問題と解答例

6. デバイスプロセス 2 問題解答例
第 1 章 真空技術の問題
(1) 1 気圧の水銀柱が 760mm であり、それは 760Torr であることから、1 気圧の圧
力が何 Pa か計算せよ。この結果から 1Torr は何 Pa か、また 1Pa は何 Torr か換
算せよ。
[解答例]
1 気圧が 760Torr(水銀柱 760mm)であることから、それがMKS単位圧力(Pa)でいく
らになるか計算する。水銀の密度は 13.6×104kg/m3, 重力加速度は 9.81N/kg-forceで
あるから 1 気圧 = 760×10-3×13.6×104×9.81 = 1.01×105 Pa. 従って 1Torr = 1.01×
105÷760 = 133Pa, 1Pa = 760÷(1.01×105 ) = 7.52×10-3Torr.
(2) 300K、10ℓ、0.1Pa の真空容器内の酸素分子数を計算せよ。真空容器内部のガ
ス組成は空気と同じと考える。(空気の組成及び必要な物理定数は理科年表・
理化学辞典等から探すこと。以下の問題も同じ。)
[解答例]
気体運動論の式からボルツマン定数をkとすると温度T, 圧力pの単位容積中の
気体分子数nは n = p/(kT)で与えられる。 T=300K, p=0.1Pa, k=1.38×10-23J/Kであるか
ら n =0.1 ÷ (1.38×10-23×300) = 2.42×1019mole/m3 である。空気中の酸素の容積濃
度は 20.9%であるから容積 10 リットルの容器内の酸素数は 2.42×1019×0.209×10
×10-3 = 5.05×1016個である。
[注意]
(a) pV=NRT(Rはモルガス定数, 8.31J/mol・K)の式を用いてもよい。しかしp(Pa), V(m3),
R共に単位をMKS系で統一すべきところ、リットルをそのまま使うと数値計算
を間違から注意すること。またこの式のNはモル分子数であり、分子数に換
算するためにはこれにアボガドロ数(6.03×1023mol-1)を乗じねばならない。
(b) 空気中の容積酸素組成比 20.9%を配慮すること。
(3) ガス分子の基板表面入射頻度の表示式を示しなさい。真空装置の酸素残留ガ
ス分圧が 1Pa、300Kのときに基板表面に酸素の単分子層が形成される時間を
上記表示式から求めよ。酸素分子量を 32, 入射酸素分子の表面付着確率を 1
として、表面に吸着する酸素分子の直径を 3.6×10-10m(3.6Å)と仮定する。
[解答例]
気体分子運動論からガス分子密度をn, ガス分子平均速度をvaとすると基板表
面入射頻度νは次のように示される:ν = (1/4)nva.
またそのときの圧力をp, 温度をT, ボルツマン定数をk, ガス分子質量をmとす
ると、n = p/ kT, va = (8kT/πm)1/2であるから次のようになる:ν = p/(2πmkT)1/2.
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酸素分子質量はmO2 = 32×10-3÷(6.02×1023) = 5.32×10-26 kgであるから、上式より
ν = 1÷{2π×(5.32×10-26)×(1.32×10-23)×300}1/2 = 2.69×1022 分子/m2sec.
酸素分子の直径は 3.6×10-10mであるから酸素単分子層の面密度はNS =1÷(3.6×
10-10)2 = 7.72×1018 分子/m2 である。従って単分子層形成時間τは次のようにな
る:τ = NS/ν = 7.72×1018÷(2.69×1022) = 3.52×10-4 sec.
[注意]
(a)
ν = (1/4)nva.よりは、ν = p/(2πmkT)1/2.まで書くことが望ましい。そのまま
圧力、温度、分子量を入れて数値計算できるから。
(b)
単分子層の吸着分子密度は約 1015分子/cm2を使うと概算できるが結果は少
し異なる。単分子層を形成するために必要な時間は、単分子層の分子数を単
位時間当たり入射分数で割れば得られる。これは表面に並べるべき分子数を
求めて、その数を達成するために一定速度で撃ち出す分子の銃撃時間を計算
することになる。
表面に分子が付着して単分子層が形成される過程をこんな単純な計算で
していいのか、真剣に考えると疑問に思う人がいるだろう。実は分子が表面
に吸着し表面上を移動した後に固定位置に止まったりあるいは脱離再放出
する時間が極めて短い場合(10-13sec程度)には表面と分子の相互反応を無視し
たかのようなこの考え方で正しい。しかし相互反応時間が長い場合は、複雑
になる。
(c) 数値計算の誤りの最大理由は p, n, m(あるいは分子量 M)の数値の単位を MKS
に統一しないからである。分子 1 個の重さは kg 表示せねばならないが、分子
量はグラムモルを使うので非常に誤りやすい。
(4) 粘性流、分子流、層流、乱流を説明せよ。
[解答例]
粘性流: 大気圧から比較的圧力の高い低真空領域では、個々のガス分子は単
独で運動するのではなく集合体として全体の流れを形成する流体運動
をする。流体運動する気体の動きは粘性係数により特徴づけられ、粘性
係数の大きさは流体を構成する各空間部分の相互結合性が強く、他の空
間部分の流れの影響を大きく受けることを意味する。粘性流では気体分
子が配管の中を流れるとき、分子の平均自由行程が配管の直径よりも充
分小さい。配管内空間における気体分子同士の衝突が非常に頻繁に起る。
分子流: 比較的圧力の低い中真空あるいは高真空、超高真空領域では気体の動
きを個別の気体分子の運動として取扱う。分子流では気体分子が配管の
中を流れるとき、分子の平均自由行程が配管の直径よりも充分大きい。
配管内空間における気体分子同士の衝突は殆どなく、気体分子は配管内
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壁面に衝突しながら流れる。
層流: 粘性流の範囲で気体分子の作る流線が配管の壁面に平行で時間的に変
動しない流れを層流と呼ぶ。管内の流体が層流であるか乱流であるかは
レイノルズ数 Re(=Dvρ/η, D: 管の直径, v:平均流速, ρ:流体密度, η:
粘性係数)で示され、R<1200 の場合には層流である。
乱流: 粘性流の範囲では気体分子の作る流線が配管の壁面に平行ではなく、
それが時間的に激しく変動して、しばしば渦を作りながら流れる。流速
が小さいほうから大きくなるに従い気体の流れは層流から乱流に変化
し、レイノルズ数 Re>2300 が乱流である。レイノズル数 1200<Re<2300
では層流になったり乱流になったりする。
[注意]
次の 4 項目のとの関係を説明すればよい:①平均自由行程と配管直径の関係、
②空間における分子衝突頻度の多少、③流線の時間的変動、④レイルズ数。
層流、乱流を説明する際、「整然とした流れ、直線的な流れ、不規則な流れ」
等の記述は感覚的、文学的表現であり、より科学的な表現を望む。
(5) 地球上の乾燥した大気の組成は窒素 78%, 酸素 21%, アルゴン 0.9%, 二酸化炭
素 0.03%である。これに加え実際には水蒸気が存在する。真空容器を排気し
て高真空まで圧力が低下すると水蒸気、一酸化炭素、二酸化炭素等が主要構
成ガスに変わる(テキスト図 2-44 のマススペクトル参照)。その理由を説明し
なさい。
[解答例-1]
高真空、超高真空になると真空容器の空間中に初めから存在していたガス分
子は排気され、容器表面に吸着していた水分子が脱離して主成分となる。水分
子は吸着エネルギーが大きいので表面から放出するのに長時間かかる。真空容
器を加熱して吸着分子の放出を促進すると排気時間を短縮することができるが、
一方その結果容器壁素材内に含まれていた水素、炭素が放出されるが、この内
炭素は水素と反応して炭化水素ガス分子となり、また酸素と反応して一酸化炭
素ガスや二酸化炭素ガスとなる。酸素は酸化物の形で真空容器壁表面に存在し、
室温から数百度以下の温度範囲では酸素ガスとして放出されることはない。
[解答例-2]
真空装置の排気速度をp, 実効排気速度をS, 真空容器内壁面からの放出ガス
量をQ*とすると、高真空における圧力はp = Q*/Sと示される。容器表面には水、
炭化水素、炭素が付着したり吸着しておりそれらが長時間放出される。水は
H20+(M/e=18), OH+(M/e=17), H+(M/e=1)の形で検出される。炭化水素はCH4+(M/e=16),
CH3+(M/e=15), CH2+(M/e=14), CH+(M/e=13), C+(M/e=12)等の形で検出される。また炭素は
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容器表面の酸化物と反応して一酸化炭素ガスや二酸化炭素ガスとなり
CO+(M/e=28), CO2+(M/e=44)等の形で検出される。更に真空容器の温度が高い場合に
は金属内部に原子状で溶解している水素が分子として放出される。それは
H2+(M/e=2), H+(M/e=1)として検出される。これが高真空におけるガス組成が大気の
ガス組成と異なる最大の理由である。
[注意]
通常の場合真空容器内最も多量の残留ガスは水蒸気であり、それは相当多量の
水分子が容器壁面に長時間吸着し「じわじわ」と脱離するためである。CO, CO2
はいずれも壁面に吸着あるいは溶解している炭素が酸素と化学反応して発生し
たり、ガス分析形のフィラメントの表面で化学反応したりして発生する。他に
可能性のある理由として次の 3 つがある。①ガス種に対する排気速度の違い、
②ガス種に対するリーク量の違い、③ガス種に対する真空装置構成機材の透過
率の違い。しかしいずれも主要原因ではない。
(6) 吸着型ポンプを毒性ガス排気には使わない理由を述べなさい。
[解答例]
吸着剤を再生するときに毒性ガスを再放出せねばならず人体に非常に危険で
あるから。吸着性ポンプでない場合には、毒性ガスはポンプから排気された後
に直ちに毒性を解消するための処理をする排ガス処理システムに送る。それが
不可能な場合には吸着剤等に貯蓄してまとめて産業廃棄物として処理する。
(7) クライオポンプの 1stパネルはH2Oの排気が目的である。H2Oの分圧を 10-10Pa
とするために 1stパネル温度は何K以下とすべきか、その理由と共に説明せよ。
添付資料の平衡蒸気圧曲線の縦軸単位がTorrであるのに注意すること。
[解答例]
テキスト図 2-28 の平衡蒸気圧曲線のグラフでH20 を調べる。10-10Pa(~10-12Torr)
の蒸気圧を与える温度は 118Kであるから、1stパネル設定温度は 118K以下にすべ
きである。
[注意]
(a) グラフは目で見て最小目盛りの 1/10 まで読めるから、115~118K と読むのが望
ましい(ノギスの読み方を思い出すこと)。
(b) 実際のクライオポンプの 1stパネル温度は 80Kに設定するものが多い。これは
H2Oガスを吸着してできた氷の層が発達して厚くなるとその表面の温度が 1st
パネルの温度よりも高くなるので、余裕を見て低めに設定するのである。
(8) 熱伝達型真空計が超高真空領域では働かない理由を説明せよ。
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[解答例]
ガス分子がセンサーに入射する頻度が極めて小さくなり、ガス分子によって
センサーから奪われる熱量が検知限界に近づくため。
[コメント]
(a) 熱伝達と熱伝導をはっきり区別して理解すること。熱伝導は熱伝達の一つの
メカニズムであるが、真空計では熱伝導を使うのではない。加熱されたフィラ
メントの熱が外部に伝達するメカニズムは次の 3 つである:
①ガス分子がフィラメントに入射してその表面に短時間滞在して脱離すると
きに熱を奪う。
②フィラメントの端部から熱伝導によりフィラメントに電気を供給する導線
などを経由して熱が伝達移動する。
③放射によりフィラメントから外部に熱が伝達移動する。
熱伝達真空計は②③を極力抑制して①による熱伝達量を測定しようとする
ものであるが、ガス分子の入射頻度が少なくなると①による熱損失量が②③に
よる熱損失量に近づき圧力変化に対応しなくなるのである。
(b) ガス分子により奪われる熱量が殆ど 0 なるから、あるいはガス分子が殆どな
くなるからという表現は適切ではない。ガス分子は皆無にならず、その奪う熱
量もあるのだが非常に僅かなので上記②③と同レベルかそれ以下になり、従っ
てこれによる圧力検出が不可能となるからである。
(9) 質量分析計の示す質量スペクトルがそのままでは真空系の分圧組成に相当
しない理由を 3 つ説明しなさい。
[解答例]
次の 4 つの理由の内 3 つが書けていれば良い。
(a) ガス分子が多原子で構成されている場合には分子が分解する。従って分子そ
のものを観察するわけではない。
(b) ガス分子が 2 価以上のイオンになることがある。
(c) 原子には同位体があり、同じ原子でも異なる質量のものがある。
(d) ガスの種類により電離確率が異なる。
(10) リークテストでヘリウムガスを使う理由を説明しなさい。
[解答例]
次の 5 項目の内 4 項目書ければ良い。
(a) 大気中に微量しか存在しないからある特定の場所に吹き付けてそのリーク
を探すのに適している。
(b) 真空材料にも殆ど溶け込んでいないからプローブガスとして適している。
145
(c) 分子直径が小さいので非常に狭い間隔のリーク箇所も素早く探すのに適し
ている。
(d) 化学的に安定で無害である。
(e) 不活性であり真空容器の内部に吸着することがなくリークテストの履歴が
残りにくい。
(11) ガス供給系を備えた真空装置におけるガス供給流量、プロセスガス圧力、排
気速度の関係式を示しなさい。これによりある特定のプロセス圧力を設定す
るためにはガス流量と排気速度の様々な組合せが可能であることを説明し、
できるだけガス供給量が多い方が好ましいプロセスの例とその理由を考え
なさい。
[解答例]
(a)圧力設定、ガス流量、排気速度の関係
ガス供給流量を Q、プロセスガス圧力を p、排気速度を S とすると Q = pS, p
= Q/S. の関係式が得られる。従って一定の p に対して比例関係を充たす無数の
Q, S の組合せが可能である。
(b)ガス供給量が多い方が好ましいプロセスの例とその理由
Q, Sを大きくした方が好ましいのはプロセス中の不純物ガス分圧を低く保ち
たい場合である。例えばスパッタ装置やCVD装置で薄膜を作製するときに不純物
ガス分圧が高いと得られる薄膜の特性が好ましくないことがある。不純物ガス
は意図的に流すガス供給とは別にリーク、透過、ガス放出等から発生する。そ
の不純物発生流量をQi, 不純物ガスの分圧をpiとすると、pi = Qi/SであるからSを大
きくすることが望ましくこれはQを大きくすることと同等である。
[注意]
後半は特定のある圧力でプロセスを行うときに色々なガス供給量を選ぶこと
ができる中で、ガス供給量が多いほど良いプロセスの具体例を挙げその理由を
述べることである。真空蒸着では通常意図的なガス供給による圧力設定を行わ
ないので、これには当てはまらない。スパッタリングや CVD は比較的高い圧力
に設定しガスを流しながら薄膜を作製する。ドライエッチングではガスを流し
ながら比較的高い圧力設定を行なうが、必ずしも流量が大きい条件でプロセス
を行なうのが適していることにはならない。確かに不純物ガス分圧は低く維持
できるが、それと同時に発生するラジカルのチャンバー内滞留時間も短くなる
ことで必要な表面化学反応が十分行なわれなくなることもあるためである。
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第2章
放電・プラズマ技術の問題
(1) プラズマとは何か説明しなさい。多くのデバイスプロセスで使われるプラズ
マはどのようなプラズマか。
[解答例]
気体の原子や分子が電離した状態で、全体として中性を保つものをプラズマ
と呼ぶ。プラズマを作るには気体の温度を上げる熱プラズマ方法と気体放電を
使う方法と 2 つの方法がある。多くのデバイスプロセスで使われるプラズマは
気体放電によって作られる。そこでは気体全体の電離粒子構成比率は低いので
弱電離プラズマとも呼ばれる。気体を構成する 3 つの粒子である中性ガス分子、
イオン、電子はそれぞれ異なる 3 つの温度を持ち、それらを比較すると、中性
ガス分子温度はイオン温度より低いがほぼ等しく、電子温度はこの二者の温度
に比べて非常に高い。
[注意]
プラズマの定義では、気体であること、イオンと電子に電離して全体として
中性であること等を述べる。プロセスで使うプラズマは、熱プラズマではなく
放電プラズマを使うこと、電離率、プラズマ中の電子・イオン・中性ガスの温度
等について述べること。プロセスでは熱プラズマは使わない。
(2) 具体的なプラズマを応用したプロセスを 3 種類あげなさい。それらにおいて
プラズマを使う利点を述べなさい。
[解答例]
(a) 応用例:プラズマ(支援)CVD によるシランガスを原料とする(アモルファス、
または非晶質)シリコン薄膜の作成
利点:プラズマを使わない熱 CVD では膜作成温度は 900-1000℃であり、基板
は高温耐熱性が必要である。これに対してプラズマ CVD では 300-350℃で膜作
成ができるの。従って LCD(液晶表示装置)を作成するときプラズマ CVD では
石英に比べて耐熱性の低いガラスを基板として使うことが可能で、妥当な価
格の表示装置の製造ができる。
(b) 応用例:シリコン半導体集積回路の製造工程における微細パタン加工のため
のリアクテイブイオンエッチング
利点:プラズマを使わず化学薬品水溶液による湿式エッチングでは等方性エ
ッチングがとなりマスクの下部領域も侵されエッチングされるのでアンダー
カットが起る。アンダーカットの幅はエッチング深さとほぼ等しいので、エ
ッチングせずに残すべき部分の幅がエッチングしようとする深さの 1/2 と等
しくなるとパタンは殆ど消失してしまい、微細パタンのエッチングには使え
ない。リアクテイブイオンエッチングではアンダーカットを抑制し、基板面
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に垂直な方向だけにエッチングが進む異方性エッチング条件を選ぶことがで
き、それにより微細パタンのエッチング加工を可能にする。
(c) 応用例:炭化水素ガスのプラズマによるダイヤモンド薄膜の作成
利点:ダイヤモンドは炭素の特別な結晶形態で、通常 50,000 気圧、2000℃の
高圧高温状態で形成される。人工的にこの条件を充たすためには非常に高額
な設備が必要で、天然の宝石のダイヤモンドと同じ寸法の物を作るとすれば
そのための費用は宝石よりも高くなる。プラズマと炭化水素ガスを用いると
低圧で比較的低温で比較的安い設備でダイヤモンド薄膜を作成できる。この
方式では宝石のような大きな単結晶のダイヤモンドはできないが、非常に硬
い薄膜のダイヤモンドが実用的な費用で作成できる。
(d) 応用例:スパッタリングによる薄膜作成
利点:スパッタリングが実用化される以前の薄膜作成の主要な手段は真空蒸
着であった。真空蒸着では薄膜の原料を高温加熱して蒸発気化させて基板上
にそれを再び凝固させる。実用的な蒸発速度を達成するためには高い蒸気圧
を与えるよう充分高温に加熱せねばならず、高融点材料の蒸着は難しい。一
方化合物や混合物の薄膜を作るのは、その原料が高温加熱すると熱分解した
り、分留するので組成制御が非常に難しい。スパッタリングはイオンと固体
の衝突による固体を構成する原子の放出作用を利用する薄膜作成手段であり、
原料の高温加熱に伴う問題がなく非常に広範囲の材料の薄膜を作成できる。
(3) プラズマ中における電子と原子や分子等との衝突のタイプを 3 種類あげなさ
い。それはプラズマの発生、維持、消滅とどのような関係があるか説明せよ。
[解答例]
テキスト表 3-5(放電・プラズマ中の重要な衝突)参照。表中の 11 項目の中から 3
種類の衝突を選んで説明し、それぞれがプラズマの発生、維持、消滅とどう関
係するか述べればよい。
これらの中でプラズマの発生に寄与するのは電離衝突(電子―分子・原子、分
子・原子―分子・原子、ぺニング電離衝突、準安定原子―準安定原子、電子―準安
定原子)、プラズマの消滅に寄与するのは弛緩、再結合衝突、電子付着衝突であ
り、その他はプラズマ維持と考える。
(4) 放電を起す電子とガス分子の衝突では電子の衝突エネルギーにより衝突断
面積が変わる。電子とアルゴンガス分子の半径をre, rA, 衝突断面積をσ,アル
ゴンガス分子密度をnAとすると平均自由行程λは次のような表示式で与えら
れる: λ = 1/[π(re + rA)2nA] = 1/(σnA).
電子の運動エネルギーが 20eV, 100eV, 1keVの 3 つの場合について、この式及び電
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子とアルゴンのイオン化衝突断面積のグラフからアルゴンガス圧力 1Pa,
300Kのときの電子の電離衝突平均自由行程を求めなさい。更にその 3 つの値
をアルゴンガス分子同士の衝突の均自由行程の大きさと比較し、それぞれ何
倍かあるいは何分の 1 か計算しなさい。但しアルゴンガス分子同士の衝突の
平均自由行程は上記式で電子半径reの代わりにrAを使い、 2rA = dA = 0.367nmを
用いて計算すること。
[解答例]
テキストp52 図 3-13(希ガスの電離衝突断面積)から電子の運動エネルギー20,
100, 1000eVのときの衝突断面積を求めるとそれぞれ 6.2×10-21(0.70Qi,Qi=πa02=8.81×
10-21m2), 2.82×10-20(3.2Qi), 8.81×10-21(1.0Qi)m2である。一方 300K, 1Paのアルゴンのガス
原子密度は 2.41×1020原子/m3である。従って電子の運動エネルギー20, 100, 1000eV
のときの電離衝突の平均自由行程はそれぞれ 6.71, 1.47, 4.70×10-1mである。一方
アルゴン原子同士の衝突の断面積は 4.23×10-19m2であるから、平均自由行程は
9.81×10-3mである。比較すると電離衝突の平均自由行程はアルゴン原子同士の衝
突の平均自由行程の 15~70 倍である。
[注意]
グラフから①20, 100, 1000eVのエネルギーのアルゴンガス分子の電離衝突断面
積をまずQi の単位で読取り次にQiを乗じて計算すること、②1Pa, 300Kのアルゴン
ガス分子密度を計算すること、③上記表示式から電離衝突の平均自由行程を計
算すること、④アルゴンガス分子同士の平均自由行程を計算し電離衝突の平均
自由行程と比較すること。②は真空技術で説明した気体分子運動論の基礎概念
を使うこと。
アルゴン分子同士の衝突断面積σAはσA=π(rA+rA)2=π(2rA)2 = π(dA)2で与えられ
る。σA=π(re+dA)2という式を使うのは誤り。粒子衝突の断面積の考え方をもう一
度見直すこと:
(a) 弾性衝突における粒子半径と衝突断面積の関係
半径rAの粒子Aと半径rBの粒子Bが衝突するときの弾性衝突の断面積σABは
σAB=π(rA+rB)2で示される。Aを電子(e)としてBを分子とするとき電子の運動エ
2
ネルギーが十分小さい(10eV以下)弾性衝突ではr《r
e BであるからσeB=π(re+rB) ~
πrB2となる。同じアルゴン分子同士の場合にはσA=π(rA+rA)2=π(2rA)2=π(dA)2と
示される訳である。
(b) 非弾性衝突における衝突断面積
弾性衝突における粒子半径と断面積の関係式は非弾性衝突の断面積を求
めるために使うことはできない。弾性衝突のときの二つの粒子の半径はそれ
ぞれ粒子の運動速度によらず一定と見做せるが、非弾性衝突のときには二つ
の粒子がそれぞれ独立した一定の値を持つとは見做せず、粒子半径の概念は
149
使わず衝突断面積という概念を使う。勿論弾性衝突でもこの「衝突断面積」
という概念は有効である。
実際問題として弾性衝突の断面積と非弾性衝突の断面積を比べると前者の方
が後者よりもかなり大きい。従って断面積の逆数に比例する平均自由行程を比
べると、弾性衝突の平均自由行程の方が非弾性衝突の平均自由行程よりもかな
り短い。これは衝突確率では前者の方が後者より高いことと同等である。
(5) プラズマ中には荷電粒子があるにも拘らず長距離の電界が存在しないこと
を説明しなさい。
[解答例]
プラズマ中には正負同数の荷電粒子が多数あり、プラズマ中の電界はそれら
の全ての荷電粒子の作る電界の合成である。単独の荷電粒子の作る電界はその
周囲にある荷電粒子によりシールドされ遠方にまで届かない。
電荷qの 1 個の電子からの距離rだけ離れた位置の静電ポテンシャルV(r)は, V(r) =
qexp[(-r/λDe)]/(4πε0r)で与えられる。但しε0は真空の誘電率であり、λDeは次式
で与えられる電子のデバイ長である:λDe≡(ε0kTe/ne2)1/2. ここでkはボルツマン
常数、Te, neはそれぞれ電子温度とプラズマ密度である。r → 0 のときはV(r)→1/(4
πε0r)となり、電子に非常に近い場所では一個の電子の作るポテンシャルと同じ
になる。しかしr》λDeのときにはV(r)≒0 である。デバイ長はプラズマ温度とプ
ラズマ密度により異なる。デバイスプロセスで使われるプラズマはプラズマ温
度 1~10eV, プラズマ密度 1010~1012cm-3程度でありこのときデバイ長は 3×10-3~8×
10-2cm程度である。
[注意]
長距離の基準であるデバイ長がほぼどの程度かの説明すること。
プラズマが全体として電気的に中性であることは、集合体中の正負の電荷が
同数あることを意味する。しかしそれは、プラズマ中の荷電粒子がデバイ長以
内で局部的な電界を作り長距離の電界を作らぬこととは別のことである。混同
しないよう注意すること。
「中性プラズマ」は誤った言葉である。
「プラズマは電気的に中性である」は
正しいが、「正プラズマ」、「負プラズマ」「中性プラズマ」という言葉はあり得
ないからである。これに対して「負グロー」、「正グロー」と言う言葉ある。ど
うしてもプラズマが中性であることを示すならば、例えば「全体として電気的
に中性であるプラズマ」と表現せねばならない。
(6) プラズマに接する壁があるときに、壁近傍の空間ではプラズマが中性であり
電界がない状態が保たれない。壁から充分離れたバルクプラズマから壁に近
150
づくに従いどのように空間の状態が変わるか説明しなさい。
[解答例]
壁から充分離れた空間の電気的中性と巨視的電界零が維持される空間のプラ
ズマをバルクプラズマと呼ぶ。バルクプラズマと壁の間には壁側からバルクプ
ラズマ側に向かってシースが形成され、シースとバルクプラズマの間にプリシ
ースが形成される。
壁の電位が浮遊している場合にはシースの間隔はデバイ長の数倍程度である。
シースの内部は正イオン密度が圧倒的に大きく電子密度が低く空間の中性は保
たれない。また浮遊電位の壁は負に帯電して、それにより作られる電界のため
に壁に入射しようとする電子を減速し陽イオンを加速し、全体として入射する
電子と陽イオンが均衡する。
プリシースの間隔は電子とガス分子の電離衝突の平均自由行程程度、デバイ
長の数十倍から 100 倍程度である。プリシースの中では電子と陽イオンの密度は
等しく中性は維持されるが、シース内の電界に比べて非常に弱い電界が生じる。
プラス間密度はシース側に行くほど低くなり、プリシースをシースの境界にお
けるプラズマ密度はバルクプラズマの 1/e1/2(≒0.607, eは自然対数の底)になる。
[注意]
バルクプラズマ、プリシース、シースの位置関係とそれぞれの長さ、電界、
電位、イオンと電子密度等々について記述すること。文章のみで充分説明する
のは難しいから図を有効に使うべきである。
(7) DC グロー放電が持続的に維持される条件について考えよう。陽イオン衝撃に
よりカソード表面から放出される二次電子の放出係数をγ、放出二次電子が
カソードフォール内を走行して陽光柱端部に到達するまでにガス分子と電
離衝突 を起す累積回数を n 回とする。放電維持のためにγ, n の充たすべき
関係を数式表示しなさい。次にアルゴンイオン衝撃に対するアルミニウムの
二次電子放出係数としてエネルギー1keV のときの値(テキスト図 3-19)を使っ
て前問の式から放電維持に必要な累積衝突回数を計算しなさい。
[解答例]
1 個の電子の電離衝突が発展してn回衝突したときに発生する全電子数は 2n個
である。シースのつくる電界によりカソードに加速されて入射する陽イオンの
電流をIi, イオン衝撃による 2 次電子放出係数をγとするとカソードに流れる電
流Icは Ic = Ii + Ie = Ii (1+γ)で与えられる。但しIeはイオン衝撃によって発生する二次
電子の作る電流である。n回の電離衝突によって発生した電子のつくるアノード
電流IaはIa = 2nIeで与えられる。カソードに流入した電流がアノードに流入する電
流と等しいときに放電定常状態が維持されてIc = Iaとなる。このとき 2n = (1+γ)/
151
γとなる。
アルゴンイオン衝撃に対するアルミニウムの二次電子放出係数としてエネル
ギー1keVのときの値は、10 月 28 日配布資料p3 のデータから 0.1 である。この値
を前記の関係式に入れると 2n=11. 従ってn=ln11/ln2=3.46.
[注意]
累積衝突回数を整数値にする必要はない。電子、イオン、原子、分子等の粒子
衝突では単一の粒子を想定し易いが、実際には莫大な数量の粒子の衝突を扱い、
測定結果も計算結果もすべて統計的数値で扱う。
(8) ラングミュアプローブによる測定からプラズマ密度の計算をしてみる。プロ
ーブの捕集面積が 2×2mm2の矩形タンタル箔を用いて原子量 40 のアルゴンガ
スプラズマ中で 100μAの飽和イオン電流が得られた。電子温度が 2eVのとき
プラズマ密度はおよそいくらか。(ネガテイブプローブの式を使うこと。)
[解答例]
テキスト(3.43)式を使う:
I+ = ensv+A, ・・・(1)
v+ = (kTe/M+)1/2, ・・・(2)
n0 = ns/0.61. ・・・(3)
(2)式においてe=1.60×10-19C, kTe=2eV=2×1.60×10-19J,M+=40×1.67×10-27kgを入れ
てv+ =2.19×103m/sec.を得る:
(1) 式 に こ の 値 と I+=1.00 × 10-4A, A=4 × 10-6m2 を 入 れ て ns=7.13 × 1016m-3=7.13 ×
1010cm-3.を得る:
この値を(3)式に代入してプラズマ密度が次のように求められる:
n0=1.17×1011cm-3.
[注意]
Teの単位を[K]に変換する場合はkとしてボルツマン定数を使うこと。Teの単位
を[eV]のまま用いる場合にはkの代わりに電荷素量eを使うこと。e Te , k Teのどちら
を使ってもMKS単位で[J](ジュール)となる。混同してはいけない。M+の値は原子
量(40)ではなく質量であり、MKS単位で計算すべきである。間違えやすいので注
意すること。
(9) テキスト 59 ページに示すように、絶縁体表面を持つ電極に交流を印加する時
の電流と電極電圧及び蓄積電荷の関係式∫idt = CVからi = CdV/dtと書くことが
できる。V =V0cosωt, i = i0sinωt とすると、与えられたC, Vに対して交流電流i0の
値を周波数f(= ω/2π)の関数として表示できる。この関係を使って次の問題
を計算により求めよ。
152
RF電極に厚み 2.5mmの溶融石英ターゲットを取付けたRFスパッタ装置を考
える。このとき石英板ターゲットの静電容量は約 1pF/cm2である。印加電圧が
1kVのときRF電極面の放電電流密度として 1mA/cm2 を充たすための必要周波
数はいくらか。
[解答例]
静電容量を C とすると、石英ターゲットの表面と裏面の間に電圧 V が印加さ
れたときに生じる蓄積される電荷 Q は CV である。この蓄積電荷を与えるための
電流 I は次式により与えられる: I = dQ/dt = CdV/dt.
V=V0cos(ωt), I=I0sin(ωt)としてC=1pF/cm2, V0=1kV, I0=1mA/cm2からω=I0/(CV0)=106を得
る。f=ω/2πから周波数は約 160kHzとなる。
(10) 13.56MHz の RF 放電により RF 電極にはプラズマに対して 1kV の負の自己バイ
アス電圧が生じておりまたプラズマとの間に厚さ 1cm のシースができている
と考える。シース内電界を均一であると近似してこの中におけるアルゴンイ
オンの RF 電界による単振動の振幅を計算せよ。
[解答例]
電界をEとするとアルゴンイオンの電荷をe, 質量をM, 角周波数及び周波数を
ω, fとするとその運動方程式は次式で与えられる: Md2x/dt2 = eE =-eE0cos(ωt). この
解はx = Acos(ωt), A≡eE0/[(2πf)2M]. e=1.60×10-19C, E0=105V/m, f=1.36×107, M=6.68×
10-26kgを用いてA=3.28×10-5mを得る。振幅は約 33μmである。
(11) 容量結合型 RF 電極の面積比が 1:4 の非対称の場合は小面積 RF 電極をカソー
ドとし大面積電極をアノードとする DC 放電に近いことを説明せよ。
[解答例]
2 つの電極の自己バイアス電圧をV1, V2とし、それぞれのプラズマに接する電極
表面積をS1, S2とするとV1/V2=(S2/S1)4である。従ってS1/S2=1/4 のときV1/V2=256. また
量電極間に印加されるRF電圧をVRFとすると、V1+V2=VRFであるから小面積電極に
(255/256)VRFの自己バイアス電圧が誘起され、大面積電極には(1/256)VRFの自己バイ
アス電圧が誘起される。これは小面積RF電極をカソードとし大面積RF電極をア
ノードとするDC放電に近い。
(12) 初期エネルギー0 のイオンが電圧V0, 厚みsの無衝突チャイルドーラングミュ
ア型シースを走行する時間tはt =3s /v +であることを示せ。但しM +をイオン質
量、e をイオンの電荷量として、v + = (2eV0/M +)1/2とする。
[解答例]
シース内における電位分布関数をV(x), イオンの質量をM+, 電荷をeとするとイ
153
オンの運動方程式は次のようになる:
M+d2x/dt2 = edV(x)/dx. ・・・(1)
チャイルド-ラングミュアシースの電位分布関数を用いる:
-V(x)3/4 = (3/2)(J+/ε0)1/2(2e/M+)-1/4x. ・・・(2)
上記式においてx=0 でV=0, x=sでV=V0とすると次式が得られる:
-V03/4 = (3/2)(J+/ε0)1/2(2e/M+)-1/4s. ・・・(3)
(2), (3)から次式が得られる:
V(x) = V0s-4/3x4/3
この式を x で微分して次式を得る:
dV(x)/dx = (4/3) V0s-4/3x1/3. ・・・(4)
(1), (4)式から次式を得る:
M+d2x/dt2 = (4/3)eV0s-4/3x1/3.
この式の両辺に dx/dt を掛けて t=0 から t=t, x=0 から x=x まで積分して次式が得ら
れる:
(dx/dt)2 = [2eV0/(M+s-4/3)]x4/3, dx/dt = [2eV0/(M+s-4/3)]1/2x2/3.
従って
x-2/3dx/dt = [2eV0/(M+s-4/3)]1/2, 3x1/3 = [2eV0/(M+s-4/3)]1/2t.
v+=(2eV0/M+)1/2とすると次式を得る:
3x1/3 = (v+/s-2/3)t
この式で x=s とするとシースの端から無衝突でカソードに到達するまでのイオ
ンの飛行時間が求まり次式を得る:
t = 3s/v+.
[注意]
シース内におけるイオンの運動方程式(1)の解を解析的に求めればよい。そこ
で必要となるポテンシャルはチャイルド‐ラングミュアの式(2)を使う。
(13) 問題 12 の結果を用いて問題 10 の条件下の RF 放電においてシースの端から
出発して RF 電極まで無衝突で走るアルゴンイオンの走行時間を計算せよ。
更にこのアルゴンイオン走行時間が高周波の何周期に相当するか計算せよ。
[解答例]
アルゴンイオンの陰極到達速度はv+は、自己バイアス電圧V0=1000V, 電荷e=1.60
×10-19C, 質量M=6.68×10-26kgを用いて計算されて、v+=(2eV0/M+)1/2=6.92×104m/sec.
シースの厚みd=10-2mを用いてt=3d/v+=4.33×10-7secを得る。
この値は 13.56MHzの 1 周期 7.37×10-8secの約 5.9 倍に当たる。
[注意]
電子は周期に対応して極めて短時間で RF 電極に流れ込むが、イオンは数周期
154
の長い時間をかけて RF 電極に流れ込むことを実際の数値を通して理解するため
の問題である。
第3章
薄膜技術の問題
(1) エレクトロニクスデバイスにおける薄膜とは何か、定義をしなさい。
[解答例]
厚さ 1μm 以下の人工的に作製された固体の膜。
(2) 薄膜作製は真空中で行われることが多い。真空はどのような役割を果たすの
か説明しなさい。
[解答例]
以下の 3 項目の役割を果たす。
(a) 薄膜出発材料を活性ガスから隔離して、化学反応により変質するのを防
止する。
(b) 薄膜出発材料から放出された原子が、基板に入射する前に空間を飛行す
るときに平均自由行程を長くして、空間におけるガス分子と衝突し化学
反応することを抑制する。
(c) 薄膜を形成する基板上に、入射する薄膜材料以外の望ましからぬ分子が
入射する頻度を低くして、基板上に形成される薄膜の純度が低下しない
ようにする。
[注意]
(a), (b), (c)はそれぞれ次の 3 箇所における化学反応による変質を抑制すること
を意味する。(a) 出発材料を置いた場所でそれ自体の変質を防ぐ、(b) 原子が飛
行空間で化学反応して変質するのを防ぐ、(c) 薄膜が形成される基板上で化学反
応により変質するのを防ぐ。
(3) 核成長型薄膜形成過程において核は基板上のどこに発生するか。
[解答例]
ステップ、キンク、ベイカンシーのある場所に発生する。
(4) 薄膜形成最中に基板上に形成しようとする膜の厚みと同じレベルの寸法の
ゴミがある場合にはどのような問題があるか述べなさい。
[解答例]
主要な問題は次の 3 つの現象に分類できる。
(a) ゴミが膜の下面側に埋め込まれると、ゴミの上部は薄膜が盛上り全体として
155
平滑でない薄膜となる。
(b) 膜の様々な特性が膜の埋め込まれた部分で望ましくない特徴を示す。
(c) 埋め込まれたゴミは薄膜形成後に基板から剥離しやすく、その跡は望ましく
ないピンホールになる。
以上の結果、ゴミはデバイス特性の劣化や機能不全に繋がる。
(5) テキストの図 4-28 の蒸気圧曲線を用いて、蒸発源の温度が 1200Kで表面積が
1cm2のときAlの重量換算蒸発速度を計算で求めよ。
[解答例]
配布資料の蒸気圧曲線のデータと蒸発速度表示式により求める。1200KのAlの
蒸気圧pは,1.1×10-4Torr(1.46×10-2Pa)である。これに相当する蒸発源直上のAl原子
の空間密度n(=p/kT)は 8.82×1017atoms/m3である。一方Alの原子質量Mは 4.51×10-26kg,
1200Kの気体Al原子の平均速度va[=(8kT/πM)1/2]は 9.67×102m/secである。故に蒸発源
面からの原子放出速度ν(=nva/4)は 2.13×1020atoms/m2secとなる。以上から 1cm2の
蒸発源面の蒸発速度vs(=νMA)は 9.61 ×10-7g/secとなる。
[注意]
①Al の飽和蒸気圧をグラフから読取り Pa 単位に換算し更に空間の原子密度を
求め、②1200K の Al の原子の平均速度を求め、③以上から蒸発速度を原子数で求
めてそれを重量換算する。
計算では MKS 単位と cgs 単位に注意すること。アルミニウムの 1200K の飽和蒸
気圧は 2 桁まで読む努力をすること。
Torr の単位を Pa(MKS 単位)に換算すること。
原子量と原子質量(1 個の原子質量、MKS 単位で kg)の差異を意識すること。
(6) タングステンやタンタルの抵抗加熱蒸発源は消耗品として扱われるのはな
ぜか。
[解答例]
蒸発材料と高温で反応し合金を形成するが、合金の融点はタングステンやタ
ンタルの融点よりも低いので、溶けて次第に変形したり穴が開いたり切断して
繰り返し使用ができない。
[注意]
タングステンの融点は約 3300℃、タンタルの融点は約 3000 であるが、融点以
下でも蒸発が皆無という訳ではない。しかしアルミニウムなどの低融点金属を
蒸着するとき温度においては無視できるレベルである。変形の主要理由は低融
点の合金が形成され、その結果熱的に変形したり機械的に破損されることであ
る。
156
(7) 微小面蒸発源から 50cm 直上に配置した基板ホルダの上で±5%以内の膜厚分布
均一性が得られる領域を求めよ。
[解答例]
規格化膜厚分布の表示式tδ/t0=[1+(δ/h)2]-2により求める。膜厚はt0が最大でtδが最
小になるとして、その平均値(t0+tδ)/2 で最大と最小の差の半値(t0-tδ)/2 を割れば 5%
になるはずである。従って(t0-tδ)/(t0+tδ)=0.05 を充たすδを求めればよい。このと
きtδ/t0=0.90, δ/h={(1/0.90)1/2-1}1/2=0.23, δ=0.23h=11.6(cm)となる。
[注意]
①δ/hとtδ/t0の関係式を求め、②±5%以内の膜厚分布均一性がtδ/t0=0.90 に当る
ことを述べ前に求めた関係式からδを計算する(更に高い精度で計算するとt δ
/t0=0.95/1.05≒0.9048)。
tδ/t0=0.95 としてδの許容範囲を求める場合には約±2.5%になってしまう(更に
高い精度では±2.564%)。±5%以内ということは平均値に対して最大値がその
105%、最小値がその 95%になることを意味する。従って最大値と最小値の差は
平均値の 10%であり、tδ/t0≒0.90 とおかねばならない。±xx%の表示になれていな
い人には意地悪な問題であるが、これは実用的にはよく使われる表現である。
(8) 真空蒸着装置で平板基板ホルダーでなくプラネタリー型基板ホルダーを使
うことのメリットは何か。
[解答例]
微小面蒸発源の蒸発角度分布は余弦則に従うので、その等膜厚面は蒸発源を
南極点とする球面である。それ故球面状の基板ホルダーと面蒸発源を適切な位
置関係になるよう配置すると基板上では完全に同じ膜厚になる。プラネタリー
基板ホルダーは蒸着原を最下点にしてそれに接する球面を構成するように配置
されるから、その上では同じ膜厚となる。実際の基板は平面状のものが多く、
厳密には球面にはならないが、平板でも基板寸法が比較的小さくかつ球の直系
が大きければ基板面は球面の一部に近似できる。また実際の微小蒸発源の蒸発
角度分布は理想的な余弦則ではないが、それはプラネタリーホルダーの作る球
面を維持したままで、その上の多数の基板の位置が変動する運動をさせて異な
る場所の時間的平均値化が基板上の膜厚に反映されて、基板毎の膜厚均一性が
改善される。以上のように均一な膜厚が最大のメリットである。
この他に次のようなメリットもある。②球面状に配置する基板は平面基板ホ
ルダー上に配置する場合よりも合計面積を大きくでき、生産性が高くなるメリ
ットがある。③球面を使うことにより平面基板ホルダーの場合よりも蒸発物質
の利用効率を向上できる。④プラネタリーホルダーの運動により基板入射蒸発
原子の入射角度が時間的に様々な方向に変動するので複雑な立体的構造物上に
157
も比較的均一に薄膜を作成できる(ステップカベレジの改善)。
[注意]
右図により余弦則放出角度分布の場合に等膜
厚面が球面になる説明をする。 蒸発源から球面
上の微小面積 ds を見込む立体角 dωの中に放出さ
れる蒸発量は全蒸発量を m として蒸発角度分布
を f(φ)とすると mf(φ)dω/πである。面積あたり
膜厚 t はそれを微小面積 ds で割り次のようにな
る:
t = mf(φ)dω/(πds).
球面上の微小面dsは球の中心に対して垂直であ
るから半径と蒸発源を結ぶ線が球面と交叉して
微小面蒸発源に接する半
作る角度はφであり、従ってdscosφ=r2dωである。
径 R の球面の座標
またf(φ)=cosφであるから、t = mcos2φ/r2.ところが
図の底辺r, 2 辺がRで頂角が(π-2φ)の 2 等辺三角
形においてr2=R2+R2-2R2cos(π-2φ)=4R2cos2φであるから次式が得られる。
t = m/(4πR2).
つまり全てのφに対して膜厚は蒸発量 m をその球の全表面積で割った値になる。
次に蒸発物質の利用率を球面基板ホルダーと平板基板ホルダーで比較してみ
よう。問題(7)には蒸発源直上 50cmの高さに配置した平面基板ホルダーで±5%以
内の膜厚分布を得られる領域を求めているが、その答えは半径 11.6cmの円板領域
である。この場合の基板に達して薄膜となる有効な蒸発原子の飛出す最大角度
φMを求めると、tanφM= 11.6/50 である。その蒸発源物質利用率を求めると次のよ
うになる:
利用率 = ∫0φMcosφdφ ÷ ∫0π/2cosφdφ = sinφM = 0.22(22%)
半球状ホルダー上に基板を配置する場合には、赤道より上半分の表面は全球
面の半分であるから、蒸発物質の 50%が薄膜としての最大利用効率である。3 枚
のお椀を組合せたプラネタリー基板ホルダーは半球よりも表面積は小さいが、
平面基板ホルダーを使う場合よりも利用効率がかなり高くできることがわかる。
(9) クヌーセン坩堝蒸発源は平板基板ホルダーで膜厚分布均一領域が普通は非
常に狭いが、MBE 装置では比較的広い均一領域を得るためどのような工夫を
するか説明せよ。
[解答例]
クヌーセンセル蒸発源による基板上の膜厚分布均一領域は非常に狭いが、基
板中心からの距離に対して距離が大きくなるに従い膜厚が直線的に小さくなる
158
線形領域がある。その領域で線形領域の中心部分を軸にして基板を回転させれ
ば時間的な平均により膜厚分布が均一化する。更に基板面に対してクヌーセン
セルの法線が斜めになるように配置すると線形部分は広くなるので、基板面上
において坩堝法線が基板面と交差する点から離れた場所を中心として膜厚分布
が比較的広い範囲で均一に近い箇所が得られる。こうしてクヌーセンセルの基
板面への斜め配置と、膜厚分布線形領域中心部分を軸にした基板回転の二つを
組合せて比較的広い領域で均一性のよい膜厚分布を達成できる。
(10) 薄膜作製のスパッタリングにおける典型的なターゲット衝撃イオンエネル
ギーは数百 eV である。不純物ドープのイオンインプランテーションにおけ
る典型的なターゲット衝撃イオンエネルギーは 1MeV である。それぞれのエ
ネルギーを選ぶ理由は何か。
[解答例]
スパッタリングによる薄膜作製ではイオン衝撃によりターゲットを構成する
原子が飛び出す現象を利用する。膜形成速度を大きくするためにはターゲット
衝撃イオン 1 個当たりの放出スパッタ原子の統計的確率値のスパッタ率を大き
くせねばならない。
スパッタ率はイオンエネルギーが低いときにはエネルギー上昇に伴い増大す
るが、あるエネルギーで最大値をとり更にそれ以上エネルギーを増大すると減
少する。これはターゲット衝撃イオンエネルギーが大きくなるに従いイオンが
ターゲット内部に次第に深く侵入しやがてターゲット内部の原子衝突が内部で
止まりターゲット表面に伝播する確率が小さくなるからである。
スパッタ率最大値を与える衝撃イオンエネルギーは 10-100keV であるから、そ
れ以上大きくすると効率が悪い。またエネルギー当りのスパッタ率を計算する
と多くの元素で 200-1000eV のときに最大値を与える。したがってこのとき最も
イオンエネルギー当りの効率のよいスパッタ率が得られる。従ってスパッタリ
ングでは実用的に 500eV 程度のイオン衝撃を使うことが多い。
一方イオンインプランテーションでは結晶格子点のシリコン原子と置き換え
るための不純物元素イオンをシリコンの表面ではなく内部に注入せねばならな
い。不純物としては B, P, As, Sb などのうちいずれかが使われる。
不純物イオンの侵入の深さはエネルギーが大きいほど深い。また同じエネル
ギーでも軽くて直径の小さな元素ほど深く侵入する。注入すべき表面からの深
さはトランジスタの pn 接合の深さに相当し、浅い場合にはソース・ドレイン接合
やチャネル部分では 0.1μm 程度、深い場合にはウェル形成の 0.5-1μm 程度であ
る。不純物イオンを侵入の深さが浅い場合には数十から百 keV 程度のイオンエネ
ルギーが必要であり、不純物イオン進入の深さが深い場合には数百 keV から
159
1MeV 程度のエネルギーが必要である。
[注意]
先ず①スパッタリングでは効率よくスパッタ率を大きくすることの必要性、
②イオンインプランテーションではある深さまでイオンを注入することの必要
性を書けばよい。次に③スパッタ率とイオンエネルギーの関係を説明し、④エ
ネルギー当りのスパッタ率とイオンエネルギーの関係を説明し、⑤イオンの進
入深さとイオンエネルギーの関係を説明して、それぞれの選択エネルギー範囲
の理由とすればよい。
(11) スパッタ装置のターゲットのスパッタエッチング速度Eをターゲット面衝
撃イオン電流密度J+とスパッタ率Sにより数式表示せよ。ターゲットは単元
素として、その密度はρ, 原子量はMA, アボガドロ数はNAを記号として使う
こと。
[解答例]
ターゲット衝撃イオン電流密度をJ+[A/m2]とするとスパッタ速度はターゲット
衝撃イオン束J+/e[ions/m2sec]とスパッタ率S[atoms/ion]の積で与えられる。従ってE =
J+S/e = 6.24×1018J+S(atoms/m2sec)である。一方ターゲットの密度をρ[kg/m3], 原子量
をMA, アボガドロ数をNAとするとターゲットの単位体積当り原子数密度は [ρ
/(MA×10-3)]・NA[atoms/m3]である。エッチング速度を長さの単位に変換するために
はスパッタ原子放出束をターゲット原子密度で割ればよい:
E = (J+S/e) ÷[{ρ/(MA×10-3)}・NA] =1.04×10-8J+SMA/ρ[m/sec]
=1.04×102J+SMA/ρ[Å/sec]= 6.24×103J+SMA/ρ[Å/min].
[注意]
スパッタ原子放出束を求めるためにはイオン束[イオン/m2sec]の単位を使わね
ばならない。電流密度 [ A/m2]の値から換算するためには電荷素量eによる商を使
い、上記解答例のようにJ+/e[ions/m2sec]としなければならいない。さらにまたM =
(MA/NA)の表示式もMがMKS単位の[kg]を用いればM = (MA×10-3/NA)としなければなら
ない。
(12) 上記問題(11)で得られた式とテキストのスパッタ率データからアルミニウム
ターゲットを 500eV, 1mA/cm2 のアルゴンイオンで衝撃するときのスパッタエ
ッチング速度をÅ/min の単位で求めよ。計算に必要な物理定数及びアルミニ
ウムの原子量、金属アルミニウムの密度等は各自調査すること。最終結果は
有効数字 2 桁まで求めること。
[解答例]
運動エネルギー500eVのアルゴンイオン衝撃に対するアルミニウムのスパッタ
160
率はS=1.05 であり、J+= 1mA/cm2=10A/m2, MA=27, ρ=2.7[g/cm3] =2.7×103[kg/m3]を問題
(11)の回答式に入れてE = 6.24×104×10-3×1.05×27÷2.7×103 = 655[Å/min]を得る。
(13) W-Ti の二元合金ターゲットのスパッタリングにおいてターゲットから放出
されるスパッタ原子がアルゴンガス原子と衝突して散乱される結果、形成さ
れる薄膜にどのような影響を与えるか。
[解答例]
テキスト(4.26)式〈φ〉= Cos-1(1 – M2/3)からスパッタ原子がアルゴン分子と衝突
して散乱される平均角度〈φ〉を求める。但しMはアルゴン原子とスパッタ原子
の質量の比である。
W, Ti の原子量はそれぞれ約 184, 48 である。W の場合には M = 0.22, Ti の場合に
は M = 0.83 であるから、
〈φ〉の値は W は約 10゜、Ti が約 40゜である。重いタン
グステンの方は 10 回程度の衝突散乱により空間における飛行方向が等方的にな
るのに対して、軽いチタンは 2-3 回の衝突散乱により飛行方向が等方的になる。
ターゲットと基板の間隔とスパッタ原子の平均自由行程により平均衝突回数は
異なるが、それを数回程度と考えるとターゲットから放出されるスパッタ原子
のうち基板達確率はタングステンが大きく相対的にチタンが少ない。その結果
スパッタ膜中のチタンが欠乏しやすい。
(14) スパッタ装置のカソードシールドは何のために設けられているのか。カソ
ードとカソードシールドの間の間隙を決める上で注意すべきことは何か、そ
の理由と共に説明せよ。
[解答例]
カソードシールドの目的: カソード面の内ターゲット面のみを陽イオン衝撃
に晒し、他の部分がスパッタリングされて汚染源となることを防止すると共に
ターゲット面の電流密度を向上させる。
カソード・シールド間隙決定上の留意点: カソード・シールド間隙を小さく
してその間での放電開始電圧を非常に高くして実用的に放電を抑制する。間隙
が小さいほど放電開始電圧は高くシールド効果は大きい。しかし、狭すぎると
ゴミが入ったときのショートし易い。また RF スパッタリングの場合にはこの間
隙は放電負荷と並列な浮遊静電容量を形成し、RF 電流を大きくしその結果回路
損失を大きくするので間隙を小さくすることは RF 電力損失増加に繋がる。従っ
て間隙寸法は適度な大きさを選ばねばならない。
(15) PVD(真空蒸着とスパッタリング等)と CVD による薄膜作製の主要相違点は何
か説明せよ。
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[解答例]
PVD と CVD の主要相違点:出発原料が気体か固体か、必ず化学反応を伴うかで
ある。
PVD は真空蒸着とスパッタリング等の薄膜作製法の総称である。固体原料を
構成する元素を一度気体原子または分子に変えてそれを再び基板上に吸着させ
て固体として析出して薄膜を形成する。気体原子または分子は固体を形成して
いた元素のみで構成される。固体原料から出発する気体が基板に到達するまで
に飛行する空間における気体分子の衝突はあるが、空間における化学反応はな
い。基板に薄膜を形成する過程で固体原料に含まれなかった気体分子を基板表
面上に取込み固体原料との化合物や混合物薄膜を作る場合も含まれるが、出発
原料はあくまでも固体である。
CVD は気体を流して化学反応させて基板上に固体を析出して薄膜を形成する。
化学反応は基本的に出発原料気体分子の熱分解であるが、これに放電プラズマ
による分解促進作用を補助的に加えたり、異なる 2 種類以上の分子の間の化学
反応が加わることもある。気体の化学反応は空間でも起るし、基板表面上でも
起る。薄膜の出発原料は気体である点が PVD とは異なる。常温では液体の出発
原料に別の気体を送りバブリングして気体にして流す場合もある。しかし PVD
のように出発原料を固体とすることはない。
(16) 次に CVD による薄膜形成過程の主要な五段階を順を追い自分の言葉で説明
せよ。
[解答例]
主要 5 ステップは次の通りである。:
① 反応性ガスとキャリアーガスを真空室に導入し、ガスの全体の流れを形成す
る。に反応性ガスの空間における反応によりプレカーサを生成する。
② 基板表面に接する境界層を経由してプレカーサが拡散して基板表面に到達
する。
③ 基板表面にプレカーサが吸着する。
④ 基板表面でプレカーサが移動し、化学反応を起し、固体を形成する原子・分
子が析出して薄膜が形成される。同時に化学反応により反応副生成物が形成
される。
⑤ 反応副生成物が基板表面からガス分子となって脱離し、境界層を経由して拡
散してガス全体の流れに移送され更に真空室外に排気される。
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