光に対する実感を伴った理解を図る授業の実践 - 香川型教材と開発教材を核にして - 三 豊 市 学校組合立三豊中学校 観 音 寺 市 教諭 大川 匡則 Ⅰ主題設定の理由 自ら学び自ら考える力などの「生きる力」の育成が,教育の大きな目標の一つである。中学校学 習指導要領によると,理科の目標は「自然に対する関心を高め,目的をもって観察,実験などを行 い,科学的に調べる能力と態度を育てるとともに自然の事物・現象についての理解を深め,科学的 な見方や考え方を養う。」ことである。理科は,自然の事物・現象を学習の対象とするので,「自 然の事象に対する関心を高める」ことは,学習意欲を向上させる点から大切である。また,自分で 課題を見つけ,自ら考え,自ら問題を解決していく資質や能力の育成のためには,学習に対して生 徒が目的意識をもって学習を進めていくことが重要である。 理科の授業で学習する事項に関する自然の事象は,日常生活の中で多く見られるが,学習した理 科の知識を使って考えることは少ない。光に関する事象も例外ではない。光は私たちの身の回りに 存在するが,光の進む道すじを直接目で見ることができない場合が多いため,光の道すじを頭の中 でイメージしたり,光の反射,屈折,凸レンズのはたらきの規則性から身の回りで起こっている光 に関する事象を考えたりすることは,極めて難しい。平成15年度教育課程実施状況調査の結果では, 鏡における光の反射の仕方を作図する問題が設定通過率を下回っていた。また,本県で平成16年度 に実施された学習状況調査の結果から,「光の世界」の単元において反射や屈折に関して日常生活 と関連付けて考察する問題に課題があり,その課題を克服するために,「光の世界」の単元におい て香川型教材が開発されている。さらに,平成17年度学習状況調査では,凸レンズのはたらきを理 解し,日常生活と関連付けて考えることができるかをみる問題の正答率が,50.0%とたいへん低か った。 そこで,日常生活と関連した身近な光に関する事象についての観察や実験を通して,光の不思議 さや面白さに触れさせることにより,光に関する事象に対する関心を高め学習意欲を向上させる。 そして,学習に対する目的意識をもたせ,主体的に課題を解決させていく。このとき,光が実感で きる香川型教材や開発教材などを取り入れることによって,光に関する関心をより高め,光に関す る事象の理解を助け,生徒たちが身の回りであたりまえのように感じてきた光に関する事象を科学 的な視点から捉えることができると考え,本主題を設定した。 Ⅱ 研究方法 (1) 学習状況調査や生徒の実態調査の結果を分析し,指導上の課題を明確にする。 (2) 生徒が光に対する関心を高め,目的をもって観察,実験に取り組むようにするための指導方法 の検討や教材開発を行う。 (3) 香川型教材や開発教材の有効な活用法を検討し,学習指導計画を作成し,授業実践を行う。 (4) 事後のアンケート調査から生徒の意識の変容等を,評価問題から学習内容の定着状況等を分析 し,香川型教材と開発教材を核にした光の学習の指導に関する成果と課題を考察する。 -1- Ⅲ 研究内容 1 生徒の実態 (1) 1年生に対する実態調査から (置籍校1年生130名 平成17年7月実施) 自然事象への興味・関心や自然体験の実態を知るために,アンケート調査を実施した。 身の回りの自然現象について不思議だと思うことがある生徒は,91%であった。しかし,「光に 関する現象で不思議だと思うことがあるか。また,それはどのようなことか。」という質問に対し て,不思議だと思うことがあると答えた生徒は32%であった。これは,身の回りの光に関する現象 を,生徒たちがあたりまえのように感じているためだろうと考えられる。 身の回りの自然現象で不思議に思ったり,疑問に思ったりしたことについて調べてみたい(勉強 したい)と思っている生徒は,74%であった。 生徒たちは,小学校3年生で虫めがねで光を集める学習をしている。しかし,「虫めがねで紙を こがしたことがあるか。」という質問に対して,半数以上の生徒がないと答えた。小学校の教科書 に載っている自然体験でもこのような状態であり,生徒たちの生活体験や自然体験は,私たち中学 校教員が想像している以上に,不足していると思われる。 (2) 「光の世界」を既習している2年生に対する意識調査から (置籍校2年生159名 平成17年7月実施) 単元「光の世界」を既習している2年生を対象に,光の学習でどこが難しいと感じたかを知るた めに意識調査を実施した。 1 簡 単 だ った 2 どち らか といえ ば 簡 単 3 どち らか といえ ば 難 しい 4 難 しか った 30% 80% ① 鏡 に当 た っ た光 の 進 み 方 を調 べ る 実 験 ② 実 験 結 果 か ら 光 の 反 射 の きま りを考 え る ③ 鏡 で 自 分 の 姿 が う つる 理 由 ④ 透 明 な 物 体 を通 る 光 の 進 み 方 を調 べ る 実 験 ⑤ 光 の 屈 折 の きま り ⑥ 水 中 にある も の さしが 短 く見 え る 理 由 ⑦ 凸 レン ズ で で きる 像 を調 べ る 実 験 ⑧実像の作図 ⑨虚像の作図 0% 10% 20% 40% 50% 60% 70% 90% 100% <図1> 単元「光の世界」に関する意識調査結果 <図1>より,①,②は,「簡単だった」「どちらかといえば簡単」と答えた生徒がわずかに半 数を超えたが,残りすべての項目においては「難しかった」「どちらかといえば難しい」という答 えが過半数を占めた。生徒にとって,この単元の学習はたいへん難しいということが分かる。 (3) 学習状況調査の結果から <表1> 平成16,17年度学習状況調査の正答率(単元「光の世界」の一部) 出題問題のねらい H16,1(1) ガラスや水から空気中に光が進むときは、入射角よりも屈折角 が大きくなるように光が進むことを理解しているかをみる H16,1(2) 光の屈折を日常生活と関連付けて考察したり、規則性を見いだ そうとしたりするかをみる H17,2(3) 凸レンズのはたらきを理解し,日常生活と関連付けて考えるこ とができるかをみる 年度,問題番号 -2- 県の正答率 ビデオ問題62.0% (ペーパー問題56.1%) ビデオ問題60.1% (ペーパー問題56.1%) 50.0% 本県で実施された平成16,17年度学習状況調査の結果からも,生徒にとってこの単元の学習がた いへん難しいことが分かる。 平成16年度の調査結果を受けて,「光の世界」の単元において香川型教材が開発されている。ま た,平成17年度の調査結果を受けて,香川県教育委員会は,中学校理科における課題の1つは『「自 然事象への関心・意欲・態度」では,日常生活や身の回りの自然事象との関連を図ること』1)で あり,その改善の方向は『日常生活や身の回りの自然事象との関連を図った観察,実験やその考察 を工夫するなど,実感を伴った理解を図る指導の充実』1)であると分析している。 (4) 「光の世界」を既習している2年生に対する確認問題実施結果から (置籍校2年生159名 平成17年7月実施) 「光の世界」の学習でつまずきやすいところ,難しいところや学習内容の理解度などを調査する ことを目的とし,国際学力調査(TIMSS95,99)及び学習状況調査も参考にして確認問題を作成し, 「光の世界」を既習している2年生を対象に実施した。そして,解答類型別に集計し分析を行った。 その結果,光の屈折に関する問題の中に,正答率が50%を下回るものもあった。誤答した生徒の ほとんどは,水や半円形レンズなどの透明な物体に光が斜めに入射したときに屈折することは理解 できているが,屈折する方向が理解できていなかった。このことは,平成16年度の学習状況調査の 結果とも一致する。また,凸レンズを使ってできる実像,虚像を作図できた生徒は半数を下回った。 2 指導の工夫と実践 生徒の実態調査や平成16,17年度の学習状況調査の結果から,次のような課題が明らかになった。 ○ 生徒の生活体験や自然体験が不足しているため,理科で学習した内容と日常生活の中で見られ る光に関する現象が結び付いていない。 ○ 光に関する学習は,生徒にとって難しく,特に屈折や凸レンズのはたらきに関する理解は不十 分である。 そこで,この課題を解決するために香川型教材の活用法の検討と教材開発を行い,単元の指導計 画を作成した。 (1) 単元の指導計画 時 学習内容 教科書の実験など 香川型教材 開発教材 その他 1 1 身のまわりの物体を見てみよう ○やってみよう ○香川型4-1,2「物体が見え ○マジックミラー ・物体が見える理由を考える る理由を考えてみよう」 ・鏡や水やレンズなどを使ったときの見 え方や,光の進み方について調べる 2 2 光はどのように進むのか ○実験1A「鏡に当たった ○開発教材1「アクリル板を ・鏡に当たった光の進み方について調べ 光の進み方」 使った科学マジック」 結果をまとめる 3 ・光の反射から,鏡で物体をうつしたと ○開発教材2「光の反射」 きの見え方について考える ○開発教材1「アクリル板を 使った科学マジック」の種 明かし 4 ・透明な物体を通る光の進み方について ○実験1B「透明な物体を ○香川型4-3「水中から空気 調べる実験をする 通る光の進み方」 中に進む光はどのように 屈折しているのだろうか」 5 ・光の屈折についてまとめる ○やってみよう ○開発教材3「光の屈折」 ・光の屈折や全反射から,物体の見え方 ○開発教材4「浮かび上がる について考える コイン」 6 3 凸レンズでどんな像ができるか ○やってみよう ○開発教材5「凸レンズで日 ○簡易カメラ ・凸レンズによる光の集まり方や焦点を ○実験2「凸レンズによっ 光が集まる様子を見よう」 調べる てできる像を調べよう」 ・凸レンズによってできる像を調べ,結 果をまとめる 7 ・凸レンズによる実像,虚像のでき方を ○開発教材6「凸レンズと光 光の進み方から考える(作図を使って の進み方」 考える) 8 まとめと応用,発展(および予備) ○香川型4-6「次の現象は, ・具体的な身のまわりにある光に関する 光の反射と屈折のどちら 現象を光の反射,屈折,凸レンズのは だろうか」 たらきと関連付けて考える -3- (2) 香川型教材の活用と教材開発 日常生活と関連した身近な光に関する事象についての観察や実験を通して,光の不思議さや面白 さを体験させることにより,生徒の光に対する関心を高める工夫を考えた。また,光は私たちの身 の回りに存在するが,光の進む道すじを直接目で見ることができない場合が多いため,光の道すじ を頭の中でイメージしたり,光の反射,屈折,凸レンズのはたらきの規則性から身の回りで起こっ ている光に関する事象を考えたりすることは,極めて難しい。そこで,動画や開発教材などを使っ て光が実感できる工夫と,シミュレーション教材を開発するなどして生徒の理解を助けるための工 夫を考えた。 ① 光に対する関心を高める工夫 ア 香川型教材 <4-3:水中から空気中に進む光はどのように屈折しているのだろうか> 「光の屈折」の導入に使った。水を入れたお椀の中の物体を斜め方向から串で突き刺そうとする と,串が物体に当たらないでずれることを体験させた。さらに,<浮かび上がるコイン>の実験も 行い,学習課題を導き出した。そして,実験1B「透明な物体を通る光の進み方」につないだ。 イ 開発教材 <開発教材1:アクリル板を使った科学マジック> 「光の反射」の導入に使った。アクリル板とろうそくを使い,火を付けていないろうそくに火が 付いているように見えることをマジック風に提示した。そして,実験1A「鏡に当たった光の進み 方」につないだ。 ウ その他の教材 <マジックミラー> 本単元の導入に使った。その場所に存在しない物体がまるでそこにあるかのように見えるが,手 でつかもうとしてもつかめないことを体験させた。 <簡易カメラ> 「凸レンズと像」の導入に使った。各班に簡易カメラを準備し,凸レンズ1枚で簡単に像が映る ことを体験させた。そして,実験2「凸レンズによってできる像を調べよう」につないだ。 香川型4-3 浮かび上がるコイン 開発教材1 マジックミラー 簡易カメラ これらの教材等によって,生徒の光に対する関心を高めることができたかを調べるために,アン ケートを実施した。 これらの教材は各学習の 導入段階で,光の不思議さ や面白さを体験させことに より,生徒の光に対する関 心を高めることを最大の目 的に活用法の検討や開発を (置籍校1年生130名 平成17年11月実施) 質 問 「こ れ ら の 教 材 を 使 っ て 観 察 や 実 験 を し た と き , 「不 思 議 だ な 」ま た は 「面 白 い な あ 」と 思 っ た か 」 1 は い 2 どちらか といえ ば そ う 3 どちらか といえ ば ちが う 4 いいえ 香 川 型 4-3 浮 か び 上 が るコイン 開 発 教 材 1 マ ジ ックミラー 簡 易 カメラ 0% 10% 20% 行った。<図2>より,こ 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% <図2> 光に対する関心を高める工夫と生徒の意識 れらの教材に対して約8割の生徒が「不思議だなあ」または「面白いなあ」と感じており,生徒の 光に対する関心を高めるうえで有効であったと考える。 -4- ② 光が実感できる工夫 ア 香川型教材 <4-1,2:物体が見える理由を考えてみよう> レーザー光があっても光線が見えないことを確認させた後,デンプンの粉末をまくと光線が見え るようになることを演示した。本単元の導入で使った。 イ 開発教材 <開発教材3:光の屈折> 水中から空気中に光が進むときの光の道すじと実際の見え方が分かる教材を動画,写真,シミュ レーションを使って作成した。そして,水中に入れたものさしが短く見える理由を考えさせた。 <開発教材5:凸レンズで日光が集まる様子を見よう> 凸レンズで日光が焦点に集まる様子を観察できる教材を作成し,観察させた。 <開発教材6:凸レンズと光の進み方> 凸レンズを通った光の進み方を示した映像教材を作成した。 香川型4-1,2 開発教材3 開発教材5 開発教材6 これらの教材等によって,光の進み方が実感することができたかを調べるために,アンケートを 実施した。 <図3>より,これらの 教材を使うことによって, 9割以上の生徒が光の進み 方がよく分かったと感じて いた。これらの教材を使う (置籍校1年生130名 平成17年11月実施) 質 問 「こ れ ら の 教 材 を 使 う こ と に よ っ て , 光 の 進 み 方 が よ く 分 か っ た か 」 1 は い 2 どちらか といえ ば そ う 3 どちらか とい え ば ちが う 4 いいえ 香 川 型 4 - 1 ,2 開発教材3 開発教材5 開発教材6 0% ことは,生徒が直接目で見 ることができない光の道す 10% 20% <図3> 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 光が実感できる工夫と生徒の意識 じを頭の中でイメージし,光を実感するうえで有効であったと考える。 また,香川型教材<4-1,2>は,デンプンの粉末によってレーザー光が見えたことに感動す る生徒も多く(この実験をしたとき,「不思議だなあ」または「面白いなあ」と思った生徒は,92% であった),生徒の関心を高めるうえでも有効であり,本単元の導入教材としても適していると考 える。 ③ 生徒の理解を助けるための工夫 ア 開発教材 <開発教材2:光の反射> 鏡に当たった光が反射する様子をシミュレーションする教材を作成した。開発教材1と併用し, なぜ物体が鏡に映るのかを考えさせた。 -5- <開発教材4:浮かび上がるコイン> 水中のコインが浮かび上がって見えるしくみをシミュレーションする教材を作成した。 イ ワークシートの作成 光の進み方が目で見える写真等を使ったワークシートを作成した。 ウ 教室掲示 授業で学習した内容が思い出せるように,掲示を行った。 開発教材2 開発教材4 教室掲示 これらの教材や工夫によって,生徒が学習内容を理解するうえで役に立ったかを調べるために, アンケートを実施した。 直 接 目 で見 る こと が で (置籍校1年生130名 平成17年11月実施) 質 問 「こ れ ら の シ ミ ュ レ ー シ ョ ン や ワ ー ク シ ー ト 及 び 掲 示 は , 学 習 内 容 を 理 解 す る の に 役 立 っ た か 」 1 は い きな い 光 の道 す じを シ ミ 2 どちらか といえ ば そ う 3 どちらか といえ ば ちが う 4 いいえ 開発教材2 ュレ ー シ ョン で 示し た 開 開発教材4 発教 材 2 ,4 が ,学 習 内 ワークシ ート 容を 理 解 する の に役 に 立 った と 答 えた 生 徒は , そ れぞれ85%,82%であっ 教室掲示 0% <図4> 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 生徒の理解を助けるための工夫と生徒の意識 た。直接目で見ることができないものをシミュレーションを使って示すことは,学習内容を理解さ せるうえで有効な手段であると考える。また,教室掲示は学習した内容を思い出せるので役立った と答えた生徒は84%であった。生徒に学習内容を定着させるために,教室掲示も有効な手段の1つ になると考える。 Ⅳ 1 成果と課題 評価問題の実施結果から (1) 置籍校2年生の結果と比較して 「光の世界」の学習が終了した置籍校1年生に対して評価問題を平成17年11月14日に実施した。 評価問題は,平成17年7月に置籍校2年生を対象に実施した問題22問に,平成17年度学習状況調査 の光に関する問題3問(問題番号2(1)(2)(3))を追加した25問とした。なお,25問中7問は,平成 16,17年度の学習状況調査で出題された光に関する問題と同一問題である。 置籍校2年生は,平成17年5月1日に平成17年度学習状況調査を実施しているので,平成17年度 学習状況調査の光に関する問題3問(問題番号2(1)(2)(3))の結果を使うことにした。そして,1 年生,2年生ともに25問について解答類型別に集計し,分析を行った。 25問中22問で,1年生の正答率が2年生の正答率を上回った。 実像,虚像を作図する問題の正答率の伸びが大きく,7割に近づいた。これは,開発教材5,6 によって,凸レンズを通った光の進み方を実際に見たり,映像で見たりした成果ではないかと考え る。 -6- (2) 学習状況調査の県の結果と比較して 平成16,17年度の学習状況調査で出題された光に関する問題(7問)について,置籍校1年生の結 果と県の結果を比較した。7問の平均正答率は,置籍校1年生69.9%に対して県66.3%で,置籍校 1年生が県を3.6P(ポイント)上回った。 <表2,3> 平成16,17年度の学習状況調査結果(県)との比較 問題(年度,問題番号) 16,1(1) 16,1(2) 16,2(1) 16,2(2) 17,2(1) 17,2(2) 17,2(3) 置籍校1年生の正答率 77.9 73.3 61.1 64.1 87.0 71.8 54.2 県の正答率 56.1 56.1 73.8 71.8 85.1 72.8 50.0 +1.9 -1.0 +4.2 県との差 ① +21.8 +17.2 -12.7 -7.7 5P以上上回る問題数 0~5P未満上回る問題数 0~5P未満下回る問題数 県を下回る 5P以上下回る問題数 県を上回る 2 2 1 2 4 3 県の正答率を5P以上下回った問題について 県の正答率を5P以上下回った問題が2問あった。 問題16,2(1)は,鏡に光が当たって反射する道すじを矢印を付けた直線で表す問題である。この 問題は,県の正答率を12.7P下回った。解答類型で見ると,直線はかけているが矢印を記入してい なくて誤答になった割合が,県16.1%に対して置籍校1年生26.7%で,置籍校1年生が10.6P多か ったので,正答率が低くなった。 問題16,2(2)は,鏡に映って見える人を4人の中から1人選ぶ問題である。この問題は,県の正 答率を7.7P下回った。この問題を考えるために,今回置籍校で実施した評価問題では,鏡に映っ て見える範囲を図示しなさいという問題を挿入した。しかし,その挿入した問題の正答率が,低か ったため,それに続く問題16,2(2)の無回答率が8.4%と高くなり,県の2.8%を大きく上回り,挿 入した問題によってかえって正答率を低下させる結果になったと考える。 ② 県の正答率を5P以上上回った問題について 問題16,1(1)は,浮かび上がるコインに関する問題である。この問題は,県の正答率を21.8P上 回った。これは,水中に入れたコインが浮かび上がるしくみをシミュレーションで示した開発教材 4を使って学習した成果であると考える。 問題16,1(2)は,問題16,1(1)の現象と同じ理由(光の屈折)で起こる現象を選択する問題である。 この問題は,県の正答率を17.2P上回った。光の屈折について動画,写真,シミュレーションを使 って作成した開発教材3,4を使って学習した成果であると考える。 2 光の学習に対する1年生の意識調査から (置籍校1年生130名 平成17年11月実施) (1) 学習内容について 今回「光の世界」を学習した1年生を対象に,2年生(平成17年7月実施)と同じ内容で光の学習 内容についての意識調査を実施した。 1 簡単だっ た 2 ど ちら かといえ ば簡単 3 ど ちら かといえば難しい 難しか っ た ①鏡に当たっ た光の進み方を調べる実験 ②実験結果から 光の反射のきま りを考え る。 ③鏡で自分の姿がうつる理由 ④透明な 物体を通る光の進み方を調べる実験 ⑤光の屈折のきま り ⑥ 水中にあるも のさしが短く見える理由 ⑦ 凸レンズ でで きる像を調べる実験 ⑧実像の作図 ⑨虚像の作図 0% <図5> 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 単元「光の世界」の学習内容に関する意識調査結果(1年生) -7- 90% 100% 2年生は①,②以外の項目すべてにおいて「難しかった」「どちらかといえば難しい」という回 答が過半数を占め(p2<図1>を参照),調査した9項目において難しいと感じた割合は平均で50% を超えた。これに対して,1年生はすべての項目において「難しかった」「どちらかといえば難し い」という回答が40%を下回った。この単元の学習が難しいと感じた生徒の割合は,9項目の平均 で29.3%であった。光の単元の学習が簡単であると感じる生徒の割合が,2年生と比較して大きく 増えたことから,香川型教材と開発教材を核にした今回の取り組みは,有効であったと考える。 (2) 光に対する関心と学習に対する目的意識等について (1)と同時に,観察・実験の目的意識等についてのアンケート調査も実施した。 質問内容・・・(ア) 何を調べるためなのかを理解して,観察や実験をしたか(観察・実験の目的意識) (イ) 観察や実験に積極的に取り組んだか(観察・実験に対する取り組み) (ウ) 手を挙げて発表するなど,光の学習に意欲的に取り組んだか(学習意欲) 1 はい 2 どちらかといえばそう 3 どちらかといえばちがう <表4> 4 いいえ 教材に対する関心 1.00~1.50未満(49人) 1.50~2.00未満(33人) 2.00~2.50未満(30人) 2.50~4.00(18人) (ア) (イ) (ウ) 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 関心と目的意識,正答率等の関係 100% <図6> 観察・実験の目的意識等 (ア) 1.45 1.52 1.80 2.06 (イ) (ウ) 正答率 1.35 1.59 66.5 1.46 2.09 65.6 1.77 2.43 63.1 1.94 2.72 61.8 光に対する関心を高める工夫(Ⅲ2(2)①)で使った教材に対する意識調査<図2>で生徒が5つの教材につい て答えたそれぞれの数字(1~4)を,各生徒ごとに平均した。例えば,5つの教材に対してすべて「はい(1)」と 答えた生徒の平均値は1.00となり,この平均値が1.00に近いほど関心が高いと考えた。そこで,光に対する関心 を高める工夫で使った教材に対する関心をこの平均値を使って表すことにした。平均値が2.50より大きい生徒は, これらの教材について関心を示さなかったと考えられる。 置籍校1年生130人の中で,教材に対する関心が1.00~1.50未満の(関心が非常に高い)生徒は49人であった。 この49人の(ア)観察・実験の目的意識は,1.45(49人が<図6>のアンケートで答えた数字の平均値)であった。 同様にして,教材に対する関心と観察・実験に対する取り組み,学習意欲,評価問題の正答率の関係を<表4> に示した。 <表4>から次のことが分かる。 ○ (ア)から,教材に対する関心が高いほど,目的意識をもって観察・実験に取り組んだ。 ○ (イ)から,教材に対する関心が高いほど,観察や実験に積極的に取り組んだ。 ○ (ウ)から,教材に対する関心が高いほど,光の学習に意欲的に取り組んだ。 ○ 教材に対する関心が高いほど,評価問題の正答率が高かった。 教材を工夫して,光の不思議さや面白さに触れさせることにより,光に対する関心を高め,学習 意欲を向上させるとともに,学習に対する目的意識を持って主体的に観察,実験を行い課題を解決 させていくことができると考える。 3 全体を通して 光の学習が面白かったと答えた生徒の割合は8割を超えた。今回の実践と生徒の意識調査から, 香川型教材と開発教材を核にして光の学習の指導を行うことによって,生徒の光に対する関心を高 め,実感を伴った理解を図ることができたと考える。しかし,今回のように新しい教材を開発する ことには時間的に限界がある。そこで,学習状況調査の結果等を踏まえてすでに開発されている香 川型教材を有効に活用することによって,生徒の自然事象に対する関心を高め,実感を伴った理解 を図ることができると考える。 <引 用 文 献> 1)香川県教育委員会義務教育課:平成17年度学習状況調査結果,香川県教育委員会義務教育課, 2005,p.10 -8-
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