『 行 政 法 再 入 門 (上 )』 【目 阿部泰隆(弁護士・神戸大学名誉教授) 著 次】 はしがき ◇第一部 行政法(学)の未来◇ ◆序 行政法学の位置づけと行政法の役割 章 第一節 はじめに本書で頻繁に取り上げる判例と特殊用語の解説 一 取り上げる主要判例 二 言葉の解説 第二節 行政法の復権 一 基幹三法群の一角を占める法であること 二 法治国家、法の段階的構造とその審査 三 上位法適合性の吟味 四 行政・行政法の定義 五 実質的意義の行政法群 六 空気のような(一般の人は必要を感じない)行政法、司法試験からの 七 行政法の復権・法治国家へ第一歩 追放 第三節 一 現代国家における行政法の役割 二 紛争・被害の予防・簡易な解決作用―民刑事法の機能不全 1 /3 行政活動の拡大とその存在理由 人間性悪説/2 明 確 な 基 準 に よ る 予 防 行 政( 行 政 法 の 先 手 必 勝 的 性 格 ) 民事法にはない新しい行政手法/ 4 軽微・累積的被害の行政による除去・防止 三 社会の無秩序な発展の制御・よりよい社会への誘導(外部不経済の是 四 生活必需サービス等の直接供給と供給確保 五 資源の再配分・弱者の保護 六 その他の管理業務 正) 第四節 公共性をカバーする行政法のシステム―権利防御型モデルから複効 的行政活動の三面的利害調整型モデルへ 一 1 二面関係から三面関係へ 二面関係/2 三面関係、私益の集合としての公益を実現する行政法の 特質 二 1 二面関係と三面関係からみた行政処分の分類と救済手段の関連 申請に対する処分/2 益処分/4 5 自己への不利益処分/3 第三者への許可等授 第三者への不利益処分の不作為/ 行 政 手 続 法 二 〇 一 四 年 改 正 、違 法 な 行 政 指 導 の 中 止 請 求 、第 三 者 へ の 処 分・行政指導請求 第五節 行政の法システムの有用性の充実と活用 一 行政法の優れている面 二 私法への逃避を防止せよ 第六節 行政法学とは? 一 すべての専門家はいない 二 共通の法システムの解明、行政行為論との決別 1 従来の行政法学=行為形式と訴訟類型の重視/2 式論の無内容/3 三 1 法システム論 行政法の(あるべき)基本原理 法 律 に よ る 行 政 の 原 理( 実 質 的 法 治 国 家 )/ 2 家の統治構造に関する憲法上の制約/4 5 行政行為論・行為形 地方自治の尊重/6 社会福祉の原理/3 国 公共性の原理/ 個人情報の保護、行政の情報公開、説明責任、立 証責任 四 1 行政法学の内容分類 行政法の分類/2 組織法(行政内部法)/4 第七節 一 1 行政 行政救済法(違法行政是正・私人救済法) 解釈学のあり方 制定法準拠主義から憲法を踏まえた法体系の合理的解釈へ 役所の解釈は当てにならないこと/2 棄の必要性/3 5 行 政 作 用 法( 対 私 人 行 政 権 限 発 動 根 拠 法 )/ 3 従来の行政法学の対応/4 法治主義と民主主義の観点から/6 訟の解釈における立法者意思/8 制定法準拠主義の誤りとその放 憲法と法体系の合理的解釈/ 立法者意思の使い方/7 合憲限定解釈への疑問 行政訴 二 1 実 「公 の 秩 序 を み だ す お そ れ の あ る 場 合 」と い う 漠 然 と し た 規 定 の 合 理 的 解釈/2 3 例 法律の適用順序、一般法と特別法/ 給 与 条 例 主 義 の 潜 脱 ( 脱 法 行 為 )、給 与 と 福 祉 の 間 / 4 ごまかしの立法 目的 第八節 ◆第一章 政策法学 行政法の抜本的改革―行政と私人の対等な法関係の創出、行政法学 の神話性の克服 第一節 行政と私人の対等性の原則の確立―行政の優越性(正体は、行政機 関の先攻、私人の防御戦争)の克服、 役人性善説からの脱却、違法行為をする公務員の責任追及と私人の実 効的救済 一 1 行政優位の権力関係 行政機関の優越的な先攻、私人の不利な防御戦争/2 も役所は損しない、私人は犠牲/3 4 実体法の不公平 三 対等な法制度を創れ 1 組織の腐敗/ 認識不足のこれまでの判例学説/5 二 違法行政をして これからの解決策 訴訟でも対等に、救済制度の充実/2 訴訟類型の判定困難対策、違法 是正訴訟の提案/ 3 手の汚れた公務員のした処分は違法とせよ、役人性善説からの脱却/4 違法行為をした公務員、役所が損するシステムに/ 5 公益訴訟勝訴報奨金・内部告発者奨励金の提唱 第二節 行政法学の神学性の打破 一 行政の第一次的判断権の神話と義務付け訴訟 二 原告適格の拒否的濫用(濫却下の弊) 三 公定力理論は永久追放せよ 四 権力留保論の誤謬 五 出訴期間と法的安定性の嘘 六 行政裁量・行政の専門性の勘違い 七 執行不停止原則の根拠なし ◇第二部 行政の法システム◇ ◆第二章 実質的法治主義(法律による行政の原理)からみた行政法規の解釈 第一節 一 法律の根拠と法律の明確性の原則 行政法は実質的法治主義で貫徹 二 1 法律と行政の関係、特に法律の根拠(法律の留保) 法律の性格分類根拠規範、組織規範、規制規範の比較/2 の歴史的説明/3 5 全部留保説の限界/ 権力留保説は法律の根拠論ではないこと/6 三 1 侵害留保説の今日的説明/4 侵害留保説 重要事項留保説の妥当性 根拠規範の明確かつ具体性の要請、合憲限定解釈の行き過ぎ 明確な規定の必要性/2 不明確な規定は、合憲限定解釈ではなく、違 憲・無効とすべきであること 四 法治主義から見た具体例の検討 第二節 法治行政と信頼保護の原則 一 租税法の例 二 社会保障法の例 第三節 経過措置・遡及立法 一 不利益処分遡及禁止の原則 二 判決による場合 三 新規の規制の導入と経過措置の要否 第四節 行政指導の濫用対策 一 建前は任意手段である行政指導 二 根拠規範不要、行政手続法は規制規範 三 法律の根拠のある行政指導、指導前置主義 四 行政指導強制禁止の原則 五 行政指導に対する救済 六 違法な行政指導例 ◆第三章 第一節 行政手法 行政手法論の意義 一 新しい行政手法 二 国家は撤退したか→手法の変化 三 法システムと法的手法を解明する視点 第二節 一 1 各種の行政手法 監督・規制手法 監 督 ・規 制 手 法 の 諸 相 / 2 行政規制における審査事項/5 社会的規制と経済規制/3 関連営業の規制 二 経済的手法 三 土地利用規制手法及びリスクマネジメント 四 事業手法 五 情報提供・啓発手法 六 補助手法・給付手法 七 住民参加手法 認 可/4 八 協働手法 九 そ 1 の 他 行政指導手法/2 情 報 の 収 集 ・ 管 理 ・公 開 / 3 行政強制手法/4 刑事 罰手法 ◆第四章 第一節 地方自治法・行政組織法 地方自治(地域自治) 一 これまでの地方自治制度 1 地方自治強化の必要性/2 これまでの国の事務と自治事務の関係/3 (廃止された)機関委任事務 二 1 二〇〇〇年地方分権(第一次)改革 抜本的な地方分権の根拠/2 国と地方の役割分担の原則/3 機関委 任事務の廃止・事務の再構成と条例制定権の拡大/ 4 国家関与の法治国家化─国と地方の関係が上下関係から法の下に対等 の法治国家へ/5 権限委譲/6 三 それ以後の改革 1 未完の分権改革 2 平成の市町村合併 三 位 一 体 の 改 革 、財 源 の 保 障 の 不 備 / 3 義務付け・ 枠付けの見直し/ 4 法 シ ス テ ム の 根 幹 を 貫 く 発 想 の 発 見 と 改 革 、更 な る 分 権 と 自 治 の 充 実 の ために 第二節 一 1 行政主体、行政庁と補助機関等 行政の統一性/2 機関/6 上下の監督関係/2 政 庁/4 行政機関/5 補助 対等な行政機関相互の調整 権限の委任、代理、専決・代決 権限の委任/2 四 1 行 行政機関相互の関係 三 1 行政主体/3 附属機関 二 1 行政組織のシステム 代 理/3 専決・代決 民営化と公権力の委任 公権力民間委任禁止の発想/2 民 間 化 の 実 態 、権 力 を 委 任 せ ず / 3 指 定確認検査機関の例、権力を委任するも、裁量権は委任せず/ 4 裁量的公権力の民間委託適法化は可能 ◆第五章 行政法と民事法 第一節 はじめに 第二節 法の一般原則 第三節 行政行為と民事法の関係、特に行政処分と所有名義人、真の所有者 一 【 事 例 1】 農地買収処分は登記名義人を相手方とすれば適法か―民法 一七七条の関係 二 【 事 例 2】 三 【 事 例 3】 滞納処分は登記名義人を相手にすれば適法か? 国が買収したが未登記の間に当該農地が第三者に転売され た場合 四 固定資産税は登記名義人に課される 五 道路法四条 第四節 民法と行政法の適用関係 一 民法二三四条と建築基準法六五条の関係 二 公営住宅と民事法の適用関係、公営住宅の明渡しと信義則 三 消滅時効 1 納 入 の 通 知 ・督 促 と 時 効 中 断 の 効 力 / 2 消滅時効期間/3 時効の援用 と利益の放棄 四 公物の時効取得 五 相 第五節 殺 行政規制の遵守と私法上の責任の関係 一 行政規制の遵守と不法行為 二 実例の紹介 ◆第六章 行政法規の構造とその実現過程 第一節 法律の具体化と読み方 一 法規範の段階的構造の確保 二 法律の用語に注意 1 法令用語明確性の要請/2 「及び、並びに、若しくは、又は」/ 3 そ の 他 「 の 」、 地 方 自 治 法 施 行 令 一 六 七 条 の 二 に 定 め る 随 意 契 約 に よ り 売却できる場合の誤読例等/ 4 「ものとする」/5 「知った日から」―審査請求期間、出訴期間の起 算日/ 6 「 お そ れ が あ る も の 」、「 お そ れ が あ る と 行 政 機 関 の 長 が 認 め る こ と に つ き相当の理由がある情報」/ 7 副作用発生のおそれ、証拠隠滅のおそれ/8 「前三条の規定によるの ほ か 」、 国 家 賠 償 法 四 条 第二節 行政立法 一 行政立法とは 二 法規命令 1 法規命令の性格と種類/2 性、白紙委任の禁止/4 三 1 委任立法の限界/3 授権する法律の違憲 委任の趣旨の合理的解釈 行政規則 行政規則の例/2 行政規則の外部効果/3 通 達 の 法 的 拘 束 力 、違 法 な 通達に対する争訟方法/4 第三節 通達による法解釈の変更─通達課税 条例制定権の範囲と限界 一 問題の所在 二 地方公共団体の事務の範囲 1 地域的不平等/2 三 1 国の事務/3 財 産 権/4 私法秩序 法律と条例の関係 法律専占論/2 例の基準/5 第四節 横出し・スソ切り/3 個別条例の検討/6 上乗せの許否?/4 最高裁判 上書権・国法への溶け込み いわゆる行政裁量の司法審査、事案にふさわしい合理的な判断をす る義務 一 包摂の過程の合理性を司法審査 二 古色蒼然とした、克服されるべき従来の発想 1 従前の学説、自由裁量は法治行政の例外/2 判断過程を示さず、ある いは行政丸投げの判例 三 古典的な理論でも違法となる例 四 考慮事項を適切に考慮する、踏み込んだ判例 1 個人タクシー事件─聴聞における審査基準の設定義務/2 もんじゅ訴 訟、専門委員会の判断と司法審査の方法/ 3 身体障がい者であることを理由とする高校不合格の裁量濫用/4 エホ バの証人事件/ 5 土 地 収 用 ・事 業 認 定 、 都 市 計 画 に お け る 考 慮 事 項 の 欠 落 / 6 公共施設・ 公物の使用許可/ 7 公務員の処分における比例原則、日の丸・君が代懲戒処分事件 五 1 今日の裁量統制のあり方 裁 量 は 、法 治 国 家 の 例 外 で は な く 、立 法 者 の 信 託 の 誠 実 な 実 現 を / 2 行 政の主張・立証責任と具体的な司法審査方法/ 3 行政事件訴訟法三〇条は廃止せよ、代替案の提案 六 1 附款の限界と行政裁量 附款とは/2 ける附款の限界/4 5 第一節 二 三 1 裁量性のある行為にお 期限も短期のものは無効/ 違法な附款に対する救済方法 ◆第七章 一 附款とは法治行政の一コマ/3 行政行為と契約 行政行為 許認可における見合い規定 私権の有無の無審査の原則 行政処分の申請者、同意者の地位 同意に基づく処分/2 公務員の退職願の撤回と信義則/3 任期制公 務員の「同意」/4 四 1 確定申告における錯誤 行政処分の相手方 対人処分と対物処分/2 の選択/4 6 立法の不統一と立法政策/3 土地収用の相手方/5 所有者名不明の対策/ 土壌汚染対策法の汚染土壌除去責任/7 五 1 命令の相手方 処分による義務の連帯責任? 処分の判断基準時は申請時、審査基準の改定、経過措置との関係 許認可申請後の審査基準の変更は事後立法禁止原則違反/2 先願主義 の判例との関係/ 3 法令の変更による不許可の適法化、経過措置、損失補償請求 六 行政行為の無効と取消し、職権取消し・撤回、一事不再理 1 /4 無効と取消しの区別の意味/2 訴訟との関係/5 七 1 撤 回/3 職 権 取 消 し・撤 回 の 限 界 一事不再理?不可変更力? 行政処分と被処分者の故意過失 行政処分発動に被処分者の故意過失は必要か/2 制裁的行政処分にお いては被処分者の過失が必要 八 その他、行政行為の項目でこれまで説明された事柄 第二節 行政契約 一 契約と法規範 二 行政手法と民事手法の比較 1 行政行為と契約の立法的選択/2 三 公契約法の特殊性 四 財産管理 ◆第八章 第一節 情報の法システム 情報収集手法(特に行政調査手法) 一 種々の情報収集手法 二 行政処分の前哨戦 三 種々の行政調査手法 1 契約の締結強制 即時強制=強制立入りによる調査/2 行政調査/3 刑罰により間接的に担保された 行政制裁により担保された行政調査/ 4 任意の立入り/5 四 制度上の問題点 情報収集の義務づけ、さらに、第三者評価手法 1 刑事罰の機能不全対策/2 区別の困難/3 調査権限の不備/ 4 疑 惑 が あ る が 、立 ち 入 れ ず 、立 ち 入ら な け れ ば 立 入 検 査 の 対 象 に な る か どうかが判明しないという不合理の解決 五 1 解釈上の問題点 事前通告・理 由開示の要否・第三者 の立会い/ 2 査との関係/4 行政調査と企業秘密・プライバシー/ 収 去/3 犯罪捜 5 行政調査の違法と処分の効力 第二節 個人情報保護法制 一 個人情報保護の原則 二 行政機関個人情報保護法 1 法律の成立/2 三 1 定 義/3 制 個人情報保護法 義務規定/2 第三節 国家介入の抑制/3 具体的事例の検討 情報の公開 一 情報公開の総合体系 二 情報公開制度化の流れ 三 情報公開制度のシステム 1 規 /3 何人にも裁判で貫徹できる実体法上の請求権/2 対象文書と行政機関(実施機関)/4 四 1 知る権利と国民主権 文書不存在への対応 非開示事由 三二九 情報公開制度のもとでの個人情報保護/2 情報/3 三号 二号 法人情報、個人事業 国の安全、外国や国際機関との信頼関係条項/ 4 四号 犯罪捜査等情報/5 五号 内部検討情報/ 6 六号 事務事業情報(監督等情報、契約・交渉情報、調査研究情報、人 事管理情報、企業経営上の正当な利益情報) 五 1 用/4 6 そ の 他 部分公開(六条)/2 手 数 料/5 大量請求・権利濫 第三者の意見聴取手続/ 情報公開審査会/7 第四節 グローマー条項(八条)/3 インカメラ手続/8 文書管理 その他の情報公開関連制度 一 情報提供(広報)と説明義務 二 情報非公開の日本型立法過程と特定情報一般公開義務づけ制度、法律 案の理由書の作成・公開の義務付けの提案 三 1 会議公開 議 四 1 会/2 行政の会議 倫理条例と資産公開法、神戸市口利き記録条例 公人の資産公開/2 国家公務員倫理法/3 政治家の口利き禁止制度 を ◆第九章 第一節 一 1 行政強制・制裁 行政強制 その歴史的発展と現状 英米流と大陸流/2 その長短/3 行政上の義務の履行確保方法の位置 戦後の法改正/4 現行法における 二 1 金銭債権の執行方法―行政上の強制徴収と民事徴収 法システム/2 三 1 行政上の強制徴収の許否/3 立法政策的当否 行政代執行 行 政 行 為 の( 自 力 )執 行 力 / 2 代執行の法システム/3 代執行類似の 制度=略式代執行、直接施行 四 1 直接強制と即時強制 三六七 直接強制/2 即時強制―個別処分による義務賦課を前提としない物理 的実力行使 五 執行罰(金銭的間接強制、強制金) 六 民事執行 1 私法的強制手法/2 七 1 制裁的公表 公表に二種類/2 る理由/4 7 行政上の義務の民事 運用状況/5 制裁的公表の導入/3 法律の根拠/6 違法な公表/ 情報公開制度の影響 第二節 制裁・刑事罰 一 刑事罰への依存体質 二 行政刑罰の特色 1 /4 制裁的公表制度が導入され 強制手段ではないこと/2 罪刑法定主義/3 過失犯=故意犯とする立法/5 両罰規定/6 過失犯処罰規定の要否 罰金・科料 三 行政上の秩序罰としての過料 四 行政処分の効力と処罰(公定力は刑事訴訟へ及ぶか) 1 問題の所在/2 五 1 直罰とワンクッション・システム 語 第三節 一 1 判例:非反則者のスピード違反事件 義/2 ワンクッションから直罰へ/3 処罰の軽重 新しい強制・制裁手法 経済的利得の没取、独禁法の課徴金 独禁法の課徴金のシステム/2 課徴金と法人処罰の関係/4 刑罰と課徴金の併科と二重処罰/3 課徴金と不当利得の関係 二 犯罪収益剥奪手法 三 放置違反金―駐車違反の責任は違反した運転手から「使用者」へ 四 民事法を補完する新しい手法 『 行 政 法 再 入 門 (下 )』 阿部泰隆(弁護士・神戸大学名誉教授) 【目 著 次 】(( 上 ) よ り 続 く ) はしがき ◇第三部 行政救済法(違法行政是正・私人救済法)◇ ◆第一〇章 事前手続(行政手続法) 第一節 事前手続の存在意義 第二節 行政手続法制定が遅れた理由 第三節 行政手続法の概要 一 定 二 適用除外 1 義 学生・公務員等、個別法/ 2 地方公共団体の行う行為/3 国・地方公 共団体・特殊法人・認可法人・指定法人等の監督 三 1 申請に対する処分 審査基準/2 理由提示/5 弁明・聴聞の不適用/6 四 不利益処分 1 処分基準/2 五 1 標準処理期間/3 聴聞手続/3 申請は遅滞なく審査/4 そ の 書面による 他 弁明手続/4 理由附記 理由附記の瑕疵 理由附記は処分内容とは独立の価値/2 附すべき理由の程度/3 理 由の瑕疵の治癒? 第四節 検討課題 一 届出制と許可制 1 基本的な違い/2 不受理の処分性?/3 二 一般処分と個別処分 三 聴聞と事実認定 1 事実認定のあり方/2 許可申請の放置・返戻 聴聞を経た行政処分の司法審査のあり方―手続 審理の重要性 四 1 手続の瑕疵の特殊問題 手続違法、実体適法の事案の審理/2 手続違反で取り消しても同じ処 分がなされるから無駄では?/ 3 理由附記・聴聞も悪質な行政機関には通用しない 第五節 行政立法制定における意見公募(パブリック・コメント)手続 第六節 ノーアクションレター─行政機関による法令適用事前確認手続 ◆第一一章 第一節 行政訴訟法 行 政 救 済 法 の 実 態 、違 法 行 政 か ら の 救 済 を 妨 害 す る 防 波 堤〔 障 害 物 〕 と改革の視点 一 1 行政判断の実態と迅速かつ適切な救済の必要 行政優位の発想と司法権の限界論/2 判断するのは「行政権」ではな く、生身の行政官で、間違いやすいもの/ 3 5 裁判官は判断できる/4 行政の公益性と執行不停止原則の不適切さ/ 欠陥理論からの脱却 二 1 /3 訴訟要件等、行訴法の制度設計のあり方 本案=法治行政違反/2 行訴法の定め/4 5 訴訟手続ルールを定めるのは行訴法と民訴法 訴訟要件は行政の防波堤/ 訴訟要件の判定は緩やかに、迅速に/6 改正行訴法の中途半端 三 五年後見直しに当たっての立法、解釈のスタンス 四 実質的な不対等性と中東の笛 五 行政訴訟の位置づけ 六 行政訴訟発展途上国(行政訴訟最貧国)からの脱却を目指して 七 民事訴訟一本化? 第二節 法 律 上 の 争 訟 、 法 治 国 家 ・ 裁 判 を 受 け る 権 利 の 観 点 か ら 、「 当 事 者 間 の具体的な権利義務ないし法律関係の存否に関する紛争」 要件を削除せよ 一 法執行を求める訴訟、国と地方公共団体の間の争い 二 大阪空港訴訟最判を廃止せよ 第三節 抗告訴訟のシステム、二面関係と三面関係 第四節 訴訟類型論 一 行為形式論と訴訟類型論の結びつき 二 抗告訴訟 三 取消訴訟 四 差止訴訟 五 義務付け訴訟 1 時/5 六 1 申請型と非申請型/2 損害の考え方/6 申 請 型/3 非申請型/4 違法判断の基準 「一定の処分」 公法上の当事者訴訟 生き返った当事者訴訟/ 2 事者訴訟は無意味/ 4 混乱に拍車 七 形式的当事者訴訟 八 無効確認訴訟と争点訴訟 当事者訴訟を適法とする判例/ 3 やはり当 1 無効確認訴訟の存在理由/2 違法と無効の区別/3 行政処分の種 別?(無効の制度の誤解)/ 4 無効確認訴訟の明文化と補充性、争点訴訟/5 無効確認訴訟が適法に なる場合 九 不作為の違法確認訴訟 一〇 1 客観訴訟 客観訴訟/2 第五節 一 1 住民訴訟/3 選挙訴訟/4 機関訴訟 処分性の不明確、訴訟類型の判定困難、違法是正訴訟、併用説 処分性、訴訟類型判定困難対策 行政行為と抗告訴訟の結びつき、行政行為以外の救済排除/2 処分性 の本当の役割と訴訟類型判定困難対策/ 3 最近の判例における処分性の拡大傾向 二 1 処分性判定困難事例 法律に基づかない補助金に対する救済方法/2 分との連動/3 4 8 勧 公 告/5 入札指名停止、特に処 表/ 労災補償/6 病院開設の中止勧告/7 公務災害補償/ 通達の処分性を認めた悪例/ 9 条 例・行 政 立 法・一 般 処 分 / 10 共 施 設 管 理 者 の 不 同 意 / 12 三 1 第六節 一 相対的行政処分 立 法 論/3 解 私 見/3 三 訴えの利益消滅への救済 行訴法一〇条一項「自己の法律上の利益に関係のない違法」 第七節 出訴期間 一 出訴期間、不可争力、違法性の未確定 二 出訴期間の存在理由への疑問 三 新行訴法の改正点 四 解釈上の論点 裁判を受ける権利との関係/2 初日不算入/5 6 一般処分/7 第八節 一 1 さらなる法改正の視点 訴えの利益 九条かっこ書き/2 /4 論 原告適格 二 1 釈 原告適格、訴えの利益、本案における主張制限 判例と行訴法九条二項/2 1 公 まとめ、違法是正訴訟、併用説 現行法の不合理/2 1 住 民 票 の 記 載 、訴 訟 類 型 の 判 定 / 11 知った日とは?/3 処分の送達方法 訴状・不服申立書の到達時期/ 違法性の承継 仮の救済 執行停止 内閣総理大臣の異議/2 執行停止原則の必要性/3 執行停止の要件 /4 改 善 策 二 公法上の当事者訴訟における仮処分 三 仮の義務付け、仮の差止め 1 法 第九節 改 正/2 仮の義務付けの認容例/3 審理ルールの特色 一 民訴法の適用、弁論主義、職権証拠調べ 二 文書送付嘱託、文書提出命令 三 釈明義務 四 立証責任 五 手続ミスの他、実体審理も行え 第一〇節 一 1 二 1 仮の差止め 管轄、訴えの併合など 被告・管轄 被告適格は行政主体に/2 管 轄 訴えの変更、訴えの併合、関連請求 訴えの変更/2 訴えの併合/3 第一一節 教 第一二節 印紙代(訴額)など 関連請求 示 一 印紙代を民事訴訟の発想で決めるのは間違い 二 訴えの併合の場合の印紙代の計算 三 一つのホテルを構成する複数の建物の固定資産課税、関連請求の拡大 四 裁決と処分の取消訴訟の併合の場合 五 訴訟費用の敗訴者負担 第一三節 違法判断の基準時 一 考 二 事例分析 第一四節 え 方 理由の追加変更、処分理由の差替え 一 これまでの考え方 二 検討―申請に対する拒否処分の場合 三 検討―不利益処分の場合 第一五節 判決の効力、和解、公益訴訟勝訴報奨金制度の提唱 一 請求認容判決の第三者に対する効力 二 義務付け判決、差止判決の第三者効の欠如 三 取消判決の拘束力 四 事情判決と補償請求 五 フリーライダーと公益訴訟勝訴報奨金 六 和 ◆第一二章 解 改正行政不服審査法 第一節 改正の経緯、本法の構造、改正の趣旨 一 改正の経緯 二 処分を対象とする不服申立ての一般法(実態は落ち穂拾い法) 1 一 般 法/2 処分概念/3 不当の審理/4 適用除外/5 固有の 資格 三 改正法の趣旨 第二節 不服申立ての類型の改善 一 審査請求への一本化 二 審 1 裁定的関与に関する地方自治法と新法の両方の適用 審査請求前置主義の削減と残存 改正の概要/2 四 1 庁 最上級行政庁/2 三 1 査 更なる前進の必要 異議申立ての再調査の請求への衣替え、前置主義の廃止 衣替えの理由/2 再調査の請求前置主義は導入せず/3 再調査の請 求の仕組み 五 再審査請求 六 不作為への救済は審査請求で 第三節 審査請求に当たって 一 審査請求期間の緩和 二 審査請求書の記載事項 三 審査請求書の提出先 第四節 審理員の創設と限界 一 審理員の非独立性 二 審理員を任命しない例外 三 却下の場合 第五節 審理員の行う審理手続 一 審理手続 二 職 権 調 査 ・探 知 の 適 切 な 活 用 の 要 請 1 片面的職権調査の必要/2 三 1 立証責任 閲 覧 ・謄 写 閲覧対象の拡大/2 閲覧のほか謄写へ拡大/3 第三者の利益侵害を 理由とする閲覧謄写の制限/ 4 イ ン フ ォ ー マ ル な 職 権 調 査 の 結 果 の 閲 覧 ・謄 写 か ら の 除 外 は 違 法 / 5 閲覧謄写費用は無料にせよ 四 弁明書の提出 第六節 行政不服審査会 一 経 緯 二 委員会の組織 三 1 審理手続 審理員から審査会への流れ/2 審査会の審理手続/3 機関 四 審査会に諮問しない場合 五 地方公共団体の不服審査機関 第七節 執行不停止原則 一 執行不停止原則の問題点 二 執行停止のシステム 第八節 審査請求に対する裁決の種類 一 裁決の内容・効力発生 二 裁決の種類 三 不利益変更禁止 四 不作為に対する審査請求 第九節 その他 一 教 二 二年先の施行 三 『救済しようとのインセンティブを開発せよ』 ◆第一三章 第一節 示 損失補償法 損失補償とは 一 憲法二九条の損失補償 二 類似制度との区別 1 損害賠償 2 事業損失 3 予防接種禍訴訟 4 天災被災者補償 5 伝染病に汚染した家畜への補償 6 原発避難区域からの追出し補償 7 津波被災地の震災前の価格による買上げ 第二節 公的土地取得システム 一 収用制度の存在理由 二 事業認定と収用裁決、収用委員会のあり方 三 事業認定後の地価固定主義 四 生活権補償 第三節 財産権の制限に対する補償の要否 一 規制による収用か財産権の内在的制限か 二 補償規定がない場合、直接請求権発生か、違憲無効か 三 奈良県ため池条例 審査会は諮問 四 河川附近地制限令による事後的砂利採取禁止 五 市街化調整区域の指定 六 長期の都市計画制限に補償は要らないのか? 七 小豆島で石の採取が自然公園法により不許可となる場合 八 破壊消防 第四節 行政財産の使用許可の取消しと補償 ◆第一四章 国家賠償法 第一節 国家賠償法一条 一 自己責任説と代位責任説 二 「公権力の行使」に関する抗告訴訟と国家賠償訴訟との違い、訴訟要 件か適用法条の問題か 三 1 公権力の行使の役割―公務員の対外的個人責任の有無 公権力の行使なら公務員はほぼ無責任/2 公務員の対外的賠償責任を 認めよ 四 内部行為と外部行為 五 公 1 務 員 公務の委託/2 設への措置入所/4 委託された公務員の帰属主体の判定/3 耐震設計偽装と国家賠償 六 職務を行うについて 七 国家賠償法の違法性について 1 児童養護施 違法性の意義、違法・過失の一元説と二元説/2 被害者個人に対する 法的義務違反を要すること/ 3 個別具体的な勧誘への信頼破壊は違法、工場誘致政策廃止事件/4 パ トカー追跡事故における警察官の違法性・過失の判断基準/ 5 /7 個室付浴場業事件―行政過程の正常性と異常性/6 検察官の違法過失/8 9 1 勾留など、判決以外の裁判所の判断/ 立 法 者 の 違 法 過 失 / 10 八 過 不当も国家賠償法上は違法? 失 過失の意義/2 注意義務の程度/3 解釈の誤り・調査不十分と過失の有無/5 6 法 過失を推定せよ/ 行政の危険防止責任 二面関係から三面関係の法システムへ/2 行政裁量論の克服/4 一〇 第二節 一 予見可能性判定の具体例/4 公務員の説明義務 九 1 裁判官の違法過失 反射的利益論の克服/3 本来の加害者と行政の負担割合 立証責任 国家賠償法二条(=公物営造物の設置管理の瑕疵) 瑕 疵 の 意 義 、「 通 常 」 の 安 全 性 二 1 利用者との関係における瑕疵と利用者の自己責任 具体例の検討/2 三 1 理論的な課題 河川災害 洪水対策 /2 リーディングケース、大東水害訴訟最高裁判決/3 具 体的事例をめぐる瑕疵の考え方 四 1 公物営造物の第三者との関係における瑕疵 使用者(公務員)や第三者との関係における物理的な欠陥/2 第三者 に対する騒音・振動被害と瑕疵/ 3 一条と二条の違いはあるか、賠償と補償の違いはあるか/4 瑕疵の判 定における公共性の考慮 第三節 一 1 国家賠償法三条の趣旨と実例分析 被告選択のリスクの低減/2 二 1 国家賠償法三条 実例の検討/3 補助金の場合 国家賠償責任主体相互間の責任分担 費用負担者説と管理者説/2 公立中学校体罰事件の賠償責任者は県か 市か 第四節 国家賠償法四条、五条 一 国家賠償法四条と消防職員の消火ミス 二 消滅時効 1 「知った」時/2 継続的加害行為 三 除斥期間二〇年の例外 四 国家賠償法五条 第五節 一 1 賠償されるべき損害の範囲・請求権者 相当因果関係 拒 否 処 分・手続 違 法 の 場 合 の 特 殊 性 / 2 関係/4 事実的因果関係/3 相当因果 損害の範囲 二 損害賠償請求権者の範囲 ◆第一五章 第一節 その他の救済制度と国家補償の谷間の救済方法 その他の救済方法 一 無過失責任の立法化―完全補償の規定 二 責任の制限立法 三 適法行為による意図せざる結果的な損失に対する恩恵的な不完全補償 1 四 1 刑事補償/2 予防接種禍補償 戦争犠牲補償―社会福祉に遅れて色づけ その立法例/2 その根拠と合理性 五 犯罪被害者への給付 六 転業規制、競争事業の創出 七 民事責任の行政法的制度化(無過失責任を含めて) 第二節 国家補償の谷間の救済策 一 現行法制の実情 二 谷間を埋めるためにこれまで用いられた諸方法 1 諸外国における工夫/2 三 1 谷間を埋める諸方策の提唱 破壊警察の例/2 活動/4 5 日本法での工夫 外交官による殴られ損事件/3 結果的不法行為―逮捕、起訴、裁判/ 保護されている動物による被害 四 立法による救済の新動向 五 むすび、国家賠償訴訟の活性化を 1 国家賠償訴訟は多少機能/2 ◇第四部 立 ◆第一六章 法 およそ不対等/3 消極判例の厳存 学◇ 政策法学 第一節 これまでの解釈法学偏重の法律学 第二節 現実の立法の不備と政策法学の学問的な実践 一 1 違 法・無 過 失 な 行 政 総合的な視野のもとでの災害対策 津波被災地の高台移転案の愚/2 原発被災者は移住か帰還か/3 災 害の際の仮設住宅の不適切さ 二 1 実効性のある規制手法・徴税手法 繰返し違反対策、店の火災・死亡は法災/2 軽自動車税の徴収策/3 税滞納者名の公表、個人情報保護との兼ね合い/ 4 三 1 現金取引の記録の義務付け/5 社会福祉の改革 働く意欲を出す生活保護制度の創設/2 して最低賃金条例は違法/3 4 四 1 五 公益通報者(密告者)報奨金の提唱 公営住宅/5 最低賃金法の政策的誤り、ま 高齢者安心法/ 少子高齢化社会の財源確保 経済的に合理的な施策 定期借家/2 ダフ屋取締りは違憲/3 経済的に成り立たない愚策 科学的に不可能なことを実行しようとする愚
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