東京未来大学研究紀要 2009 年 第 2 号 pp.1-12 発達障害児の療育と予後 府川 昭世 A Clinical Report on Treatment and Prognosis for the Children Suffered from Developmental Disorders. Teruyo Fukawa 要約 近年、知的障害はないのに学習がスムーズに進まないとか、集団生活がうまくいかない子どもたちが目立ってきている。 発達障害者支援法(平成 年 月 0 日法律 )に基づき、文部科学省はこれらの子どもたちを「発達障害児」と考え、 特別な支援教育を必要として、全国都道府県に早急な対策を講じるよう通達を出した。「発達障害児」とは、①学習障害(LD) ②注意欠陥多動性障害(ADHD)③広汎性発達障害(PDD)などをもつ子どもたちを指しているが、これらの子どもたちは 言語障害や運動障害を合併していたり、二次障害として反抗挑戦性障害や行為障害をおこしていたりする。対人関係や社会 生活上の失敗体験による不安障害、気分障害、適応障害が並存していることが多い。 筆者が 0 年にわたって、地域発達相談・小児科心理臨床・保育園幼稚園小学校カウンセリング・児童養護施設心理相談 において担当したケースのうち「発達障害」に該当するのではないかと考えられる代表的なケースの療育について概観し、 予後を左右する要因を考察する。 キーワード 発達障害児、療育、予後 1. はじめに 後について印象を述べる。連絡のとれるケースには 発達障害の代表的な 3 つの障害について、特徴を 論文に引用させていただくことをご了解いただい 医学的診断カテゴリーと教育福祉領域でまとめられ た。連絡のとれないケースは個人を特定する情報を ている考え方を示す。障害は、医師の診断によって 最小限にとどめた。 明確につけられる場合と、医師によっても明確に診 断されない場合や、そもそも受診しない場合がある。 2. 発達障害の特徴 どこか変だがそれがどうしてなのか分らず、親も家 アメリカ精神医学診断マニュアル(DSM-IV-TR) 族も本人も不安を抱えながら生活しているケースが によると表1のように要約することができる。これ かなりある。 らは医師が診断の際に用いる操作的定義である。 教育や心理臨床の現場では、教師や心理士が障害 教育や福祉の現場では以下のように定義されてい 名を安易に用いてはならない。そのような傾向があ るので、表 1 と見比べて医学的見解を十分理解した るという程度に考えることが肝要である。もし保護 上で子どもを理解するとともに、教育福祉現場がと 者が診断名を求めるようなことがあれば、診断は医 るべき態度をわきまえることが大切である。 注意欠陥/多動性障害(文部科学省 2003) 師でなければ下せないことを親に告げて、専門医を 受診してはどうかとすすめるのが無難である。 その年齢あるいは発達に不釣合いな注意力や行 では保育や教育現場では何をしたらよいかを考え 動の障害で、社会的活動や学業の機能に支障をき てみよう。発達障害に関する優れた概説書は多く出 たすもの。7 歳以前に現れ、その状態が持続し、中 版されているので、概論は最小限にとどめて筆者が 枢神経系になんらかの要因による機能不全が推定 発達臨床現場で係わったケースの中で発達障害と考 される。(大南ら, 2007) えられる典型的なケースをいくつか示し、療育と予 府川 : 発達障害児の療育と予後 的になり、行為障害へ進展することもある。ADHD 高機能広汎性発達障害(文部科学省 2003) は、親も困るが保育園・幼稚園・小中学校でも非常 3 歳までに現れ、①対人関係を構築し持続する に困っている。不注意だけが強く症状に出ていて、 ことが困難、②ことばの発達の遅れ、③興味や関 多動性・衝動性がほとんどない場合は、忘れ物の多 心が狭く特定のものにこだわる、という特徴があ い子だとか授業中ぼんやりしているとか宿題をして る。知的発達に遅れを伴わない自閉傾向を有する こないなど「やる気のない子」とみなされて見過ご ものを高機能自閉症という。アスペルガー症候群 されがちだが、多動性・衝動性が強い子は補助者が は、知的発達の遅れを伴わず、ことばの発達に顕 つかないと危険であり、集団活動がスムーズにいか 著な遅れはない自閉傾向を有するものを指す。 ないため他児に迷惑を及ぼす。 中枢神経系に何らかの機能不全が推定される。 LD は就学してはっきりとわかるが、就学前に箸 (大南ら, 2007) や鉛筆の持ち方がおかしく描画の発達が遅れている とか、数の概念が年齢相応に育っていないとか、文 学習障害(文部省 1999) (大南ら, 2007) 字を覚えようとしないとか、文で話すことができな 全般的な知的発達に遅れはないが、聞く・話す・ いなど、いくつかの兆候をみることができる。「ぼ 読む・書く・計算する・推論する能力のうち特定 くはディスレキシア」という本をかいたワインスタ のものの習得と使用に著しい困難を示す様々な障 イン(2003)は、息子の読字・書字障害を 3 歳代 害を示すものをいう。原因に中枢神経系の機能障 で気づき専門家と協力して療育し、小学校 4 年生に 害が推定される。器質的障害(視覚・聴覚・知能) はディスレキシアを克服することに成功した。最近 や情緒障害・環境要因が直接の原因ではないと推 このディスレキシアは、脳科学の研究によって大脳 定される。 皮質の角回・縁上回(ブロードマン 39・40 野)が うまく働かないことが影響していることがわかって これらの特徴をもつ子どもを育てるとき、最初に きた。子どもの脳は可塑性に富んでいるので、早期 気づくのは 1 歳半健診(地域によっては 2 歳児健診 の療育によって機能回復が可能であることを示して も行う)、3 歳児健診におけることばの遅れと対人 いる。わが国でも天野(2006)は学習障害の早期 疎通性の悪さ(視線が合わない、呼びかけに反応し 予防教育の重要性を訴えている。 ない)、異常なこだわりである。多くの場合、多動 わが子が発達障害ではないかと親自身が気づいて 性障害を伴っていて親は育児にやり甲斐がもてず、 専門機関に相談する場合と、健診の際保健師に促さ 困り果て疲れ果てて、親子関係に歪みが生じている れて専門機関を訪れる場合がある。筆者はその両方 ことが多い。 のケースに対応してきた。 本論文の表1に何故 ADHD を最初に表記したか 医師も子どもの詳細な特徴は、心理士の心理検査 には理由がある。ADHD は一人で歩けるようにな に期待してケースを心理士に紹介することが多い。 るとすぐ明らかになる障害で、親は子どもが眠って 心理士が行う心理査定について次に述べる。 いる時しかやすらげない。注意してもすぐ忘れて同 じ失敗を繰り返すので親は叱ってばかりいる。する と子どもは逸脱行動を次第にエスカレートさせ反抗 東京未来大学研究紀要 2009 年 第 2 号 表 注意欠陥多動性障害 , 高機能広汎性発達障害 , 学習障害の特徴(DSM- Ⅳ -TR より要約) 㧝 ᵈᗧᰳ㒱ᄙേᕈ㓚ኂ, 㜞ᯏ⢻ᐢ᳢ᕈ⊒㆐㓚ኂ, ቇ⠌㓚ኂߩ․ᓽ(DSM-Φ-TR ࠃࠅⷐ⚂) ᵈᗧᰳ㒱߅ࠃ߮⎕უ⊛ⴕേ㓚ኂ㧦Attention Deficit and Distruptive Behavior Disorders 㧝㧕ᵈᗧᰳ㒱㧛ᄙേᕈ㓚ኂ㧦Attention- Deficit /Hyperactivity Disorder એਅߩ∝⁁߇㧞ߟએߩ⁁ᴫ㧔ޔኅᐸߣቇᩞ㧕ߦ߅ߡ㧣ᱦᧂḩߦሽߒޔኻੱ㑐ଥ߿ቇᬺࠍ⪺ߦᅹኂߒߡࠆ ਇᵈᗧ㧧ᵈᗧߩ㓸ਛᜬ⛯߇᥉ㅢߢߥߚᜰ␜߇ࠇߕࠅ➅ࠍࠛޔߒޔᔓࠇ‛߇ᄙࠍߩੱޕ⡞ߡ ߥࠃ߁ߦߺ߃ࠆޕ ᄙേᕈ㧧ߓߞߣߒߡࠆߎߣ߇᧪ߥޕᬺਛ⌕Ꮸߒߡࠄࠇߥޕ༆ࠅߔ߉ࠆޕ ⴣേᕈ㧧ߒᛮߌߦ╵߃ߚࠅޔ㗅⇟ࠍᓙߟߎߣ߇᧪ߥߩ߳ੱઁޕᅹኂޕ 㧞㧕᛫ᚢᕈ㓚ኂ㧦Oppositional Defiant Disorder 㧢ࡩᜬ⛯ߔࠆᜎ⛘⊛᛫⊛ᚢ⊛ⴕേ᭽ᑼ߇એਅߩ߁ߜ㧠ߟએሽߒޔኻੱ㑐ଥ߿ቇᬺࠍ⪺ߦᅹኂߒߡ ࠆ Ԙ≳⊇ࠍߎߔ ԙᄢੱߣญ⺰ߔࠆ Ԛⷙೣߦᓥ߁ߎߣߦ᛫߹ߚߪᜎุ ԛᗧߦઁੱࠍ⧦┙ߚߖࠆ Ԝ⥄ಽߩᄬᢌࠍઁੱߩߖߦߔࠆ ԝ⚻ㆊᢅ Ԟᔶࠅ⣻ࠍ┙ߡࠆ ԟᗧᖡߢၫᔨᷓ 㧟㧕ⴕὑ㓚ኂ㧦Conduct Disorder ઁ⠪ߩၮᧄ⊛ੱᮭ␠ޔળ⊛ⷙ▸ࠍଚኂߔࠆߎߣ߇ᓳߒᜬ⛯ߔࠆⴕേ᭽ᑼ߇ޔએਅߩၮḰߩ㧟ߟએޔㆊ㧝㧞ࡩ 㑆ߦሽߔࠆߦߊߣޕၮḰߩ㧝ߟ߇ㆊ㧢ࡩ㑆ߦࠄ߆ߦሽߒߚޕ (1) ੱ߿േ‛ߦኻߔࠆ᠄ᕈ Ԙߓ⢿ㄼᆭྋ ԙขߞ⚵ߺวߩ༗ནࠍߒ߆ߌࠆ Ԛઁੱ߳ࡃ࠶࠻ᾃⅽࠟࠬ࠽ࠗࡈߥߤߩᱞེࠍ ↪ߔࠆ ԛઁੱ߳ߩᱷ㉃ߥり⊛ജ Ԝേ‛߳ߩᱷ㉃ߥജ ԝᕈⴕὑߩᒝⷐ Ԟⵍኂ⠪ߩ㕙೨ߢߩ⋑ߺ (2) ᚲ‛ߩ⎕უ ԟᗧߩἫ Ԡᗧߦઁੱߩᚲ‛ࠍ⎕უ (3) ཐࠍߟߊߎߣ߿⓯⋑ ԡઁੱߩዬ߿ゞ߳ߩଚ Ԣઁੱࠍߛ߹ߔ ԣਁᒁ߈⋑⓯ޔ (4) ㊀ᄢߥⷙೣ㆑ Ԥⷫߩᱛߦ߽߆߆ࠊࠄߕᄛㆃߊᄖ ԥήᢿᄖᴱ Ԧᕃቇ 㜞ᯏ⢻ᐢ᳢ᕈ⊒㆐㓚ኂ㧦High Function Pervasive Developmental Disorders ⍮⊛㓚ኂࠍࠊߥ⥄㐽ᕈ㓚ኂ߹ߚߪࠕࠬࡍ࡞ࠟ㓚ኂࠍߐߔߎߣ߇ᄙߊએਅߩ․ᓽࠍ␜ߔޕ 㧝㧕ኻੱ⊛⋧ᕈߩᰳᅤ㧧⋧ᚻߣⷞ✢ࠍวࠊߖߚࠅ⋧ޔᚻߩᗵᖱ߿ᗧ࿑ࠍℂ⸃ߒ⋧ᷤߒખ㑆㑐ଥࠍ⛽ᜬߔࠆߎߣ߇ ᧪ߥޕ 㧞㧕ࠦࡒࡘ࠾ࠤ࡚ࠪࡦߩ⾰⊛㓚ኂ㧧⸒⺆ߪࠆ⒟ᐲ⊒㆐ߒߡࠆ߇⋧ᚻߩߎߣ߫ߩᗧ࿑߿ᗵᖱࠍචಽℂ⸃ߒߡࠦࡒࡘ࠾ ࠤ࡚ࠪࡦࠍ࿑ࠆߎߣ߇㔍ߒޕ 㧟㧕ᓳ⊛Ᏹห⊛ⴕേ᭽ᑼ㧧ⴕേ⥝ᵴേ߇㒢ቯ⊛ޔᓳ⊛ޔᏱห⊛ߢࠆޕ ቇ⠌㓚ኂ㧦Learning Disorders 㧝㧕⺒ሼ㓚ኂ㧧⺒ߺߩᱜ⏕ߐߣℂ⸃ജߦ㑐ߒߡᮡḰൻᬌᩏߢ᷹ቯߐࠇߚ㆐ᐲ߇ޔᐕ㦂⍮⢻ฃߌߚᢎ⢒߆ࠄᦼᓙߐࠇ ࠆࠃࠅචಽૐߊޔቇᬺ߿ᣣᏱ↢ᵴࠍ⪺ߦᅹኂߒߡࠆޕᗵེⷡߩᰳ㒱߇ࠆ႐วߪߘࠇߦ߁߽ߩࠃࠅ ㆊߢࠆޕ 㧞㧕▚ᢙ㓚ኂ㧧ᮡḰൻᬌᩏߢ᷹ቯߐࠇߚ▚ᢙߩ⢻ജ߇ޔᐕ㦂⍮⢻ᢎ⢒߆ࠄᦼᓙߐࠇࠆࠃࠅචಽߦૐߊޔቇᬺ߿ᣣᏱߩ ᵴേࠍ⪺ߦᅹኂߒߡࠆޕ 㧟㧕ᦠሼ㓚ኂ㧧ᮡḰൻᬌᩏߢ᷹ቯߐࠇߚᦠሼ⢻ജ߇ޔᐕ㦂⍮⢻ᢎ⢒߆ࠄᦼᓙߐࠇࠆ߽ߩࠃࠅචಽߦૐߊޔቇᬺ ᚑ❣߿ᣣᏱߩᵴേࠍ⪺ߦᅹኂߒߡࠆޕ 㧠㧕․ቯਇ⢻ߩቇ⠌㓚ኂ㧧ߩޘᛛ⢻ߪචಽૐࠊߌߢߪߥ߇ޔ⸥ߩ㧟ߟߦ㗴߇ࠅߘࠇࠄ߇৻ߦߥࠆߣቇᬺ ᚑ❣ߦ⪺ߥᅹኂߣߥࠆޕ 府川 : 発達障害児の療育と予後 表 発達臨床における心理査定 㧞㧚⊒㆐⥃ᐥߦ߅ߌࠆᔃℂᩏቯ 㧔㧝㧕ᖱႎ㓸 㧭 ਥ⸷ 㧮 ∝ᱧ㧔ฃ⸻⋧⺣ᱧ㧕 㧯 ↢⢒ᱧ ᅧᆼਛߩᲣⷫߩஜᐽ⁁ᘒ․⸥㗄 ↥ᦼߩ⁁ᘒ ᣂ↢ఽᦼߦߟߡ ఽᦼ೨ᦼఽᦼᓟᦼ ৻ᱦඨஜ⸻ߩ⚿ᨐਃᱦఽஜ⸻ߩ⚿ᨐ ᣢᓔᱧ D ߩ⁁ᘒ ⷞⷡ⡬ⷡ ㆇേ⸒⺆ ᕈᩰᖱ✜␠ળᕈ ↢ᵴ㧔㘩ឃᴭ⌕㧕 E ᢎ⢒ᱧ 㧲 ኅᣖⅣႺ 㧔㧞㧕ⷰኤ 㧭 りߩ․ᓽ㧔ဳޔ㗻⦡ޔᖱઁߩߘޔ㧕 㧮 ㆇേߩ․ᓽ㧔ᱠ߈ᣇޔりߩߎߥߒޔᚻᜰߩེ↪ߐޔᵴ⊒ߐ㧕 㧯 㖸߳ߩᔕ 㧰 ኻੱᘒᐲ ⥃ᐥኅߩሽേ߳ߩᵈ⋡ ⥃ᐥኅߩ߮߆ߌ߳ߩᔕ⾰߳ߩᔕ╵ᕈ ሶߤ߽ߩࠬࡇ࠴ߩ․ᓽ㧔߅߁ߒ࠺࠰ࡠࡊޔ㨼ߩ⇣Ᏹ⺆⁛ޔ㧕 㧔㧟㧕ᔃℂᬌᩏ (ኻ⽎ఽߦࠃߞߡ↪ߐࠇࠆᬌᩏߪ⇣ߥࠆ) 㧭 ㆙ၔኹᑼᐜఽಽᨆ⊛⊒㆐ᬌᩏ 㧮 ᣂ㧷ᑼ⊒㆐ᬌᩏ㧔ᓟߦᡷ⸓ 2001㧕 㧯 ↰ਛࡆࡀ⍮⢻ᬌᩏ㧔ᓟߦᡷ⸓ 㨂㧕 㧰 WISC-Υ E K-ABC 㧲 ࡌࡦ࠳ࠥࠪ࠲࡞࠻࠹ࠬ࠻ 㧳 ࡌࡦ࠻ࡦⷞⷡ⸥㌏ᬌᩏ 㧴 ឬ↹ᬌᩏ㧔DAM, ࡈࡠࠬ࠹㨼ࠣⷞ⍮ⷡ⊒㆐ᬌᩏޔHTP ࠹ࠬ࠻ޔ㘑᥊᭴ᚑᴺ㧕 㧵 ᛩᓇᴺ㧔ࡠ࡞ࠪࡖ࠶ࡂ࠹ࠬ࠻ޔP-F ࠬ࠲࠺㨼㨺㧕 㧶 ߎߣ߫ߩᬌᩏ㧔⛗↹⺆ᬌᩏޔ᭴㖸ᬌᩏޔᮡḰ⺒ᦠജ⸻ᢿ࠹ࠬ࠻ޔ ITPA ⸒⺆ቇ⠌⢻ജ⸻ᢿᬌᩏޔṽሼ࠹ࠬ࠻ޔᢥ 㧕 㧷 ࠴ࠚ࠶ࠢࠬ࠻㧔㧸㧰߿㧭㧰㧴㧰ߩߚߩ࠴ࠚ࠶ࠢࠬ࠻㧧ᮡḰൻߐࠇߚ⾰ ⚕ PRS ߹ߚߪ LDI-R⾰⥄⁛ ޔ⚕㧕 東京未来大学研究紀要 2009 年 第 2 号 3. 心理査定 が新 K 式発達検査でなかなか検査に応じず、せい 心理査定とは表 2 に示す①情報収集、②観察、 ぜい DQ50 台かと考えられていたが、ある日の検 ③心理検査を総称したものである。 査で DQ72 という結果を出したことがある。それ 問題を抱えた子どもと共に母親が相談にやって来 から後、同じ検査の続きをしようとしても見向きも た時は、母子の様子を観察し可能なら子どもにいく されなかった。 つかの心理検査(例えば、描画とか積み木とか絵カー ADHD を抱えた子どもは、その障害単独である ドの選択や命名など)を行い、情報収集は後日母親 ことは少なく自閉傾向や LD 傾向を並存している場 のみ来談いただき丁寧に聞いていくことが重要であ 合が多い。ADHD は二つの場面で多動・衝動傾向 る。心理臨床ではこの面接をインテーク面接とい がみられることが原則なので、家の行動と共に幼稚 い、ベテランの臨床家が行うことが原則となってい 園・学校などの集団場面の行動の情報が必要になる る。母親が情報を正確に伝えてくれるとは限らない のでチェックリストは欠かせない。資料 1 のチェッ が、今困っていることとそれがいつ頃から始まって クリストは母親に家庭での子どもの様子をきいてい どのように推移してきたかはおおよそ聞くことがで るが、同じチェックリストを幼稚園や学校の先生に きる。母親の育児の困難さを十分共感しながら、訴 していただくことが必要になる。ADHD は親子関 えを聞くことが大切であるとともに、必要な項目は 係が二次的に悪くなっていることがあるので、親へ 聞き落としがないよう注意を要する。育児の悩みと の障害の説明や子どもへの対応の助言や指導が極め 不安を抱えていたのに誰にも話せず溜め込んでいた て大切である。最近ペアレントトレーニングが盛 母親は怒涛のように話すことが多いからである。 んに試みられるようになった。ADHD は医療が劇 観察は子どもだけでなく、同伴した両親や他の家 的に有効である場合がある。表 3 のケース一覧の 族(きょうだいや祖父母)にも行う。待合室での母 中で A 子は服薬して 2 週間で効果がみられた。こ 子やきょうだいとのやりとりから子どもの特徴や母 れらの効果もチェックリストでみることができる。 子・家族関係の理解と予後への手がかりが得られる。 ADHD の子どもが日常生活のなかでどれほどの不 熟練した専門家は、子どもが親とどんな風に専門機 全感をもっているかは、描画によって知ることが出 関に向かって歩いてくるかを窓から見ただけで子ど 来る。長い間 ADHD であることがわからないまま もの問題の見当がつくと何かの論文で読んだことが 過ごしてきたケース D 雄は、家でも親や家族から ある。 いつも叱られ、学校でも問題を起こすので先生から 心理検査では、対象児の年齢や抱えている問題に 叱られて、中学 1 年の 5 月から不登校になった。そ よって何を試みるかが違ってくる。まず検査に応じ の時の HTP テスト(描画テスト:家・樹・人を描 るかどうかが大きな目印である。自閉傾向のある子 く)は家も人も紙の端に極めて小さく書いたのに対 どもはなかなか検査に応じてくれない。何回かの面 し、樹は太い幹で樹冠は灰色から黒に塗りこめられ、 接を経て、面接者に少し慣れてラポールがついてか 枝は描かれていなかった。自己拡大の欲求があるの ら本人の機嫌が良い時、思いがけない良い結果がで に満たされず葛藤を抱え、人とのかかわり方や自分 ることがある。それは一時の偶然というより、潜在 の能力が良くわからず、社会的にみとめられないネ 能力だと筆者は考える。本論の事例にはとりあげな ガティヴな感情や考えを抱いていることを現してい かったケースで、自閉症と診断された子ども(4歳) た。ユングのいう影がそこに象徴的に描かれていた。 府川 : 発達障害児の療育と予後 LD の子どもには、筆者は自我侵襲性の少ない描 表 3 は、筆者が継続的面接(週 1・月 2・月 1) 画や 5 歳以上の子どもにはベンダーゲシタルトテ を約1年から 3 年行った後、5 年から 13 年にわたっ ストをまず行うことにしている。このテストは視覚 て年賀状や電話あるいは面談などで生活や適応状態 運動ゲシタルト能力の発達を知ることが出来るとと を知ることができたケースについてまとめたもので もに、脳の機能が健常に営まれているかどうかを見 ある。 ることができる。さらに情緒障害や性格傾向・自我 ADHD は親や家族の理解とともに医療が有効で の強さを知ることができる。子どもとのラポール あることを表から読み取ることができる。医療を拒 がついたところで WISC- Ⅲを行い、必要に応じて 否する親の気持ちはよくわかるが、子どもの体の未 K-ABC を行う。発達障害の基本的条件である知的 成熟な部分を補いそれによって学習をスムーズに遂 障害がないことを確認するうえで WISC は必須で 行させ、社会生活を穏やかにすすめていくために児 あるとともに、言語性知能と動作性知能の乖離から 童期は医療が有効である。思春期になると医療には LD 児の情報処理の偏りや脳機能の状態を知り、療 難しい問題もでてくるので、幼稚園年長の秋ごろか 育や支援の計画を立てることができる。 ら服用を始めて、小学校入学をスムーズにすすめた 幼稚園・学校における LD 児の状態を知るために、 のが A 子である。B 夫も医療がはじまる前 1 年間 先生方にチェックリストをつけてもらうことにして は心理面接ではほとんど効果が見られなかった。転 いる。学習障害の世界的権威マイクロバーストが 居して、専門医から診断をうけ服薬と訓練によって、 作ったテストを日本で標準化した PRS(森永・隠 始めて親も子も落ち着くことができた。中学 2 年生 岐 2006)や上野ら(2008)が独自に作成した LDI になり成績もよく、服薬も終了するとの報告を受け (現在は LDI-R)を使用する。就学前幼児には資料 た。筆者が心理査定を行った結果、言語性知能が極 2 を用いる。 めて高かったので「将来この能力を生かした職業に LD 児には読書力テストや作文を試みると、読み つけるのではないでしょうか」という筆者のことば 書き障害の姿が鮮明に浮かび上がってくる。 が母親の心の支えだったと母は語っていた。 医療を受けずにすごしたケースは D 雄と E 朗で ある。E 朗は小 3 までは落ち着かず、クラスには E 4.療育と予後 朗の他にも徘徊する子がいて、学級崩壊に近い状態 (1) 発達障害児の療育と予後 発達障害児の療育・支援はおそらく生涯を通じて だったようだ。E 朗は小 4 から次第に落ち着いてき なされることが望ましい。短期間の面接で治癒する た。 ことは少ない。短期間で良くなったように見えても、 読書は苦手で、成績の良いきょうだいに比較され じきに次の問題が発生する。治癒というよりその障 勉強よりもゲームにのめりこむ生活だった。医療を 害を持ちながらいかに創造的に楽しく生きていくか 拒否した父親が熱心に勉強をみてやり、現在大学に ということが大切である。 広汎性発達障害 (pervasive 進学している。これから何で身を立てるか、アイデ developmental disorders;略して PDD)児の親から「こ ンティティーの探索が本格的に始まるのであろう。 の障害は治るでしょうか」と聞かれた川崎(2003) 発達障害は中枢神経系の機能不全が推測される は、「よき PDD に育てましょう」と答えることに が、親からそのような体質を受け継いでいることが していると書いている。 多い。気質や能力がそうで、だれにも思い当たるこ 東京未来大学研究紀要 2009 年 第 2 号 表 発達障害事例の療育と経過および予後 㧟 ⊒㆐㓚ኂߩ≮⢒ߣ⚻ㆊ߅ࠃ੍߮ᓟ ࠤࠬฬ 1 Aሶ ᅚఽ 2 Bᄦ ↵ఽ 3 C↵ ↵ఽ 4 D㓶 ↵ఽ 5 Eᦶ ↵ఽ 6 F ಃ ↵ఽ 7 Gሶ 㓚ኂฬ CD 㧫 ೋ࿁ᐕ㦂 5 ᱦ ᐕ㐳 ක≮ ↵ఽ 10 J ᄥ㇢ ↵ఽ ኅᣖ㑐ଥ 㧔㧗㧕 㧔㧗㧕 ↵ఽ 12 L ↵ఽ 13 M ᄦ ↵ఽ ⚻ㆊ੍ᓟ 1ᐕ 㧔㧗㧕 㧟ࡩᓟ ឬ↹Ꮏ ක≮ ADHD ⚫(㧗) (㧗) ▫ᐸឬ↹ ޛ㧡ᐕᓟޜ ޛ㧗ޜ 1ᐕ 㧔㧙㧕 CD㧫 6 ᱦ ᐕ㐳 ADHD CD㧫 ⍮⢻(㧗㧗㧕 ォዬᓟ(㧗) 5 ᱦ ᐕਛ 㧔㧙㧕 ⍮⢻(㧗㧗) ᩏቯ㕙ធ ⛮⛯ᦼ㑆 HFPDD 㧙 ( 㧙 ᩏቯ㕙ធ ޛ㧗ޜ ޛ㧗ޜ ක≮ 㧔㧙㧕 㧔㧙㧕 ਇ⊓ᩞ ਛቇ㧝 㧔㧙㧕 ADHD㧫 ADHD㧫 ዊ㧠 㧔㧕 ⍮⢻㧔㧗㧕 㧔㧗㧙㧕 㧔㧗㧙㧕 ᵹᥰળ 㧔㧗㧕 㧔㧗㧗㧕 ⍮⢻㧔㧗㧕 㧔㧗㧕 㧔㧗㧙㧕 ޛ㧤ᐕᓟޜ ޛ㧗㧗ޜ 㕙ធ 1 ᐕᢿ⛯⊛ 㧔㧙㧕 ォዬᓟ ޛ㧫ޜ 2 ᐕ 11 㧔㧗㧙㧕 ޛ㧥ᐕᓟޜ ޛ㧗ޜ 3 ᐕ⛮⛯ 㧔㧙㧗㧕 ޛ㧥ᐕᓟޜ ޛ㧗㧙ޜ 㧞ᐕ 㧔㧗㧙㧕 ᩏቯ㕙ធ ᩏቯ㕙ធ LD CD㧫 ዊ㧠 㧔㧗㧕 ⍮⢻㧔㧗㧕 㧔㧗㧕 㧔㧗㧕 ޛ㧗ޜ ක≮⸠✵ ADHD㧫 ᩏቯ㕙ធ ADHD play HFPDD ቇᩞᡰេ ޛ㧡ᐕᓟޜ ޛ㧗ޜ HFPDD㧫 3ᱦ 㧔㧙㧕 HFPDD㧫 5 ᱦ ᐕਛ 㧔㧙㧕 HFPDD㧫 㧟ᱦ 㧔㧙㧕 LD㧫 HFPDD㧫 ⍮⢻(㧗㧙) 㧔㧗㧙㧕 㧔㧗㧙㧕 ᩏቯplay 㧝㧜ᐕ 㧔㧗㧙㧕 ⸥ᙘ㧔㧗㧕 㧔㧗㧗㧕 㧔㧗㧗㧕 㕙ធ (㧝㧟ᐕᓟ) ޛ㧗ޜ ⍮⢻(㧗㧙) 㧔㧗㧗㧕 㧔㧗㧙㧕 ᩏቯ 㧠ᐕ 㧔㧗㧙㧕 ឬ↹Ꮏ play 㧔㧗㧕 㕙ធ (13 ᐕᓟ) ޛ㧗ޜ ᩏቯ㕙ធ 1ᐕ 㧔㧙㧗㧕 ⍮⢻㧔㧗㧕 㧔㧙㧕 㧔㧗㧕 ㆇേ㧔㧗㧕 ዊ㧟 CD ఽ┬ᦼ() ⍮⢻㧔㧗㧕 ᕁᤐᦼ(㧗) ឬ↹㧔㧗㧕 ⢒ 㧔㧙 㧙㧕 㧔㧙㧕 LD ޛ㧗ޜ 㧡ᐕ 㧔㧙㧕 ዊ㧝 㧔㧙㧕 ⍮⢻㧔㧗㧕 㧔㧗㧗㧕 㧔㧗㧕 ኅᐸᓳᏫ ޛ7 ᐕᓟޜ ޛ㧗ޜ 㧔㧗㧕 ᩏቯ㕙ធ 8 ࡩ (㧗㧙) ✕ኒㅪ៤ ޛ5 ᐕᓟޜ ޛ㧗ޜ ᩏቯ㕙ធ 1ᐕ 㧔㧙㧕 ක≮ play 㧟ᐕ ޛ㧗㧙ޜ ኅᐸᓳᏫ ޛ7 ᐕᓟޜ ޛ㧙ޜ ᩏቯ㕙ធ 1ᐕ 㧔㧙㧗㧕 ޛ5 ᐕᓟޜ ޛ㧗㧙ޜ ⷫᜂછߩ ዊ㧝 㧔㧗㧕 ⍮⢻㧔㧗㧕 㧔㧙㧕 㧔㧙㧕 ADHD LD (10 ᐕᓟ) ක≮ (⸒⺆ᕈ) ODD CD ᩏቯ㕙ធ ޛ㧗ޜ ▫ᐸឬ↹ LD 11 K ᰴ㇢ ≮⢒ ⍮⢻(㧗) ↵ఽ 9 I㓶 Უߩᘒᐲ ೋ࿁㕙ធ ᅚఽ 8 Hᄦ ⢻ജ ዊ㧟 㧔㧗㧕 ⍮⢻㧔㧗㧕 㧔㧙㧕 ㆇേ㓚ኂ 㧔㧙㧕 ක≮ ⸒⺆ᢎቶ 府川 : 発達障害児の療育と予後 とである。C 男は母親自身が ADHD ではないかと お絵かき、ドルハウスなどの play 面接を続けた。 思われたケースであった。母親自身も多くの関係者 心理検査にはなかなかのってこなかった。とくに知 から受診を勧められたが、どうしてもその助言を受 能検査には反応が悪く、あまり高い IQ は出なかっ け入れられなかった。転居を重ねて予後が不明であ た。しかし G 子は記憶力が良かった。漢字はよく る。 覚えていて左手できれいな文字を書いた。母親は手 医療を受ければ ADHD はすべて改善されるかと のかかる第 1 子にふりまわされ、本児は無口な祖父 いうとそうではない。90% は有効だといわれてい と黙々と散歩するという幼児期を過ごしていた。三 るが、環境要因(愛情深いが現実検討能力のある母 世代同居家庭で、祖父が亡くなり一家の采配を父親 や家族の存在)が整わないと改善には向かわない。 がするようになり、家族の雰囲気は次第に変化して L 介は就学してから授業中座っていられず、教室を きた。第 1 子も成長し本児と良いきょうだい関係 徘徊しクラスメートを叩くなど ADHD や行為障害 がむすべるようになった。中学では意地悪なクラス 傾向がみられた。医療をうけながら、児童養護施設 メートから嫌がらせをうけながらも毅然として通学 職員の手厚い養育を受けて次第に落ち着いてきた し、英検に合格したり漢字検定や英語のスペルテス が、家庭引取り後再び落ち着かなくなり予後が不良 トで学年上位に入るなど自信をつけ、いま落ち着い である。 た楽しい高校生活を送っている。H 夫も良く似た経 K 次郎は典型的な言語性 LD で、面接の初期は何 過をたどった。図画・工作に素晴らしい才能があり を聞いても母親を振り返り「なんだったっけ」とほ 小学校時代に図画工作コンテストに応募して賞をも とんどことばが出てこない状態だった。「日本昔ば らったり、母親が地域の子ども会活動に参加させた なし」のビデオが好きでよくみるということから、 りした。中学ではいじめにあうが超然として休まず 見たビデオの昔話を母親が本で読んできかせる、い 登校し、親のほうが怒りや不安に悩んだ。私立高校 くつかの質問をして答えさせる、毎日日記を書くを に進み 3 年間を上位の成績で過ごし、いま大学生と 約 1 年続けた。それとともに担任と協力して、母親 して楽しい生活を送っている。 が翌日の授業の予習を簡単に本児に行い、あらかじ もちろん HFPDD の今後の予後は不明であるが、 め何を学ぶか頭にいれて授業をきく(オーズベルの いままでのところ G 子も H 夫もよく適応している 先行オーガナイザーを実践する)ようにしていくう といってよいのではなかろうか。現実的で愛情の深 ちに今 6 年生だが、学校生活を全く問題なく過ごし い母親や家族の協力が大きい。また何らかの才能を ているようである。M 夫は LD と運動障害が合併 伸ばすことが出来たことが自信とやる気につながっ していたケースだが、児童擁護施設の手厚い養育と ている。 医療によって現在なんとか学校に適応している。 家族の愛情や保護の得られなかった J 太郎は施設 高機能広汎性発達障害(high function pervasive 児 ( 児童養護施設で、ある期間養育された子ども ) developmental disorders ; 略して HFPDD)はそれ単 である。J 太郎が HFPDD だったのではないかと思 独の障害ならば有効な医療はない。あとは療育のみ われるのは、施設にいる間は終始うまく適応できな である。G 子はこのタイプだったのではないかと思 かった。子どもの声に過敏で、初めは施設の建物の われる。ただひたすらいろいろな試みをした。フィ 中に入れず、庭にテントを張って職員と寝泊りして ンガーペインティング、箱庭療法(河合 , 1969)、 いた。中に入れるようになっても夜驚や不登校、最 東京未来大学研究紀要 2009 年 第 2 号 後は自傷まで出現した。父のいる自宅に帰って、驚 ればならない。第 4 には中枢神経系の成熟が遅れて くほど落ち着いたとのことだった。 いて社会生活や学業に支障をきたすことが明らかな I雄は独特のこだわりと気難しさにより、母親と 時は、医療を受けることが大切である。発達障害の の関係が良くなかった。母も疲れていて、子どもと 専門医は子どもや家族、学校の先生やクラスメート 遊ぶより家事や読書をしていたいと思うようになっ にとって心強い味方である。 た。そこで、筆者は保育園をすすめた。ベテランの 保育士たちが養育を担当し、母親も気持ちを静める (3) 比較的「予後」が良好なケースの特徴 ことができ、無事中学生になりスポーツに励んでい 表 3 から、予後が比較的良好なケースの特徴をみ るとのしらせが届いた。 ると、幼児期や小学校低学年で専門機関に相談して F 冶は、かっとなりやすく小さい頃からトラブル いる。子どもの状態を把握するために、必要な医療 が絶えなかったので、筆者に紹介された時点ではす や心理査定と心理面接を定期的に受けている。それ でに医療にかかっていた。小学校 5 年の担任は熱心 によって、どのような療育が必要かを専門家たちが で F 冶と関係する心理担当者は何度か相談会をひ 考え支援計画が立てられ助言・訓練・カウンセリン らいた。小 6 には学校からの依頼により学級に支援 グがなされたことを意味する。 スタッフとしてチームのメンバーが週 1 日 F 冶を 母親は愛情が深いが現実検討能力をもっている。 サポートした結果、F 冶の学校生活も次第に安定し、 家族に母親の注意や精力を奪ってしまう問題がある いま中学生になり勉強に励んでいる。 と、母親は問題を抱えた子どもにしっかりと向き合 以上のケースの経過から、発達障害児の療育の留 うことができない。母親自身に何らかの問題がある 意点を要約する ときは、さらに問題が深刻になる。母親が子どもの 問題に気づかないこともある。それだけ子どもを受 容していて母子関係は良好なのだろうが、学校生活 (2) 発達障害児の療育の留意点 表 3 からもわかるように、早期に子どもの問題に や社会生活に支障をきたす時は、母親は現実を冷静 気づいて、専門家(教師・医師・心理士)が協力し に見つめ直してみる必要がある。それは、父親にも て子どもの状態を的確に把握することがまず第 1 に いえるし、家族全体にもいえることである。 大切である。両親や他の家族に子どもの問題を正し 家族関係は子どもの成長や人格形成に大きな影響 く理解してもらうことが第 2 に大切である。子ども を及ぼすが、問題をもった子どもに及ぼす影響は計 は、親に理解され認められて気持ちが安定し、そこ り知れない。家族は社会システムの中の最も小さい で始めて肯定的自己概念を持てるようになる。第 3 が最も中心的なサブシステムであり、その時代の には子どもの優れた能力を見つけ、励ましながら自 様々な影響をうける。家庭が崩壊し施設で養育され 信とやる気を育てることが大切な留意点である。そ た子どもは職員の献身的な養育で元気になっていく れと同時に改善点や苦手な能力はスモールステップ が、家庭に復帰したとき迎える親や家族の対応によ ですこしずつ取り組ませる。決してあきらめず繰り り予後は変わっていく。 返し訓練することは、穏やかな性格の子どもは耐え 子どもの能力も予後を左右する特徴のひとつであ られるが、激しい性格の子どもには、時に逆効果に る。発達障害といわれるだけに、知的な遅れはない なることもあることを心に留めて対応していかなけ が、脳の働き方の異常が推測される。G 子のベン 府川 : 発達障害児の療育と予後 ダーゲシタルトテストに図版の模写が 180 度「回転」 する療育が必要である。発達障害児者に対して、各 しなくなったのは中学生になってからである。もと 種領域の専門家と協力しながら長い目で支援してい もと算数に比べて漢字は好きだったが、中学になっ くことが大切である。 て漢字やスペルは間違えなく記憶し再現でき、コ ンクールで学年上位の成績をとった。A 子・H 夫・ 引用文献 J 太郎の描画・工作の能力も将来の社会参加に役立 天野清 (2006) 学習障害の予防的探求 中央大学出 つ能力である。I 雄のすぐれた運動能力も自尊感情 版会 を高め、自己肯定感を維持することに役立つと考え アメリカ精神医学界 (2000) 高橋三郎・大野裕・染 られる。ここには挙げなかったが、勉強は全くでき 谷俊幸訳 (2004) DSM -IV- TR 精神疾患の診断・ ないが音楽やダンスで身を立てて活躍している人は 統計マニュアル新訂版 医学書院 Ausubel, D.P. (1968) Educational psychology : A いる。昔は親が困りながらもその子の特技を伸ばし て育ててきたのだと思う。すこし風変わりな仲間を cognitive view. Holt Rinehart & Winston. 受け入れる包容力のある社会だったのではなかろう 河合隼雄編 (1969) 箱庭療法入門 誠信書房 か。現代社会は、異質なものへの風当たりが強い。 河合隼雄 (1987) ユング心理学入門 培風館 学校や保育園幼稚園の担任の協力は大きい。A 子 川崎葉子 (2003) 広汎性発達障害—私の治療法 が転園した幼稚園の担任は大らかで温かく、問題を 精神科治療学 18(11), pp. 1335-1340 解決するために必要な手立てを順序良く実行した。 マイクルバスト,H.R.( 原著 ) 森永良子・隠岐忠彦 I 雄を受け入れた保育園は、ベテランの保育士が ( 日本版 )(2006) PRS LD 児診断のためのスクリー 彼の癇癪やこだわりに適切に対応し生活習慣の確立 ニング・テスト 文教資料協会 や集団適応能力を育てた。K 次郎の担任は、母親と 大南英明・緒方明子・吉田昌義 (2007) 特別支援 緊密な連携をとり、授業の展開を母親に知らせ予習 教育基礎論 放送大学教育振興会 をしてから授業に望むことを約 1 年間続けた。言語 尾崎洋一郎・草野和子・中村敦・池田英俊 (2002) 性 LD は、耳からのことばや説明の理解が難しいと 学習障害 (LD) 及びその周辺の子どもたち—特性 いう傾向があるが、その困難を毎日の授業で少しず に対する対応を考える— 同成社 つ克服していくことができた。学校の友人や近所の 尾崎洋一郎・池田英俊・錦戸恵子・草野和子 (2003) 友達の協力も大きい。友達は支援している気持ちな ADHD 及びその周辺の子どもたち 同成社 ど全くないのだろうが、たまたま気の合う友人がい 嶋津峯眞・生澤雅夫・中瀬椋 (2001) 新版K式発達 たことは、D 雄には心強かったことだろう。 検査 2001 手引書 京都国際福祉センター 高橋省己 (1985) ベンダー・ゲシタルト・テストハ ンドブック 三京房 5. おわりに 筆者の乏しい臨床例から、発達障害児の療育と予 高橋雅春 (2002) 描画テスト入門 -HTP テスト 後について印象を述べた。発達障害とは親の育て方 文教書院 が悪かったことに起因するのではなく、中枢神経系 上野一彦・篁倫子・海津亜希子 (2008) LDI-R LD 判断のための調査票 日本文化科学社 の働きが偏っていることに起因することを理解し Wechsler,D. 日本 WISC- Ⅲ刊行委員会訳編集 (2002) て、子どもの肯定的自己概念を育て社会適応を促進 0 東京未来大学研究紀要 2009 年 第 2 号 日本版 WISC- Ⅲ知能検査法 日本文化科学社 湯浅恭正編 (2008) よくわかる特別支援教育 ミネ ワインスタイン ,R. (2003) 吉田利子訳 (2005) ぼく ルヴァ書房 はディスレクシア 河出書房新社 ⾗ᢱ䋱㩷 㩷 㩷 ADHD ะ䈱ሶ䈬䉅䈱ኅᐸ䈮䈍䈔䉎ⴕേ䉼䉢䉾䉪䊥䉴䊃 㩷 䈍ሶ䈘䉁䈱ᣣᏱ↢ᵴ䈪䇮એਅ䈱䉋䈉䈭᭽ሶ䈏䈬䈱⒟ᐲ䉌䉏䉎䈎䇮ਅ⸥䈱ዤᐲ䈪 資料 ADHD 傾向の子どもの家庭における行動チェックリスト ⸥㍳䈚䈩䈒䈣䈘䈇䇯䈠䈱ઁ䈍Უ᭽䈏䇮᳇䈮䈭䉎᭽ሶ䈏䈅䉏䈳ᦠ䈐ട䈋䈩䈒䈣䈘䈇䇯 お子さまの日常生活で、以下のような様子がどの程度見られるか、下記の尺度で 㩷記録してください。その他お母様が、気になる様子があれば書き加えてください。 䈠䈱䉋䈉䈭᭽ሶ䈏䉋䈒䈅䉎㩷 䋨㩷 䋳ὐ㩷 䋩 そのような様子がよくある ( 点 ) 㩷そのような様子が時々ある 䈠䈱䉋䈉䈭᭽ሶ䈏ᤨ䇱䈅䉎 䋨㩷( 䋲ὐ㩷 䋩 点) ( 点䋩) 㩷そのような様子があまりない 䈠䈱䉋䈉䈭᭽ሶ䈏䈅䉁䉍䈭䈇 䋨㩷 䋱ὐ㩷 そのような様子が全くない ( 0 点 ) 㩷 䈠䈱䉋䈉䈭᭽ሶ䈏ో䈒䈭䈇㩷 䋨㩷 䋰ὐ㩷 䋩 ౕ㩷 㩷 ⊛㩷 䈭㩷 ᭽㩷 ሶ 㩷㩷㩷 䈿䉖䉇䉍䈫ⓨᗐ䈮䈸䈔䉎 ᜰ␜䉇䉕⡞䈇䈩䈇䈭䈇䉋䈉䈮䈋䉎 ᬺ䉇⺖㗴䉕䈕䉌䉏䈭䈇 ਇ 䈜䈼䈐䈖䈫䈱ఝవ㗅䈏䉒䈎䉌䈭䈇 㩷 㩷 㩷 㩷 ᔓ䉏‛䈏ᄙ䈇 ᵈ ኋ㗴䈱ឭ䉕ᔓ䉏䉎 ᗧ ‛䉕䈭䈒䈜 Ფᣣ䈱ᣣ⺖䉕ⷡ䈋䉌䉏䈭䈇 ╩⸥ᑼ䈱䊁䉴䊃䈮ข䉍⚵䉄䈭䈇 ᢛℂᢛ㗐䈏䈪䈐䈭䈇 ᄙേ ㆊ䈭േ䈐 ㆊ䈭䈍䈚䉆䈼䉍 䈚ᛮ䈔䈮╵䈋䉎䊶㗴䉕ᕆ䈮ᄌ䈋䉎 ⴣ േ ᕈ ⠨䈋䈭䈚䈮ⴕേ䈜䉎 㗅⇟䉕ᓙ䈩䈭䈇 䈛䉆䉁䉕䈜䉎 㩷 㩷 ⥝ᅗ䈚䉇䈜䈇 䒜 ႐㕙䉇⁁ᴫ䈱ᄌൻ䈮ㆡᔕ䈜䉎䈱䈏䉃䈝䈎䈚䈇 ⥝䈱䉍䊶䈖䈣䉒䉍 㩷 㩷 㩷 㩷 䒭 ᤨ㑆䈱ᗵⷡ䈏䈧䈎䉄䈭䈇 ઁ ਇེ↪ 䈱േ䈐䈏䈑䈖䈤䈭䈇 የፒᵗ৻㇢䉌䇸ADHD 䈶䈠䈱ㄝ䈱ሶ䈬䉅䈢䈤䇹2003 ᐕ㩷 䉋䉍ᡷᄌ ዤᐲ 府川 : 発達障害児の療育と予後 㩷 㩷 ⾗ᢱ䋲㩷 㩷 ዞቇ೨ᐜఽ䈱ቇ⠌ၮ␆⢻ജ㩷 㩷 䇴የፒ䇮⨲㊁䇮ਛ䉌㩷 ቇ⠌㓚ኂ䈶䈠䈱ㄝ䈱ሶ䈬䉅䈢䈤㩷 2002㩷 䉋䉍ᡷᄌ䇵 資料 就学前幼児の学習基礎能力〈尾崎、草野、中村ら 学習障害及びその周辺の子どもたち 00 より改変〉 㩷 㩷 㩷 䈍ሶ䈘䉁䈱ᣣᏱ↢ᵴ䈪䇮એਅ䈱䉋䈉䈭᭽ሶ䈏䈬䈱⒟ᐲ䉌䉏䉎䈎䇮ਅ⸥䈱ዤᐲ䈪⸥㍳䈚䈩䈒䈣䈘䈇䇯 お子さまの日常生活で、以下のような様子がどの程度見られるか、下記の尺度で記録してください。 㩷 㩷 㩷 䈠䈱ઁ䈗ኅᐸ䈪䇮᳇䈮䈭䉎᭽ሶ䈏䈅䉏䈳ᦠ䈐ട䈋䈩䈒䈣䈘䈇䇯 その他ご家庭で、気になる様子があれば書き加えてください。 䈠䈱䉋䈉䈭᭽ሶ䈏䉋䈒䈅䉎㩷 㩷 㩷 㩷 㩷 㩷 (㩷 䋳ὐ )㩷 㩷 㩷 㩷 㩷 㩷 㩷 㩷 㩷 そのような様子がよくある ( 点 ) 䈠䈱䉋䈉䈭᭽ሶ䈏ᤨ䇱䈅䉎㩷 㩷 㩷 㩷 㩷( (㩷点 䋲ὐ そのような様子が時々ある ) ) そのような様子があまりない ) )㩷 䈠䈱䉋䈉䈭᭽ሶ䈏䈅䉁䉍䈭䈇 㩷 (㩷 (㩷点 䋱ὐ そのような様子が全くない 0点 ) 䋩㩷 㩷 㩷 㩷 㩷 㩷 㩷 㩷 㩷 㩷 㩷 㩷 㩷 㩷 㩷 㩷 㩷 㩷 㩷 㩷 㩷 㩷 㩷 㩷 㩷 㩷 㩷 㩷 㩷 㩷 㩷 㩷 㩷 㩷 㩷 㩷 㩷 䈠䈱䉋䈉䈭᭽ሶ䈏ో䈒䈭䈇㩷 㩷 㩷 㩷( 㩷 䋨㩷 䋰ὐ㩷 ⡞ 䒐 ౕ㩷 㩷 ⊛㩷 䈭㩷 ᭽㩷 ሶ ฬ೨䉕䉖䈪䉅䉕䈚䈭䈇䇯䈖䈫䈳䈎䈔䈮ᔕ䈛䈭䈇䇯 㩷 㩷 㩷 㩷 䈜 ⺒䒿 ⡞䈇䈢䈖䈫䉕䈜䈓ᔓ䉏䈩䈚䉁䈉䇯 ੱ䈱䈚䈩䈇䉎䈖䈫䈳䈏ℂ⸃䈪䈐䈭䈇㩷 䋨․䈮න⺆䉇ᜰ␜䈭䈬䋩䇯 䈱䈭䈎䈮ᐜఽ㖸䈏ᱷ䈦䈩䈇䉎䇯⊒㖸䈪䈐䈭䈇㖸䈏䈅䉎䇯 㖸䈏䈯䈔䉎䇯․ቯ䈱⊒㖸䈮ᱡ䉂䈏䈅䉎䇯⁛․䈱䉟䊮䊃䊈䊷䉲䊢䊮䈪 䈜䇯 䈖䈫䈳䈏䈖䉅䉎䇯 න⺆䈚䈎䈘䈭䈇䇯 䇸䈲䈇䇮䈇䈇䈋䇹䈱ᗧᕁ␜䈏䈪䈐䈭䈇䇯 ળ䈏৻ᣇ⊛䈪䇮㗴䈏䈫䈶䉇䈜䈇䇯 ੱ䈏⡞䈇䈩䉒䈎䉎䉋䈉䈮䉕䈜䉎䈖䈫䈏䈪䈐䈭䈇䇯㩷 䋨ᨩ䉇㗅ᐨ䉕 ᢛℂ䈚䈩䈜䈖䈫䈏⧰ᚻ䇮⚻㛎䈚䈢䈖䈫䉇䉅䈱䈱⺑䉕䈜䉎䈖䈫䈏⧰ ᚻ䈭䈬䋩 ⥄ಽ䈱ฬ೨䈏⺒䉄䈭䈇䇯 ౝኈ䉕䈢䈝䈰䈩䉅╵䈋䉌䉏䈭䈇䇯 ᦠ 䒐 㩷 ⸘▚ផ⺰ ห䈛ᒻ䈱䉅䈱㩷 䋨䂾䉇䂦䋩㩷 䈏ㆬ䈼䈭䈇䇯 ᄥ䈇✢䉇ὐ✢䈱䈭䈡䉍ᦠ䈐䈏䈪䈐䈭䈇䇯 䂾䉇䂦䉕䈩ᦠ䈒䈖䈫䈏䈪䈐䈭䈇䇯 䋱ᩴ䈱ੑ䈧䈱ᢙ䈱ᄢዊ䈏䉒䈎䉌䈭䈇䇯 䋵䉁䈪䈱ᢙ໒䈏䈪䈐䈩䉅㓸วᢙ䈱䋳䈏䉒䈎䉌䈭䈇䇯 ◲න䈭࿑ᒻ䈱䈤䈏䈇䈏ℂ⸃䈪䈐䈭䈇䇯 ㆇേേ ⴕ േ 䒭 ⥄ Ꮖ ⺞ ᢛ ᱠ䈇䈢䉍䈦䈢䉍〡䉖䈣䉍䈜䉎േ䈐䈏䉩䉪䉲䊞䉪䈚䈩䈇䉎䇯 䈪䉖䈓䉍䈚䉇 ⿷䈫䈶䈏䈪䈐䈭䈇䇯 㓏Ბ䉕৻Ბ৻⿷䈱Ꮕ䊌䉺䊷䊮䈪㒠䉍䉌䉏䈭䈇䇯 ዊ䈘䈭䉅䈱䉕ᜰవ䈪៰䉄䈭䈇䇯㐽䈛䈢ਣ䈏ᦠ䈔䈭䈇䇯 ㅅሶ䈮䈭䉍䉇䈜䈇䇯 ᄙേ䈪⋡䈏㔌䈞䈭䈇䇯ᚻ䈏㔌䈞䈭䈇䇯 㩷 㩷 ⓭ὼᄢჿ䉕䈅䈕䉎䇯ੂ䈭ⴕേ䉕䈫䉎䇯ᵅ䈇䈢䉍䇮╉䈦䈢䉍ᗵᖱ䈱 ફ䈏ỗ䈚䈇䇯ᚒᘟ䈪䈐䈝䈮䈎䉖䈚䉆䈒䉕䈍䈖䈜䇯 ․ቯ䈱ㆆ䈶䉕㐳ᤨ㑆䈒䉍䈜䇯․ቯ䈱䈍䉅䈤䉆䈱䉂䈖䈣䉒䉎䇯 ห䈛䉅䈱䉕⸅䈦䈢䉍䇮ຏ䉖䈣䉍䇮䉅䈩ㆆ䉖䈣䉍䈜䉎䇯 ᖱ䈏ਲ䈚䈇䇯䈾䉄䈩䉅༑䈳䈭䈇䇯 㩷 ੱ⍮䉍䈚䈩䈭䈛䉄䈭䈇䇯 㩷 㩷 㩷 ᘠ䉏䈭䈇႐ᚲ䈮ⴕ䈒䈫䇮ᱠ䈐࿁䈦䈢䉍㛍䈇䈣䉍䈜䉎䇯 ኻੱ㑐ଥ 䉋䈒ੱ䈮䈤䉊䈦䈎䈇䉕䈜䇯 ੱ䈱䈇䉇䈏䉎䈖䈫䉕䈚䈢䉍⸒䈦䈢䉍䈜䉎䇯 䈅䈇䈘䈧䉇䈍㗿䈇䈭䈬䈱䈚䈎䈢䈏り䈮䈧䈇䈩䈇䈭䈇䇯 㩷 㩷 㩷 㩷 ዤᐲ
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