総会記念フォーラム開催報告 - NPO法人ワーカーズ・コレクティブ協会

■特集
「総会記念フォーラム開催報告」
特集
総会記念フォーラム開催報告
「~全員参加型社会の実現にむけて~ワーカーズ・コレクティブによる可能性の検証」
総会終了後、若者就労支援の関係者なども含め、70
理解が 8 割超え、事業の継続と発展が 9 割 5 分となっ
余名の参加者でフォーラムが開催された。昨年11月に
ている。
神奈川 W.Co 連合会に所属するワーカーズメンバーを
今後は特に「自立できる分配金」そのための「事業の
対象に行われたアンケート調査に基づき、(N)ワーカ
継続と発展」が重要となる。経済的に自立できる分配金
ーズ・コレクティブ協会理事長の中村久子さんから、調
を出せるワーカーズ・コレクティブは多くない。「公的
査の目的、テーマ、検証事項、概要、調査分析について、
な支援」と「地域市民の手によるセーフティネットづく
細やかな報告がされた。
り」で、貨幣中心ではない「もうひとつの価値」の自立
の可能性を見せていくことが必要です。
ワーカーズ・コレクティブの外側からみえた課題、ア
ンケート調査から見えた事を神奈川地方自治研究セン
ター理事長の上林得郎さんが報告した。
ワーカーズ・コレクティブは、協同組合の社会的役割
の重要部分を、事業を通して担っている。地域に根ざし
た事業は、障害者、離職後経過の長い女性、社会になか
なか出られなかった人を受け入れている。事業は地域を
離れての活動はあり得ない。
時間の選択、平等な分配金、
調査の対象は 10 代~30 代で、8 割が女性。既婚者
対等・公平な事業運営が大きな特徴である。
は半数。就労経験のない人は約 2 割だが、そのうち 8
この調査から、若者たちは、多様な働き方の優位性、
割は未婚者である。住居は 5 割が横浜である。健康面
では約 9 割が良好、概ね良好である。W.Co で働くき
ワーカーズ・コレクティブの意義を理解している。それ
っかけは知人や家族の紹介が多く、決めた理由は、収入
は、
「仕事以外の自分の生活を大事にする」
「仕事内容の
を得たい、働きやすそうだったなどが多い。また、働き
満足」
「人間関係」
「働いて楽しいと感じる」などに現れ
方が自分の希望に合っていた、社会参加・復帰の足がか
ている。
ただ、
「自立できる分配金」に今後どのように対応で
り、キャリアアップなどの意見もあり、柔軟な働き場で
きるのか疑問を感じる。
あることがわかる。
働く時間も 3 時間未満から 8 時間、
週 1 日から 5 日とさまざまであり、自分の都合に合わ
せて仕事の内容や働く時間を調整でき、通勤時間も短時
間で、体調に合わせて調整できると 8 割~9 割の人が
答えている。運営委員会や定例会への参加度も高く、話
し合いで物事を決め、メンバーが対等であると感じてい
る人が 7 割を占め、事業運営に責任を感じている人も
全体で8割を超えている。ワーカーズ・コレクティブが
多様な働き方を用意でき、正規・非正規問わず障害の程
度や体調に配慮した働き方ができ、参加型組織の有効性
も見えた。働き続けるために必要な事としては、資格が
5 割、一人で自立できる分配金が 6 割、家族の応援・
1
■特集「記念フォーラム報告」
最後に社会学研究者の田中夏子さんから若者の就労
について問題提起をいただいた。
現在は正規・非正規を問わずディーセントワーク(働
く者の権利と自治を尊重する。尊厳が保障される働き
方)がないがしろにされている。
ワーカーズ・コレクティブの考え方はディーセントワ
ークと多くの共通点を持つが、働く者の「権利」をどう
考えるか議論が必要である。
困難を抱える若者たちに、人とのつながり、関係性を
深めながら「居場所」を創るプロセスを提供している事
実は大きい。コミュニティ価格についても、自分たちが
使う側に立つ事を考え、未来の安心を買うという、サー
ビスの提供者が受ける側に回るという循環が成り立っ
ていればいいが、その循環の外にいる人とも共有できる
ものを考える必要がある、という宿題を頂いた。
このアンケートでは、自立までのステップを丁寧に歩
める仕組みづくりが見え、
当事者支援と支援する事業者
(ジョブ伴走者)の人件費を制度化する必要があると結
ばれた。
(武 道子)
※1【ディーセントワーク】働きがいのある人間らし
い仕事。1999年の第87回ILO総会に提出され
た事務局長報告において初めて用いられ、ILOの活
動の主目標と位置付けられた。
※ 2 竹信 美 恵子 著「 生 活協 同 組合 研究 Vol.448
2013 年 5 月」に掲載された「『雇われないの意味』、
変質への懸念~ブラック化の罠にはまらないために」
2