人材ビジネス業界ニュース JUL 2014 職業紹介含む14社を処分――大阪労働局 裁量労働制みなし時間半数が所定時間で設定――品川労基署 大阪労働局(中沖剛局長)は、平成25年度に派遣元・先事業者および職 業紹介事業者などに行った個別指導監督と行政処分の状況をまとめた。 調査に入った派遣元・先の4割強で労働者派遣法違反などが発覚し是正 指導している。派遣労働者の氏名や無期雇用者か否かを派遣先に通知 していない派遣元、マージン率の情報提供をしていない派遣元がめだっ た。全国で初めて派遣法違反を理由に2社に事業許可の取消しを行うな ど、派遣元・職業紹介事業者に対する行政処分は14社に上っている。処 分件数は東京を抜いて延べ25件となり、全国の処分件数の4割弱を占 めた。 労働新聞 東京・品川労働基準監督署(古屋希子署長)は、専門業務型裁量労働制 を導入している企業に対する実態調査を行った。 5割近くの事業場で業務遂行に必要とされるみなし労働時間を所定時間で設定し ていることが分かった。設定の根拠について「とりあえず所定時間」「とくに根拠な し」が2割超とめだち、勤務実態を考慮せずにみなし労働時間を決定している疑い が強い。対象労働者の比率が100%とした事業場が1割弱あり、対象業務を拡大 解釈している疑いも濃厚とみている。 労働新聞 SE派遣3社に業務停止命令などの行政処分、IT企業への「多重派遣」で ITpro 厚生労働省東京労働局と同省神奈川労働局は2014年7月28日、システムエンジニア(SE)の派遣を手がける事業主3社に対し、労働者派遣法に違反したとして行 政処分を出した。3社は同法が禁じる「多重派遣」に関与していたとし、派遣事業の一時停止や事業改善を命じた。 行政処分を受けたのはRJC(東京都千代田区)とスライムスタイル(横浜市)、ケイズ・ソフトウェア(東京都品川区)の3社。RJCは原因究明や再発防止のための措 置を講ずることなどを命じる「改善命令」を受けた。 スライムスタイルとケイズ・ソフトウェアの2社は改善命令に加えて、7月29日から8月11日までの間、労働者派遣事業を停止することを命じる「停止命令」を受けた。 行政処分の理由は、ある「IT企業」に対して3社がシステムエンジニアを多重派遣する形で労働者をやり繰りしたことだ。 2012年から2013年にかけて、RJCが雇用する労働者の延べ673人日(実労働者数22014/07/29人)と、スライムスタイルがケイズ・ソフトウェアを経由して供 給していた労働者延べ1700人日超(実労働者数6人)が、違法だとされた。 RJCはスライムスタイルに対して、「業務委託と称する契約」でSEの派遣を行っていた。スライムスタイルはそのSEをケイズ・ソフトウェアに「出向と称する契約」で 労働者供給。ケイズ・ソフトウェアはIT企業に対して「労働者派遣と称する契約」でSEを派遣していた。厚生労働省は、こうした一連の流れは労働者派遣法が禁じ る「多重派遣」に当たると判断し、行政処分を出した。 同省派遣・有期労働対策部需給調整事業課の説明によれば、労働者派遣法に基づく行政処分は全国で年間20~30件程度で推移している。派遣先の業界を分類 した形での統計は取っていないが、IT業界に関連する行政処分も年に数件あるという。 同省は違反発覚の経緯については「公表できない」とする。一般には、全国の労働局が実施する派遣事業主に対する定期的な指導で違反が判明したり、労働者 側からの情報提供から違反判明につながったりするケースがあるという。 SEの派遣を巡って、厚生労働省は大幅な制度改正を目指していた(関連記事:特定労働者派遣廃止の衝撃)。2014年6月に閉会した通常国会に労働者派遣法改 正案を提出していたが、法案の記載にミスが見つかったため、成立しなかった経緯がある(関連記事:改正労働者派遣法、法案にミスがあり通常国会での成立は 見送りに)。今回の行政処分は現行法に基づく処分である。 B-side Monthly Letter 人材ビジネス業界ニュース JUL 2014 求人倍率22年ぶり高水準=失業率は3.7%に悪化―6月調査 <人材派遣会社代表>就労ビザないのに仕事紹介容疑で逮捕 時事通信 厚生労働省が29日発表した6月の全国の有効求人倍率(季節調整値)は 前月比0.01ポイント上昇の1.10倍となり、19カ月連続で改善した。1992 年6月(1.10倍)以来22年ぶりの高い水準となった。一方、総務省が同 日発表した労働力調査(季節調整値)によると、6月の全国の完全失業率は 前月比0.2ポイント上昇の3.7%だった。悪化は10カ月ぶり。 景気の緩やかな回復を背景に、労働市場の需給は逼迫(ひっぱく)しつつ ある。6月は製造業や医療・福祉業で新規求人が大幅に増加した。 労働力調査は就業者数が前月比横ばいの6359万人、完全失業者数が11 万人増の244万人となった。求人の増加を受けて、職を求める女性や自発的 な離職者が増えた。 有効求人倍率は求職者1人に何件の求人があったかを示す指標。都道府県 別では愛知が最高で1.57倍、最低は沖縄の0.68倍だった。正社員の有 効求人倍率は前月比0.01ポイント上昇の0.68倍にとどまった。 地位確認:元派遣男性15人がマツダと和解 広島高裁 毎日新聞 ◇ベトナム人中心に外国人数百人派遣の容疑も捜査 就労ビザがないベトナム人に仕事を紹介したとして、兵庫県警が同県加東 市の人材派遣会社代表、国本千代一容疑者(51)を、出入国管理法違反容 疑で逮捕していたことが28日、捜査関係者への取材で分かった。国本容疑 者は容疑を認めているという。ベトナム人を中心に、就労ビザのない外国人 数百人を派遣した疑いがあるとみて調べる。 逮捕容疑は、昨年から今年にかけて、加東市の携帯電話の組み立て工場に、 日本の就労ビザがないベトナム人3人を派遣し不法に仕事をあっせんしたと している。 県警は先月末、同工場を家宅捜索し、就労ビザがない多数の外国人が働い ているのを確認。うち約50人を入国管理局に引き渡した。【豊田将志】 足立区の「偽装請負」に是正指導民間委託めぐり労働局 毎日新聞 マツダ防府工場(山口県防府市)を解雇された元派遣労働者の男性15 人がマツダに正社員としての地位確認などを求めた訴訟の控訴審で、22 日に広島高裁(川谷道郎裁判長)で和解が成立した。職場復帰を伴わない 金銭による解決だが、具体的内容は明らかになっていない。 前回の7日の進行協議で、高裁が双方に和解案を提示し、それぞれが検 討していた。 1審の山口地裁判決は、マツダが派遣社員を一時的に直接 雇用する「生産サポート社員」制度を設け、派遣期間の上限3年を超えな いよう調整していたとして、労働者派遣法に違反すると認定。原告15人 のうち、13人に実質的な雇用契約があったと判断して正社員と認めるよ う命じたが、双方が判決を不服とし控訴していた。元派遣労働者側は「和 解は、マツダとの労働契約の成立を認めた山口地裁判決が生かされたもの で、これによって、経済面や健康面などさまざまな困難を抱えた原告を早 期に救済することができた」とコメントした。【石川裕士】 朝日新聞 東京都足立区が今年1月から実施している戸籍窓口業務の民間委託 について、東京労働局は15日、業務の実態は労働者派遣法に違反する 「偽装請負」にあたるとして是正指導をした。足立区が16日、発表した。 同区は民間委託に先進的に取り組んでおり、他の自治体へも影響しそう だ。是正指導書と足立区の説明によると、業務を受託した富士ゼロック スシステムサービスは、業務マニュアルにない事態が発生した場合、区 に対処方法を照会して区職員が同社スタッフに直接指示している。1日 数十件程度あるという。 東京労働局は、このような実態は業務委託ではなく派遣労働に当たる として、8月20日までに違反行為を是正し、他のすべての業務委託契約 にも違反がないか点検するよう求めた。足立区によると、業務委託契約 は全部で1千件規模になるという。 B-side Monthly Letter 人材ビジネス業界ニュース JUL 2014 限定正社員導入で指針=有識者懇が取りまとめ―厚労省 安全衛生でマル優制度――厚労省・社会的評価向上へ 厚生労働省は、労働安全衛生対策に積極的に取組み、 良好な労働環境を維持している企業を客観的に評価し、公表する制度 を創設する方針である。今後開発する総合的・客観的評価指標に基づ き優良認定されると、厚労省のホームページに掲載する ほか、委託事業や人材採用面などで何らかの優遇措置が受け られる。 第12次労働災害化防止計画や労働政策審議会などが 制度化を提言していた。 労働新聞 時事通信 厚生労働省の有識者懇談会は11日、勤務地や職務、労働時間を限定した 「多様な正社員(限定正社員)」を企業が導入する際の指針を取りまとめた。 企業の労使双方に参考にしてもらうのが狙いで、厚労省はシンポジウムを開 くなどして限定正社員の普及を目指す。 指針では、勤務地や職務などが限定されている場合は、その内容を労働者 に明示することが重要だと指摘。解雇する際も、一般の正社員と同様に解雇 を回避する努力を求めた。 賃金をめぐっては、転勤のない勤務地限定正社員の場合には「(一般的な正社員 の)8~9割超の水準となっている企業が多い」と分析。昇進のスピードなどは「正社 員との差をできるだけ小さく設定することが望ましい」と提言した。 派遣社員解雇は「無効」資生堂鎌倉工場 資生堂鎌倉工場(鎌倉市)で働いていた元派遣会社従業員7人が、不当な解雇や雇い止めを受けたとして、資生堂(東京都中央区)と派遣会社に解雇撤回 と賃金支払いなどを求めた訴訟の判決が10日、横浜地裁であった。阿部正幸裁判長は「解雇を回避する義務を尽くしていない」として、解雇や雇い止めは 無効と認め、派遣会社に解雇前の5割に当たる賃金を支払うよう命じた。資生堂への請求は棄却した。 原告は、人材派遣会社「アンフィニ」(茨城県つくばみらい市)の元従業員の女性7人。2001年以降、派遣や請負契約を結んで鎌倉工場で働いていた が、09年5月に、解雇や雇い止めとなった。 阿部裁判長は、契約期間の満了前だった5人の解雇について、「人員削減の必要性があったとは言えない」と認定。雇い止めを受けた2人についても、「雇 用が継続される期待があった」として、それぞれ解雇と雇い止めは無効とした。 支払いを命じた未払い分の賃金については、資生堂からの受注量が減ったことから、解雇前の5割の額とした。 原告側は「解雇は資生堂が主導した」と主張。労働内容が正社員と同様だったとして資生堂との間に直接の労働契約が存在するとも訴えていたが、阿部裁 判長は資生堂の関与を認めず、アンフィニとの実体を伴った労働契約を認め、いずれも退けた。 資生堂は「当社の主張が認められた」、アンフィニは「担当者が不在でコメントできない」としている。 判決後に会見した原告の池田和代さん(58)は「私たちが現場で一生懸命働いてきたことが認められた。ただ、資生堂の社員としての地位が認められな かったことは残念」と話した。今後、控訴について検討するという。 【神奈川新聞】 B-side Monthly Letter 人材ビジネス業界ニュース JUL 2014 損害賠償:派遣から契約社員…雇い止め 男性がニコン提訴 毎日新聞 正社員就職に報奨金――厚労省・紹介予定活用事業 厚生労働省は、今年8月から紹介予定派遣活用型正社員就職応援事 業をスタートさせる。学卒未就職者など就職経験の乏しい若年者を対 象に、研修と紹介予定派遣を組み合わせて一定数以上の正社員就職 を実現した民間人材ビジネス業者に、必要経費と1人当たり10万円の 就職報奨金を支給する。厚労省は、同事業実施業者から就職状況な どの報告を受け、今後のビジネスモデルとして確立する考えである。 労働新聞 派遣社員から有期雇用の契約社員となったあと一度も契約更新されず雇い止めと なり、長期雇用の期待権を侵害されたとして、ニコン(東京都千代田区、牛田一雄 社長)の元契約社員の男性が10日、同社に雇い止めの取り消しと、雇い止め以降 の賃金や損害賠償など計約481万円の支払いを求めて東京地裁に提訴した。 この男性は浜谷和久さん(32)。訴状や代理人によると、2008年2月にニコンの 孫会社ニコンスタッフサービスから同社の相模原工場に研究開発の仕事で派遣さ れ、3カ月ごとの更新を重ねて働き、13年9月にニコンの直接雇用に切り替わった 。その際、更新は5年を上限とするとあったが減産を理由に今年3月末で雇い止め された。 6年以上も同じ職務内容で連続して働き、雇用継続の期待権が発生するとして、雇 い止めの取り消しを主張。浜谷さんは「長年、正社員と同じ仕事を社員以上にやっ てきた。一度も更新されないのは許せない」と話す。 ニコン広報部は「訴状が届いていないのでコメントは差し控えたい」と話している。 【東海林智】 技術者派遣業界潤う自動車・電機向け急回復 日経新聞 自動車、電機などの国内生産が回復し、技術者派遣業界が潤っている。アウトソーシングの2014年1~6月期は6年ぶりの経常最高益となりそうだ。トラスト・テックも15 年6月期まで3期連続で最高益を更新する見通し。人手不足を派遣社員で補おうとする製造業の動きが追い風になっている。 技術者の派遣需要は円安で輸出競争力が回復した自動車、電機向けに昨年後半から急回復している。 自動車向けなどが強いアウトソーシングの14年1~6月期の連結経常利益は前年同期比21倍の8億円程度と、1~6月期として6年ぶりに過去最高を更新したようだ。 売上高は4割増の300億円だったもよう。自動車のほかテルモ向けの派遣も伸びているほか、タイやベトナム、マレーシアなど海外への派遣も好調で、12月期通期の海 外売上高は140億円と前期比倍増を目指す。 アルプス技研の14年1~6月期も経常利益が前期比5割増の6億円程度になったもようだ。自動車の設計・開発を担う技術者の引き合いが特に強く、優秀な人材を集め るために、報酬単価も引き上げた。 トヨタ自動車グループなどに技術者を派遣するトラスト・テックは、15年6月期の経常利益が前期推定比3割増の17億円程度になりそうだ。業績回復を支えに自動車大 手が研究開発に再び注力し始めたことが影響している。 日本自動車工業会によると、5月の国内四輪車生産は前年同月比6.1%増と、9カ月連続で前年実績を上回った。トヨタが期間従業員の正社員登用を前年度比で倍増 するなど、製造業の工場や技術・開発部門では、人手不足感が強まっている。 B-side Monthly Letter 人材ビジネス業界ニュース JUL 2014 パナソニック、派遣事業売却業界再編加速も (1)リクルートホールディングス 1兆1915億円 (2)テンプホールディングス 3624億円 (3)パソナグループ 2086億円 (4)アデコ(スイス) 1426億円 (5)マンパワーグループ(米) 917億円 (6)パナソニックエクセルスタッフ 640億円 (7)ランスタッド(蘭) 約600億円 (8)ヒューマンホールディングス 566億円 (9)東京海上日動キャリアサービス 311億円 事務系を主体とする人材派遣会社の売上高(注)2013年度。人材紹介など各種事業の売上高も含む。ランスタッドは推計 人材派遣業界ではリクルートホールディングスやテンプホールディングスなどが売上高で2千億円を超え、国内の大手3社と外資系3社がしのぎを削っている。各社 は顧客基盤やノウハウの獲得を見据え、同業の買収に意欲的。6位のパナソニックエクセルスタッフは業界再編の焦点になりそうだ。 1980年代以降、事業会社や金融機関は相次ぎ人材派遣の子会社を設立。専ら親会社を派遣先とし、グループの人件費削減に寄与した。パナソニックでも当時の 松下電器産業が89年にパナソニックエクセルスタッフの前身会社を設立した。 ただ2012年に派遣先1社への派遣割合を8割以下に制限する規制ができ、傘下に派遣会社を抱える意味が薄れた。事業の選択と集中を進める過程で、派遣子会 社を売却する事業会社や金融機関も相次いでいる。 政府が15年の施行を目指す労働者派遣法の改正で再編は加速しそう。派遣社員が3年勤務後、仕事が見つからなければ派遣会社が直接雇用する義務が生じる 場合もある。全国の派遣会社2万社のうち中堅以下には費用負担が重く、再編を選ぶ企業も増えるとみられる。 受け皿となりそうなのが専業大手。国内では07年にリクルートが当時最大手のスタッフサービス・ホールディングスを買収し、11年にはオランダのランスタッドがフジ スタッフホールディングスを傘下に収めている。 パナソニック、人材派遣6位を売却今秋めど入札 日本経済新聞パナソニックは人材派遣事業を売却する。売上高で人材派遣6位だが、非中核事業の撤退や売却で、住宅や自動車関連の戦略事業に経営資源を 集約する一環。今秋をめどに入札を実施し、2015年3月期中に売却先を決める。パナソニックの事業売却が派遣業界の再編を促す可能性もある。 売却するのは子会社のパナソニックエクセルスタッフ(大阪市)。14年3月期の売上高は640億円で、3月末の派遣登録者数は約31万4000人。グループ内外に事務 系従業員を派遣し、電子機器の技術者派遣にも強みを持つ。売却額は200億円規模の見通し。 入札で買い手を絞り込んで交渉し、来年3月をめどに売却する方針。資産査定などの売却作業で助言役を担う金融機関をこのほど選定した。複数の派遣大手や投 資ファンドなどが買収に関心を示しており、7月中に入札参加の条件などを記した書類を各社に送付する。 パナソニックはテレビ事業などの不振で、13年3月期まで2期連続で7500億円超の最終赤字を計上。プラズマテレビ事業など不採算事業から撤退する一方、利益 が出ていても非中核の事業を手放し、財務体質の改善につなげている。今年は売上高1200億円規模のヘルスケア事業を米投資ファンドのKKRに約1500億円で 売却し、物流事業も日本通運などに譲渡している。 15年3月期で構造改革を終え、自動車と住宅を中心に事業を拡大し、19年3月期には連結売上高10兆円(15年3月期見通しは7兆7500億円)を目指すとしている。 人材派遣業界では、パナソニック子会社を買収すれば、優秀な派遣人材や優良な顧客企業を増やし、競争上優位に立てるとの見方が強く、争奪戦になりそうだ。 B-side Monthly Letter
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