JOMF NEWS LETTER No.246 (2014.7) 海外メンタルヘルスの現場からⅡ (17)オンラインのストレスチェック シンガポール日本人会クリニック 医師 日暮 真由美 先 月 、労 働 安 全 衛 生 法 の 一 部 が 改 正 さ れ 、50 名 以 上 の 事 業 所 に ス ト レ ス チ ェックが義務化される法案が可決した。それよりはすでにもっと前からの動き だが、オンラインで行えるメンタルヘルスチェック、ストレスチェックをすで に採用している会社は増えてきつつあったので、法制化に伴ってますますオン ラインストレスチェックを利用する会社は増加しそうだ。社内の健康管理室で 独自のアンケート項目を作成して行っているところもあれば、産業保健・健康 管理サービスを提供する社外の企業と契約して行っている企業もある。 単純に考えれば、駐在員も海外にいながら一人でメンタルヘルスチェック ができて大変便利だ。今の時点では海外の場合は利用したい人だけが利用する のか、全員が利用する義務があるのか、結果は本人だけが知るのか、それとも 産業医や健康管理室に自動的に連絡がいくのか、色々細かいところは会社によ って違いはあるようだが、最近このオンラインのストレスチェックを利用し、 その結果を持参して当院の心療内科を受診される駐在員のケースが散見される。 オンラインで行うものは、自記式のアンケート形式で記入したものによっ て自動的に診断結果も得られるというタイプのものが主流と思われる。ストレ スチェック義務化の法案が可決されるまでには実に色んなポイントで専門家に よる様々な議論があったそうだが、検査方法のポイントではこの自記式タイプ の検査の精度は医師や保健師との直接面談との精度とも比較してやはり多くの 議論があったようだ。 これから法律が実際に運用されるに従い、自記式にしろ面談式にしろ検査 方法にはさらなる工夫がなされていくと思うが、しかし、これまでに患者さん が当院の外来に持ってこられたオンラインでのストレスチェックもなかなかよ く で き て い た 。た と え ば 、 「 人 間 関 係 で ス ト レ ス を 感 じ て い る か ど う か 」の 項 目 について、いつから?どんなとき?どのような点で?上司に?同僚に?部下 に?どんな感情?解決の可能性など見通しの有無等々、マークシート方式であ りながらもずいぶんと細かく答えさせるタイプのものもあった。質問にすべて 答えるかどうかは本人に任され、答えなくてもよいようだが、質問に答えよう と考えをめぐらせていくだけで自分の感情を整理できそうだ。 確 か に 、精 度 の 点 に 関 し て は 難 し い の か も し れ な い 。 「うつ病の可能性が高 JOMF NEWS LETTER No.246 (2014.7) い」という結果を持って来院していても、診察してみればそこまでではなかっ た り 、「 ス ト レ ス 度 は 中 等 度 程 度 」 と 出 て い て も か な り 抑 う つ 度 は 高 か っ た り 、 だ 。し か し 、こ う や っ て ス ト レ ス チ ェ ッ ク を 受 け て み よ う と 思 わ せ る こ と 自 体 、 そして、病院に行ってみようかなと思わせる可能性があること自体が、手軽な オンラインストレスチェックの十分な存在意義となりそうだ。ただ、結果の取 り扱いが会社内でどうなっていくのかが社員にとって懸念材料となり、手軽だ けど気軽な存在にはならない可能性はある。
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