前立腺がん地域連携パス

前立腺がん地域連携パス
(内容)
○病院泌尿器科さま、はじめにお読みください。
○前立腺がん地域連携パス(医師用)
○前立腺がん連携パスフローチャート
○前立腺がん一次検査を受けられる患者様へ
○前立腺がんパス患者用(前立腺がん検査を受けられる患者様へ)
病院泌尿器科さま、はじめにお読みください。
この度、大阪府がん拠点病院を中心とした「大阪府がん診療連携協議会パス部会」の検
討対象として、前立腺がんを効率的に診断するためのパス(以下パスという。)が盛り込ま
れることになり、別紙の通り作成しました。大阪府では PSA 住民検診を導入している市町
村は全国比で少ないものの、住民検診を増加させるのは困難な状況であると思われます。
このパスは、一般内科などの地域かかりつけ医に働きかけ、PSA 採血を行われた場合に適
用をお願いし、前立腺がんを早期に発見することと、進行癌の罹患率を低下させることを
目的にしています。
部会では、このパスのほか、5大癌のうち胃・大腸・乳腺・肺がんについても連携パス
が構築(肝がんについては、別途検討中です)されましたが、これらのパスが主に入院治
療後の経過観察や内服抗がん剤治療のもので、病院から診療所へ向けてのものです。一方
当パスは、開始が、診療所→病院への方向ですので、活用方法が異なります。
具体的な活用方法案は、次頁の通りですが、パスの内容も含めて各病院で適切に変更し
ていただくことになります。なお一連の書類は、住民検診が施行されていないことを前提
に作成されています。
平成 21 年 1 月
大阪府がん診療連携協議会パス部会
文言:医院または連携医
=
開業医
パス病院
=
連携パスを発信した病院
1. 地域連携医へ向けての説明を各パス病院が行い、協力連携医を募る。
(医師会への説明
などの機会に行うこととなると思われます。)
2. 連携医が決まれば、パス病院は、連携医向けに書式を作成し、連携医が利用できるよ
うに配慮する。
3. 連携医では、基本的に「前立腺がん1次検査を受けられる患者様へ」の説明文(学会
発行の前立腺がん検診ガイドラインに従い、ファクトシートより抜粋しました。表裏
両面印刷で A4 用紙1枚になります。)を 50 歳以上(上限年齢は各パス病院で決定)の
通院患者へ渡してもらい、希望者へPSA採血を行う。
(この時点ではパスはまだ適応
されず、パスのことを患者へ説明する必要もありません。)
4. 連携医では、PSAが異常値であればパス病院の【連携パス】にのせるか、または、
他の連携病院や泌尿器科専門医院へ紹介する。
(連携医の中には複数の病院と連携して
いるところもあり、紹介先は各医院の判断に委ねるべきであると思われます。)
5. 【連携パス】にのせた場合、連携医は、
「患者用パス」
(これも表裏両面印刷で A4 用紙
1枚になります。)を発行し患者へ渡し、(地域連携室経由で)パス病院へ紹介する。
さらに連携医は、
「医療者向けパス」
(A4 用紙1枚・表のみ)も発行し、これを紹介状
とする。
6. パス病院では、各パス病院の方針に従い、必要時には追加検査(PSA再検や、DR
Eなど)を行い、結果で生検の必要性を患者へ説明する。患者用パスはパス病院で預
かる。
7. 生検でがんが検出された場合、患者用パスは廃棄。医療者用パスは必要事項を記入し、
返事として、連携医へ送る。
8. 生検でがんが検出されなかった場合、患者用パスに必要事項を記入し患者へ返す。ま
た医療者用パスにも必要事項を記入し、連携医へ逆紹介する。
9. なお、フローチャートは、連携医に対しての説明用書類です。
前立腺がん地域連携パス
大阪府がん診療連携協議会
患者名
紹介元No
生年月日
成人病cID
①PSA検査結果
医院名
(
)
検査日
(平成
PSA値
(
年
月
日)
ng/ml)
抗血小板・抗凝固剤 薬剤名(
医師名
(
)・無
【コメント欄】
)
②精密検査
成人病センター泌尿器科
初回受診日 (平成
年
月
日)
□直腸指診所見
医師名
(
)
□エコー所見
□PSA再検査値
(
ng/ml)
□MRI所見
□F/T比
(
□生検所見
□PSAD
(
%)
ng/ml/cc)
【治療方針】
□がん あり(ガイドラインに基づいて治療を行います)
□がん なし(下記要領にて経過観察をお願いします)
□
ヶ月毎にPSA検査をお願いします
□
ヶ月毎に定期紹介をお願いします
□PSAが
ng/ml以上の時紹介をお願いします
③経過観察(PSA検査)
年
月
日
ng/ml
年
月
日
ng/ml
年
月
日
ng/ml
年
月
日
ng/ml
かかりつけ医
PSA検査
~1.0 ng/ml
1.1~4.0 ng/ml
3年後
4.1 ng/ml~
泌尿器科専門医
1年後
成人病センター 生検
かかりつけ医
PSA検査
大阪府がん診療連携協議会パス部会
前立腺がん連携パスフローチャート
陰性
陽性
かかりつけ医
PSAフォロー
成人病センター
病期診断・治療
泌尿器科専門医
再生検の適応の判定
前立腺がん1次検査を受けられる患者様へ
1 はじめに、「前立腺がんと PSA について」
●前立腺は精液の一部を作る臓器で男性にしかありません。
●2006 年には約 10,000 人が前立腺がんで死亡していると推定されています。
日本では、前立腺がんは男性のがんの中で 8 番目の死亡原因となっています。
●2020 年には、前立腺がんの患者数は肺がんに次いで第 2 位になり、死亡数
は、2000 年の約 3 倍に増加すると予測されています。
●年齢が高くなるにつれ、前立腺がんにかかる可能性が高くなり、一般的に
は 50 歳からの検診受診が勧められています。
●ご家族に前立腺がんにかかられた方がいる場合、前立腺がんになる危険が
高くなるといわれており、40 あるいは 45 歳からの検査の受診が勧められて
います。
●前立腺がん検査は、住民検診や人間ドックで行われますが、血液検査のみ
で行われることが多く、前立腺特異抗原(PSA)を測ります。場合によって、
補助的に直腸診を行います。
●初期の前立腺がんには特有の自覚症状はありませんので、PSA 検査(血液
検査)あるいは直腸診を行わないと、一般的には見つけることが難しいと言
われています。
●PSA 検査は最も優れた前立腺がん診断のための検査方法で、80-90%の前立
腺がんが 1 回の血液検査で抽出できます。PSA が高いほど前立腺がんの可能
性が高くなります。
●PSA 検査により、約 8%の方が異常値となり、"がん疑い"との結果になりま
す。
2 前立腺がん確定までの検査の方法
●PSA 検査あるいは直腸診にてがんが疑われた場合、確定診断のために前立
腺生検(標準的な方法は、前立腺に 6-12 ヶ所細い針を刺して組織を採る方法
で、場合によっては追加生検を行います)が必要になります。
●前立腺生検は、局所麻酔あるいは腰椎麻酔をかけて行われ、外来で行う場
合と入院で行う場合があり、検査には 15 分くらいの時間がかかります。
●前立腺生検を行うと、約 40%の方に前立腺がんが見つかりますが、PSA 値
が高いほどその確率は高くなり、PSA 値が基準値を少し越えた方の場合には、
がんが見つかる可能性は 20%前後です。
3 前立腺がん検査の利点・欠点・不明確な点
●前立腺がん検査を行わない場合、何らかの症状がでてから診断される前立
腺がんの約 30%は、骨などに転移しています。PSA 検査を用いた前立腺がん
検診を実施すると、転移がんが明らかに減少します。
●前立腺がん検査を行うことにより、前立腺がん死亡率が下がるか否かにつ
いては、米国と欧州で大規模な研究が進められていますが、まだ最終結果は
でていません。しかし、これまでで最も信頼性の高いオーストリアの研究で
は、死亡率が約 50%下がると報告されています。
●PSA が上昇しない前立腺がんも 2-3%あり、PSA 検査では診断できないこ
とがあります。
●前立腺生検を行った場合、発熱、直腸からの出血、尿に血が混じる、精液
に血が混じることがありますが、重い合併症は極めてまれです。
●標準的な前立腺生検方法でも、20-30%の前立腺がんは見逃されてしまいま
すので、がんが見つからない場合も、注意深く経過観察をすることが必要で
す。
●PSA 値、直腸診にて前立腺がんが疑われ前立腺生検を行った場合、PSA 値
が 10ng/ml 以下の方では 20-40%の方にがんが診断される一方で、60-80%の
方ではがんが診断されず、不必要な生検をうけることになります。しかし、
PSA 値が上昇するほど、がんの可能性が高くなりますので、不必要な生検を
うける可能性は低くなります。
●生前に前立腺がんと診断されなくても、死後に病理解剖を行うと、いわゆ
る死亡に影響しない小さいがん(ラテントがんといいます)は 30-50%の人に
認められます。このような死亡に影響しない小さながんが、PSA 検査や直腸
診を用いた前立腺がん検診の中で発見されることもありますが、その頻度は
まれです。
●前立腺がん検査を行うと、治療により根治可能な前立腺がんが多く発見さ
れますが、死亡に影響しないようながんが約 10%の確率で診断されることも
あります(過剰診断)
。しかし、PSA 値が高くなるほど、過剰診断の危険は低
くなります。
前立腺がん地域連携パス
(裏面もお読みください)
患者様氏名:
1次検査
医院 (
大阪府がん診療連携協議会
様
年
2次検査
月
日)
あなたのPSA値は
ng/ml です。
PSA値は一般的に以下のように
判定されます。
4.0 ng/ml 以下 : 陰性
4.1~10.0 ng/ml : グレーゾーン
10.1 ng/ml 以上 : 陽性
グレーゾーン以上の数値の場合は、
前立腺がんの可能性があります。
専門医による精密検査の必要性が
あると考えられますので
成人病センター・泌尿器科へ
紹介します。
経過観察
成人病センター
外来で、主に下記のような検査を実施
します。詳しくは担当医が説明します。
□ PSA再検査
□ F/T比
□ 直腸指診
□ MRI検査
前立腺生検
(
年
□必要なし
成人病センター (
年
月
日)
□ 経過観察の場合
2次検診の結果、前立腺がんを疑う所見は
認められませんでした。しかしながら
がん病巣が小さいために所見が得られ
なかった可能性は否定できません。
今後は、定期的なPSA検査を行うことが
前立腺がんの早期発見に結びつくと
考えられます。
月
日)
□必要あり
PSA値の変動が見られた場合には
再度、成人病センターで検査を受けて
いただくことがあります。
紹介元: 医院 ( )
(
年
月
日)
□前立腺がんを疑う所見なし
担当医
紹介元で経過観察をします。
成人病センター (06-6981-1181代)
□前立腺がんあり
担当医
成人病センターで治療方針を決定します。
前立腺がん2次検査を受けられる患者様へ(この用紙は2次検査時に持参してください)
1 はじめに
【連携パス】とは、地域のかかりつけ医と病院の専門医が、あなたの診療記録あるいは治療経過を共有
できる計画表のことです。大阪府の泌尿器科領域では、前立腺の早期がん発見と、進行がん罹患率低下を目標に、
「前立腺がん地域連携パス」を活用しています。
2 前立腺がん確定までの検査の方法
●PSA 検査にて前立腺がんが疑われていますので、2次検診として泌尿器科専門医を紹介します。
●専門医では必要に応じて追加の検査が行われますが、確定診断するためには前立腺生検(標準的な方法は、前
立腺に 6-12 ヶ所細い針を刺して組織を採る方法で、場合によっては追加生検を行います)が必要になります。
最終的に生検をするか否かに関しては、紹介先の専門医の意見を参考にしてください。
●前立腺生検は、局所麻酔あるいは腰椎麻酔をかけて行われ、外来で行う場合と入院で行う場合があり、
検査には 15 分くらいの時間がかかります。
●前立腺生検を行うと、約 40%の方に前立腺がんが見つかりますが、PSA 値が高いほどその確率は高くなり、
PSA 値が基準値を少し越えた方の場合には、がんが見つかる可能性は 20%前後です。
●前立腺生検を行った場合、発熱、直腸からの出血、尿に血が混じる、精液に血が混じることがありますが、
重い合併症は極めてまれです。
●標準的な前立腺生検方法でも、20-30%の前立腺がんは見逃されてしまいますので、がんが見つからない場合
でも、注意深く経過観察をすることが必要です。
●生検でがんが確認された場合、治療の必要性や治療方法について、専門医より説明させていただきます。
大阪府がん診療連携協議会パス部会