応用複素関数 演習問題 No. 1 (解答付き) 桂田 祐史 2015 年 5 月 27 日, 7 月 23 日 b = C ∪ {∞} とする。以下の解答は実質的に講義で説明済みであったり、講 講義での約束通り C 義ノートに書いてあるものが多い (そうでないものについては、そのうち解答を用意する)。 Cauchy の積分定理再説 1 凸、星型、単連結という言葉は覚えておくと良いので、問題を出してみる。 問 1. (1) ベクトル空間の部分集合が凸であるとはどういうことか、定義を述べよ。 (2) 平面内 の任意の三角形 (辺と内部を含む) は凸であることを示せ。 (3) Rn の開球、すなわち a ∈ Rn と正 数 R により B(a; R) = {x ∈ Rn | |x − a| < R} と表される集合は凸であることを示せ。 問 2. (1) ベクトル空間の部分集合が星型であるとはどういうことか、定義を述べよ。 (2) ベクトル空間の空でない凸部分集合は星型であることを示せ。 (3) 星型であるが凸でない集合 の例をあげよ。 問 3. (1) Rn の領域が単連結であるとはどういうことか、定義を述べよ。 (2) Rn の星型領域は 単連結であることを示せ。 (3) 星型でないが単連結である領域の例をあげよ。 問 4. b \ {0} は単連結であることを示せ。 (2) C (1) C \ {0} は単連結でないことを示せ。 lim と ∞ 2 問 5. 以下の定義を書け。(1) a ∈ C とする。lim f (z) = ∞ とはどういうことか? する。 lim f (z) = A とはどういうことか? z→∞ 問 5′ . z→a (2) A ∈ C と (3) lim f (z) = ∞ とはどういうことか? z→∞ {zn }n∈N は C 内の点列とする。(1) A ∈ C とするとき、 lim zn = A とはどういうことか。 n→∞ (2) lim zn = ∞ とはどういうことか。 n→∞ 問 6. (−1) · ∞ = ∞ と定義する (ことがある) のはなぜか? 問 7. (1) lim 1 1 = ∞ を示せ。 (2) lim = 0 を示せ。 (2) lim z = ∞ を示せ。 z→0 z z→∞ z z→∞ 1 Riemann 球面 3 図形的イメージで理解すれば良いと思うが、計算できることを確認しておく。 問 8. 立体射影 φ : S → C について、z = φ(x1 , x2 , x3 ) とおくとき、z を x1 , x2 , x3 で具体的に表 わせ。ただし、S = {(x1 , x2 , x3 ) ∈ R3 | x21 + x22 + x23 = 1}, N = (0, 0, 1) として、P ∈ S \ {N } に対 して直線 N P と平面 x3 = 0 との交点を (x, y, 0) として、φ(x1 , x2 , x3 ) := x + iy と定めた。 x1 + ix2 (ベクトルによる直線の方程式を用いれば簡単。次の問題に必要なので結果: z = ) 1 − x3 立体射影 φ : S → C について、z = φ(x1 , x2 , x3 ) とおくとき、以下の問に答えよ。 1 + x3 を示せ。 (2) φ−1 を求めよ。すなわち x1 , x2 , x3 を z で表せ。 (1) |z|2 = 1 − x3 問 9. 問 10. z, z ′ ∈ C とするとき、|φ−1 (z) − φ−1 (z ′ )| = √ 2|z − z ′ | (1 + |z|2 ) (1 + |z ′ |2 ) を示せ。 ∞ のまわりの Laurent 展開と留数, 有理関数 4 5z 2 − 4z + 3 の ∞ の周りの Laurent 展開と留数 Res(f ; ∞) を求めよ。 (z 2 + 1) (z − 2) (本質的には、複素関数で習った計算。) 問 11. f (z) := 3z 4 − 5z 3 − 7z 2 − z + 25 について以下の問に答えよ。 (z − 2)2 (z + 1) (1) 留数 Res(f ; −1) を求めよ。(2) 留数 Res(f ; 2) を求めよ。(3) f の 2 のまわりの Laurent 展開の 主部を求めよ。(4) f の ∞ の周りの Laurent 展開の主部と留数 Res(f ; ∞) を求めよ。 (5) f (z) の 部分分数分解を求めよ。 出題の意図: 有理関数の各々の極のまわりの Laurent 展開の主部を求めると、部分分数分解が得 られる、という定理を用いて、実際に部分分数分解を求めてみよう、ということ。f (z) の部分分数 分解は求めずに、(1)∼(4) を解いて下さい。 問 12. f (z) = 問 13. ∞ が複素関数 f の除去可能特異点であるとき (f が ∞ で正則、と言っても良い)、Res(f ; ∞) = 0 であるかどうか述べよ。正しければ証明し、正しくなければ反例をあげよ。 問 14. ∞ を孤立特異点に持つ関数 f について、(∃A ∈ C) lim zf (z) = A であれば、Res(f ; ∞) = z→∞ −A であることを示せ。 問 15. P (z), Q(z) ∈ C[z], deg P (z) ≥ deg Q(z) + 2 であるとき、f (z) := f は、Res(f ; ∞) = 0 を満たすことを示せ 1 。 Q(z) で定めた有理関数 P (z) ∫ 1 従って、十分大きな R に対して、 |z|=R f (z) dz = 0. 関数が ∀x ∈ R f (x) ̸= 0 という条件を満たす場合、ゆえに 上半平面の極における留数の和は、下半平面の極における留数の和の −1 倍である。そういう関数の、実軸に沿う定積 ∫ ∞ b の円であり、それが f の特 f (x) dx を「複素関数」で何回か計算した。状況が理解できただろうか?実軸は C 分 −∞ 異点を通らない。 2 5 1 次分数変換 次の問題は授業中の例題の類題である。一度くらいソラで計算してみよう。 問 16. 1, 2, 3 をそれぞれ 4, 5, 6 にうつす 1 次分数変換を求めよ。 1 次分数変換は後でまた出て来るので、素朴な計算で出来ることをいくつか。(どれも有名なので、 載っている本は多いが、まずは複素数の計算練習として自分で取り組んでみよう。) 問 17. zz − iz + iz = 0 は円の方程式である。中心と半径を求めよ。 (ヒント: (1) 中心を c, 半径を r とすると、|z − c| = r と同値になる。 (2) |a|2 = aa) 直線に関して鏡像 平面内に直線があるとする。二点 P , Q がこの直線に関して互いに鏡像である とは、P と Q がこの直線に関して対称な位置にあることをいう。 円に関して鏡像 平面内に、 C を中心とする半径 R の円があるとする。二点 P , Q がこの円に関 して互いに鏡像であるとは、P と Q が C を通る共通の半直線上にあり、CP · CQ = R2 が成り立 つことをいう。C と無限遠点は互いに鏡像であるという。 問 18. 複素平面上の点 c を中心とする半径 R の円に対して、2 点 p, q が鏡像の位置にあるため には、(p − c)(q − c) = R2 が成り立つことが必要十分であることを示せ。また、そのとき q を p で 表せ。 (“c を原点とする極形式” というようなものを考えると良い。) b の円に関して鏡像の位置にある 2 点は、任意の 1 次分数変換によって、像である C b の円 問 19. C に関して鏡像の位置にうつることを示せ。 b の任意の円は、1 次分数変換によって、C b の円に写される、という定理を思い出す。) (C 問 20. z0 , ε ∈ C, |z0 | < 1, |ε| = 1 とするとき、 w=ε z − z0 1 − z0 z で定まる 1 次分数変換について、以下のことを示せ。 ( )( ) (1) |1 − z0 z|2 − |z − z0 |2 = 1 − |z0 |2 1 − |z|2 . ( 2) ( 2) 1 − |z | 1 − |z| 0 . (2) 1 − |w|2 = |1 − z0 z|2 (3) |z| < 1 ⇔ |w| < 1, |z| = 1 ⇔ |w| = 1, |z| > 1 ⇔ |w| > 1 を示せ。 (4) 単位円 |z| = 1 に関して、z0 と鏡像の位置にある点を求めよ。またその点はこの 1 次分数変換 でどこに写されるか。 (これは、ものすごく有名な 1 次分数変換で、この講義でも後で活躍するけれど、(1), (2), (4) は単 なる計算だし、今のうちに慣れておいてもらうと良い、と考えた。) 3 b 内の相異なる 4 点, φ を 1 次分数変換とするとき、wj = φ(zj ) (j = 1, 2, 3, 4) 問 21. z1 , z2 , z3 , z4 を C とおくと、 (z1 , z2 , z3 , z4 ) = (w1 , w2 , w3 , w4 ) (非調和比が等しい) が成り立つことを示せ。 6 広義一様収束 Weierstrass の M-test で一様収束を示して、正則関数の定義が出来る、という議論をするので、 絶対値の計算が基本的である。 問 22. (1) |ez | = eRe z であることを示せ (これまで何度も使った)。 (2) a ∈ R とする。多くの場 合に z a は多価関数であるが、どの値をとっても絶対値は |z|a (これは高校数学のベキ乗) であるこ とを示せ。 (要するに |z a | = |z|a が成り立つ。) (3) n ∈ N, z ∈ C に対して、nz := exp(z log n) (log n は高校数学の対数、あるいは主値) と定めるとき、|nz | = nRe z であることを示せ。 ∞ ∑ 1 問 23. (Riemann のゼータ関数) ζ(z) := は、{z ∈ C | Re z > 1} で正則な関数を定めるこ z n n=1 とを示せ。 (ぜひともマスターしてもらいたい問題である。最初は解答を見ないで考えることを強く勧める。 そうすると、重要なテクニックが理解しやすくなる。) 1 ∑ 2z 問 24. + は C \ Z で広義一様収束することを示せ。 z n=1 z 2 − n2 (講義で説明する予定だが、自力でやるには結構手強い問題である。) ∞ 問 25. (1) π tan πz の部分分数展開を求めよ。 (2) (これは cot, 1/ sin2 の結果を知っていれば簡単。) 4 1 の部分分数展開を求めよ。 cos2 πz (工事中: 3 (2), 4 (2), 18, 19 の解答を書いていません。) 解説 この文書では、ベクトル空間 X の 2 点 a, b に対して、[a, b] を [a, b] := {(1 − t)a + tb | t ∈ [0, 1]} で定義し、a と b を端点とする線分と呼ぶことにする。 問 1 解答 (1) X はベクトル空間、C ⊂ X とするとき、C が凸であるとは、 (∀x ∈ C)(∀y ∈ C) [x, y] ⊂ C が成り立つことをいう。 (2) a, b, c を頂点とする三角形 ∆ は、 p := b − a, q := c − a, { } P := (t, s) ∈ R2 | t ≥ 0, s ≥ 0, t + s ≤ 1 とおくとき、 ∆ = {a + tp + sq | (t, s) ∈ P} . と表せる。 x1 , x2 ∈ ∆ とすると、∃(t1 , s1 ), (t2 , s2 ) ∈ P s.t. x1 = a + t1 p + s1 q, x2 = a + t2 p + s2 q. このとき [x1 , x2 ] ⊂ ∆ が成り立つ。実際 [x1 , x2 ] 上の任意の点 x は、ある r ∈ [0, 1] を用いて x = (1 − r)x1 + rx2 と表されるので x = (1 − r)x1 + rx2 = (1 − r)(a + t1 p + s1 q) + r(a + t2 p + s2 q) = a + [(1 − r)t1 + rt2 ] p + [(1 − t)s1 + rs2 ] であるが、ここで ((1 − r)t1 + rt2 , (1 − t)s1 + rs2 ) ∈ P であることが次のように確かめられる。 (1 − r)t1 + rt2 ≥ 0, (1 − r)s1 + rs2 ≥ 0, (1 − r)t1 + rt2 + (1 − r)s1 + rs2 = (1 − r)(t1 + s1 ) + r(t2 + s2 ) ≤ (1 − r) · 1 + r · 1 = 1. ゆえに x ∈ ∆. 以上から ∆ は凸である。 (3) x1 , x2 ∈ B(a; R) とすると、|x1 − a| < R, |x2 − a| < R. 任意の x ∈ [x1 , x2 ] に対して、ある r ∈ [0, 1] が存在して、x = (1 − r)x1 + rx2 . このとき |x − a| = |(1 − r)x1 + rx2 − a| = |(1 − r)x1 + rx2 − ((1 − r)a + ra)| = |(1 − r)(x1 − a) + r(x2 − a)| ≤ (1 − r) |x1 − a| + r |x2 − a| < (1 − r)R + rR = R. ゆえに x ∈ B(a; R). ゆえに B(a; R) は凸である。 5 問 2 解答 (1) ベクトル空間 X の部分集合 S が星型とは、ある a ∈ S が存在して (∀x ∈ S) [a, x] ⊂ S (⋆) が成り立つことを言う。(⋆) が成り立つとき、S は a について星型であるともいう。 (2) X はベクトル空間で、C はその凸部分集合で空集合ではないとする。a ∈ C を任意に取る。C は凸であるから、 (∀x ∈ C) [a, x] ⊂ C が成り立つ。ゆえに C は星型である。 (3) S := C \ (−∞, 0] は星型であるが、凸ではない。実際、a = 1 とおくと、任意の z ∈ S に対して、 [a, z] ⊂ S が成り立つ。(証明: (i) Im z > 0, (ii) Im z < 0, (iii) Im z = 0 かつ z > 0 のいずれかが成り立つ。 (i) の場合、任意の t ∈ (0, 1] に対して Im [(1 − t)a + tz] = t Im z > 0. ゆえに (1 − t)a + tz ∈ S. (ii) の場合は、任意の t ∈ (0, 1] に対して、Im [(1 − t)a + tz] < 0 となるので (1 − t)a + tz ∈ S. (iii) の場合、[a, z] ⊂ (0, ∞) であるから、[a, z] ⊂ S.) 問 3 解答 (1) Ω は Rn の領域 (連結な開集合) であるとする。Ω が単連結であるとは、Ω 内の任意の閉曲線が 定数曲線に連続的に変形可能であること、すなわち、連続写像 φ : [α, β] → Ω が φ(α) = φ(β) を満たすならば、ある a ∈ Ω と、連続関数 Φ : [α, β] × [0, 1] → Ω で、 (∀t ∈ [α, β]) Φ(t, 0) = φ(t) ∧ Φ(t, 1) = a を満たすものが存在することをいう。Φ のことを曲線 φ を定数曲線 a につなぐホモトピー (写 像) と呼ぶ。 (2) S ⊂ Rn は領域で、a について星型であるとする。このとき S 内の任意の閉曲線 C: φ : [α, β] → S について、 Φ(t, s) := (1 − s)φ(t) + sa (t ∈ [α, β], s ∈ [0, 1]) とおく。Φ は (t, s) の連続関数である。任意の t に対して、φ(t) ∈ S であり、S は a について 星型であるから、Φ(t, s) ∈ S. Φ(t, 0) = φ(t), Φ(t, 1) = a であるから、Φ は閉曲線 C を定数曲 線 a につなぐホモトピーである。ゆえに S は単連結である。 (3) () 問 4 解答 (1) C 内の領域 Ω が単連結であれば、 Ω 内の任意の区分的 C 1 級閉曲線 C と、任意の正則関数 ∫ f : Ω → C に対して、 f (z) dz = 0 が成り立つ (単連結領域に対する Cauchy の積分定理)。と C ころが C: z = eiθ (θ ∈ [0, 2π]) は、C \ {0} 内の C 1 級閉曲線であるにもかかわらず、正則関数 1 f (z) = に対して、 z ∫ f (z) dz = 2πi ̸= 0. C ゆえに C \ {0} は単連結ではない。 (2) () 6 問 5 解答 (1) (∀U ∈ R) (∃δ > 0) (∀z: |z − a| < δ) |f (z)| > U . (2) (∀ε > 0) (∃R ∈ R) (∀z: |z| > R) |f (z) − A| < ε. (3) (∀U ∈ R) (∃R ∈ R) (∀z: |z| > R) |f (z)| > U . これらと、 lim f (z) = A の条件 (∀ε > 0) (∃δ > 0) (∀z: |z − a| < δ) |f (z) − A| < ε を並べると合点 z→a が行くだろうか。 問 6 解答 問 7 解答 lim f (z) = −1, lim g(z) = ∞, とするとき、 lim f (z)g(z) = ∞ となるから。 z→a 関数 z 7→ z→a z→a 1 の定義域は Ω := C \ {0} である。 z 1 とおくと、δ > 0 であり、|z − 0| < δ を満たす任意の |U | + 1 1 = 1 > 1 = |U | + 1 > |U | ≥ U. z |z| δ (1) 任意の実数 U に対して、δ := z ∈ Ω に対して、 1 = ∞. z→0 z ゆえに lim (2) 任意の正数 ε に対して、R := して、 1 とおくと、R ∈ R であり、|z| > R を満たす任意の z ∈ Ω に対 ε 1 − 0 = 1 < 1 = ε. z |z| R 1 = 0. z→∞ z ゆえに lim (3) 任意の実数 U に対して、R := |U | とおくと、R ∈ R であり、|z| > R を満たす任意の z ∈ C に 対して、|z| > R = |U | ≥ U . ゆえに lim z = ∞. z→∞ 問 8 解答 N (0, 0, 1) と P (x1 , x2 , x3 ) を通る直線の方程式は x 0 x1 − 0 tx1 tx2 y = 0 + t x2 − 0 = t(x3 − 1) + 1 z 1 x3 − 1 平面 z = 0 との交点では、t(x3 − 1) + 1 = 0 より t = x= ゆえに φ(x1 , x2 , x3 ) = x + iy = x1 , 1 − x3 1 . ゆえに 1 − x3 y= x1 + ix2 . 1 − x3 7 x2 . 1 − x3 (t ∈ R). 問 9 解答 (1) x21 + x22 + x23 = 1 であるから、|z|2 = x2 + y 2 = x21 + x22 1 − x23 1 + x3 . = = 2 2 (1 − x3 ) (1 − x3 ) 1 − x3 |z|2 − 1 2 . これから 1 − x3 = が導かれるので、 2 2 |z| + 1 |z| + 1 z+z 2 z+z z−z 2 −i(z − z) x1 = x(1−x3 ) = · 2 = 2 . 同様に x2 = y(1−x3 ) = · 2 = . 2 |z| + 1 |z| + 1 2i |z| + 1 |z|2 + 1 すなわち ) ( z + z −i(z − z) |z|2 − 1 −1 , , . φ (z) = |z|2 + 1 |z|2 + 1 |z|2 + 1 (2) これを x3 について解いて、x3 = 問 10 解答 前問から z = x + iy (x, y ∈ R) とおくと、 ( ) 2x 2y x2 + y 2 − 1 −1 φ (z) = , , . x2 + y 2 + 1 x2 + y 2 + 1 x2 + y 2 + 1 z ′ = x′ + iy ′ (x′ , y ′ ∈ R) とおいて、同様に求めた φ−1 (z ′ ) から計算すると −1 φ (z) − φ−1 (z ′ )2 = 4 [(x − x′ )2 + (y − y ′ )2 ] 4 |z − z ′ |2 = . (x2 + y 2 + 1)(x′2 + y ′2 + 1) (|z|2 + 1) (|z ′ |2 + 1) 問 11 解答 f は分母の零点 ±i, 2 を極に持ち、それを除いた C \ {i, −i, 2} では正則である。ゆえ に円環領域 {z ∈ C | 2 < |z| < ∞} で Laurent 展開出来るが、それが f の ∞ のまわりの Laurent 展開である。 まず部分分数分解する。 5z 2 − 4z + 3 3 2z f (z) = 2 = + 2 . (z + 1)(z − 2) z−2 z +1 |z| > 2 のとき、|2/z| < 1 であるから ∞ ∞ ∑ 3 3 ∑ 2n 3 2n−1 = = = 3 z−2 z (1 − 2/z) z n=0 z n zn n=1 (2 < |z| < ∞). |z| > 1 のとき、|−1/z 2 | < 1 であるから ∞ ∞ ∑ 2z 2z 1 2∑ 1 n 1 = 2 · = (−1) 2n = 2 (−1)n 2n+1 2 2 z +1 z 1 − (−1/z ) z n=0 z z n=0 ゆえに f (z) = 3 ∞ ∑ 2n−1 n=1 zn +2 ∞ ∑ n=0 (−1)n 1 z 2n+1 = 5 6 10 + 2 + 3 + ··· z z z (1 < |z| < ∞). (2 < |z| < ∞). これが f の ∞ の周りの Laurent 展開である。主要部は (z の正の冪の項を集めたものであるから) 1 0 であり、留数は の係数に −1 をかけたもので、 z ) ( Res(f ; ∞) = − 3 · 21−1 + 2 · (−1)0 = −5. 8 問 12 解答 (少し端折らせてもらいます。後で時間に余裕があれば清書します。) (1) Res(f ; −1) = 3. (2) Res(f ; 2) = 2. (3) 2 は f (z) の分母の 2 位の零点であるから、f の高々2 位の極である。ゆえに f の 2 の周りの Laurent 展開は ∞ ∑ a−1 a−2 + + f (z) = an (z − 2)n (z − 2)2 z − 2 n=0 の形に書ける。a−1 = Res(f ; 2) = 2. a−2 3z 4 − 5z 3 − 7z 2 − z + 25 3z 4 − 5z 3 − 7z 2 − z + 25 = 1. = = lim (z − 2) f (z) = lim z→2 z→2 z+1 z+1 z=2 2 ゆえに 2 の周りの Laurent 展開の主部は a−2 a−1 1 2 + = + . 2 2 (z − 2) z−2 (z − 2) z−2 (4) 3z 4 − 5z 3 − 7z 2 − z + 25 を (z − 2)2 (z + 1) で割ると、商が 3z + 4, 余りが 5z 2 − 13z + 9 である から、 5z 2 − 13z + 9 f (z) = 3z + 4 + . (z − 2)2 (z + 1) これから f の ∞ の周りの Laurent 展開の主部は 3z. 留数は ( ) 5z 2 − 13z + 9 5 − 13/z + 9/z 2 1 . = − lim = −5. Res(f ; ∞) = (−1)×( の係数) = − lim z · z→∞ z→∞ (1 − 2/z)2 (1 + 1/z) z (z − 2)2 (z + 1) b におけるすべての孤立特異点の周りの Laurent 展開の主部と、∞ のまわりの Laurent 展 (5) f の C 開の定数項 (4) を合わせたものが f (z) の部分分数分解である。 f (z) = 2 1 3 + + + 3z + 4. 2 (z − 2) z−2 z+1 (あれ、続き番号にしたつもりだったけれど、間違えた。) 問 13 解答 ∞ が f の孤立特異点であれば、十分大きな正の実数 R と {an }n∈Z が存在して (∀z ∈ C : R < |z|) f (z) = ∞ ∑ an z n + n=0 ∞ ∑ a−n n=1 zn . 無限遠点における留数 Res(f ; ∞) の定義は Res(f ; ∞) = −a−1 である。ゆえに Res(f ; ∞) = 0 であるためには (1) a−1 = 0 であることが必要十分である。一方、∞ が f の除去可能特異点であるとは、 ( ) 1 g(ζ) = f ζ 9 で定義される g が 0 を除去可能特異点とすることをいう。 g(ζ) = ∞ ∑ an n=0 ζn + ∞ ∑ a−n ζ n n=1 であるから、∞ が f の除去可能特異点であるためには、 (∀n ∈ N) an = 0 (2) が成り立つことが必要十分である。 (1) と (2) には、直接の関係はない。例えば (a) f (z) = z は、Res(f ; ∞) = 0 であるが、∞ は除去可能特異点ではない。 (b) f (z) = 1 z 問 14 の解答 は、Res(f ; ∞) = −1 ̸= 0 であるが、∞ は除去可能特異点である。 f が ∞ を孤立特異点に持つならば、正数 R と {an }n∈N が存在して、 f (z) = ∞ ∑ n an z + a0 + n=1 ∞ ∑ a−n n=1 zn (R < |z| < ∞). 仮定より zf (z) = ∞ ∑ n=1 an z n+1 ∞ ∞ ∞ ∑ ∑ ∑ a−n a−n n = an−1 z + a−1 + + a0 z + n−1 z zn n=1 n=1 n=1 (R < |z| < ∞). lim zf (z) が存在するには、(∀n ∈ N: n ≥ 2) an = 0 であることが必要十分で、そのとき z→∞ a−1 = lim zf (z) = A. z→∞ ゆえに Res(f ; ∞) = −a−1 = −A. 問 15 の解答 前問を使うと簡単である。zf (z) = zQ(z) で、zP (z), Q(z) ∈ C[z], deg P (z) ≥ P (z) deg(zQ(z)) + 1 であるから、 zQ(z) = 0. z→∞ P (z) lim zf (z) = lim z→∞ ゆえに Res(f ; ∞) = − lim zf (z) = 0. z→∞ 問 16 の解答 相異なる 3 点 α, β, γ ∈ C をそれぞれ 1, 0, ∞ に写す分数変換 φα,β,γ は、 φα,β,γ (z) = であるから、 α−γ z−β · α−β z−γ 1−3 z−2 2(z − 2) 2z − 4 · = = , 1−2 z−3 z−3 z−3 4−6 z−5 2(z − 5) 2z − 10 φ4,5,6 (z) = · = = . 4−5 z−6 z−6 z−6 φ1,2,3 (z) = 10 ( ) ( )−1 1 −6 10 2 −10 より) これから ( = −2 −1 2 1 −2 φ4,5,6 −1 (z) = −6z + 10 6z − 10 = . −z + 2 z−2 求める 1 次分数変換 φ は、φ = φ−1 4,5,6 ◦ φ1,2,3 である。これは行列 ( )( ) ( ) 6 −10 2 −4 2 6 = 1 −2 1 −3 0 2 に対応する 1 次分数変換で、 2z + 6 = z + 3. 0·z+2 結果を見て驚くかもしれないが、ちょっと考えれば当り前だ!— (「先生、これ、見れば分かる φ(z) = z + 3 でも良いんですよね?」「(おっと、問題ミスったか。) 一意性があるので、それが唯一の答で す。」) φ(z) = 問 17 の解説 中心 c, 半径 r の円は |z − c|2 = r2 と表される。|z − c|2 = (z − c)(z − c) であるか ら、次と同値である。 zz − cz − zc = r2 − |c|2 . これと見比べると良い。 (解答) 0 = zz − iz + iz = z(z − i) + iz = z(z + i) + i(z + i) + i2 = (z + i)(z + i) − 1 = |z + i|2 − 1 であるから、 |z + i|2 = 1. これは −i 中心、半径 1 の円を表す。 問 18 解答 問 19 解答 問 20 解答 単純な計算だけれど、闇雲にやると難しい。 (1) |1 − z0 z|2 − |z − z0 |2 = (1 − z0 z)(1 − z0 z) − (z − z0 )(z − z0 ) = (1 − z0 z)(1 − z0 z) − (z − z0 )(z − z0 ) ( ) = 1 − z0 z − z0 z + |z0 |2 |z|2 − |z|2 − z0 z − zz0 + |z0 |2 = 1 − z0 z − z0 z + |z0 |2 |z|2 − |z|2 + z0 z + zz0 − |z0 |2 = 1 − |z|2 − |z0 |2 + |z0 |2 |z|2 ( )( ) = 1 − |z|2 1 − |z0 |2 . (2) |ε| = 1 に注意すると ( 2) ( 2) 2 2 2 z − z0 2 1 − |z| 1 − |z |z − z | z z| − |z − z | |1 − 0| 0 0 0 2 =1− = = . 1 − |w| = 1 − ε 1 − z0 z |1 − z0 z|2 |1 − z0 z|2 |1 − z0 z|2 11 (3) z ̸= 1 ⇔ w ̸= ∞ に注意しておく。 z0 1 2 も成り立ち)、1 − |w| > 0. z0 1 2 も成り立ち)、1 − |w| = 0. • |z| = 1 ならば (z ̸= z0 1 2 • |z| > 1 かつ z ̸= ならば、1 − |w| < 0. z0 1 2 ならば、w = ∞. 1 − |w| = −∞ < 0. • z= z0 • |z| < 1 ならば (z ̸= 結局、|z| < 1 ⇔ |w| < 1, |z| = 1 ⇔ |w| = 1, |z| > 1 ⇔ |w| > 1. (4) z0 と鏡像の位置にある点は 1 . これは ∞ にうつされる。 z0 1 は単位円に関して互いに鏡像であるので、それらの像である 0 と ∞ も、単位円に関し z0 て互いに鏡像の位置にあるわけです。) (z0 と 問 21 解答 z2 , z3 , z4 をそれぞれ 1, 0, ∞ にうつす 1 次分数変換 ψ1 は ψ1 (z) = (z, z2 , z3 , z4 ). w2 , w3 , w4 をそれぞれ 1, 0, ∞ にうつす 1 次分数変換 ψ2 は ψ2 (w) = (w, w2 , w3 , w4 ). ψ2−1 ◦ ψ1 は、z2 , z3 , z3 をそれぞれ w2 , w3 , w4 にうつす 1 次分数変換であるから、φ に一致する: φ = ψ2−1 ◦ ψ1 . w1 = φ(z1 ) = ψ2−1 ◦ ψ1 (z1 ) より ψ2 (w1 ) = ψ1 (z1 ) であるので、 (w1 , w2 , w3 , w4 ) = (z1 , z2 , z3 , z4 ). 問 22 解答 (1) x := Re z, y := Im z とおくと、 ez = ex+iy = ex (cos y + i sin y) = ex cos y + iex sin y. ゆえに |e | = z √ (ex cos y)2 + (ex sin y)2 = √ e2x = ex = eRe z . (2) z の極形式を z = reiθ (r ≥ 0, θ ∈ R) とするとき、 log z = log r + i(θ + 2nπ) (n ∈ Z). z a = ea log z = ea(log r+i(θ+2nπ)) = ea log r ei(aθ+2anπ) = ra ei(aθ+2anπ) . ゆえに |z a | = ra . (3) z = x + iy (x, y ∈ R) とするとき、 z log n = (x + iy) log n = x log n + iy log n, nz = exp (z log n) = exp (x log n + iy log n) = exp (x log n) exp (iy log n) = nx eiy log n であるから |nz | = nx . 12 問 22 の解答 Ω := {z ∈ C | Re z > 1} とおく。 nz を nz = exp(z log n) と定義すると、Ω 上の正則関数である。 K を C の有界閉集合で Ω に含まれるものとする。(Weierstrass の最大値定理によって) α := min {Re z | z ∈ K} が定まり、α > 1. Kα := {z ∈ C | Re z ≥ α} とおく。 z ∈ Kα とするとき、Re z ≥ α であるから、 |nz | = nRe z ≥ nα ゆえに 1 ≤ 1 nz nα (z ∈ Kα ). (z ∈ Kα ). ∞ ∞ ∑ ∑ 1 1 α > 1 であるから、 は収束するので、Weierstrass の M-test より、 は Kα で一様収束 α n nz n=1 n=1 ∞ ∑ 1 する。特に K でも一様収束し、 は、Ω で広義一様収束することになる。ゆえに Ω で正則な z n n=1 関数である。 問 24 の解答 C の任意の有界閉集合 K に対して、ある実数 R が存在して、 (∀z ∈ K) |z| ≤ R が成り立つ。そこで任意の正の実数 R に対して、KR := {z ∈ C | |z| ≤ R} で一様収束することを 示せば、K で一様収束することが分かり、C で広義一様収束することが証明できる。 N ≥ 2R となるような N ∈ N を取ると、n ≥ N を満たす n ∈ N と、|z| ≤ R を満たす z ∈ C に 対して、 z 2 z 1 R 3 1 ≤ , 1− ≥1− 2 = ≤ n N 2 n 2 4 であるから、 2z 1 2R 1 4 8R z 2 − n2 = n2 · 1 − |z|2 /n2 ≤ n2 · 2R · 3 = 3n2 (z ∈ KR , n ≥ N ). ゆえに ∞ ∑ n=N は KR で一様収束する。ゆえに 2z z 2 − n2 1 ∑ 2z + z n=1 z 2 − n2 ∞ は KR \ {0} で一様収束する。ゆえに C \ {0} で広義一様収束する。 問 25 の解答 (1) 講義で π cot πz の部分分数展開を求めたのと、同様の議論で π tan πz = lim N →∞ N ( ∑ n=1 −1 −1 + z − (n − 1/2) z + (n − 1/2) 13 ) =− ∞ ∑ n=1 z2 2z − (n − 1/2)2 と求めることが出来る。あるいは、tan z = cot(π/2 − z) という関係を利用して、 ∑ 2(1/2 − z) 1 π tan πz = π cot(π/2 − πz) = π cot π(1/2 − z) = + 1/2 − z n=1 (1/2 − z)2 − n2 ∞ を導き、これを整理し直して求めることも出来る。 (2) (1) で求めた π tan πz の部分分数展開 π tan πz = − ∞ ( ∑ n=1 1 1 + z − (n − 1/2) z + (n − 1/2) ) は、各項が正則関数の、広義一様収束する級数であるから、項別微分が可能であり、その結果 も広義一様収束する級数である。 ∑ π = π· cos2 πz n=1 ∞ ゆえに この結果は ( 1 1 2 + (z − (n − 1/2)) (z + (n − 1/2))2 ) ) ∞ ( 1 1 ∑ 1 1 + = 2 . cos2 πz π n=1 (z − (n − 1/2))2 (z + (n − 1/2))2 ∞ 1 ∑ 1 1 = 2 2 cos πz π n=−∞ (z − (n − 1/2))2 と書くことも出来る。 1 の部分分数展開 あるいは sin2 πz ∑ π2 1 = 2+ 2 z sin πz n=1 ∞ ( 1 1 + (z − n)2 (z + n)2 ) = ∞ ∑ 1 (z − n)2 n=−∞ から、cos z = sin(π/2 − z) の関係を用いても求めることが出来る。 14
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