オーストラリアの ミドリカッコ ウ類と 宿主の共進化に関する研究( 1): 研究の背景と展望 ○上田恵介 1 ・Yeni Mulyani 2 ・Richard Noske2 (1立教大 2 Charles Darwin Univeristy, School of Science and Primary Industry) ミドリカッコウ類 Chrysococcyx は、アジア、アフリカからオーストラリ ア熱帯にかけて分布するスズメ大の小型カッコウで、世界に 15 種が知られ、 うち 4 種がオーストラリアに生息し てい る。演者らはオース トラリア北西 部熱 帯のダー ウィ ンに おいて 、マ ング ローブ林に生息する アカメテリカッ コウ Chrysococcyx minutillus に関する研究を進めてきた。オーストラリアの ミドリカッコウ類はセンニョムシクイ類やオーストラリアムシクイ類に托卵す ることが知られているが、ここダーウィンでは。アカメテリカッコウがマング ローブに同所的に生息するハシブトセンニョムシクイ Gerygone magnirostris とマングローブセンニョムシクイ G. levigaster の2種を主要な宿主として生息 している。演者らは 2000-2002 年に、これらのセンニョムシクイ類の繁殖生態 を調べ、アカメテリカッコウの托卵状況を調べた。 その結果、アカメテリカッコウの両宿主への托卵率は平均して40%を超え ていることがわかった。しかしこのように高い率で托卵を受けているのに、セ ンニョムシクイ類は、何の対抗手段も持っていないように思われる。それはセ ンニョムシクイ類の卵は白地に斑をもつタイプの卵であるのに対し、アカメテ リカッコウの卵は暗緑色 暗緑褐色で、宿主の卵に対する卵擬態がまったく発 達していないことからも伺われる。 このような1寄生者̶2宿主における高い率の托卵システムが、どのように 生じ、維持されているのかを明らかにするために 2006 年度より科研費のプロジ ェクトとして、あらたに研究を開始した(基盤 B(海外学術):オーストラリア熱 帯に生息する小型カッコウ類と宿主の進化的軍拡競争に関する行動生態学的研究) 。ミドリカ ッコウ類と宿主の複雑な軍拡競争の様相を明らかにするのが本研究プロジェク トの目的である。 今回はダーウィンにおけるアカメテリカッコウと2種の宿主についての 2000-2002 年に行った調査を元に、ミドリカッコウ類と宿主の托卵システムを 簡単に紹介し、研究の現時点での到達点と展望について述べる。
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