わかりやすい悪性腫瘍の話 膵臓がん 2013.11.5 膵臓とは? すい臓は長さ 15cm、厚さ 2cm ほどの分泌腺で、胃の後ろにあり、まわりを胃、十二指 腸、肝臓、脾臓に囲まれ、平たい梨の形をしています。幅の広い部分は頭部(右側)と 呼 ばれ、十二指腸に接しています。中央部が体部で、細い部分が尾部(左側)と呼ばれ脾 臓に接しています。 すい臓には2つの主な働きがあります。ひとつは外分泌機能と呼ばれる、アミラーゼの ような消化酵素を作ります。もうひとつは 2 つのホルモン、インシュリンとグルカゴン を作る内分泌機能です。すい臓の中にあるランゲルハンス島細胞はインシュリンとグル カゴンを産生し血液中に分泌します。グルカゴンは血糖値を上げ、インシュリンは低下 させます。この2つのホルモンが血糖値を正常に保つ役割を担っています。 膵臓がんとは? すい臓がんの大部分は、膵管を覆う細胞の病変からくる外分泌腫瘍です。それほど症例 数は多くありませんが、ランゲルハンス島細胞から発生する内分泌腫瘍もあります。こ のような性質の異なる内分泌腫瘍や良性腫瘍もあります。 膵臓がんは、膵頭部癌、膵体部癌、膵尾部癌に分類され、浸潤性膵管癌が膵癌の約 90% を占め膵管を形作る内側の細胞から発生します。 その他、内分泌腺(ランゲルハンス島)より発生する膵内分泌腫瘍、膵管内乳頭粘液性 腫瘍、粘液性嚢胞腫瘍 などがあります。 ○早期発見が難しいがん 日本では毎年2万人以上の方が膵癌で亡くなります.膵癌は身体の奥深くにできるの で,癌が発生しても見つけるのが非常に難しいのです。また、癌になる原因や習慣に ついてもよくわかっていません.さらに,早い段階では特徴的な症状もありません。 ○5年生存率は? 5 年生存率は部位別がんのなかで最下位(5~6%)であり、治療がきわめて困難です。 わかりやすい悪性腫瘍の話 膵臓がん 2013.11.5 膵臓がんの診断 すい臓がんの早期診断は困難といわれています。その理由は、症状は顕著ではなく、細 胞のがん化のプロセスが緩やかに進行していくためです。 診断は、血液検査と画像診断ですが、早期発見の有効な検査の開発が待たれます。 ① 腫瘍マーカー(CA19-9、DUPAN-2 など) ② 画像診断(CT、MRI、PET/CT、超音波) ③ 内視鏡利用検査(超音波内視鏡、ERCP〈内視鏡的逆行性胆管膵管造影〉 ) 膵頭部がんのCT:大阪医療センター 超音波検査:山路クリニック 臓器別がんの病期 日本人に多いがんは、5大癌(肺、胃、大腸、肝臓、乳房)で、検診で早期発見が可能 であるため治癒率が高いのですが、膵臓がんは早期発見されても予後が不良ながんです。 「わかりやすい悪性腫瘍の話」では、臓器別にがんの特徴・診断・治療についてお話し してきましたが、がんの治療は、年々進歩しています。 保険診療における標準治療としてのがん治療は、各臓器別に設定されている病期による 治療ガイドラインに沿って治療されています。たとえば、膵臓がんは日本膵臓学会が全 国の膵臓がんの治療実績により取扱い規約(ガイドライン)が出され、定期的に新た な基準に更新されています。 今回は、がんの治療の方針をたてる上で重要となる「病期」についてお話しします。 ○TNM 分類 病期とは、病気の進行度でステージとも言います。病期の分類法には「TNM 分類」 と呼ばれる方法で表されます。 「T」は癌そのものの大きさや深さ、広がりのことで、 「N」は周囲のリンパ節への移転 の有無、 「M」は他の臓器への遠隔移転の有無をあらわしています。 「T」 「N」はそれぞれ数字が大きくなる程進行が進んでいることを表し、 「M」は「M0」 が他の臓器への転移が見られないこと、 「M1」は転移が見られることを表しています。 わかりやすい悪性腫瘍の話 膵臓がん 2013.11.5 膵臓がんの病期 大きさ Ⅰ 期 Ⅱ 期 Ⅲ 期 Ⅳ a 期 Ⅳ b 期 拡がり リンパ節、周囲への転移の状況 なし 2cm以下 第1群リンパ節転移あり 2cm以上 内部のみ なし 2cm以下 第2群リンパ節転移あり 2cm以上 第1群リンパ節転移あり 規定なし 外にでる 第2、3群リンパ節転移あり 周囲の血管に及ぶか、遠隔転移あり リンパ節の第1~3群とは、各臓器別により学会が規定しています。数字が少ないほ ど病巣の近隣にあるか病巣に影響されるリンパ節です。 また、センチネルリンパ節とは、乳がん治療によく聞く用語ですが見張りリンパ節の 意味で、乳がんの手術前にはセンチネルリンパ節生検が行われたのち手術方針が決め られます。ちなみにセンチネルリンパ節生検は先進医療(保険診療外)で行われます。 膵臓がんの進行度(TNM分類) 膵局所進展度(T) T1 2cm未満、膵内限局 T2 2cm未満、膵内限局 T3 膵管、十二指腸、膵外浸潤 T4 門脈、大血管、多臓器浸潤 N0 リンパ節転移(M) N1 N2 Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅱ Ⅲ Ⅲ N3 遠隔転移 (M) Ⅳb Ⅲ Ⅲ Ⅳa Ⅳa Ⅳa Ⅳb T・・・Tumor(腫瘍) N・・・Node (リンパ節の略) M・・・Meta (転移の略後) 次回は、膵臓がんの治療について、近年効果が期待されている抗がん剤を併用した放 射線治療や免疫療法についてお話しします。
© Copyright 2024 Paperzz