世界の医療保険事情 ∼アメリカ合衆国編

あいおい基礎研究所ミニレポート 2009.8.10
「海外情報」
世界の医療保険事情 ∼アメリカ合衆国編∼
福岡 藤乃
●非常に高額な医療費
米国はお金さえ出せば世界最高レベルの医療が受けられる国と言われている。医療費は非常に高
額で、ニューヨークなどの大都市圏では、初診料で 150 ドル(約 15,000 円)から 300 ドル(約 30,000
円)
、盲腸で 2 日間入院すれば 2 万ドル(約 200 万円)位請求される。入院した場合には、病院、
手術医、麻酔医、医療用具会社など、それぞれの医療関連機関から別々に請求書が送られてくる。
また救急車も有料である。入院は日本と比較すると盲腸手術で2日など、極端に短い期間しか入院
できない。救急外来は、重症の救急患者に加え医療費を支払えない人々も受診しようと混雑してお
り、重症でない場合には、数時間待たされることが恒常化している。
●高額な民間医療保険
米国では日本の健康保険のような国民皆保険制度はなく、高齢者や低所得者などの一部の人々に
しか公的医療保険制度がない。民間医療保険は、そのほとんどが現物給付方式であり、高い医療費
を反映して保険料は非常に高額である。そのため、雇用主を通じた団体医療保険の有無や条件が、
就職を決める重要な要素の一つとなり、公的医療保険の対象とならない 65 歳未満の人々の約 60%
が雇用主を通じて団体医療保険に加入している。一方、個人の医療保険に加入している人は約 5%
しかいない。加入条件によって保険料が異なるため、金額だけでは比較できないが、例えば、36 歳
女性という条件で、インターネットで個人医療保険を検索すると、月額保険料が、カルフォルニア
州在住で約 60 ドル(約 6,000 円)から 400 ドル(約 40,000 円)程度、保険料が高いニューヨーク州
在住の条件では、約 250 ドル(約 25,000 円)から 700 ドル(約 70,000 円)程度の保険料となる。
免責金額が 2,500 ドル(約 25 万円)と高額であっても、月額保険料は約 130 ドル(約 13,000 円)
という高い保険料になる。当然、免責金額を下げたり、年齢があがると保険料はさらに高額になる。
このように高額な保険料のため、医療保険に加入できない無保険者が米国内には、約 4,700 万人お
り、国民の 6 人に 1 人が無保険者となっている。米国の医療保険は大きな社会問題となっており、
現在、オバマ大統領が中心となり、重要課題として議論されているところであり、どのような改革
がなされるのか注目されている。
●留学または現地駐在の場合の医療保険加入
米国に留学または現地駐在する場合には、高額な医療費のリスクを避けるためにも、何らかの医
療保険への加入が必要である。保険加入していない場合には、治療自体を拒否される場合もある。
留学の場合は、留学先の大学が医療保険を指定している場合もあるため、大学側の条件を確認する
必要がある。また駐在の場合には、米国で永住している人(米国国籍や永住権保持者で日本に帰国
予定のない場合)は、自国保険主義に基づき、日本の海外旅行傷害保険に加入できない。現地の保
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あいおい基礎研究所ミニレポート 2009.8.10
険と海外旅行保険のメリット・デメリットをまとめると図表1のようになる。
<図表1>海外旅行保険と医療保険のメリ・デメ
メリット
デメリット
◆日本出発から日本帰国まで補償
◆日本語サービスが利用できる
◆治療費の自己負担なし
◆保険会社が契約している病院以外でも治療可能(キャッ
シュレスサービスは受けられない場合がある)
◆医学的に必要と認められる治療方法は、支払対象になる
(針・灸・カイロプラクティックなどを除く)
◆携行品や賠償責任についてオプションで加入可能
◆留学の場合は、大学指定の医療保険に該当しない場合が
ある
◆妊娠出産、歯科の補償不可能(特約により可能な場合あ
り)
◆既往症は、加入期間などに関わらず支払対象とならない
(特約により可能な場合あり)
◆健康診断や予防接種などは対象とならない
◆留学の場合は、大学指定の医療保険に加入可能
◆妊娠出産、歯科治療はオプション加入可
◆現地の医療保険のサービス利用可能(疾病管理など)
◆企業の団体医療保険では一定の期間や条件で既往症が支
払対象
◆健康診断や予防接種も条件により対象となる保険有り
◆企業の団体医療保険では、保険料を一部または全額負担
してくれる企業有り
◆現地で保険に加入するまでの期間や、夏休み中に無保険
状態になる恐れ有り
◆保険料が著しく高い
◆治療費の免責金額や自己負担有り
◆携行品や賠償責任保険はオプション加入不可
◆保険会社が契約していない病院では、救急以外の治療が
対象外である場合有り
◆保険会社が認めない高額な治療方法は保険の対象外とな
る場合有り
保険種類
海外旅行保険
医療保険
あいおい基礎研究所作成
●保険金支払金額と保険金額を超過した場合
米国での具体的な保険金支払事例は図表2のように、いずれも日本の治療費と比べて非常に高額
である。米国に行く場合には、医療費に対する保険金額がなるべく高いプランに加入した方が安全
だろう。保険金額を超えた医療費は自己負担することになるが、保険に加入していた場合には、保
険会社と病院の間での契約料金の適用や減額交渉が可能なため、無保険である場合に比べれば医療
費全体が安くなり、その分自己負担も少なくなる。病院への支払いが遅くなると、病院の治療費請
求権が債権回収会社に売られてしまうことがある。その場合、高額な延滞利子が請求され、延滞者
リストに掲載されてしまうので注意が必要である。
<図表2>米国における海外旅行保険支払事例
No
1
事故の内容
遊泳中に珊瑚で足を切って、通院1日
支払保険金
68,478 円
76,764 円
2
急性扁桃腺炎で、通院3日
3
強盗に強打され左眼上に裂傷、通院6日
1,200,418 円
4
胃腸炎で通院、検査、通院2日
1,736,801 円
5
ウイルス性髄膜炎で入院6日
2,875,878 円
6
7
十二指腸潰瘍の穿孔で入院7日、通院5日
医療費が保険金額 500 万円を超えるも減額交渉の末、保険金額内で解決
椎間板ヘルニアにて入院手術、入院6日、通院5日。保険金額を超えたため、保険金額満額を支払
い
4,698,467 円
5,000,000 円
出典:あいおい損害保険 東京火災新種海上損害サービス部 国際損害サービスセンターのデータより作成
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