体育会 血液検査結果のみかた *こちらは、スポーツ医学研究センターで行っている、慶應義塾体育会学生を対象とした血液検査の説明書です。 一般のかたの血液検査とは再検査基準などが異なりますのでご注意ください。 <基準値> 男 白血球数 女 3300∼9000 単位 /μℓ 4 IU/L GPT 5∼45 IU/L 380∼500 ヘモグロビン 13.5∼17.5 11.5∼15.0 g/㎗ CK ヘマトクリット 39.7∼52.4 34.8∼45.0 % LDH 4 10 /μℓ MCV 85∼102 MCH 28.0∼34.0 pg MCHC 30.2∼35.1 % 単位 10∼40 430∼570 14.0∼34.0 女 GOT 赤血球数 血小板数 10 /μℓ 男 血清鉄 60∼270 40∼150 120∼240 50∼200 40∼180 IU/L IU/L μg /㎗ fl <基準値のみかた> 血液検査値には「基準値」がもうけられています。基準値とは、健康な集団の検査値の分布から上限と下限 の 2.5%ずつを除外し、残りの 95%を基準範囲とします。しかし、この「基準値」におさまっていても異 常例はあり、「基準値」を外れていても正常例もあります。あくまでも目安であり、正常か異常かを判定す るには他の血液検査の値と比較や、経過を見ながら検討する事が必要です。さらに、この「基準値」は 安 静状態で ということが基本にありますから、スポーツ活動による値の変動は一般的な「基準値」とは別に 考慮する必要があります。ここではスポーツ選手を念頭においた検査値のみかたとスポーツ医学研究センタ ーの再検査基準などを説明します。 <貧血にかかわる項目> ◇ 赤血球数、ヘモグロビン濃度、ヘマトクリット値、血清鉄値 赤血球数、ヘモグロビン濃度、ヘマトクリット値が低下している状態が貧血です。貧血、すなわちヘモグロ ビン量の低下は血液中の酸素運搬能力の減少につながるので、特に全身持久力を競う競技ではパフォーマン スに大きく影響します。パフォーマンスを維持するには、ヘモグロビン 男 13.5g/㎗、女 12.0g/㎗が望ま しいでしょう。 スポーツ選手に見られる貧血の多くは『鉄欠乏性貧血』で、ヘモグロビンの材料となる鉄が不足することに より貧血を生じ、血清鉄値の低下を伴います。『鉄欠乏性貧血』と診断された場合は、その程度により食事 指導、練習量の軽減、鉄剤の投薬治療などを行います。また、ヘモグロビンは低下してないにもかかわらず、 血清鉄の低下がみられる場合(潜在性鉄欠乏貧血)には、そのまま放置するとやがては貧血に進む可能性が 高く、これも注意が必要です。貧血の改善や予防のために、まずは運動量に見合ったカロリーとバランスの 取れた食事をきちんと3食摂りましょう。そして鉄分を多く含む食品、たとえばレバーやカツオやマグロな どの赤身の魚、牛肉の赤身、シジミやアサリなどの貝類、ほうれん草や春菊、小松菜、ひじきなどの海草類 などを積極的に摂りましょう。また、軽度の貧血の対策には鉄を含むサプリメント等を服用することも有用 ウラへ続く⇨ ですが、重度の貧血にはサプリメントでは鉄量がまったく足りません。反対に、貧血がないのに過剰に鉄を 摂取することは肝臓などの臓器に負担がかかりますので、安易にサプリメントに頼らず、普段の食事から摂 ることを心がけましょう。貧血とは逆に、これらの値が高い場合は、運動による脱水、血液濃縮が疑われ、 熱中症になりやすい状態ですので、水分をしっかり補給しましょう。 ◇ 平均赤血球容積(MCV)、平均赤血球血色素量(MCH)、平均赤血球血色素濃度(MCHC) ヘモグロビン、ヘマトクリット値、赤血球数から計算され、貧血の鑑別診断に役立ちます。MCV は赤血球 の大きさを表し、この値により貧血は小球性、正球性、大球性に分類され、さらに MCHC により低色素性、 正色素性、高色素性に分類されます。 ◇ 白血球数 外部から侵入した細菌やウィルスなどを攻撃防御するのが白血球の役割です。したがって、感染症やけがに よる炎症などがあると白血球が増加します。ただし、運動直後には一過性に値が上昇してしまうので、白血 球数が 11000/ul を超える場合には、後日、安静状態で再検査を行い、感染によるものか否かを確認します。 ◇ GOT、GPT、CK(クレアチンキナーゼ)、LDH(乳酸脱水素酵素) 全身のさまざまな臓器に存在する酵素で、その細胞が障害されると血液中に逸脱し、高値となります。GOT、 GPT は、多くが肝臓に存在するため、一般的には肝機能の指標としてよく知られています。しかし、骨格 筋や心筋にも存在するため、激しい運動によって大きく上昇します。GOT、GPT が高値の場合、それが運 動によるものなのか疾患によるものなのかを CK の値で判断します。CK は骨格筋、心筋に多く存在し、運 動による影響を非常に受けやすく、激しい運動により容易に上昇します。GOT、GPT とともに CK の上昇 がみられれば運動による一過性の上昇とみなします。CK が基準値にも関わらず GOT、GPT が高値の場合 は、何らかの原因で肝機能障害が起っていると考えられ、GPT が 65IU/L を越える場合は、再検査または 詳しい検査を行ないます。軽度の肝機能障害が認められる場合は、肥満や飲酒、喫煙などの生活習慣を見直 す事が必要です。また、一過性の上昇だったとしても CK が 1000IU/L を超えるような場合は筋肉の損傷が 考えられますので筋肉を休める事が必要です。CK6000IU/L 以上では、安静状態での再検査または精密検 査の指示を出しますが、そこまで上昇していなくても、激しい筋肉痛や疲労、褐色尿が出るなどの症状があ る場合はご相談ください。LDH も骨格筋やその他の臓器に存在する酵素で、CK と同様に LDH も運動に より値が上昇しますが、500IU/ℓを上回る場合は、再検査または精密検査を行います。 <判定について> すべての結果を医師が総合的に判断し、今回の血液検査について問題があるか否か、再検査が必要か、治療 が必要かを判定しています。上記説明のとおり、基準値を外れていても多くの場合心 配はありませんが、気になる自覚症状があるなど、心配や不安がある慶應義塾の学生 はいつでもご相談ください。 慶應義塾大学スポーツ医学研究センター Tel: 045-566-1090 Fax:045-566-1067 e-mail: [email protected]
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