最適化にも diversity を

Jan31th2015 進化 19 大会(小樽商大)土田報告
最適化にも diversity を――標準的解法 4 つ、別解法 8 つ――
Diversity into Optimization――Standard Solution, 4type, Different solution, 8type
――
富士大学
Fuji University
土田 和長
Tsuchida, Kazunaga
1.はじめに~最適化
企業の活動目的は利潤獲得、営利にある。顧客創造することにある。自企業の製品・サ
ービスの効能とデザインをよく理解し愛用してくれるファン、サポーターを増やすことに
ある。この目的に適うよう、企業は利用可能な資源の最適配置に努め、生産量と単位費用
を最適に調整する。これを最適化という。最適化は、言葉による説明、図解的説明、代数
的説明と、3 通りで行うことができる。
本報告では、図解的説明に焦点を当て、教科書や公務員試験等で頻出する標準的な解法 4
つの他に、別解法が少なくとも 8 つあることを紹介する。
2.
1input1output モデル
ⅰ)2 象限標準解法
産出額・費用
産出額曲線
費用線
産出量
産出額曲線と費用線の垂直差が最大となる点が最適点。
ⅱ)2 象限標準解法
産出額・費用
市場販売額線
費用曲線
投入量
市場販売額線と費用曲線の垂直差が最大となる点が最適点。
1
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ⅲ)2 象限標準解法
価格・限界費用
限界費用線
市場価格線
限界費用曲線と市場価格線が交差する点が最適点。
ⅳ)4 象限別解法
消費量-産出量
効用関数
生産関数
効用
投入量
効用/負効用曲線
負効用関数
負効用
効用/負効用曲線の傾き(俯角)≧1+次善の利率=機会費用≧1+借入利率、におい
て、左辺=中辺となったとき、最適化。
3.
2input1output モデル
ⅰ)2 象限標準解、効用・価格・総費用所与
投入量B
等生産量曲線
等費用線
投入量A
2
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等生産量曲線と等費用線の接点が最適化点。
ⅱ)2 象限別解法、効用・価格所与、総費用から独立
投入量B
投入量A
等生産量曲線上を点移動する。移動のエンジン、推進力指標は利潤率である。限界利潤
率=限界生産力/市場価格、とおくと、A投入限界利潤率とB投入限界利潤率を均等化す
る等生産量曲線上の一点が最適点。そのとき、限界生産性比=市場価格比の逆数、となる。
ⅲ)3 次限座標、別解法、生産量の山、垂直、水平に切断したとき断面縁辺にできる曲線
横軸に労働、奥行き軸に資本、高さ軸に産出量を目盛った空間座標中に、生産量の山(丘・
曲面)を描き、その断面図を垂直・水平・各角度から得ると、最適化(利潤最大化・費用
最小化)ルールは、教科書で紹介され各種試験によく出題されるような標準的解法 4 つの
他に、別解法が少なくとも 8 つあることを発見する。
産出量の空間曲線の頂点が最適点を示す。
産出量
産出量の空間曲線
投入量B
等費用線
投入量A
ⅳ)三次元座標、別解法、単位費用曲線の底点、
産出量の空間曲線の各点で等費用線上の対応する点を除すと、等費用線に沿って垂直に
立つ形で単位当たり平均生産費用曲線 UCC:Unite Cost Curve を描くことができる。ⅲ)
の座標の高さ軸の測定単位を単位費用に替えると、それは、産出量の空間曲線と対の形で
描くことができ、両曲線は、「山高ければ、谷深し」、Cap 型に対し Cup 型(U 字型)の関係
になる。
3
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UCC は、事業所、工場、企業のコスト競争力を総合的に反映している。個人のレベル、部
局課のレベル、事業所全体、企業全体のレベルでの一所懸命、一生懸命の努力と創意、工
夫を反映している。全体最適を示す UCC の凹型曲線の底点は所与の条件下での平均単位費
用の最小値=最適値=最も効率的な生産量を反映している。
UCC は事業所の数だけある。それらの UCC 群の各底点を生産量でウエィト付けし「ひとつ
なぎ one-piece にすれば、1 本の包絡線ができる。これが市場の供給曲線である。
企業の数だけある UCC のうち、市場が許容する範囲で一番上に位置する底点が標準単位
費用となり、市場取引価格を規制する。底点がこの位置より下になる企業には超過利潤が
発生し、上になる企業には損失が発生する。赤字企業の場合、革新(旧結合の払拭→新結
合の形成)によって捲土重来を期すか、操業停止(窮境が短期で終わる見通しなら)
、撤退
(窮境が長期に及ぶ見通しなら)
、転向(当該業界で希望を失うなら)
、のいずれかの選択
を迫られる。企業数の調整(淘汰)を通して需給調整は進められる。
市場を規制する標準単位費用 SUP: Standard Unit Price というハードルをクリアでき
ないと、企業も従業員も存続困難となる。危機意識に促迫され、市場社会の参加者は緊張
感を維持し、切磋琢磨し続ける。産業振興、生活改善、地域発展、文化向上、科学技術の
発展、総じて進化がもたらされる。
単位費用
投入量B
等費用線
投入量A
4
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ⅴ)4 象限座標、2input1output、2 財投入生産性最大化、別解法
投入量B
B生産性線
等費用線
B消費効用
投入量A
AB合計生産性線
A生産性線
A消費効用
第 3 象限(未申・西南の方角)におけるAB合計生産性線上の点で、縦座標と横座標の
合計が最大になる点が最適点。三平方の定理を用いて、原点からの距離が最長になる点と
してもよい。
ⅵ)4 象限座標、2input1output、別解法、2 投入財の限界生産性均等になる点
B投入量
B費用線
等費用線
B費用
A投入量
AB合計費用線
A費用線
A費用
第 3 象限(未申・西南の方角)におけるAB合計費用線上の点で、縦座標と横座標の
合計が最小になる点が最適点。三平方の定理を用いて、原点からの距離が最短になる点と
してもよい。
4.3 象限ベクトル
ⅰ)ベクトル立体表示、別解法
⃗⃗⃗⃗⃗⃗⃗⃗⃗
本質的には、3 のⅲ)で見たものと同じ。費用一定・産出最大化、底面上ベクトルOA、
5
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端点Aが等費用線上にあり、産出量の山型空間曲線上に端点Bがある場合、山頂D点で生
産量が最大化される。等費用線上の任意の点はどれも、等費用であるから、山形空間曲線
のどの点をこの費用額で除すと、対応する利潤率が得られる。利潤最大化ばかりでなく、
利潤率最大化をも示す。
Y
D
生産量の山型空間曲線
K
B
O
C
A
L
⃗⃗⃗⃗⃗⃗⃗⃗⃗
AB
収益性または採算性=⃗⃗⃗⃗⃗⃗⃗⃗⃗
OA
⃗⃗⃗⃗⃗ /𝑂𝐶
⃗⃗⃗⃗⃗
収益性または採算性の Max=𝐶𝐷
⃗⃗⃗⃗⃗ の射出角、仰角最大化
Tanθ⇒Max、𝐶𝐷
ⅱ)ベクトル立体表示、別解法
産出一定・費用最小化モデルである。
等産出量曲線を底面上へ投影すると、3 のⅰ)で見た等生産量曲線と等費用線のモデルと
⃗⃗⃗⃗⃗⃗⃗⃗⃗ ⃗⃗⃗⃗⃗⃗⃗⃗⃗
同じになる。採算性=収益性=OA/AB
⃗⃗⃗⃗⃗⃗⃗⃗⃗
⃗⃗⃗⃗⃗⃗⃗⃗⃗
。AB一定ゆえ、OA最小化する点に最適点
は定まる。
底面に投影された等産出量曲線上で、価格比と一致する微係数=接線の傾きになる点を
探索すると、ベクトルの端点Aとなる。tanθを最大にするような(L、K)を選択すると
表現を変えてもよい。
⃗⃗⃗⃗⃗⃗⃗⃗⃗ ⃗⃗⃗⃗⃗⃗⃗⃗⃗
採算性=収益性=AB/OA=tanθ=PY/(rK+wL)
1/採算性=(rK+wL)/PY=(r/P)
・(K/Y)+(w/P)
・(L/Y)
=(実質資本レンタル料/資本生産性)+(実質賃金率/労働生産性)
よって、実質資本レンタル料、実質賃金率が低下するほど、資本生産性、労働生産性が上
昇するほど、採算性、収益性は向上する。
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産
出
量
等生産量の空間曲線
B
資本
θ
A
O
労働
5.附:利潤学説 retrospect
①費用-先取り説と結果-残余説、②節欲説(勤勉・節約・貯蓄)
、③搾取説(他人の成果
の横取り、搾り取り)
、④発明・工夫説→異種技術の経過的併存→市場価格支配的技術(標
準技術は平均単位費用曲線群の底点のうち一番高い限界のもので、市場で購入者に許容さ
れる範囲内にあるもの)との差→差額(超過)利潤、⑤個人・組織の士気発揚・奮励努力
説→士気弱体企業と差→弱体企業が市場から締め出されない限り、そことの差が差額(通
常)利潤に→消費者にそのしわ寄せが行くが、市場で弱体怠慢企業が存続を許されている
のだからOK、⑥危険(リスク)負担説、⑦偶然(運・不運)説~勝利の女神 NIKE は誰に
微笑む? 注意せよ、嫉妬神・復讐神ネメシスもまた女神!
日本海海戦、フラッグ・シップは戦艦「三笠」だった。日本艦隊には戦艦朝日、富士も、
装甲巡洋艦磐手も後続していたが、三笠こそ、三峰(三方・算法・参謀よし精神?
近江
商人の?)=富士(侍の心豊か)=不二(他に二つとなし)=藤(政府内閣の花の意匠)だっ
た。安倍の仲間露・望郷(防共?)の山(アマの原ふりさけみればカスがなる三笠のヤマ
に出でし月かも)だった。バルチック艦隊(露西亜=西アジアだと露呈? 太平洋艦隊第一
第二)との最終決戦、高らかに掲げられた東郷(統合、等号?)指令のZ旗、
「興国(広告、
鴻鵠?)の興廃この一戦にあり、各員一層奮励努力せよ」の全結果は、①~⑦のうち③の
搾取説除き、すべて当てはまる。
どこが新しいか?
資本と利潤・利子の関係を、利を産む親子の関係として、利親・利
子として概念化し直す。利産みに関して全世代AL型学修を採る。東北新幹線古川駅を上
り方向に出ると、左側に天皇機関説の吉野作造記念館、右側に ALPS 電気の社屋が見える。
ALPS:All Labor Produce Surplus. 英国北東北学派が労働価値説を体系化し出した当初か
ら、人も牛馬も、犬猫もロボットも、現在労働も過去労働のストックも、それらの労働力
能の発動・発揮が、人々に効用をもたらす財を産み出す人間労働の力能を代替し、労働節
約する限り、価値および余剰価値(利潤・利子)を産み出しうるとしていたことを再発見・
再確認する。いずれの資源も使い方次第で人々を利で潤す。
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6.附、チューネンのこと
ケインズがいう古典派の第 1 公準、第 2 公準に比定してまとめると、資本の生産力≧労
働の生産力≧実質賃金≧労働の負効用、となる。チューネンの記号に引き直すと、
Aq(d+z)≧A(1+z)≧a(1+s)≧a
均衡において、s=z dq=1、償却額=更新額=A、だったから、
A(1+qz)≧A(1+z)≧a(1+s)≧a
∴
p
a
≧
A(1+z)
a
≧
A
a
≧1
左辺と第2辺をとって、ap≧A2
∴√ap≧A 賃金の合理的上限式として解釈できる。
ただし、注意せよ。チューネンは、経営利潤を捨象し、資本利子のみ計上、利子を超過
する経営利潤は、労働と経営を兼務する自立プレマネ型生産者の混合所得として彼の報酬
に組み入れる、という特殊な手続きをとっている。このような労賃の特異な算定法に注目、
配慮することが足りなかったことも、論争を迷宮 labyrinth に誘った一原因である。
採算性=
産出額
投入額
=
労働の産出額
投入額
+
資本の産出額
投入額
=
労働の産出物×価格
労働者数×賃金
×
労働費
投入額
+
資本の産出物×価格
資本数×資本価格
×
資本費
投入額
=労働生産性×出入価格比×労働シェア+資本生産性×出入価格比×資本シェア、である。
限界生産力逓減と競争均衡状態において、上式を見ると、一定の資本-労働比率で労働採算
性=資本採算性が成立するから、労働者にとっての労働の採算性≦雇い主にとっての雇用
A
p
a
A
の採算性≦資本の採算性、すなわち、 ≦
が成立する。よって、A2≦ap、∴ A=√
ap。
ただし、注意せよ、時間割引率(時間選好)を考慮する必要があることを。a→A→A
(1+i)→A(1+i)
(1+z)より、労働利率=資本貸出利率=資本経営利率より、
借入資本での採算条件=事業 feasibility は、a(1+s)3 となる。
効率と公正の原則からは、生産要素ごとに、allocation→contribution→distribution
→extenuation→fine tuning、となる。
英国マーシャル、限界革命の前後、古典派=費用説と反古典派=限界効用説とを統合して
新古典派と。
英国ケインズ、有効需要の理論と流動性選好説の前後、古典派+反古典派=新古典派を、
自学説による革命以前の学説として一からげに「古典派」と呼び、「古典派」とケインズ派
とを区別。
米国サムエルソン、新古典派(スミス・リカード・マルサス等の英国古典派を過小評価
する傾向あり、のち、独国チューネンの再評価を通して自己反省・見直しする)とケイン
ズ派を統合して「新古典派総合」を完成した。しかし、1960 年代末から始まるスタグフレ
ーションの説明の困難に逢着、
「新古典派総合」の看板を降ろした(との評もあり)
。
サムエルソンいわく。
「チューネンは天才だった、新古典派が生じる以前に新古典主義者だ
8
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った」。その前段で、人の評価は、その人のワースト記録によってではなく、ベスト記録に
よってなされるべき、と断りつつ。
おわりに
古典派、新古典派、ケインズ派、新古典派総合、合理的期待形成派、期待と実際の乖離
を調整する時間をリフレした新ケインズ派、心理・行動・神経・実験経済学派、等が大筋
において合意できる価値論『古今集』、価格論『今昔物語』を綴りたい。藤原公任(きんと
う)をもじっていえば、均等(きんとう)利率を基軸に価値論『和漢(洋――筆者挿入―
―)朗詠集』を綴る。古今・大和・和諧 Great Harmony の精神に基づいてまとめたい。こ
れを「進新古典派総合」と表現しても差し支えあるまい。
チューネンは独国北東北学派、サムエルソンは米国北東北学派(淡水派か海水派かとい
う地理的分類とは別に)だった。すると、日本国北海道東北学派のさらなる飛躍・展開を
もっと期待してもよいのではないか。
「僕らと一緒に行こう、僕ら、どこまでだって行ける切符、持っているんだ」
、十字架の
星近くで別れた姉弟へ、水難事故で亡くなった友へ、ジョバンニは語りかけた。友の名は
カンパネラ、
『太陽の都』
(=日の本の国、日本と私は解釈)の著者と同じ名だ(宮沢賢治
『銀河鉄道の夜』
)。
9