γーグロブリン療法の著効したギランバレー症候群

γグロブリン大量療法の著効した
ギラン・バレー症候群の一例
沖永良部徳洲会病院
櫻谷浩志/柴田宏明
平野一/天野博哉/佐々木紀仁
症例・主訴・現病歴
• 73歳 男性
• 主訴:下肢脱力
• 4/22:下肢に力が入りにくくなっていることを
自覚
• 4/23:改善認めず、下肢に全く力が入らなく
なったため、同日午後救急要請により来院。
• 4月初旬ごろより下痢症状あり、他に感冒症
状・発熱等は認めていなかったという。
既往歴・内服
【既往歴】
糖尿病、高血圧、
タバコ:20本/日'約40年間(
アルコール:焼酎1合/日程度
【内服】
カルスロット20mg、アクトス15mg、アマリール3
mg、クレストール2.5mg、ロキフラン60mg
現症
• 意識レベルclear、嚥下問題なし
• 全身状態:良好、全身所見特に異常認めず。
• 神経学的所見:Ⅰ~ⅩⅡ normal
• 両下肢筋力著名に低下、両上肢正常
• 両下肢の腱反射消失、両上肢の腱反射低下
• 感覚:下腿にてglove&stocking typeの感覚
障害
• 排泄障害'-(、尿意あり
数週間前の下痢に引き続く下肢の
筋力低下、しかも腱反射低下のお
まけつき
これはもしや・・
かの有名なギラン・バ
レー!?
ということで、ルンバール施行!
検査結果
【labo date】
GOT/GPT 50/14 BUN/Cre 9.1/0.65
Na/K/Cl 140/3.1/94 WBC 6400 Hb 11.2
CK 918 CK-MB 26
蛋白細胞解離!
• 髄液所見:細胞数2 蛋白 86
• 抗ガングリオシド抗体 検査中
【画像所見】
異常所見はなし
鑑別診断
• ギラン・バレー症候群
• 周期性四肢麻痺'低K血症(
• 薬剤性横紋筋融解症'高CK血症(
診断
• 症状経過と身体所見、検査所見か
ら、ギラン・バレー症候群と診断。
ギラン・バレー症候群
定義・概念
急速発症する四肢筋力低下と腱反射消失を主
徴とする自己免疫性末梢性神経障害。大多数
の患者が、症状出現1~3週間前に先行感染
症状を有する。4週間以内にピークに達し、徐
々に回復する。
10万人当たり年間1~2人の発症。若年成人
と男性高齢者に多い
症状・理学所見
筋力低下'98%(
→下肢から上行する筋力低下:54%
上肢から下行する筋力低下:14%
同時に起こる四肢筋力低下:32%
痺れ感またはparesthesia'72%(、
痛み'71%(、脳神経症状'40%(、排尿
困難'18%(
診断基準
【診断に必要な特徴】
・2肢以上の進行性筋力低下。
・腱反射消失
【診断を強く支持する特徴】
・進行性
・比較的対称性
・軽度の感覚障害
・脳神経障害
・回復
・自立神経機能障害
・症状出現時に発熱がない
有意な検査所見
・髄液の蛋白細胞解離
髄液蛋白の上昇'45㎎/dl以上(と正常細胞数
'10/m㎥以下(
・抗ガングリオシド抗体陽性
重症度分類
• 0:健康
• 1:軽微な神経症状で走ることは可能
• 2:歩行器、杖あるいは支えなしで5m以上の歩行
•
•
•
•
が可能であるが、走ることはできない
3:歩行器、杖を用いて、あるいは支えられて5mの
歩行が可能
4:ベット上あるいはイス上に限定
5:補助呼吸を必要とする
6:死亡
治療指針
• 呼吸管理
• 免疫グロブリン大量静注療法
• 血漿交換療法
)重症度に応じた治療法を選択
治療方針
• 筋力低下は下肢のみであり呼吸筋障害は認
めていなかった。急変の可能性もあり、モニ
ター管理とした。
• ギラン・バレー症候群の治療として、重症で
あったため、γグロブリン大量静注療法を選択。
ヴェノグロブリン20g/日'0.4g/kg/日(、5日
間連続投与開始した。
• 同時に、低Kの補正、輸液負荷を行った。
入院後経過①
• ヴェノグロブリン投与終了翌日'入院6日目(
【labo date】
GOT/GPT 32/17 Na/K/Cl 137/2.6/96
CK 515
この時点で筋力は若干改善。自己での下腿挙上保
持は数秒可能、軽度の膝屈曲は可能に。
入院後経過②
• 入院10日目
【labo date】
GOT/GPT 26/22 BUN/Cre 10.7/0.79
Na/K/Cl 133/4.1/98 CK 60
べットに腰掛けての座位可能に。立位は不可。リハビ
リ介入による立位・歩行訓練開始
入院後経過③
• 入院21日目
座位、胡坐は正常に可能。歩行器使用により
緩徐な歩行も可能に。
)現在も杖歩行にてリハビリ継続中。全身状態
良好であり、退院間近である
まとめ・考察
• 来院当日に診断、翌日よりγグロブリン大量
静注療法を開始し、20日程で治療は奏功し
た。
• 離島という検査・治療に限界のある場で、頻
度の少ない疾患を、早期診断により治療しえ
た貴重な症例であった。
ご静聴ありがとうございました