がんの治療 肝切除 経皮的治療 RFA PEI 経動脈的治療 TAE TAI radiofrequency ラジオ波熱凝固療法 peractaneous ethanol エタノール注入療法 injection transecatheter 肝動脈塞栓療法 arterial embolization transecatheter arterial infusion 肝動注化学療法 全身化学療法 放射線療法 肝移植 B.全身化学療法 奏功率の高い化学療法剤がなく、治療法として意義は明らかではないため、前三者の治療適応とならない肝外転移を 有する例などに対して、臨床試験として行われる。 表1 肝臓がんにおける全身化学療法一覧 略名 英語表記(一般名) 代表的な化学療法 5-FU fluorouracil 代謝拮抗剤 UFT tegafur , uracil /肝内胆管癌 日本語名(商品名) フルオロウラシル テガフール/ウラシル 5-FU ユーエフティー MMC DHAD ADR EPI mitomycinC マイトマイシンC マイトマイシン doxorubicin epirubicin ドキソルビシン 塩酸エピルビシン アドリアシン ファルモルビシン CDDP MMC DXR EPI 5‐FU UFT CPA,CPM ADR 5‐FU UFT cisplatin mitomycin C doxorubicin epirubicin fluorouracil tegaer/uracil cyclophosphamide doxorubicin fluorouracil tegaer/uracil IFNα interferon α 抗がん性抗生物質 その他/肝細胞癌 日本語名(一般名) 代表的な免疫療法・BRM /肝細胞癌 シスプラチン ランダ、ブリプラチン マイトマイシンC マイトマイシン ドキソルビシン アドリアシン エピルビシン ファルモルビシン フルオロウラシル 5‐FU テガフール・ウラシル配 ユーエフティ シクロフォスファミド エンドキサン ドキソルビシン アドリアシン フルオロウラシル 5‐FU テガフール・ウラシル配 ユーエフティ インターフェロンα 10. 登 録 に必 要 な英 語 の用 語 一 覧 11. 略 語 一 覧 PEIT percutaneous ethanol injection therapy 経 皮 的 エタノール注 入 療 法 ,ぺイト RFA radiofrequency ablation ≪肝 癌 の≫ラジオ波 焼 灼 治 療 US ultrasonography 超音波 SOL space occupying lesion 占 拠 性 病 変 (腫 瘤 ) Vp portal venous 門脈 HBV hepatitis B virus B 型 肝 炎 ウイルス HCV hepatitis C virus C 型 肝 炎 ウイルス MHV Mouse hepatitis virus マウス肝 炎 ウイルス MHV middle hepatic vein 中肝静脈 RHV right hepatic vein 右肝静脈 13 スミフェロン PTCD percutaneous transhepatic cholangiography-drainage 経 皮 経 肝 胆 道 造 影 -ドレナ-ジ PTPE Percutaneou Transhepatic Portal Embolization 経皮経肝的門脈塞栓術 ENBD Endoscopic Nasal Biliary Drainage 内 視 鏡 的 経 鼻 胆 道 ドレナージ ERBD Endoscopic retrograde biliary drainage 内 視 鏡 的 逆 行 性 胆 道 ドレナージ ERCP Endoscopic retrograde cholanglopancreatography 内視鏡的逆行性胆管膵管造影法 12. 参 考 文 献 1) 厚 生 労 働 省 大 臣 官 房 統 計 情 報 部 , 人 口 動 態 統 計 , 1958 年 から 2004 年 2) The Research Group for Population-based Cancer registration in Japan, Jap. J. Clin. Oncol., 36 (2006) (in press) 3)日 本 肝 癌 研 究 会 編 臨 床 ・病 理 原 発 性 肝 癌 取 扱 い規 約 2000 年 11 月 第 4 版 (金 原 出 版 ) 4) 科 学 的 根 拠 に基 づく肝 癌 診 療 ガイドライン作 成 に関 する研 究 班 編 科 学 的 根 拠 に基 づく肝 癌 診 療 ガイドライン 2005 年 版 (金 原 出 版 ) 5) 財 団 法 人 日 本 消 化 器 病 学 会 監 修 「消 化 器 病 診 療 」編 集 委 員 会 編 集 消 化 器 病 診 療 良 きイ ンフォームド・コンセントに向 けて (財 団 法 人 日 本 消 化 器 病 学 会 ) 6) 国 立 がんセンター中 央 病 院 内 科 レジデント編 がん診 療 レジデントマニュアル第 3 版 (医 学 書 院 ) 14
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